ようこそ孔明のいる教室へ   作:tanuu

21 / 89
荒れ狂う自由の海には波がつきものである

『トーマス・ジェファーソン』


3章・われに自由を与えよ、しからずんば死を与えよ
19.地獄の門


<遠き地の老人の独白>

 

 豪華に彩られた室内。高価な調度品が並べられている。その中の1つであった壺が銃声と共に割れた。発砲者、すなわち目の前の青年、我が孫が睨みつけてくる。さもありなん、この青年にとって、儂は憎むべき相手だ。憎しみの波動をひしひしと感じるが、政争に長く携わってきた身からすればそよ風だった。それが例え軍人のものであろうとも。

 

「どうした。最近のキレやすい若者とやらか?」

「黙れおいぼれ。貴様、立場が分かっているのだろうな」

「ああ、分かっているとも。お前の大事な大事な祖父だろう?」

「もう耄碌したのか。老人ホームの予約は済んだか? 諸葛玄龍」

「……お前こそ分かっておらんようだな。儂は貴様の恩人ぞ? 中央に反旗を翻し、4千人を率いて決起。突如として秦嶺山脈の太白山にある核弾頭発射基地を占拠。450発の核弾頭をカードに儂らを脅してきた反逆者であるお前たちがこうして独立部隊として振る舞えるのはひとえに儂の軍閥が匿ったからであった故と知れ」

「人をあんなところに放り込んでおいてよく言う。病床で死出の旅に出る娘に、我が子を頼むと言われ、ああ分かったと了承した祖父を見て安心していたら次の日に地獄へ連れていかれた私の気持ちが貴様に分かるか」

「だが、そうしなければお前は何者でもなかった。ただの諸葛孔明。それだけであっただろう? だが、今のお前は力も知恵もある。今は黙って儂に従え。なに、いずれ儂は死ぬ。そうなれば全てはお前の物だ。地位も名声も、な。その時は全てくれてやる」

「……」

「それまでは黙って駒でいるが良い。それで、日本行きは了承してくれるな?」

「……」

「お前の父親、鳳統元はまだ生きておる。四国の山奥の鳳家の屋敷でひっそりとな。そこに転がり込め。その後しばらく後にまた指令を与える」

「それまでは自由と?」

「ああ、儂からかわいい孫へのプレゼントだ。休暇を楽しむが良い」

「良いだろう。貴様の目的は知らんが、今は従ってやる」

「それでいい。行け」

「ああ。早く死に顔を拝ませてくれ」

 

 吐き捨てるように言うと孫は部屋を出ていった。去り際に儂の頭上の照明を撃ち抜くことも忘れずに。破片を避けながら、手元のファイルを手に取る。『高度育成高等学校詳細』と書かれた紙束。まだ謎に包まれた場所だ。どうやっても工作員が潜入できない。どれだけ優秀な人間を留学の形で送っても弾かれる。

 

 かくなる上はと利用することにしたのが孫だった。数年前から日本に送り、経歴を偽造する。入試の前にいきなり送るからダメなのだろう。身分の何もかも徹底的に隠し、鳳統元の子として送ればいい。優秀な人材を調べさせ、コネを作り、秘密のベールを暴き、奴の入学の翌年以降からどんどん送り込めるようにする。それが目的だ。日本は仮想敵国。工作は当然のこと。

 

 孔明は自分の軍閥の切り札だ。元々優秀だった娘の遺伝子と日本の天才の遺伝子のハイブリッド。どうにか上手く利用したかったが、それだけでは不安だったが、何かを察した娘が日本にそのまま居ついてしまい手を出せなかった。しかし、どういう訳か帰って来た。ならば良しとばかりに娘から奪い取り、育成機関に放り込んだ。地獄、と形容するのでさえ憚られる施設。しかし、そこで生き残ったのであれば儲けものと放り込んでみれば大当たり。賭けには勝ったと言えるだろう。

 

 その後の展開はやや予想外だったが……軍の全てとは戦えない。部下をそっくりそのまま迎え入れる事を条件で奴の配下ごと取り込めた。

 

「さて、どうでるかな。日本の国営学校ともあれば多少は骨のある奴もおろうて。少しは楽しめると良いがなぁ」

 

 カカカと笑う。ガラス片の舞う部屋で、隻眼の老人が哄笑していた。

 

 その後、予想外にも後で構わないと思っていた指令を与えるその前に義理の息子たる鳳統元が死に、孫が勝手に高度育成高等学校への願書を出していたこと、そして合格していたことには驚かされたが、さして問題は無かった。上京する奴を大阪の総領事館で捕まえ、命令を下した。奴の部下も乗り気。面白いものが見れると良いが、と思いつつ。

 

 笑いながら孫の名が書かれた書類を見る。もうすぐだ。もうすぐ、あの脂ぎった小太りの男を全人代のトップから引きずりおろせるとほくそ笑みながら。

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

「うみだーー」 

 

 一見するとまるで海を見たことに感動するような言葉だ。その声に全く感動の要素が籠っていない事を除けば。

 

「もう少し声に感動を含めたらどうなんだ」

「は?なんのリアクションも無いのが面白くないって言うから仕方なくやったのになにそれ」

「もう少しピュアな感情を期待していたんだよ。どうせ初めてなんだろう?海に来るのは」

「それは……そうだけど」

「まぁ何をどう頑張っても島で楽しいバカンスとはいかないだろう。今を精々楽しむことさ。ところで真澄さんは今日の夕食に何かご注文は?」

「洋食は飽きたから中華が良い」

「了解」

 

 夏休み。予告通り、我々は海上にて優雅な客船旅行を楽しんでいた。日本で唯一大型客船を所有している帝国郵船の船を貸し切っての旅行だ。レストランから劇場、映画館、図書館、ショップ、高級スパなど様々な施設がある。ラウンジやバー、カラオケなども完備。まさに至れり尽くせりの環境。この学校の行事である点を除けばおよそ最高級の環境と言えるだろう。

 

 個人でこの船に乗ろうと思えば、オフシーズンでも数十万は軽く消し飛んでいく。()()()()()()()予定によれば、まずは最初の1週間で島にあるペンションに宿泊、もう1週間は船内にて宿泊となっている。午前5時に叩き起こされ、バスに乗せられると東京湾に向かい、船が出た。割とゆっくりめに航海しており、既に1日が経過している。恐らく目的地は小笠原諸島周辺海域と思われる。

 

 そして……この船にぴったり寄り添うように航行するのは2隻の巡視船。海上保安庁のものだろう。その上船尾にはヘリコプターもある。かなり安全面に気を遣っているのがわかる。最近小笠原諸島沖にはよく中国船籍の船が出現するため、それの警戒も兼ねているのだろう。

 

 国有島を調べれば大体どの島かは察しが付く。小笠原諸島周辺海域と念のため九州沖・沖縄周辺の海域もしらみつぶしに調べた結果、幾つか候補が絞れた。その中で、この進路と航路日程だと向かう島は恐らく1つに絞れる。春鳥島と言うらしいが、そんなものはどうでも良い。発見方法は衛星写真を見ればいい。普通の衛星写真ではなく日本ではない国の人工衛星によって撮影されたものだ。植栽が明らかに人工的なものが幾つもある島を見つければいいのだ。例えば、一般的に育てられているトウモロコシは畑状に群生しない。詰めが甘い。地理はある程度分かっているが、それでも一応現物は見ておきたい。何を要求されるか分からないからだ。

 

 無人島で出来る事なんて限られているので、なんとなく想像はつくが取り敢えずそれは明日に取っておくとしよう。

 

 

 

 

 普段は節約生活をしている身でも、今回ばかりは好きな物を食べれる。何を食べても請求をされることが無い。本来Aクラスに節約生活をする必要は少ない。勿論、それ相応の豪遊をすることも可能だ。しかし、いつそのポイントが自分の身を守ってくれるかがわからない以上、むやみやたらに浪費は出来ない。その結果、Dクラスのような節約をしている。結局、自炊の方が安い事も多いし、食材は2人分まとめて買ってしまった方が効率がいい。

 

 私は7月のテストの際も、今回は全く同じ問題ではないにしても参考にはなるだろうと過去問・解答解説・類似問題集を配布している。そして同時に真澄さんとの楽しいマンツーマン授業も継続していた。これはテストの時だけではないのだが。その時に食事も済ませてしまった方が効率的という事で普段から食べている。

 

「あまり食べ過ぎると太るぞ……イタッ!」

 

 通常なら口にしないであろう高級中華料理店の肉まんをバクバク――この場合はもっきゅもっきゅが正しい擬音語かもしれないが――しながら食べている彼女にそう指摘すれば思いっきり足を蹴られた。脛に当たって痛い。

 

「だが実際問題、食べ過ぎて動けないなんて事態にはなるなよ。ペンションなんて無いだろうからな」

「分かってるわよ……だからちゃんとセーブしてるから」

「……その量で?」

 

 積み重なった皿が量を物語っている。確かに中華料理はドンと大きな皿で出てくる訳ではない。にしたってであるが。

 

「アンタこそ、結構よく食べるのね。普段全然食べないし、あんまり食に興味ないのかと思ってたけど」

「そんな事は無い。私だって美食は嫌いじゃないさ……さて、招かれざる客が来たようだ。隠れているつもりかもしれないが、早急に止める事を勧めよう」

 

 カツカツと靴音が鳴り、個室の扉が開けられる。そこにいたのは茶髪のロン毛とガタイの良い黒人。そして先日会った石崎。目が合うと石崎は露骨に目を逸らした。

 

「女連れで食事とは良いご身分だな」

「そんなつもりは無いのですけれどね。わざわざそれだけのことを言いに来たのですか、龍園クン」

「一々癪に障るヤツだ。だがまぁ今は良い。お前が何を企んでいるのかは知らねぇが、お前が粉かけてるDとBは俺が潰す。お前はその涼しそうな顔のまま、大人しく待ってろ」

「近場から潰す。遠交近攻ですね。尤も、全方位敵対外交なのは頂けませんが、その2クラスに関してはどうぞお好きに。それは私の関知するところではありませんから。それよりも、あまり派手に動きすぎるとウチのクラスの面倒な人間が動き始めてしまうかもしれませんよ」

「坂柳か?アイツも最後の方に潰す。だが、俺の最終目標はアイツじゃない」

「へぇ、では、葛城君ですか」

「ククク……!お前、分かってて言ってるな?あんなのは問題外だ。ルールを守ってるだけのいい子ちゃんには俺は倒せない。お前みたいな何考えてるのか分からない癖に実力だけはある奴が一番厄介だ」

「それはそれは随分と高く買われましたね。光栄な事です」

 

 宣戦布告と捉えても良いだろう。もっとも、直接的なモノではなくいずれはお前も潰すという未来における宣戦布告だろうが。

 

「いつか吠え面かかせてやるから楽しみに待ってろ」

「そんな日が来ない方が私は嬉しいのですけれどね。ほら、私は平和主義者ですから」

「フン、抜かしやがれ。おい、行くぞ」

「は、はい……」

 

 言いたいことだけ言って去って行く龍園の後を金魚の糞のように2人が付いて行く。一度顔を拝んでおこうの精神だったのかもしれない。いずれにしても、こうして接点が出来た。もっとも、これは既定路線。いずれは遅かれ早かれこのような形になる未来だった。そもそも、DとCの争いに介入した時点で分かり切っていたことだったが。ともあれ、今回の彼の狙いは引き続きDとBだという事が分かった。ブラフの可能性はあるが、現時点で敵対する理由があるのはこの2クラスだし、現実的に考えても追い越す予定のクラスと追い抜かれる可能性のあるクラスを相手にするのは当然だ。

 

 それに、Bは一之瀬帆波の穏健派が中心で、Dは粒はいるようだが如何せんその個性派メンバーを統括できるカリスマがいない。生徒のアベレージも低いDが1番狙いやすいのも納得だ。

 

「アイツ、何しに来たわけ」

「宣戦布告だろう。全方位敵対外交で行くつもりかもしれないな。実に暴力的思考だ。しかし、悪い事ではない。自軍戦力が強大ならば、踏みつぶすのも悪くは無いだろう」

「こっちからは何かする?」

「いや、しばらくは様子見で行こう。DとBを生贄に、今回の試験であの男がとる手段から人間性や方針を割り出せるはずだ」

「Dをまず狙ってるってわざわざ宣言しておいてブラフの可能性は?」

「あるにはある。とは言え、第一目標という事は無いはずだ。信用は出来ないがな」

「ふ~ん、確かに絶対信用しちゃいけないタイプって感じはしたけど。分かりやすく不審なのはありがたいけどね。アンタみたいに一見善人風な奴が1番怖いってことをここに来てよく思い知らされたから」

「食べるのか話すのかどっちかにした方が良いぞ」

 

 先ほど龍園と話してる間も全く空気を読まずに食事していた。ある意味では大物なのかもしれない。若干龍園も気にしないようにしていた節がある。気を取られて余計な事をしないようにしたのだろう。

 

「まぁ今回の旅行で唯一の救いというか、ラッキーなことがあるとすれば面倒なチビがいない事だな」

「アンタ、坂柳のこと実は嫌いでしょ」

「嫌いではない。好きではないだけだ」

「同義語じゃないの、それ……」

「さぁな。…………やっぱりお前太るぞ、それ以上食べると……イタッ!」

 

 もう一度足に鋭い痛みが走った。

 

 

 

 

 

『生徒の皆さま、おはようございます。間もなく、島が見えて参ります。お時間がありましたら、是非デッキにお集まり下さい。間もなく島が見えて参ります。しばらくの間、非常に意義ある景色をご覧になって頂けるでしょう』

 

 そんな奇妙なアナウンスと共に目を覚ます。デッキに上がれば水平線の彼方に島が見える。私物の大航海時代さながらな遠眼鏡で確認すれば、前に衛星で確認した島と同じであることがわかる。

 

「見よ、あれが新天地だ、とでも言うべきか」

「なにそれ、コロンブスの真似?」

「まぁそんなところだ」

 

 大きなあくびをかみ殺しながら、真澄さんは目を擦りつつやって来た。髪はまだ結んでいないようで、珍しくストレート。あれだけ昨日食べたのに全く体型が変わっていないのはマジックなんだろうか。

 

 どんどん人が外に出てくる。デッキの上は徐々に混みあってきた。そうすると場所の取り合いなんかも起きてくる。案の定船首でもめ事が起こっている声がする。勿論他クラスのことならば放置しておくが、よりにもよって自クラスともなれば放置という訳にもいかないだろう。

 

「テメェ、何しやがる!」

 

 須藤の怒声が聞こえた。肩を突き飛ばされた哀れな生徒は綾小路。つくづく災難に巻き込まれる体質のようだ。

 

「ちょっと行ってくる」

「はいはい。私は部屋に戻ってるから」

 

 もう一度大きなあくびをして彼女は戻っていった。居丈高に威張る同級生を咎めに行かねばならない。バカンス気分で浮かれているのか知らないが、顔は完全に時代劇の悪役だ。

 

「お前らもこの学校の仕組みは理解してるだろ。ここは実力至上主義の学校だ。Dクラスに人権なんてない。不良品は不良品らしく大人しくしていろ。こっちはAクラス様なんだよ!」

「何だと!」

 

 無駄に敵を作る事に意味など無いということに気付かず、しかも全方位敵対外交を取っているわけでもないにも拘らず敵を増やす。現にDだけでなくCやBの生徒も顔をしかめている者が多い。最悪Aクラス相手に包囲網が形成されかねない。止めるのが最善だと思えた。

 

「そこまでにしなさい」

「え、あ、こ、孔明先生……」

「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。日本国憲法第11条の条文です。人権とは世界の民衆が血を流しながら獲得してきた権利です。軽々しく扱うのはやめる事を強く推奨します。そして、無駄に敵を作り、憎悪をかき集める事は賢い選択とは言えませんね。他人を貶めることで自己の優位性を示すのではなく、自己研鑽に努める事です。驕れる者は久しからず、ただ春の夜の夢の如しと言うでしょう?」

「す、すみませんでした……」

「謝る相手が違いますね」

「くっ……わ、悪かった」

 

 それだけ言うと彼は走り去ってしまう。しょうもない話だ。特権に胡坐をかき、他人を見下す。そういう人間は革命が起きた時にいの一番に復讐対象となってしまうだろう。自分達がいつまでも上にいられると思っている愚か者に未来は無い。少なくとも、Dクラスにだって上に上がる機会もある。それを成せる能力のある者もいるだろう。馬鹿にして知ろうとしないのは敗北への第一歩だ。それはそれとして、礼節を重んじない輩は嫌いだ。

 

「Dクラスの皆さま、級友が誠に申し訳ございませんでした。彼に代わって改めて謝罪させて頂きます。彼にはしっかり言って聞かせますので、どうか寛大なお許しを願います」

「お、おう……」

 

 須藤は思いのほか腰の低い私に戸惑っているようだった。彼の中のAクラスの印象が少し良くなれば御の字である。

 

「綾小路君もお怪我はありませんか?」

「ああ、大丈夫だ」

「場をお騒がせしてしまいました。私も戻ると致します。どうぞ、引き続き観覧をお楽しみください」

 

 頭を下げてその場を後にする。後方からはAクラスにも良い奴はいるのかもしれないみたいな話が聞こえてくる。仲裁は成功と言っていいだろう。島の把握はもう済んだ。どこに何があるかは衛星写真と合わせて完全に把握できている。後はフィールドワークが出来れば完璧だろう。

 

『これより、当学校が所有する孤島に上陸致します。生徒の皆様は三十分後、全員ジャージに着替え、所定の鞄と荷物をしっかりと確認した後、携帯を忘れず持ちデッキに集合して下さい。またしばらく御手洗に行けない可能性がありますので、きちんと済ませておいて下さい。繰り返します──』

 

 アナウンスが響く。どうやら常ならざる戦いの幕はもうすぐ開けようとしているらしい。天国のような生活をさせておいてからの地獄行きとは運営陣もなかなかに性格が悪い。どう動くかで今後に大きな影響を与える事は分かり切っている。取り敢えず、普段の方針を遵守する方針で行くことにはなっている。なるべく中立的に。それが出来れば良いのだが、と小さく嘆息した。

 

 

 

 

 

 船を降り、整列させられた状態で待機を命じられている。日差しは強く照り付けてくる。先生もジャージで立っており、なおかつ職員がバタバタと走り回って何かを準備しているようだ。学生証端末は没収され、厳しい身体検査が行われる。凄まじく厳戒だ。

 

 前に立った我らが担任、真嶋先生がマイクを持って立つ。

 

「今日、この場所に無事に着けたことをまずは嬉しく思う。しかしその一方で、一名ではあるが病欠で居ないことは残念でならない」

 

 その病欠は我らのクラスの坂柳だ。どうもドクターストップが出てしまったらしい。そして、話している先生の口調や周りの教職員の雰囲気から敏い生徒は異常を察し始めていた。小さく広がる動揺の波紋を打ち切るように地獄の門は開かれる。

 

「それではこれより──本年度最初の特別試験を行う」

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

高度育成高等学校第1回特別試験報告

 

 

 

<内容>

 

無人島にて1週間のサバイバル生活を送る。テーマは自由。文字通りであり、何をしようと基本は咎められない。遊ぶも良し、探索するも良し、寝て過ごすも良し。期間は開始日の正午から1週間後の正午まで。

 

 

<所持品>

 

筆記用具、着替えなどの衣服。並びに処方箋を診断されているものは医薬品。

 

 

<支給品>

 

・腕時計……外した場合はペナルティ。位置情報の把握や生命に危険があった場合の対応用。

・8人用テント……2つ。壊れた場合は後述の特別ポイントで購入する必要あり。

・懐中電灯……2つ。電池は無制限。

・マッチ……1箱。無くなった場合は購入。

・歯ブラシ……1人当たり1つ

・日焼け止め……無限。

・生理用品……女性限定かつ無限

・試験マニュアル兼カタログ……1冊

・簡易トイレセット……1クラス当たり1セット。必要なビニール袋は無制限。

 

 

<ルール>

 

・常識の範囲内での自由行動が可能

・A〜Dクラス、全てのクラスに特別ポイントを300支給する。このポイントを消費することで、マニュアル記載の道具類や食材を購入することが出来る。

・未使用の特別ポイントはそのまま9月以降のクラスポイントに加算される。

・各クラスはベースキャンプを定め、そこにて生活する。担任教師も近くにてテントを張る。

・毎日午前8時、午後8時に点呼を行う。

・海に近付く際は必ず報告してから行くこと。また、非常時は海上保安庁職員の指示に速やかに従うこと。

 

 

<ルール・マイナス面>

 

・体調不良並びに重傷者はリタイア可能。その場合1人につきマイナス30ポイント。

・リタイアはベースキャンプ(試験開始時、並びに終了時の集合場所。大きなテントあり)に行く。

・環境汚染はマイナス20ポイント。

・点呼時不在の場合は1人につきマイナス5ポイント。

・他クラスへの暴力、略奪、器物破損などを行った場合は失格。行為者のプライベートポイントを没収。

 

 

<追加要素Ⅰ>

 

・リーダーを必ず選出する。

・島内にある『スポット』を占有することができる。占有した場合、他クラスの使用を禁じる権利がある。

・スポット占有時間は8時間。更新しない場合、期限が切れ、権利は消失する。

・スポット1回占有につき、1ポイントを加算。ただし、試験中は使用不可。

・スポット占有には専用の『キーカード』を必要とし、前述のリーダーのみが使用可能。

・他クラスのスポットを許可なく使用した場合、マイナス50ポイントのペナルティ。

・スポット占有上限は無し。

・リーダーは正当な理由なくして変更不可能。

 

 

<追加要素Ⅱ>

 

 

・最終日の朝の点呼時に他クラスのリーダーの氏名を当てる権利を付与。

・正解の場合、1クラスにつき50ポイント。言い当てられた場合はスポット占有によるポイントを喪失し、50ポイントのペナルティ。

・言い当てる事に失敗した場合はこちらも50ポイント。

・権利の行使は任意かつリーダーのみ可能。

 

 

<追加要素Ⅲ>

 

 

・■■■■■■■■■■■■■■■■■。■■■■■■■■■、■■■■■■■■■。

 

 

 

<所感>

 

本国の場合、南沙諸島で実行可能と愚考する。また、普段以上に死角が多く、安全面にやや疑問を感じざるを得ない。肝心なところで性善説頼りな辺りが犯罪が身近に存在していない日本らしいと言えるかもしれない。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。