ようこそ孔明のいる教室へ   作:tanuu

17 / 89
電気屋関連の設定が一部変化しているので、ストーカーの行動も変化しています。悪しからず。また、時系列的にはこの話の前までに櫛田・綾小路・佐倉による電気屋行きイベントが発生しています。予定では後2話でこの章は終わりです……。大分短くて申し訳ないです。審議会の分とかが無いので原作に比べるとどうしても内容が減ってしまいますね。


彼女のことを愛している。それは、すべての始まりなのだ。

『F・スコット・フィッツジェラルド』


16.嘘には嘘を

「なんだこれ。気色悪いなぁ」 

 

 暴力事件の発生から数日経ったある日の放課後のこと。いつも通りに部屋にての秘密会合だ。

 

 この学校で密かに、だが着実に進行していたもう一つの事件に進展があった。今見ているのは投函されていた手紙。先日明らかになった不審者に関する情報。それに関連して、深夜にまたコンビニ詣でをしようとしていた真澄さんが再度不審者を発見した。その際にまたしても投函してたので今度は郵便受けを確認して抜き取ってきたという。

 

 私信を開封するのはマズいが、良い感じに彼女の隣の郵便受けだったらしくカメラからは死角になってるそうだ。元々カメラには敏感なはず。信じて良いだろう。それに、凡そ送られた本人が喜んでいる訳ない。その証拠に、パーソナルデータが明らかになったこの不審者には学校内に関係者がいない。過去の数少ない交友関係を漁っても、この学校の生徒は出てこなかった。十中八九ストーカーだろう。余罪も前科もあるようだし、間違いない。

 

 そしてその手紙を見ているのだが、相当に気持ち悪い。吐き気を催す邪悪だ。これは決して自分1人の感想ではなく、最初の数行読んで盗み出してきた彼女はリタイアした。

 

「これは何をどう取り繕ってもストーカーだろうな」

「むしろそれ以外だったらなんなのよ……。ちょっと鳥肌出てきた」

「今までグロテスクなものは多く見てきたが、それとは別方向に精神に来るな……」

「これ、どうすんの?」

「そのまま、と言う訳にはいかないだろう。被害者は赤の他人だが、いつ標的が変わるかもわからん。加えて、こういう精神的に不安定な人物は突拍子もない行動を起こしかねない。危険分子は排除しなくてはいけないだろう。その為と言っては何だが、情報は既に入手している」

「相変わらず早いわね。ふ~ん、電気屋か……。一気に行きたくなくなった」

「まぁそう言うな」

 

 彼女は思いっきり顔をしかめている。この学校に付随している店の中に電気屋はこの店しかない。同じ女性として被害者に同情できる部分もあるのだろう。嫌になるのも納得は出来た。

 

「それで、何か分かった? 相手とか」

「ああ。それも抜かりはない」

 

 用意していた写真をテーブルの上に出す。写っているのは恵まれたプロポーションを持つ女性。いわゆるグラビアアイドルというやつだ。少年誌等の表紙に載っているのを見たことがある。個人的な興味は皆無だが。

 

「これって……なに? アンタの趣味嗜好を公開してるわけ?」

「違う。そんな訳ないだろう。この写真に写っているのが今回の被害者だ」

「でもこんなビジュアルの子見たことないけど? 流石にこのレベルがいれば話題にもなるでしょ。ウチのクラスの男子だって、いっちょ前に恋愛願望はあるみたいだし。アンタを除いては」

「後半はともかく、前半は良い指摘だ。当然、アイドル活動をするくらいなのだから一般的に言ってよいビジュアルをしているのは間違いない。にも拘らず話題に出ないのはなぜか。答えは自分を偽っているから……或いはこっちの写真の方が偽りなのかもしれんがな」

「変装、ってこと?」

「そこまで大袈裟ではないかもしれないがな。そしてこの人物の本名も分かった。芸名は雫、本名佐倉愛理。1年Dクラスの生徒だ。部屋番号から管理人に聞けばあっさりと教えてくれた」

「……待って、1つおかしい」

「何がだ?」

「この写真のがその佐倉って生徒なのは正しいと仮定するのは疑問はないけど、どうしてそれをストーカーは知っていて、もっと言えばそれを知っていたとしても普通は分からない住所までバレてるわけ?」

 

 実に良い質問だった。それは確かに謎ではあった。(やや問題を抱えているにしろ)普通の電気屋の販売員がアイドルの本名やこの学校での住所を知る事は難しいだろう。普通ならば。

 

「私もそう思った。なので色々見ていたんだが、まず此処にいると知られた最初の原因は恐らくこれだろう。かなり最近の写真だ。彼女のブログから拝借してきた」 

 

 そこにはポーズをとっている画像。だが注目すべきはそこではない。真に見るべきは背景だった。

 

「この背景って……」

「ああ。この学校の寮の室内だ。このストーカーは当然の如くブログにへばりついて更新を待っていた。そうしたら念願のその写真の背景に見知った部屋の内装があったんだろう。そうとは知らない彼女はこれからの新生活に期待してか、4月の早々に写真を投稿した」

「寮の内装を知っていた理由は?」

「管理人によると、我々が入寮する前に東亜電気によって新入生用の部屋にある冷蔵庫や洗濯機などの家電製品の動作チェックが一律で行われている。当然160人分のチェックは時間がかかる。人手として駆り出されていたんだろう」

 

 電球やブレーカー、IHなども調べられているそうだ。この学校の電化製品のほぼ全てをあの電気屋が担っている。絶対この学校、或いはその創設者にして運営者である国家とのつながりがあるんだろうとは思われる。元々そっち系の贈収賄できな臭い話も存在していた。真っ白とは言えない。それはどこの企業も同じかもしれないが。

 

「何も知らない被害者は恐らく電気屋を訪れた。ストーカーは変装を見抜いてしまった。まぁ熱心なファンならまともな人間でもそういう事が可能だと聞く。そして被害者最大の不幸は、電気屋が顧客リストを持っていたことだろう。それも我々生徒のパーソナルデータの載った、な」

 

 この言葉に彼女は眉をひそめる。そんなこと知らないと言いたげだ。実際把握している生徒などいないだろう。

 

「顧客リストって何? 私、あの電気屋に行ったことないけど」

「入学時に顧客リストに自動的に入るように設定されているんだろう。氏名、住所、連絡先、メールアドレス、購入履歴。これが全部入ってる。勿論、備え付けの家電の状態をチェックする目的もある。ついでに言えば、本社の会員システムとこの学校の端末システムを一部リンクさせているな。そうして売上形態や需要を調べている営業利益的な側面もあるはずだ」

「で、それをどうやって知ったわけ?」

「良くないマーケットにそのままセットで流れていた」

 

 もっと黒い想像をすれば色々出てくるがここでそれを考えるのは止めておく。それは今回の主目的ではないからだ。我々は別に電気屋の内実を暴きたい訳ではない。とは言え、あまり気分の良い物ではないだろうな。勝手にリスト化されているのは。だから生徒側には隠していたんだろう。

 

 つい先日、北朝鮮かどこかのサイバー攻撃であの会社のシステムが一時ダウンしてた。同時に顧客情報が流れていた。その中にこの学校の生徒のものを発見したので偶然リスト化していることが分かったのだ。

 

「かくして哀れ被害者の住所本名はまるわかり。流出したリストには顔写真もセットで載っていた。大方学校が個人データをそのまま送ったんだろう。何してんだろうな、どっちも」

「うわぁ……」

「ただ、1日後に見たら無くなっていたので恐らく学校側も気付いて手を回したんだろうさ。遅いけど」

「じゃあ今この被害者はメールと手紙の波状攻撃に合ってるってこと?」

「恐らくは」

「で、どうするの?」

 

 それが一番の問題だった。ストーカーが被害者の個人情報を知った経緯も推理できたし、その被害者含めて人物像も予測できた。では、ここまで知った後、これからどうするのか。それが問題だった。

 

 この一件我々に何も関連のない事案をどうやったら利益に繋げられるか。そう考えた時に大事なのは誰が利をくれるかだ。ストーカーは何もくれないだろう。被害者もそこまで大きなことは出来ない。では、どこが利益をくれそうか。答えはすぐ出た。学校と企業だ。

 

 事件が表沙汰になればかなり問題になるだろう。今教育現場での事件に世間は敏感に反応する。さらにそれが創設当時世論を激しく騒がせたこの学校内で起きたものだったら?この学校は不審な男の本性を見抜かずに店員として採用してしまった、どうしようもない学校だというレッテルを貼られる。例えそうでなくてもそうみられる。マスコミもこぞって叩くだろう。政府が血税を投じた学校で不祥事。実に美味しいネタだ。電気屋も不祥事でダメージを受けるだろう。

 

 だからこそ事が起こっても内々で処理するしかないのだ。であれば、事が起きた時にそれを目撃していれば。口止め料が支払われるのは当然の話だ。脅せる材料が存在するような状況を作ってしまったことを恨むがいい。こちとら倫理観のない人間だ。恐喝だろうと詐欺だろうと抵抗感など存在しない。

 

 だが、まだ弱い。もっと大事件に、直接的な事件に発展しなくてはいけない。とは言え、諸々の状況を鑑みるに、今月中には何か起こりそうではあるが。ストーカーの行動も文面もエスカレートしている。その先に何があるのか。想像は容易い。

 

「しばらく待つ」

「ここまでしておいて?」

「現状ではこの男に法の裁きを与えるには弱い。クビにはなるかもしれんがな。事件が起きない限り、日本の警察は動かない。特にストーカー関連では対応が後手後手になっている。テレビでよくやっているだろう?」

「それはそうだけど……」

 

 彼女は歯切れの悪い答えを返す。同じ女性として座視しているには知り過ぎてしまった。告発できるかもしれないのにしない。それがもどかしいのだろうとは簡単に推察できる。

 

「安心しろ。放置する訳じゃない。ちゃんと対策は打つさ」

「……ならまぁ、信じるけど」

「ああ。そうしてくれると助かる。真澄さんも気を付けてくれ。深夜のコンビニ詣では構わないが、出くわした際にこのストーカーが何をしてくるか分かったもんじゃない。いわゆる推し変でもされたら、次はキミが対象だ」

 

 ゾッとするような状況を想像したのか、身震いして彼女は頷いた。こう言えば私が彼女を慮っているように聞こえるだろう。キチンと対策はするとも。自分が利益を得られるような形になるように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日は例の暴行事件の話し合いだった。その更に翌日。我がクラスには都合の良い事に生徒会役員がいる。例の件がどういう顛末を辿ったか、それを聞くのは容易だった。

 

「では、葛城君。Dクラスは完全無罪を主張したと?」

「ああそうだ。CもDも一歩も譲らず、議論は平行線。また審議会は開かれるがそこでも平行線のままの場合は現状のデータをもとに退学も視野に入れた措置を取るという事になった」

「流石に完全無罪は無理でしょう……。3人を殴打した。その事実は変わらない筈です。例え仕組まれた結末だったにしても、日本の司法では手を出したほうが負けでは?それに暴行だけと暴行+傷害では罪の重さだって違うでしょうに。妥協案を受け入れない理由はDクラス側に何かあるんですか?」

「須藤はバスケ部のレギュラーだ。それを外されるのは問題なのだろう」

「何か無罪を主張することができる証拠でも出たんですか?」

「同じDクラスの佐倉と言う生徒が偶然撮っていた写真に4人が殴り合っている現場が写されていた。もっとも、どちらが先に手を出したのかは分からなかったが」

 

 証拠が出たことも驚きだ。そう言えば、この前現場に行った際に隅っこに落ちていた髪の毛は、ネットで見た写真の髪の毛の色と近かった。ここで佐倉という名が出てくるとは。世間は意外と狭いのかもしれない。

 

「しかしそんな証拠があったとしても完全無罪など実質不可能ですがね……」

 

 では、そんな不利な条件でなぜDクラスは戦おうとしているのか。正攻法でDが勝つのは無理だろう。この事件がCの仕組んだものであるのは分かっている。とは言え、証拠もない。であれば平行線のままだ。彼らの勝利条件は須藤に処分が何も下されない事。逆に言えば妥協案であっても何らかの罰を受け入れれば敗北だ。だとするならば。 

 

「なるほど、彼らの勝利条件は処分が下されないことでしたか」

「どういう意味だ?」

「Dクラスにとっての勝利は審議会で無罪放免を勝ち取る事でもCクラスを論破することでもありません。無論そうなれば良いでしょうが、事はそう簡単には運ばない。彼らの勝利条件は処分が下されない事。であれば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「!」

「逆転の発想ですよ。存在しない事件はどんな名判事も裁けません」

「Cクラスに訴えを取り下げさせるという事か。だが、どうやって……」

「幾つか方法はありますが、まずはご自分で考えてみて下さい。まぁそう遠くないうちに結果が出るとは思いますけども」

 

 必死に頭を働かせている葛城。良い事だ。こうやって発想の幅を広げていってくれ。保守的であるのは悪い事ではない。ただ、攻撃的な思考をする者や搦手を突く者の思考回路を知らないというのはよろしくない。それらを理解して対策を行ったうえで、保守的な政策をとるべきだろう。成長しない限り、彼に勝利はない。さて、どこまで均衡を保てるか。夏が勝負なのは明らかだった。

 

 暴行罪は親告罪ではないはずなのだが、それでも訴えを取り下げれば無かったことに出来るという事でもある。日本の学校は隠蔽体質とはよく言われるが、そもそもこの学校はそのシステムからして隠蔽体質であったのだ。今更であるかもしれない。それにしたって異常としか言えないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

「買い物をして欲しい?」 

「うん、お願いできないかな?」

 

 その日の放課後、電気屋に件の人物の顔でも拝みに行こうと思っていた矢先に呼び出され、こうして話をする羽目になった。断る事も出来たが、話も聞かずに断るのも愚かしいと思い、呼び出しに応じたが……買い物の要求とは。確かに金はある。凡そDクラスの為のものを買えという事だろう。

 

 眼前には3人。一之瀬とDクラスの堀北、そして綾小路という男子生徒。彼とは会話はしていないが、図書館で会っているため面識はある。BとDが組んでいるのは知っていた。恐らくDクラス側は最初一之瀬にお願いをした。だが、一之瀬は考えた。私に金を使わせようと。Dが金欠なのは周知の事実だ。これに金を貸してもいつ返ってくるか分かったものではない。現状個人で一番金を持っている彼女の知り合いは私だったのだろう。

 

「Dクラスのために身銭を切れと?それで私に一体何の利益があると言うんですか」

「逆に言えば利益があれば協力してくれるという事でいいかしら?」

 

 食い気味に堀北は言う。

 

「……利益があるのなら、まぁ良いでしょう。Aクラスとしては今回の件に不介入の方針でしたが個人では別ですからね。それで、貴女は私に何を差し出せるんです」

「次の夏休み。ここでクラスポイントに関する何かがあるのはほぼ確定的なのは理解しているかしら」

「ええ」

「その時にDクラスはAクラスに対し不干渉を取る。これが今私たちの出せる最大限のものよ」

「攻撃をしないと?」

「そう考えて貰って構わないわ」

「当然ポイントは返して貰えるんでしょうね」

「時間はかかるだろうが必ず返す」

 

 手を貸して金が返って来ないなんてのは下手な冗談だ。不干渉云々はその上で手を貸す際のリターン。返済がリターンになりえる事などない。当然の事だからだ。言外にそう告げれば、綾小路が返す。

 

「貴方方Dクラスは4月に素行不良の末全ポイントを喪失し、あまつさえ今もこうしてクラス内の統率を執れずにアタフタしている。そんなクラスが我々の敵になると?」

「確かにDクラスの生徒は成績ではAに及ばない者が多数よ。けれど、それでも唯一無二の物を持っている者がいる。成績だけが実力ではない、そうでしょう?」

「――驚いた。貴女からそんな言葉が出てくるとは」

 

 図書館での彼女とは別人のような発言だ。この1カ月弱で彼女の心境に何か変化があったのかもしれない。

 

「Dクラスが完全無罪を主張しているのは知っています。しかしそれは事実上不可能。そこで一計を案じた末に貴方たちが私に購入を要求したいのは監視カメラですね?」

「!……見抜かれていたのね」

「初歩的な推理です。不可能とほぼ同義の無罪を勝ち取るために必要なのは審議会での勝利ではなく、事件そのものを消滅させてしまう事。そうすればいかな生徒会であろうとも手出しは出来ない。事件を無くすには訴えを取り下げさせる必要がある。そのためには監視カメラが実はあったという体で原告3名を誘いだし、その場で取り下げさせるのが手っ取り早いでしょう。あそこは暑い。思考力も低下するというものです。そこに軽く挑発も含めた恫喝をすれば脳内はパンク。彼らの方から折れるでしょう。目には目を、歯には歯を。そして嘘には嘘を。1つ1つ考えていけば辿り着く理論です」

 

 沈黙が場を支配する。この場で彼らが最も困る状況とは、私がこれをCクラスに告げ口することだろう。彼らはこんな事を企んでいた。注意されたし。ついでに教えてやったんだから金寄越せ。こう言う事も出来る。だが、それをする必要はないだろう。今回のCの標的がDだっただけで、今後もそうなるとは限らない。現状一番攻撃的な彼らの次の標的は我々かもしれないのだから。今一応僅かに存在しているBとの関係を閉ざすのは得策ではないだろう。

 

 内輪もめの真っ最中であるAクラスは他所の勢力と同盟するフェーズにいない。外交パイプを握れるチャンスだった。

 

「この案は誰が?」

「堀北だ」

 

 綾小路が答える。なるほど。生徒会長の血縁なのだろう。優秀な血筋のようだ。

 

「宜しい。分かりました。要求を受け入れましょう」

「そう……助かるわ」

「ただし、その為には条件があります」

「契約書、だよね?」

「その通り。中々に私の事を理解して下さっているようでありがたいですよ、一之瀬さん」

 

 契約内容はそこそこ値の張る監視カメラを私の代金で購入する。その代わり、Dクラスは夏休みに行われる特別試験において、私の許可なくAクラスを攻撃できない。なお、この試験が複数回の場合は1回目だけを対象とする。また、代金分のポイントは今年度中に満額返済する。こういう条件だ。契約不履行の場合は被った損害×2倍を払わないといけない。

 

「契約完了。しかし、これでAクラスへの道は一歩遠ざかりましたが、よろしいのですか、堀北さん?」

「良くはないわ。けれど、今は内を固めるのが先決。そう思っただけよ」

「内憂を排除し外患に挑む。安内攘外というヤツですか。常套手段ですね。手堅いですが良い選択です。Cクラスへの恫喝にはお三方に加え私も参加しましょう。そうすることで、より圧力を加えられるはずです。A、B、Dの3クラスが敵だと勝手に誤解してくれるでしょう。私は、名前も顔も割れてしまっているようですし」

「それは構わないけれど、契約内容は増やさないわよ」

「ええ、それで結構。これは私の興味本位ですから」

「今回は神室さんに話を入れなくていいの?」

「リスキーな側面の強い案件ですからね。今回はお休みです」

 

 一之瀬が何故聞いてきたのかはいまいちわからない。彼女がいてもいなくてもそう変わりないとは思うのだが。腹心とも言うべき存在がいないことに疑問を抱いたのかもしれない。  

 

「心配せずとも彼女がCクラスに漏らす……などという事はありませんので。契約不履行になってしまいます。実行はいつ?」

「明日にでもやるつもりよ」

「了解しました。例の場所におびき出す算段はついていますか?」

「櫛田がやってくれるそうだ」

「それならば心配なさそうですね。1度は彼らの目論見を成功させたあの場所ですが、今は我々にとって有利な場所となりました。兵法三十六計調虎離山――とでも言えばそれっぽいでしょうか?」

 

 堀北と綾小路は無言のまま。一之瀬は曖昧な笑みを浮かべた。




<報告>
 例の男の愛は加速中。いずれ法を超えるだろうと思われる

<要求>
 調査内容に進展は?

<返答>
 東亜電気の4代目取締役社長と高度育成高等学校建設当時の内閣総理大臣が同郷である。また、同校建設時のショッピングモール建設に際し、大規模な裏談合があった模様。その一社と思われる。現状東亜電気は大手家電生産メーカーのMATUGAMIの商品をメインで扱っているが、その会社は先日上海の企業が買収している。圧力をかけるならばこのルートが妥当であると具申する。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。