進め!貧乏暇無し傭兵団!   作:ハチミツりんご

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 募集に来ていただいたキャラの中から一名が登場致します。


other side-01 妖精鼠

 

「_______ここだよ」

 

「済まない、感謝するっ!」

 

 

 一人の男が鎚鉾(メイス)を振りかぶり、木製のドアに叩き付ける。

 二発、三発と続けて破壊音が響き渡り、ひしゃげたドアを蹴り破ると、鎚鉾(メイス)を持った男を先頭にして数名が室内へとなだれ込んだ。

 

 

「んなっ!?なんだてめぇ_______」

 

「邪魔じゃボゲカス」

 

「ぼごぉっ!?」

 

 

 古く、埃にまみれた部屋だった。

 長く人が使っていないのがひと目で分かるほど放置されているその空間には、5名程のならず者然とした風貌の男たちの姿が。

 

 そして室内の真ん中、木製の板の上に枷をされて寝かせられている少女らしき姿。

 

 

 間違いない、目的の場所だ。

 

 一番ドアの近くにいたならず者が得物に手を掛けようとしたが、それより早く突入してきた先頭の男が鎚鉾(メイス)を振るう。

 

 

 油断していたのもあるのだろう。横から殴り抜けるように当たった鎚鉾(メイス)は、ならず者の顎を粉砕。砕けた歯の破片や血肉が汚れた床を濡らしながら、ならず者は白目を向いて倒れ込んだ。

 

 

「シルビアっ!!シルビアっ!!僕だ、バルゴだ!!」

 

「………バル、ゴ………?なん、で………」

 

 

 きったね、と鎚鉾(メイス)の男が血払いをする中で、彼の後ろについて突入してきた男の一人が叫ぶ。

 

 突入してきた男達の殆どが武装している中で、バルゴと呼ばれたその人物だけは武器も防具も身につけていなかった。

 少しばかりなよっとした雰囲気の目立つ、歳若い長身の男だ。色も白く生傷も無い綺麗な肌、まず戦いに身を置く者ではない。

 

 にも関わらずならず者達に臆する事無く、必死に名前を呼びかけるバルゴの声に、弱々しい掠れ声で少女が答えた。

 

 

「おいおいおいおい、ちょっと待てやテメェら。勝手に怒鳴り込んでくれちゃってさぁ………ドアもうちの部下も壊してくれるたァ、いい度胸してんじゃあないの」

 

 

 シルビアと呼ばれた少女がまだ生きていることに安堵の笑みを零すバルゴだったが、ならず者の長らしき男が水を差す。

 

 傷の多い厚手の革鎧と異様に刀身の長い曲刀(サーベル)を腰に佩いた、如何にも荒事慣れしている男だ。額に青筋を浮かべるならず者は、地面に倒れ悶える部下を蹴り飛ばしながら一歩前へ出てきた。

 

 

「お前ッ!!お前だな、お前だなァッ!!カポネ爺を殺してシルビアを攫ったのは!!」

 

「おーおー、威勢だきゃいっちょ前だな」

 

 

 憎悪を込めた叫びをあげるバルゴ。しかしならず者の長は全く怯むことなく、大して興味も無さそうにしながら後ろ手で頭を掻いていた。

 

 ならず者とバルゴの間には、数人の兵士の姿。全員が共通の服装に身を包み兜と長槍を装備した部隊だったが、その殆どが緊張した面持ちを隠せていない。明らかに戦い慣れて居なかった。

 

 

 そんな中で、鎚鉾(メイス)の男が他の面々を庇うように一歩前に出る。

 部屋に突入して早々に一名の顎を砕いて戦闘不能にした実力者だ。バルゴ側の人間では唯一戦い慣れしている様だった。

 

 

「おい。てめぇが『誘拐屋』か?」

 

「人聞きの悪ぃこと言うなぁ、俺たちゃ仕事熱心な()()()()()だぜ?」

 

 

 《公認奴隷商》。

 

 アモール神聖帝国では、正式な手続きを踏めば奴隷を扱う事が公的に認められている。

 都市での犯罪者はもちろん盗賊や他国からの不法侵入者、金銭上の問題で奴隷に身を落とす者も多い。

 

 男性奴隷ならば肉体労働用の屈強な者を欲しがる買い手は勿論、一部の冒険者や傭兵は従順な仲間を仕入れる目的でも奴隷を買う。

 

 女性奴隷ならばもっと引く手は数多だ。仮に何も出来なくても、女と言うだけで買おうとする輩は無数に居る。

 

 

 そんな奴隷だが、当然それを扱う奴隷商も存在する。

 

 その中でもアモール神聖帝国から奴隷の扱いを公認された者、それが公認奴隷商だ。

 

 

「2日前、こっちのバルゴ坊ちゃんの家に暴漢が侵入した。犠牲者はその家で働いていた老執事が一名、袈裟懸けに一刀両断。人を殺した割に金目のものには手を付けず、居候してた一人の少女………そこのシルビアって子が誘拐されてんだよ」

 

「ほぉ〜、そいつぁ大変だなぁ。この商品もシルビア、偶然ってのァあるもんだねぇ〜!」

 

「とぼけてんじゃあねぇぞゴミカスが」

 

 

 槌鉾(メイス)の男が鋭く睨み付ける。

 

 この青年、バルゴの家は裕福な家庭だ。アイエノンでも有数の商家であり、金銭的価値の高いものを多く保有している。商家らしく他店からの恨みを買っている事も少なくないので、盗人が入り込む理由は枚挙に遑がない。

 

 

 しかし金目のものには目もくれず人攫いをした、となれば話は別だ。バルゴから必死に頼まれたのもあり、こうして調査して居場所を突き止めた。

 

 

「公認奴隷商が取り扱うのは、全て国から認可を得た奴隷のみだ。それが人攫いをして商品にするなんざ、規約違反も甚だしい。バレりゃ一発で地位剥奪だ、それを承知でやってんだろうなぁ、えぇ?」

 

 

 奴隷の扱いは、購入者の自由だ。大切に扱おうと粗雑に扱おうと、金を払って購入した『物品』と同じなのだから。文句を言う筋合いなんて無い。

 

 しかし、だからといって好き勝手に人を攫って奴隷として販売していたら国として成り立たないだろう。

 故に、公認奴隷商が取り扱うのは犯罪者や他国からの不法侵入者、金の為に売られて奴隷になった者達などのみ。公的な手順を踏み、国から認可された商品しか取り扱うことは出来ない。

 

 その分値段も高く、面倒事に巻き込まれない信頼と安心がある。きちんと教育も施されているため従順な奴隷も多い。公認奴隷商は、言わば国から認められた奴隷取り扱いのプロフェッショナルなのだ。

 

 

 そんな公認奴隷商が、正式な手順を踏まずに人を攫って商品に仕立てる。それは重大な規律違反であり、バレれば即座に身分取り消し。その上本人達が奴隷に身分を落とさねばならぬ程のタブー行為だった。

 

 

 それを指摘するが、ならず者はにやにやとして笑みを崩さない。その態度に槌鉾(メイス)の男が眉を顰めると、ならず者は懐から一枚の紙を取り出した。

 

 

「じゃ〜ん、これなぁんだ?」

 

「ア?………おいおい、冗談キツイぞ」

 

 

 思わず冷や汗が流れた。その男の持っていた紙、それはあってはならないハズのもの。

 

 

「う………嘘だっ!!そんなものがあるわけないだろうっ!!」

 

「バルゴ坊ちゃん、落ち着いて……!」

 

「なんでだ!!なんでシルビアの奴隷認可書があるんだっ!!」

 

 

 武装した兵士の一人に抑えられるが、信じたくないとばかりにバルゴが叫ぶ。

 

 ならず者が持っていたもの。それは奴隷認可書………とどのつまり、シルビアを奴隷として取り扱うことを国が認めた正式な書類だ。

 これが存在する、それ即ちシルビアを商品として取り扱うことに何ら問題はないという証左。寧ろそれを妨害するバルゴ達の方が罪に問われる状況となる。

 

 

 

「ハーッハッハァ!!馬鹿共が!!罪になるのはテメェらの方なんだよォ!!なんならこのガキ共々、俺が売っぱらってやろうか?えぇ?野郎ばっかだが少しは稼げるだろしなぁ!!」

 

「お前………オマエェ!!」

 

「おいおい坊ちゃん、勘違いして俺に文句付けてきたのはそっちだろ?悔しかったら証拠でも持ってくんだな!!!無理だろうけどなぁ!!」

 

 

 

 高笑いを浮かべるならず者に、バルゴは血が流れるほど強く唇を噛んだ。

 

 シルビアが奴隷であるはずは無い。それはバルゴ自身がよく知っている。しかしこの状況をひっくり返す術をバルゴは知らなかった。

 

 

 涙を零しながら、誰か助けてくれ、と願ったその時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「_______偽物だよコレ」

 

 

 

 ピッ、とならず者の手から書類が消えた。

 

 

 

「………ア?」

 

 

 自分の手の中から消えた奴隷認可書。ふと男が視線を下げると、随分と小柄な少年がそれを手に持って中身に目を通しているところだった。

 

 黒い髪をした、紫水晶の様な瞳が特徴的な年若い少年だった。小さなポーチを複数身に付けており、茶色いフード付きローブに身を包んでいる。微かに漂う野草の匂いから、心得のある人間が見れば【盗賊(シーフ)】と呼ばれる類の者だと理解出来た。

 

 

「………おいガキ。テメェ何してやが_______」

 

「ラガバノク」

 

「は?」

 

「ラガバノクの魔筆。アモール国内でも頭一つ抜けた老舗で、一般市民の使う万年筆の様な筆記具から魔導書や呪符作成時に使う特殊な羽根ペンのシェアを牛耳ってる大規模商家だ。特にインクの質は近隣諸国随一、王家一族が目を通す書類にだって使われる高級品さ」

 

 

 すぐさまならず者が取り返そうとしたが、少年の言葉に気圧され手が止まる。

 

 つまらなさそうに奴隷認可書を触りながらインクで書かれた文字を指でなぞる。その感触を確かめながら、少年は言葉を続けた。

 

 

「公的な書類は長年保管しなきゃいけない。だから積年劣化しにくいインクは重宝される。ラガバノク製のインクは速乾性に富む上に滲まず、何年経っても劣化しない。その上特殊な魔導加工が施されているから、例え水をかけたって文字が滲むことは無い」

 

 

 そう言った少年は、腰に備え付けていたポーチから小さな瓶を取り出す。中には透明な液体が入っており、それを躊躇うことなく奴隷認可書へと数滴振り掛けた。

 

 

「っ!!テメェ、何しやがる!!!」

 

「おっと危ない」

 

 

 ならず者が拳で殴り掛かるが、少年は足取り軽く躱す。

 とととっ、と羽が生えたように重力を感じさせないステップでならず者から離れると、液体を振り掛けた箇所を軽く指で擦ってからバルゴに手渡した。

 

 

「はいバルゴさん」

 

「え?…………アッ!!」

 

 

 バルゴが驚きの声と共に目を見開く。

 

 少年の言っていることが真実だと、商家のバルゴは知っている。ラガバノク製のインクは奴隷認可書にも使われる高級品だということ。水をかけた程度では滲まない、という事もだ。

 

 

 それ故に、彼はその()()()()()()()()()()()()()()()()を見て叫ばずには居られなかった。

 

 

 

「に………()()()()ッ!!これはラガバノクのインクじゃあ無い!!」

 

「紙だけは本物の奴隷認可書と同じものを使ってたけど、インクまでは頭が回らなかったみたいだね。お粗末な仕事だよ、ホント呆れるね」

 

 

 驚愕と歓喜が混ざったバルゴの隣で呆れたように肩を竦める少年。

 

 本当にこれが国から正式な手続きを踏んで渡された奴隷認可書ならば、こんな簡単に滲むような安いインクは使わない。

 

 

 それ即ち。この書類自体が真っ赤な偽物だということ。その証明だった。

 

 

「じ……冗談じゃねぇぞっ!!たかだかインク如きで偽物扱いされてたまるかっ!!」

 

「往生際が悪ぃぞ偽モンさんよ。じゃあなんだ、今から俺が王都の奴隷ギルドまで行ってお前が正式な公認奴隷商か確かめてきてやろうか?この偽造書類見せれば、秘密主義のギルド連中でも教えてくれんだろ」

 

「ぐっ………!」

 

 

 焦った様にならず者が叫び散らすが、槌鉾(メイス)の男がニヤニヤと笑いながらそう返す。

 

 ギルドの経営陣というのは、秘密主義だ。自分の抱える情報をそう簡単に他人に漏らそうとはしない。

 しかし、偽造書類を使って正式な手順を踏まずに人を攫った、と言えば流石に連中も重い腰を上げるだろう。そうすれば目の前の男が、本当に国から認められた奴隷商なのか判別出来る。

 

 

 

「ほら、アンタの名前を教えろよ。早馬使って聞いてきてやるからよ」

 

「ぐっ………、お、俺は………」

 

 

 と言っても、この質問に言葉が詰まる時点で黒だということは確定的なのだが。

 

 自分の名前を言うことに躊躇いのあるならず者に対し、少年が横から口を挟んだ。

 

 

「ベリノックだよ、ソイツ」

 

「ッ!!」

 

「あぁ?ベリノック?」

 

 

 ビクリとならず者の肩が跳ねる。

 

 槌鉾(メイス)の男が訝しげに名前を反芻する。少年の放った名にどこか聞き覚えがあったのか、暫くこめかみに手を当て考え込む。

 

 

「ベリノック………ベリノック………アァ?コイツもしかして賞金首か?」

 

「そーそー。ポクロン街道付近で商人襲ってた曲刀使いのゴロツキが居たでしょ」

 

 

 この都市からもっと南東方向、大きなふたつの都市を繋ぐ《ポクロン街道》。その地で盗賊行為を働き、一番近い都市から賞金首として貼り出された男が居た。

 

 少人数の商隊を狙って略奪を繰り返していた男とその配下に、正規兵を相手にする余裕はあるはずも無く。貼りだされてからパッタリ話を聞かなくなった為、今では殆ど忘れられている賞金首だ。

 

 

「まっ、とんだ安首だけどね。曲刀(サーベル)盗賊ベリノック、弱いものいじめで金稼いでたチンケな犯罪者だよ」

 

「く、クソガキャア…………ッ!!」

 

 

 鼻で笑って肩を竦める少年に、ならず者の長_______ベリノックは青筋を浮かべながら身体を震えさせる。

 

 賞金首は、おおよそ値段でランク付けされる。

 国から指名手配されるような大物はその首に数年は遊んで暮らせる程の大金を掛けられるし、近隣複数の都市が合同で指名手配するような連中でも普通はなかなかお目にかかれない位の金額だ。

 

 しかし、一都市から貼りだされる程度の賞金首は、はっきり言って小遣い稼ぎ程度の金額しか首に掛けられない。

 

 

 このベリノックも同様。はっきり言って、賞金首として最低金額しか手配されていない小物である。

 

 

 

「にしたってポクロンのゴロツキがなんでったってアイエノンに居んだ?」

 

「おおかた、そっちのシルビアってお嬢ちゃんの実家に頼まれたんでしょ?チンピラ使えば、しっぽ切りって楽だし」

 

 

 後ろ盾のないチンピラを雇って汚れ仕事をさせ、バレたらしっぽを切るようにして見捨てる事で安全にことを運ぶ。

 

 貴族階級の者ならば誰もが知るやり方であり、同時にあまり好まれるやり方でも無い。

 チンピラの命が云々、という話では無い。バレてしまった場合、『我が家は裏の仕事のプロを雇う金もありません』と周囲に風潮することになるからだ。

 

 

 そんなやり方をした上に、雇った相手が小物のベリノック。なんともお粗末な工作だと少年が呆れた顔を覗かせていたが、突然ベリノックが笑い始める。

 

 

 

「へ、へへ………バレちまったら仕方ねぇ。だがテメェら、気付いてねぇみたいだな?」

 

 

 

 は?と槌鉾(メイス)の男が口から漏らすのと同時に、ガタガタと背後で音がする。

 

 バルゴの周りで槍を構えていた兵士達が慌てて振り向くと、彼らの突入して来た扉から武器を構えたならず者が数名入ってきているところだった。

 

 

「な、なんだコイツら!?」

 

「ベリノックの仲間か!?一、二、三_______」

 

「五人。直剣が二人と短剣が三人ね………表に待機してた連中か。異変を感じて詰めてきたみたいだ」

 

 

 この部屋は手狭だ。

 

 ベリノックとその手下が瀕死なのも含め4名。

 木台の上に拘束されているシルビア、突入してきたバルゴ。

 そのバルゴに頼まれてやってきた槌鉾(メイス)の男にその部下5名、唯一の雇われ者の少年。

 

 

 これだけの人数が入れば、戦うには明らかに狭い。ベリノックもそれが分かっていたのか、部下を二つに分けていた。

 

 前方にベリノックと部下3名、後方には5名。バルゴたちは完全に挟まれる形となり、形成は明らかに不利だった。

 

 

「もう少しこの街で好き勝手やろうと思ってたが、捕まっちゃ終いだ。テメェらぶっ殺して、さっさとトンズラさせてもらうぜ」

 

「チッ………おめェら、バルゴの坊ちゃん囲んで後ろに槍構えろッ!無理すんじゃねぇぞッ!」

 

『は、はいっ!』

 

 

 槌鉾(メイス)の男が一喝すると、バラつきながらも部下達がバルゴを守るように槍を構える。

 衛兵がまず叩き込まれる、槍構えによる集団戦法だ。本来はもっと大勢で行うのが前提だが、この狭さならば5名程度でもある程度効果を発揮する。

 

 

「おいチビ、お前さん戦えんのか!?前の雑魚を少しでも受け持ってくれりゃ助かるんだがねッ!」

 

「…………仕方ないなぁ。ねぇバルゴさん」

 

「は、はいっ!?」

 

 

 愛用の槌鉾を両手で構えながら、前方の敵に注意を向ける。彼の部下達は実戦経験なんてほとんど無い素人同然の面々だ。

 後ろのゴロツキ連中相手に時間稼ぎは出来ても、まがりなりにも賞金首であるベリノックを相手にできるはずもない。

 

 その為、戦闘経験のありそうな少年に手助けを求めた………のだが、少年は面倒くさそうに頬を掻くと、小さく笑ってバルゴへと声を掛ける。

 

 

 

「アレ倒したら、賞金額分を依頼金に上乗せしてよ。想定外の戦闘発生による別料金って事で」

 

「へっ!?あ、いや、それは勿論!!」

 

「おっ、躊躇わずに払ってくれるんだ。キミ良い商人になるよ〜、僕が保証したげる」

 

 

 はははっ、と笑いながらそう言った少年に、バルゴは目を丸くする。

 

 まるで目の前の賞金首を倒すのが当たり前であるかのように、討伐後の報酬の話を持ちかける。腕のいい情報屋だと聞いて雇った相手だが、戦いに関してはよく聞いていなかった。

 

 

 シャラッ、と金属を滑らせる音が微かに響く。よく見ると、少年の服の両袖から何かが滑り出していた。

 

 短剣の刀身部分を外した様な、持ち手と手を守る鍔だけのもの。

 そこに胸元のポケットから取り出した刀身をキンっ、と取り付けると、左右それぞれの手で器用に回してみせた。

 

 

「さてと。じゃあやろうか」

 

「こんなガキが俺に勝つだと?笑わせやがるッ!おいガキ、冥土の土産に良いもん見せてやるよ………」

 

 

 まるで散歩に行くかのように気楽に構えをとった少年。しかしベリノックはそれを意にも介さず、不敵に笑いながら自身の肩当を外した。

 

 

「………そ、そんな………アレは………カナーカンの………!?」

 

 

 そこに刻まれていたのは、赤い刺青。

 

 翼を広げた鳥_______隼をモチーフにした刺青。両翼に重なるように剣が描かれたその紋様を見たバルゴは、思わず言葉を失ってしまった。

 

 

「ハッハハハ!!そうだっ!!剣を志す者の秘境、カナーカンで認められた免許皆伝の証ッ!!この曲刀(サーベル)も、カナーカンの皆伝者に贈られる業物だっ!最初からテメェらに勝てる道理なんざねぇんだよ!!」

 

 

 男の肩に彫られた刺青は、高名な剣客集団の中でもその実力を認められた者だけが許される隼の証。

 冒険者で言えば、それだけで単騎で部隊相当の金級扱いが約束される程の強さを誇る。

 

 

 そんな自分に勝てるはずはない。恐れ戦くバルゴと、警戒心を強める槌鉾(メイス)の男の様子に満足気な表情を見せたベリノックだったが、唯一少年だけは違った。

 

 

 

「くっだらね〜………御託はいいから早くしなよ、面倒臭い」

 

 

 ブチッ、と何かが切れる音がした。

 

 

 

「そんなに死にてぇならテメェから殺してやるッ!!」

 

 

 片手で曲刀(サーベル)を抜き放つと、勢いのまま上段から振り下ろす。

 爆ぜる音と共に床が砕け、木片が飛び散る。

 

 しかし少年は軽く斜め前に飛んで一刀を躱すと、すれ違いざまに左の短剣でベリノックの脚を斬り付けた。

 

 

「んなヒョロい攻撃効くかよォ!!」

 

「んー、流石に鍛えてるから堅いな………普通にやったら時間かかるかぁ」

 

 

 振り向きざまの袈裟懸けの振り上げ。少年が上体を逸らして躱すと、ベリノックは勢いのまま回転し逆袈裟の振り下ろしを放つ。

 

 勢いだけなら少年の身体を一撃で両断する勢いのベリノックの剣撃だが、少年は軽く跳躍して避けるとそのまま数歩後ろに下がった。

 

 

「仕方ない。勿体無いけど使うかな………臨時収入は確定してるし」

 

 

 小さく呟くと、少年はキンっ、と短剣の刀身を外す。

 

 カランッ、と二つの刀身が床に落ちるのとほぼ同時に、腰に取り付けていたホルダーに短剣の持ち手を当てる。

 そのままホルダーの中の刀身を器用に指で取り付けると、再び両手で二本の短剣を構えた。

 

 

「ちょこまか動いてんじゃねぇぞォッ!!」

 

 

 刀身の中心に黒い線の入った短剣を構える少年に、ベリノックは真正面から大上段で振り下ろす。

 

 

「遅いっての」

 

 

 しかし少年は後ろに下がること無く。

 

 振り下ろすのとほぼ同時に前方へ駆け出した少年は、スライディングするようにベリノックの股の間を通り抜ける。

 それとほぼ同時に、左右の短剣をそれぞれベリノックの膝の裏にズブリ、と刺した。

 

 キンっ、と刀身を外した少年は、流れるように立ち上がりつつ両肩のホルダーから短剣の刀身を抜き放つ。

 ベリノックが振り向くよりも速く、彼の背中に二本の短剣を刺す。肉を裂いて金属が沈み込む感触を受けながら、少年は今一度刀身を外して一歩下がった。

 

 

「ハッ!!随分カチャカチャ外れるナイフだなぁ!?んなもん痛くも痒くもねぇっての!!」

 

「あっそ。ところでアンタ、身体動く?」

 

「はぁ?てめぇ何言って_______ッ?」

 

 

 簡単に刀身と持ち手が分離する少年の短剣を鼻で笑っていたベリノックだったが、自身の身体の異変にようやく気が付いた。

 

 二の足で立ち、片手に曲刀(サーベル)を持った状態のまま固まったかのように首から下が動かない。どんなに力を入れても、指先に至るまでピクリとも動いてはくれなかった。

 

 

「な、なんだ………!?てめぇ何しやがった!?」

 

「_______ベリノックさんさぁ、バールって魔物知ってる?」

 

 

 間違いなくこの少年が何か細工をした。そう確信するベリノックが叫び散らすが、少年は彼の前に立つと薄く笑みを浮かべながらそう問うた。

 

 

 

 《バール》。

 

 身の丈が3m近くある巨大な蜘蛛の魔物。八ある脚の爪は鋼鉄よりも硬く、下手な槍の穂先よりも鋭い。

 巨大な体躯から放たれる一撃は重装騎士(アーマーナイト)の鎧を穿く程の威力を誇り、討伐の際には複数名で一体に当たる事を推奨される程の危険な魔物である。

 

 

 ベリノックも、バールの事は知っていた。バールは彼が商人を襲っていたポクロン街道の近くにある山にも棲息しており、その恐ろしさはよく噂で伝わってきていたからだ。

 

 

「魔物ってさ、殺したら消えちゃって死体が残らないでしょ?バールが残す落し物(ドロップアイテム)は爪先や甲羅が殆どで、たまーにレアで薬に使える解毒苔を落とす位だ」

 

「そ………それがどうしたってんだ!!」

 

「でもね、俺はバールの毒を簡単に手に入れる方法を知ってるんだ」

 

 

 少年はキンっ、と腰のホルダーから刀身を取り出すと、ベリノックの眼前に掲げた。

 

 

「バールを殺さず拘束して、腹を裂いて直接毒袋から抽出するんだ。身体から離れた毒は魔物の一部カウントされないのか、当のバールが死んでもそのまま残る」

 

 

 トントン、と刀身を指で叩く。その刀身の中心には、黒い線が入っていた。先程少年が、ベリノックの体に刺した刀身と同じものだ。

 

 

「バールは賢い魔物でね。打ち込んだ毒の中でまず麻痺毒が働くんだ。中枢神経を麻痺させて身体の自由を奪う。そして次に溶解性の毒素が、ゆっくり身体の内部を溶かす。肉も、骨も、内蔵も、全てドロドロに液化する。最後はブクブクに膨れた水死体の様な獲物を、ゆっくり啜るのさ…………いやぁ、無駄が無いね!」

 

「………お、おい………まさか…………」

 

「ところで、話は変わるんだけど_______」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 がくりっ、とベリノックの身体が膝を着いた。

 

 

「おや、もう溶けてきちゃったのかな?まぁ先に膝に刺したから、効果が出てもおかしくないかぁ」

 

「ヒィッ……!?た、頼む……!助けてくれよ、な?なっ!?」

 

「えぇ〜、じゃあ〜、君が誰に誘拐を頼まれたのかをぉ〜………」

 

「シルビアって嬢ちゃんの実家と嫁ぎ先の家だ!!手荒になってもいいからバルゴってガキから連れ戻せって、俺はそれしか知らねぇんだよ!!」

 

「あらホント。俺の調査と一致するね、裏取り取れて良かった良かった」

 

 

 ベリノックはアッサリと依頼人の素性を吐いた。少年の見立ての通り、誘拐された少女シルビアの実家が絡んでいたらしい。

 

 がくりっ、とベリノックが両膝をつく。少年を見上げる形になったベリノックは、下世話な笑みを浮かべながら懇願を口にした。

 

 

「な、喋っただろ?だから、ほら!解毒剤を………ッ!」

 

「え?無いよ?」

 

「………は?」

 

 

 毒が完全に身体に回る前に、何としてでも解毒剤を打ち込んでもらわなければ。

 

 そう思っていたベリノックに、少年はあっけらかんとそう告げた。

 

 

「バールの毒の解毒剤なんてあったら僕が欲しいくらいだよ〜、まぁレストの杖の使い手なら解毒出来ると思うけど、僕は使えないしね」

 

「て_______てめぇふざけてんじゃねぇぞっ!!?俺は、俺はどうなんだよ!?」

 

「んー、そのまま溶けるまで反省したら?」

 

「ふざっけんな!!!殺すっ!!ぶっ殺してやるっ!!!」

 

「うっわー、安い挑発。あ、ところでベリノックさん。一つ忠告ね」

 

 

 バールの毒素は、この魔物独自のもので未だ研究があまり進んでいない。あらゆる状態異常を治してみせる神官達が使用する回復の杖の一種、レストならば解毒出来るだろうが、バールの毒専用の解毒剤というのは未だ市井には出回っていなかった。

 

 つまり自分はこのまま溶けて死ぬしかない、そう理解したベリノックが少年に罵詈雑言をぶつけようとした、その時。

 少年がふっ、と屈んだ瞬間。

 

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「ブゴ_______ッ!?」

 

「死ねカスが」

 

 

 砕けた歯が飛び散る中で愛用の槌鉾(メイス)を顔面に振り抜いた男が軽く血を払うと、ベリノックは白目を向いて後頭部から床に倒れ込んだ。

 

 

「顔面注意………って遅かったか。パヴィルさん、なーいすホームラン。他は?」

 

「お前さんが引き付けてる間に片付けた。親玉除けば雑魚ばっかだったぜ」

 

 

 パチパチパチ、と乾いた拍手を送りながら少年がくるりと周囲を見渡すと、最初に顎を砕かれたゴロツキと同じようにして倒れ込むならず者が全部で8体。

 

 どうやら少年がベリノックとやり合っている間に、槌鉾(メイス)の男_______パヴィルとその部下が倒してくれていたらしい。なんとも仕事の早いものだ、と感心する。

 

 

「さっすがはアイエノンが誇る不良衛兵分長殿、喧嘩はお手の物だねぇ」

 

「うるせぇ。ところで、ホントにそいつ殺したのか?生け捕りにした方が賞金額は高いだろうに」

 

「んー?死んでないよ、バールの毒素打ち込んだなんて嘘だよ、嘘」

 

 

 賞金首は余程の大物でも無い限り生け捕りが推奨されており、その方が貰える金額も少しばかり高くなる。

 

 その為わざわざ殺すことも無かったろうに、と呟くパヴィルだったが、少年は当たり前のように毒は嘘だと述べた。

 

 

「こんな雑魚に虎の子使うわけないじゃん。俺が調合した安物の麻痺毒だよ、1時間くらいで効果切れるから拘束よろしく〜」

 

「………おめぇ、性格悪いって言われるだろ」

 

盗賊(シーフ)にとっちゃ褒め言葉だね。さて、改めて報酬の交渉したかったんだけど…………」

 

 

 

 ベリノックに打ち込んだのは、少年お手製の麻痺毒。身体が溶けるなんて効果も無く、一時間ほどで効果が切れるだけの薬だ。免疫の高い人間には効かないなど、欠点も多い。

 それとハッタリだけであそこまで追い詰める少年の手際、もとい性格の悪さにパヴィルが呆れるが、彼のような人種にとっては褒め言葉らしい。

 

 ケラケラと笑いながら、ちらりと横目で木台を見る。

 

 

 

「シルビアッ!シルビアッ!!良かった、本当に………っ!無事で、無事で良かった………!」

 

「ゴメンなさい、バルゴ………アナタにまた迷惑を掛けちゃって………」

 

「迷惑だなんてっ!僕の方こそ、君を守るなんて大言吐いておきながら何も出来なかった………カポネ爺も殺されて、ジャックさんやパヴィルさん達衛兵隊の皆が力を貸してくれなかったら何も出来なくって………」

 

「バルゴ…………」

 

 

 泣き腫らした目でシルビアを抱き締めるバルゴ。震える身体で、戦いもろくにした事の無い白く細い手で、バルゴは大切なものをしっかりとその手に抱き締めていた。

 

 

「シルビア、僕はもっと強くなるよ………!今度こそ君を守れるように、大切な人をこの手で守れるように…………!」

 

「…………ありがとう、バルゴ。私も一緒に強くなるわ。守ってもらうだけじゃない、お互いが相手を守れる様に………」

 

「あぁ!二人で一緒に強くなろう!一緒に_______ッ!」

 

 

 

 

 

「…………まっ、今はお邪魔かな。パヴィルさん、明日報酬の受け取りをしに来るってバルゴさんに言っといて」

 

「あ?おめぇはどうすんだよ」

 

「疲れたから大樹の猪亭に帰るよ。あ、この偽カナーカンの賞金は僕のだからね」

 

 

 倒れたベリノックの傷口に指を入れ、刺した刀身を4つそれぞれ取り出す。血脂に濡れていたのを軽く拭いながら、少年はヒラヒラと軽く手を振って部屋を出ていった。

 

 

 

 

「パヴィル分長、お疲れ様です」

 

「おう、お前らもお疲れさん。初めての戦闘にしちゃ上出来だぜ」

 

「ははは、ありがとうございます…………にしても、さっきの少年は何者なんです?カナーカンの皆伝者をこうもあっさり…………」

 

「あ?ベリノックはカナーカンの皆伝者じゃねぇぞ」

 

「えっ!?」

 

 

 ボリボリと後ろ手で頭を掻いているパヴィルの元に、部下の1人がやってくる。衛兵用の鎧が少し返り血に濡れていたが、大きな怪我もなく全員生き延びたようだ。

 

 部下の男性がベリノックを縛りながらそんなことを呟くと、パヴィルは違う違う、と手を横に振って否定。肩の刺青まで見せてきたベリノックは、高名な剣客集団の一員などでは無いと呆れた様に口にした。

 

 

「カナーカンの隼の刺青は両翼じゃなくて片翼だ。しかも剣も一本ずつ交差するんじゃなくて、片翼に2本交差する形。皆伝者に渡されるのも、曲刀(サーベル)じゃなくてもっと特殊な…………カタナっつったかな。曲がりの緩やかな片刃の剣だ。コイツはカナーカンの出だってホラ吹いて相手ビビらせてただけの小物だっての」

 

「そ、そうなのか…………隊長よく知ってますね?」

 

「昔仕事してた仲間にカナーカンの出身が居てな。そいつに色々聞いたのさ」

 

 

 自分は巨大な組織の一員だ、という脅し文句をする小物は多い。特に剣客集団のカナーカンは、出身者が少ない割に大陸中で有名なのがあってよく小物が嘘をつく。しかしアモール神聖帝国では高級品であるカタナを皆伝の祝いに贈られるので、それさえ知っていれば見分けるのは容易。

 

 むかしパヴィルが仲間に教えられた事である。

 

 

 ひとしきり傷口を塞いでベリノックやその部下達を縛り上げると、パヴィルはふと疑問を覚える。

 

 

 

「………あのガキ、なんでカナーカンの皆伝者の見分け方なんて知ってたんだ?」

 

 

 

 

☆☆★

 

 

 

 

 

 

「_______知っているってのは力だ」

 

 

 一通りの少ない裏道を歩きながら、彼はポツリと呟いた。

 

 

 

「真実を多く知っていれば知っているほど、嘘に惑わされなくなる。確信が持てる。迷いを持たず行動出来る。()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 少年は懐から一枚の紙を取り出すと、腰のポーチの中からインクの内蔵された小さなペンを抜いてサラサラと数字を書き連ね始める。

 

 

「………うん。麻痺毒分を引いても充分な儲けだね。これから暫く依頼こなさなくても平気そうだ」

 

 

 ピッ、と指で文字をなぞる。乾いているのを確認すると、紙とペンをしまって再び歩き始めた。

 

 

「あーあ、にしても最近面白い情報が入ってこないなぁ………折角金に余裕あることだし、一旦ここ離れるのもアリかもなぁ」

 

 

 暗い道を一人で進む、小柄な男性。彼の事を知る人間は、このアイエノンにはあまりいない。

 

 彼は裏方だ。表で派手に暴れる連中の後ろでそっと暗躍する、影の人間。不用意に目立つことを嫌い、暗闇の中で息を殺して仕事をこなすアンダーグラウンドの住人。

 

 

 傭兵の中でも特に嫌われやすい、盗賊(シーフ)という人種。その中でも彼は一等特殊だった。

 

 

 

「王都方面に………いや、あっちは目新しいのは無さそうだよなぁ。ガトラック方面でもいいけどアモール内からだと入りにくそうだし………それに一人で行くのも面倒だよねぇ」

 

 

 どんな情報でもたちまちに掴み取り、あらゆる場所に現れて依頼をこなす裏の専門。

 

 闇家業の人間しか知らないようなルートすら網羅している情報収集能力と神出鬼没さ、小柄な見た目から名付けられた異名が《妖精鼠(フェアリーラット)》。

 

 

 

「あーあ。ドルツ辺りが一枚噛んでくれないかなぁ」

 

 

 

 男の名は、ジャック・モリス。類稀な情報力で生き延びて来た、ソロ傭兵である。

 

 

 




『こそこそモブキャラ紹介』

・バルゴ

 アイエノンの中でも大きい商家の一人息子。生まれてこの方喧嘩なんてしたことも無いし、戦いの心得だって一切無い箱入りボーイ。
 細身の長身だが白い肌に整った容姿、オマケに実家はお金持ち、という恵まれた環境と容姿を手に入れながら傲慢になること無く、むしろなよっとしたお人好しに育った珍しい人。普段だったら喧嘩が起こると『はわわわわわわ』と右往左往して何も出来ない生粋の喧嘩嫌い。

 他の都市に仕入れに出掛けた帰りに偶然ボロボロのシルビアとカポネ爺を拾い、以降実家の部屋に住まわせて世話を焼いていた。今回の誘拐事件でシルビアへの好意を自覚したので、これからは商人としての知識を身につけつつ身体も鍛えていこうと思っている。
 お世話になったジャックには恩義を感じているので、彼に頼まれたらなるべく力になってあげようと思っている良い奴。

 事件の後から筋トレを始めたが腹筋一回で筋肉痛になる事に気が付いた圧倒的ひょろひょろパワーを誇る21歳のもやし商人。


・シルビア

 バルゴの家に居候してる美人さん。実家はポクロン街道近くの都市にあり、お父さんは都市長を狙っている、言わば政治一家。

 美人だったので街の権力者の一人息子の嫁にされようとしたが、見合いの場でいきなり胸を揉まれたのでビンタして退席。しかしその後家族からとてつもない叱責を受け、無理やり嫁にされかけたので『自分は貴方達の人形じゃない』と啖呵を切って家を飛び出した行動力の女。
 街を出たはいいものの身なりが良かったのでついてきてくれた爺や共々盗賊に襲われ掛けてボロボロのところをバルゴに拾われ、彼の世話になる。算術などの教育は受けていたので商家の力になりつつ恩返しをしていたが、今まであった男達とは違うバルゴに惹かれていたところでベリノックに誘拐されかけた。

 子供の頃からお世話になった爺やを目の前で殺されながらも、決してベリノックの前では泣かなかった強い人。バルゴと二人きりになって、爺やのお墓を前にした時に堰を切ったように涙した。

 腹筋一回しか出来ない想い人を可愛らしく思いつつも、いつか爺やのお墓の前で子供の顔を見せてあげようと決意しているので隙を見て押し倒そうと思ってる18歳の肉食系ガール。


・カポネ爺

 小さい頃からシルビアのお世話をしていた老執事。彼女が実家を出奔した時も後を追いかけてきてくれた忠義者。ベリノックによって殺害された。

 戦い嫌いで心優しいバルゴの事を高く評価しており、お嬢様と結婚してくれたらどれだけ安心か、と他の従業員によく零していたとか。

 死の間際までシルビアの幸せを願っていた享年67歳の優しいお爺さん。


・ベリノック

 カナーカンの皆伝者だとうそぶいて相手をビビらせ、一人二人殺して荷物を奪い取るという盗賊行為を繰り返していた小物。情報を大して精査せずに聞いたまま刺青を彫ったりする辺り、結構おバカ。
 一応これでも部下達を食べさせなければ、と考える程度には人間味がある。ただしカポネ爺を殺したのでシルビアからは一生許されることは無い。
 事件の後から蜘蛛とネズミがトラウマになったので牢獄でやたら彼の悲鳴が響く事が多い。

 自分のことを実力者だと思っているが、別にそんなことは無い。具体的にはベリノックが8人いて初めてアッシュと勝負になる位の実力。8ベリノック=1アッシュである。

 自分の賞金額が安い事に不満をこぼしていた29歳のならず者。


・パヴィル

 アイエノンの衛兵分長。本来衛兵は共通の槍を使うのだが、使い慣れてるからという理由でメイスを振り回すゴリラ系兵士。目付きがとても悪いし口も悪い。

 バルゴの実家は衛兵詰所の備品を買ったりする時によく使うので、バルゴとも顔見知り。
 シルビアが攫われた時にバルゴが真っ先に頼ったのも彼であり、本来詰所に報告しなければならない所を『遅れることになるから』という理由で勝手に部下達と一緒にバルゴに協力した不良衛兵。
 実はこう見えて妻帯者であり、息子も居る。衛兵仲間には話していないが元傭兵で、夫婦揃ってドルツ傭兵隊の出身。

 嫁さん大好き息子大好き、家族に話す時だか口調がやたら甘々になる31歳の家族溺愛系ゴリラ。


『こそこそ世界観紹介』

・カナーカン

 大陸最強、と謳われる謎の剣客集団。遥か東方の武器であるカタナを中心に扱う流派であり、その実力は折り紙付き。カナーカンの剣士、というだけで引く手数多になる位には希少な人材。
 ただし免許皆伝を得る為には地獄のような修行を乗り越えないといけないと言われており、皆伝者には特別な隼の刺青を彫ることが許され、皆伝者の証であるカタナが贈られる。

 どれくらい強いかと言うと、カナーカンの門弟ですらベリノックが10人いても相手にならないくらいには強い。ただし相性の問題もあるので、アッシュやハリガンならいい勝負が出来る。同系統の戦い方をするリースと、機動力で翻弄するタイプのアネットは少し厳しいかもしれない。

 実はリースのお師匠さんはここの出身。ドルツとも知り合いだが、例に漏れず変人の風格が有るらしい。
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