ようこそ孔明のいる教室へ   作:tanuu

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リーダーとは「希望を配る人」のことだ。

『ナポレオン・ボナパルト』


12.リーダー論

「まずは茶でも飲んでくれ。橘、悪いが……」

「かしこまりました」

 

 スッと差し出されたお茶を口に含み、黙礼する。湯呑を置くと彼女は会長の隣に立った。鋭い目線と威圧感が飛んでくる。18でこの感じなら大したものだ。今の世界の政治家や資本家にこれほどの威圧を与えられる人物が何人いるだろう。研ぎ澄まされた剣のような、軍人じみた気迫があった。とは言え、それに怯えるほどやわな人生を過ごしてはいない。動じることなく背を伸ばした。

 

「諸葛孔明。お前のことはよく耳にしている。橘が世話になっているようだな」

「いえ。私の方こそ先輩には多くの手助けを頂きました。感謝の極みです」

「入試成績は同点で一位。成績優良、人格も問題なし。絵にかいたような優等生だ。だが、それだけではないようだな」

「お褒めの言葉、恐縮です。ですが、それだけではない、とは?」

「Aクラスの救世主。いや、1学年の救世主孔明先生。その話は上級生にも届いている。初日に断片を看破し、その後クラスポイントシステムの突破にも成功したと橘から聞き及んでいる。非常に優秀だな。テストでも過去問を利用し、それを配るだけでなく生徒が効果的に学習できるようにしている。過去問制度自体は思いつく生徒も例年いるが、全体を高めるようにしたのは初めてだ。どんな天邪鬼も見事と言わざるを得ないだろう。素晴らしい」

「大したことではありません。私に出来る事を、精一杯したまでです」

 

 あくまで謙遜しつつ、にこやかに。私という人格を誤解させるように。1年生の間で語られている私という人物像との乖離がないように気を付けながら。

 

「お前はこの学校をどう思う」

「良く言えば特殊。悪く言えば異常、と言ったところでしょうか。変なところですよ、ここは。それでも良い点はあると思います。誰でも成長できる機会があるのは良いですね。それでいて同時に社会の厳しさも教えようと努力しているのは賞賛すべきです。とは言え、その利点を上回る問題点も多数存在しているように思いますが」

「なるほど」

「どんな人間でも輝ける機会を用意しているのは素晴らしいでしょう。反面、倫理観に関してはどうも微妙ですが、それはまぁ現実世界も変わらないので目を瞑ります。ただし、私が1番気に入らないのはそこではありませんが」

「言ってみろ」

「簡単です。高校生活、もっと言えばAクラスで卒業する事が人生のゴールかのように錯覚させていることです。そうでなくても生きる道は幾らでもあります。しかし、皆狂ったようにAクラスを目指す。その先に待っているのが栄光であるとなんの疑いも持たずに。どうして考えないのでしょう。Aクラスで卒業したってその先には苦難が待っています。順風満帆な人生なんてあり得ない。勉強だって終わりじゃない。本来高校生に必要なのは他人を蹴落とすのに時間を使うのではなく自己研鑽をする時間なのだと私は思っています。軽い視野狭窄に陥りかねないかと。この閉じた世界が現実と同じだと誤解しては不幸を生みそうです」

 

 Aクラスで卒業すれば進路が保証される。そんな馬の眼前に突き出されたニンジンのような謳い文句を信じて我々は必死に競わされている。今競うべきは世界ではなく自分なのに。昨日の自分より今日の自分、明日の自分が磨かれていることが重要だと考えている。陰謀ごっこがしたければ好きにすればいい。私は自分の任務なので仕方なく陰謀ごっこに参加しているが、そうでなければ一抜けしてやる。

 

「さらに言えば、これで本当に優秀な人間を創造できるのか。或いは元々優秀だった存在とそうでは無い存在の格差を広げるだけではないのか。そういう心配もあります。全員を等しく優秀な存在にする気概と意思を、私は感じないのです」

「分かった。確かにそういう見方が出来るのは事実だろう。今後の学校運営に活かせるポイントが無いか検討してみよう」

「一介の学生、しかも1年生の戯言です。そこまで重く捉えずとも」

「いや、この学校に入った以上共に過ごす仲間であることに変わりはない。そういう存在からの意見は大切にしなくてはいけないと思っている」

「そうでしたか……」

 

 存外に仲間想いなところもあるようだ。そう言えば、3年Aクラスは未だに退学者0人と聞く。その裏には彼の活躍もあったのだろう。本題にはなかなか入らず、問いかけが続く。私を見定めようとしているのだろう。

 

「お前にとって理想のリーダーとはなんだ」

「私はリーダー論を語れるほど素晴らしい人材でも、またリーダー気質やカリスマ性、リーダー願望がある訳でもありませんが」

「それでも構わない」

「そうですね……」

 

 これは南雲との思想の近さを調べるための質問だろう。とは言え、南雲雅と私のリーダー論は絶対に違うので正直に語っても問題ないはずだ。真実と嘘を織り交ぜることで話の信憑性は上がる。

 

「引っ張る、押し上げる、共に横並びで歩む。色んなリーダー像があると思いますが、どれでも構わないと思っています。支配でなければ」

「支配でない、というのは?」

「簡単に言えば思考停止の集団にしない事ですかね。暴力、カリスマ、洗脳、恐怖……形態は様々ですが支配によって動かされる集団は一見強固に見えて実は脆い。上に立つ王が機能不全になると途端に崩れてしまいます。そして残されるのは王無くしては何もできない愚か者です。私は学力が低い者ではなく自分で考えるのを放棄している人間を愚か者と勝手に定義しています。ここは軍隊ではありませんから」

「ではお前の目的はその軍隊アリのような生徒を作らない事か」

「はい。そう捉えて頂いて構いません。自分で考え、その上でリーダーに従うか決める。もし考えてなお従いたいならそれでよし。もしそうでない場合、リーダーは自分の意思を通すために説得する必要があるでしょう。一見無駄に見えて実はその方が結束は強まる。自分の事を見てくれている。蔑ろにされていない。意見を言っても良いんだ。そういう雰囲気が出来るのです。そうなると、リーダーの思いつかなかった観点からの意見によって軌道修正や弱点の補強が可能です。主体的に動く結束力の強い集団が出来上がり、大いに成果を発揮するはずと考えています」

「思考停止しない集団作りか。それを聞いて自戒するべき点も思い浮かんだ。参考にするとしよう」

「私程度の意見が無くとも十分リーダーたる素質はおありと拝察しますが、お役に立てたのであれば光栄です」

 

 会長は何かに満足したように軽く頷いて、いよいよ本題を切り出した。彼が本題を話してもいい相手だと認識されたと考えて良いだろう。

 

「今日橘にこの時間にお前と話せるよう取り計らってもらった理由は簡単だ。諸葛孔明、生徒会に入る気は無いか」

「いえ……残念ながら。放課後もそれなりに忙しいので。しかも、私はクラスのリーダーではありません。もっと相応しい人物はAクラスにもいるでしょうし、他クラスにも存在していると思います。何故、私を? 多少功績がない訳ではありませんが、会長のお眼鏡に適うほどの能力やカリスマ性を見せたとは言い難いのではないでしょうか。それこそ、会長でも私のような動きは可能なはずです」 

「高知県黒潮町立第二中学校の奇跡。その立役者がそれを言うのか。全国の教育会を震撼させたサクセスストーリーの演出者が。お前の自己評価は知らないが、カリスマ性がないというのは嘘だとお前を知る者は思うだろう」

「そんな大それたことをしたつもりはないのですがね。あれは私の級友の頑張りによる結果です」

「会長、話の腰を折ってすみません。その何とかの奇跡と言うのは一体……」

 

 橘先輩は会長にそう尋ねる。私が答える気が無いのを察した彼は語り始めた。私の過去の断片を。

 

「彼らの世代が中学2年生の春。高知県の田舎にある全校生徒30人前後、学年に多くて10人しかいない中学校に1人の生徒が転校してきた。それまでの経歴は誰がどれだけ調べても不明だったが彼はすぐに周りと打ち解けた。そして1年以上が経過し、異変が起こった。その中学校の生徒の保護者層は第一次産業か地元の第三次産業に従事している者が多く、凡そ高学歴とは言えない。歴代卒業生たちも中卒や地元の農業や工業の高校へ行くのが常だった。だが……この代は違った」

 

 会長は更に目を細め、私をじっと見つめる。

 

「諸葛を含めて10人の生徒が全員偏差値70以上、即ち超名門もしくは進学校に分類される高校へ進学した。誰1人欠ける事は無く。そして塾などないそんな環境で全員を導いた教導役、それは教師でも何でもない同級生。ただの中学生だった。それがこの男、諸葛孔明だ。報道こそされていないが、教育の界隈では騒がれた。俺も偶然知ったのだがな」

「そんな事……可能なんですか?」

「分からない。だが、事実として結果がある。それは覆しようがないだろう。諸葛、お前はそれでもなお、自分は無力だと言うか?」

「私はなにも特別な事はしていませんから。そう言わざるを得ないのです。それに、私が何をしたとしても、最終的に結果を勝ち取ったのは彼らです。それは変わらないでしょうから。惜しむらくは連絡が取れない事ですね」 

 

 遠隔地に下宿する生徒が大半だったが、それでも私が出発する時はわざわざ見送りに来てくれた。それには感謝している。少なくとも平和では無かった私の人生で最も平和かつ充実した2年間だったと言えるだろう。あの時は特に指令も無く、静かに過ごせた。

 

「それでどうだ。入る気はやはり無いか」

「はい」

「今後行われる試験に関して、手助けをすると言ってもか?」

「ええ。私の意思は変わりません。それに私を配下にしたければ後2回勧誘して下さらないと」

「三顧の礼か。だがお前にそれだけの価値があると?」

「安売りするつもりはありません。管仲楽毅を裸足で逃げ出させる自信はあります」

「良いだろう。残念だが諦めるとしよう」

 

 彼は徹底的な実力主義を謳い何人も退学させている南雲への対抗策として私を選んだ。理由は彼の言った私の実績になっている事項。元々偏差値なにそれ?みたいな人間を全員学歴社会の最高級の場所に送り込んだことから実力が無くても見捨てない人間だと思われたのだろう。少なくとも実力が無いから下層にいろと言う発言や思想をする人物ではない、と判断したはずだ。それで結構。こちらの想定通り。

 

 明らかに残念そうな雰囲気を出している会長に切り出すなら今だろう。

 

「しかしこうあっさりと断ってしまっては申し訳ない。ですので、私の代わりになる人材を用意いたしましょう」

「ほう。そんな者がいるのか。誰だ」

「1年Aクラス、葛城康平。1年Bクラス、一之瀬帆波」

「お前は……まさか知らないという事はあるまい。俺がその2人の入会希望を断ったという事を」

「ええ勿論。南雲雅への警戒からですよね? 万が一手駒化されたら問題だと」

「良く、知っているようだな。橘から聞いたのか」

「いえ。ですが、それ以外でも方法は多く存在しますから」

「良いだろう。その情報源についてはひとまず置いておく。だが、俺が拒否したことも、その理由も知っていてそれでもなお推薦したというのには訳があるのだろうな」

「はい。当然です。もし私にお任せ頂けるのであれば、彼らは必ず会長の配下になるでしょう」

「その根拠は」

「まず葛城ですが、彼は非常に保守的な男です。能力は保証しますが、思考は守りを重んじる。反面南雲雅は革新派と聞きますね。思想面で全く相容れない訳です。それに、彼は倫理観も強い。そんな人物が悪評の多い副会長の話を聞けば、どう思うでしょう。それに対抗する会長の話を聞き、その会長が自分を拒否したのは自分を守るためであると知れば、どう思うでしょうか。そして私はAクラス内の生徒から多くの信頼を寄せられている。その私の言う事です。信憑性は高い」

「なるほど。それで、一之瀬の方は」

「彼女も同じようなものです。しかし、彼女の場合は女性であることを使いましょう。浮名の多い人間を嫌悪する女性は多い。しかも自分がその毒牙の対象になりかかっていると知れば……100年の恋も醒めそうなものです。それらの要因があり、元々強く生徒会入りを希望している観点からも会長からの1筆があれば容易に配下についてくれるかと」

「…………」

 

 思案状態に入った。彼は優秀だ。だが完全無欠ではない。その1面も垣間見えた。彼は強化版葛城だ。故に保守派なのだろう。少しの沈黙の後、彼は重苦しく口を開いた。

 

「確実に、出来るのだな」

「はい。自信を持ってお約束しましょう」

「分かった。もし実現できるのなら大きい」

「聡明な会長ならばご理解下さると思っておりました。では、こちらに署名を」

 

 渡した3枚の書類。これにはこう書かれている。

 

 

 

 私、高度育成高等学校生徒会長3年Aクラス堀北学は、同校1年Aクラス葛城康平(1年Bクラス一之瀬帆波)に対し、もし生徒会入会を現在も継続して希望するのであれば、それを許可する。ただし、その際に同校1年Aクラス諸葛孔明よりの説明に同意し、下記の条件を了承した場合のみ、これは履行される。

 

1、今後の学校生活で何らかの指示が堀北学よりなされた場合、自クラスへの損害にならない場合は必ずそれに従う。

2、上記条件を宣誓し違約時には生徒会を解任となる旨を了承する。

 

 

 

 そしてもう1枚。これは彼と私の為の契約書だ。

 

 

 私、高度育成高等学校1年Aクラス諸葛孔明(以下甲)は同校生徒会長3年Aクラス堀北学(以下乙)に対し、以下を契約する。

 

1、甲はあらゆる努力を持って同校1年Aクラス葛城康平(以下丙)並びに1年Bクラス一之瀬帆波(以下丁)を生徒会に入会させる。

2、甲はその際に丙並びに丁に対し、南雲雅ではなく乙の指示に従い行動するように意思表明をさせる。

3、甲は乙に交渉時の音声データ並びに交渉成立の場合は契約書を渡し、証拠とする。

4、もし事項2に反した場合、丙並びに丁は生徒会を解任となる旨を契約させる。詳しくは別紙契約書に記載する。

 

 

 

 

 ざっとこんなもんだ。こういう展開になることは想定済みだったのであらかじめ作っておいたものである。しばらく読んでいた会長はもう1つ事項を書き足した上でサインした。その事項は『5、上記契約成立時、乙は甲に成功報酬として20万ppを支払うものとする』である。

 

「宜しいのですか?」

「もし本当に成功したのならばこれくらいは安いだろう。しかし、この用意周到さ。すべてはお前の掌の上か?」

「いえ、そんなことは。しかし、この契約書にサインして頂けるような展開へ話を運んだのは事実です。ご不快でしたら申し訳ございません」

「いや、気にすることはない。だが、1つだけ聞きたい」

「何でしょうか」

「お前はまだ南雲からなにも被害を被っていないはずだ。しかし何故南雲降ろしに参加する」

「非常に個人的な動機です。革命思想は嫌いでして。それの影響で酷い目にあいましてね。ただそれだけです」

「理知的な回答ではないな」

「そうですね……しかし、歴史を動かしたのはいつだってこういう個人的かつ非論理的な思考回路だったりもするのは、ご存じでしょう?私も、それには抗えないのです。悲しい人の性ですね」

 

 まぁ他にも理由はあって、葛城に恩を売り、一之瀬にも恩を売るのならそっちの方が楽だったのと、このまま葛城が生徒会落ちと囁かれると影響力が下がりかねない。多分能力では坂柳の方が上だ。いずれじり貧になる。が、それは遅ければ遅い方が私にとっては都合がいい。こうしてテコ入れしてでも均衡を作るのだ。

 

 更に言えば、とても個人的な美学だが、性犯罪系は嫌いだ。あと、フェミニストではないが女性をモノ扱いしている奴も嫌いだ。薬物と貨幣偽造以外は大体コンプリートしている真っ当でない人間であっても、性犯罪だけはやっていないしやる気もない。それは私だけでなく……我々全員の総意であった。もっとも、人殺しの軍人が美学を叫んでどうなると言う物だが、どんな人間でも譲れない矜持はあるだろう。そういうものだ。

 

「今はその解答で良いだろう。契約書はサインした。後はお前の役目だ」

「はい。お任せください」

「今後も取引が出来ればと思っている。連絡先を後で橘経由で送る。何かあればすぐに言ってもらって構わない」

「ありがとうございます」

「この学校はお前の想像よりも多くの物が隠れているかもしれない。だが、それを乗り越える事を期待しているぞ」

「精一杯、努めさせていただきます」 

 

 成果は上々。問題ない。契約書をしまい、礼をして橘先輩に促され生徒会室を退室した。計画通りと言っていいだろう。一定数の信頼を得る事は出来たはずだ。それで十分。今のところは。Aクラス内にて派閥抗争にいない私には後ろ盾がいた方が安全だった。その1つをゲット出来たので、今後は多少派手に動ける。大きな権力を持つ生徒会だ。なにか事件があった際に関係することもあるだろう。そんなときに首を突っ込みやすくなった。

 

「今日は来て頂きありがとうございました。会長もお喜びだったと思います」

「そうでしたか。会長の要請を断ってしまいましたし、偉そうな高説を垂れ流してしまいましたからご不興を買っていたらと心配でしたが」

「会長はそのように心の狭い方ではありませんから安心してください」

「そうでしたね。これは失敬」

「でも、諸葛君が入ってくれれば私たちも心強かったんですけれど……やはり今からでも入ってみませんか?」

「これは私のスタンスですので。しかし、先輩からこうも熱烈なラブコールを頂けるとは光栄ですね。クラスの男子連中に恨まれてしまいそうです」

「あ、あまり揶揄わないで下さい」

「申し訳ありません。ですが事実ですから」

 

 人当たりの良さそうな善人風の笑顔が彼女には見えているのだろう。褒められたと解釈しまんざらでもなさそうな顔をしている。

 

「今日こうして会長とお会いしましたが、私にとっては頼れる先輩はやはり橘先輩です。今後も色々頼ってしまうかもしれませんが、どうかお願いします」

「こちらこそ、そう言って貰えると嬉しいです。同じAクラス同士、無事卒業できるよう頑張りましょう!」

「はい。勿論です」

「では、私は業務がありますから」

「分かりました。どうもありがとうございました」 

 

 生徒会室に戻っていく彼女を眺めながら笑顔をひっこめ通常の顔に戻す。そして自分の部下に電話を掛けた。

 

「なに」

「情報は集まったか」

「ええ。問題なく。元々有名人だったから大して調べなくてもボロボロ出てきたわよ」

「そうか。今どこにいる」

「部屋」

「では、葛城康平にメールか電話してくれ。諸葛孔明が明日の放課後喫茶店で会いたいって言っていると」

「分かった。それだけ?」

「ああ。こちらも色々あったが手筈は整った」

「そう。後、喫茶店ってどこ?」

「ほら、あれだよ、スタバとか言うところ」

「なんでそんな老人みたいな言い方なのよ。まぁ良いわ。伝えておく。後、今日も6時から?」

「そうだ」

「了解。じゃ、切るから」

 

 6時からというのは私作成の冊子類を使った彼女専用個別指導の時間だ。大体10時くらいまでやっている。非常に面倒だし、金をとっていいレベルの物を提供している自信はあるが、部下の面倒を見るのは役目なので仕方なくやっている。

 

 ともあれ、これで準備は完了。後は動くだけだ。多分邪悪に見える喜色を浮かべながら、夕方の廊下を歩いた。この世界に君臨者としての王はいらない。いるのは民衆の代表者。いわば「プリンケプス」だ。




<報告>
 生徒会長との接触に成功した。概ね良い印象を与え、良好な関係を築くことに成功したと思われる。非常に高い知性、思考力を有し、リーダーシップも十分にある。かなりの実力者であることは間違いない。また、自戒する力もあり、人間性も表面上は問題ないように思われる。

<要求>
 何か進展はあったか。後、現在残存人員は何をしている。後、指揮系統はどうなっている。誰が命令を出している。私の命令権はどうなった。

<返答>
 一之瀬帆波に関してはまだ調査中である。やはり困難。彼女の登校していた中学校の元担任、校長、教頭と接触できているので情報を聞き出せるように努める。
 現在直轄要員4000人中貴官の命じる調査任務に約100人、残りは本国に1000人、日本国内で貴官の補佐用とその他任務用の関係各所に1000人。残存1900人は他国で任務中である。主な行き先は中東と中央アジア、極東である。指揮系統は基本3年前より変更なし。命令権は現在本官が臨時で行使中。命令とあれば返却する用意あり。貴官への忠誠、未だ衰える事なし。

<Re.返答>
 ならば良し。現状問題ないならばそのまま続行せよ。いずれにせよ、真っ当に作戦が成功すれば帰還は2年後の春だ。それまでは貴様に預ける。

<RE.Re返答>
 信頼に感謝する。諸葛閣下万歳!
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