ようこそ孔明のいる教室へ   作:tanuu

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人生にはふたつの選択肢がある。その状況を受け入れるのか、状況を変えるための責任を受け入れるのか。

『デニス・ウェイトリー』


65.積土成山

 試験は特に問題なく最終日を迎えた。坂柳を筆頭に色々と動いているようだが、それはそれとしてグループの方は平穏そのもの。全員真面目に諸活動に取り組み、ちゃんと成果を出している。Dクラスが主体になったグループの方も問題ないようだし、このまま上手くいけばちゃんと得点が得られるだろう。試験内容から考えても、体力勝負なのは駅伝だけ。それ以外は日ごろの努力がモノを言う部分だ。そう考えれば、我々にとってすれば割と容易な試験である。

 

 36ある小グループの結果が今日明かされる。発表は午後5時頃と言う事なので、学校へ戻るころにはもう夜だ。学校め、どうせなら明日の朝帰れよと思うのは私だけだろうか。なんでわざわざ深夜の高速道路を走るのか。意味が分からない。

 

 しかも、作り置きをしていないので今日の夜ご飯は帰ってから作らないといけない。買ってもいいかと思ったが、真澄さんが嫌だと言うので作ることにした。私の作ったものがいい、と言ってくれるのなら多少のわがままくらいは全然気にならないし苦にもならない。彼女も頑張っていたのだし、それ相応の報酬はあってもいいだろう。

 

「師匠、よろしくお願いしまっす!」

「はい。今日が一週間の成果を見せる日であり、同時にあなたが生まれ変わったことをアピールする日でもあります。気張っていきましょう。特に、筆記試験とスピーチは結果が出やすい場所です。ここを重点的に。よろしいでしょうか?」

「うっす!」

「よろしい。気合十分のようですね。あなたは行動力がありますし、あまり物怖じしません。それを今こそ活かすとき。自身の持っている武器を最大限に使っていきましょう」

 

 山内は気合が入っているようだ。私の指導も随分と効いていると思う。元々真っ白な画用紙みたいな人物だったので、上に色を描くのはそこまで難しい話でもない。いろんなものに影響を受けやすいタイプなので、ちゃんとしたモノに影響を受ければいい方向に伸びていけるポテンシャルはあると思う。

 

 肝心の試験に関してだが、1年は座禅、筆記試験、駅伝、スピーチの順番。朝食を済ませればすぐに試験だ。朝の掃除は今日は免除。時間の都合だと思われる。

 

「ではこれより座禅の試験を開始する。採点基準は2つ。道場に入ってからの作法・動作と、座禅中の乱れの有無だ。終了後は次の試験の指示があるまで各自教室で待機するように。名前の呼ばれた順に整列し試験を始める。Aクラス、葛城康平。Dクラス、石崎大地」

 

 教師側からの名前はいつもとは違う。まぁこれは予想できた範疇だ。当然共有しているので、ウチのグループは動じる事は無い。

 

 筆記試験も問題なくこなしていた。採点はすぐに戻ってきたが、山内も85点丁度の結果となった。元々範囲がすごく狭い上に、対策も容易なテストではあった。とはいえ、これまでの定期テストの結果などを見ていると、その暗澹たる成績からよくぞここまで点数を取ったと言える。何より、彼自身が一番驚いていた。

 

 これは彼にとって大きな自信となるはずだ。達成感と目標をクリアできたという感覚は自己肯定感を高め、出来るんだというメンタルを形成してくれる。どうせ出来ないと思ってやるよりも、出来ると思ってやった方が脳はよい働きをしてくれる。

 

「よくやったな、山内」

「マジか、俺が85点……?」

 

 葛城が山内を労っている。こういう時に誉め言葉であったり労いを言えるのが葛城の良いところだ。彼は他人の良いところを見ることが出来る。己に厳しく、質実剛健に振舞う姿は私とは違ったリーダー像としてAクラスに良い影響を与えている。今回の試験でも責任者兼リーダーは葛城だった。私は山内の教育担当などをしていたにすぎない。全体像の把握はしていたが、直接的な指揮は彼に一任していた。それくらいは任せられる人材になっている。全体的に生徒が成長しているのを確認できた。

 

「おめでとうございます。今回の試験は最初の定期テストのように過去問があるわけでもありません。間違いなく、あなた自身の実力ですよ」

「俺、やればできるんだな……!」

「えぇ、その通り。ですが、これはまだ序章にすぎません。ここでさぼってしまってはこれまでと同じ。自分で継続的に努力してこそ、本当の力となっていくのです」

「試験終わっても、聞きに行ってもいいんすか?」

「構いませんよ。特別試験云々でないのなら、お答えします。あぁ、真澄さんと一緒の時は、ごめんなさい」

「流石にそれは俺も分かってるぜ」

「おや、それは失礼」

 

 こうすることで彼が話しかけやすくなる。会話の機会が増えれば、Bクラスの内情なども引き出せるだろう。佐倉からの情報と照らし合わせて、内情の把握に役立つ。それに、やる気がある生徒は歓迎だ。自分の向上のために一番手っ取り早い手段を使うのは効率的な勉強という面で見れば最適。その手段として私を使うのも構わないと思っている。もとより、教師というのはそういう存在でもある。

 

 ともあれ、筆記試験で彼が良い成績を収めてくれた。時任を始めとしたほかのメンツも同様。であれば、私も頑張らなくてはいけない。勉強系が得意な我がクラスには難関であるマラソンでは最終区間、つまりはアンカーを私が担当することになった。

 

 走行距離は1.2キロ。これを15人で繋いで18キロを合計で走る計算だ。体育祭に引き続き、2回目である。そして前回の相手は南雲であった訳だが、今回はもっと手強そうな相手達がいる。

 

「おっしゃぶっ潰してやるぜ!」

 

 意気揚々と叫んでいるのは須藤。その隣で優雅に佇んでいるのは高円寺だった。

 

「また会ったねぇ、ミスター」

「ええ。お久しぶり……では無いですがこんにちは。高円寺君も最終区間ですか」

「私としてはどこでも良かったのだがねぇ。警戒されているようで、最後に走ってくれと頼まれたのさ。断る道理もない」

 

 自分が退学にならないようにするための保険、と言ったところか。彼に仲間意識を期待する方が無駄だ。であれば、そう考えるのが自然だろう。まぁ彼のチームの事情など知らないが。

 

「君に言われた通り、最低限の義務は果たすつもりだったが……やや気が変わったよ」

「と、言いますと?」

「少しばかり、勝負といかないかい? ミスター諸葛」

「ふむ。しかし、よーいドンでスタートとはいきませんよ。どちらかが合わせればともかく、もしこちらのグループの方が早かったとしても、私にはそれをするメリットも無い」

「それはその通りだ。しかし、君にもプライドはあるんじゃないのかい?」

「さて、どうでしょうか。まぁ、部下が誇れるような上司でありたいとは思っていますけれどね」

「ならば受けるべきだねぇ。君の隣にいる、フィアンセのためにも」

「……なるほど。ま、筋は通っていますか。よろしい。しかし、待ちませんからね」

「それにはこちらも同じ言葉を返すとも」

 

 真澄さんのため、か。高円寺が実力者であるのは有名だ。体力的にも優秀なのは皆知っている。なので、彼を倒せれば確かに私の名声は上がるだろう。果たしてそれが彼女のためになるのか、彼女がそれで喜ぶのか、全く分からないがこれが高円寺なりの理由付けなのかもしれないと思った。

 

 彼にノブレス・オブリージュをするべきと言ったが、彼の中にも色々感情はあるのだろう。自身の軽んじている存在に力を貸すのは彼の美学に反していたのかもしれない。美学と義務を両立させるための方便が私との勝負なのだとしたら、その義務を教えた私には付き合うべき理由が発生する。ならば付き合うのもやぶさかではない。

 

 それに、負ける気など毛頭ないのだから。

 

 先頭はCクラス中心のグループ。あそこは運動できる生徒が多い。次々と続き、高円寺と同じグループの綾小路は3番目だった。彼は手を抜いたのだろう。それとも私がアンカーであることを見抜き、高円寺と勝負させるためにわざと遅く走ったのか。だとすれば大した推理力であると言わざるを得ない。その後ろは団子であり、5番手でウチのグループはバトンを回してきた。高円寺との差は僅か。

 

「これは何とも運がいい。運命は私と君の勝負を望んでいるようだ」

「そんなものがあるのかは知りませんが、無駄口叩いていると置いていきますよ」

「それは良くないねぇ。では、少しばかり本気を出すとしようか」

 

 高円寺は軽やかにスピードを上げる。なるほど、大した加速だ。陸上部にいれば今頃全国大会で入賞、或いは優勝かもしれない。オリンピックも狙えるだろう。だが、そう簡単に置き去りにされては困る。私も勝ちに行ってることには変わりないし、葛城始め多くの信頼を得てここにいる。

 

 手を抜く事など、出来るはずもない。元々短距離より長距離の方が得意なんだ。若い頃神速と謳われていたと聞く母譲りの足、母国の基地も日本の父方の実家も山奥にある。山岳地帯を走るのは、私の得意技だった。

 

「ほぅ!」

「感嘆しているところ悪いですが、お先に失礼します」

 

 こちらも平地と同じくスピードを上げる。同じように高円寺も速度を上げた。まだどちらも本気ではない。彼には余裕が見えるし、私だってまだまだだ。

 

「やはり、私の目に狂いはない!」

「冬山は得意でして。八甲田山であろうとも完走してみせますよ」

「フハハハハ! であれば私はエベレストを走るとしよう!」 

 

 軽口を叩いた後、彼は無言だった。山間部の1200メートルを短距離走のスパンで駆け抜ける。言葉を交わす余裕はない。こちらも本気だし、向こうも本気だ。流石に苦しくなってくる。こんなにも全速力で走ったのはいつ以来か。過酷な訓練を思い出す。

 

 額に汗が滲んできた。高円寺に目をやれば、大粒の汗を流しながら走っている。それでもまだ口元には……いや笑みが浮かんでいると思ったが口元も真一文字に結ばれ、真剣そのものだ。チラリと目が合う。何を言うでもなく、もう一段加速した。

 

 余人からすれば強者の戯れなのかもしれない。だが同時に我々からすれば死闘でもあった。この空気を分かるのは、本気で戦っている者だけ。世界にはまだまだこんな存在がいたとは。私はまだ、井の中の蛙であったのか。そう思い知らされるほど、彼は速い。

 

 経験の差だけが私が上回る事かもしれない。しかしそれは絶対的なものだ。特にこうして実力が拮抗している時は。地獄なら何度も見てきた。凍死しそうになったことさえある。それに比べれば、これくらい大した事は無い。少しだけ私の身体が前に出る。高円寺も負けじと食らいつく。

 

 ゴールが見えてきた。教師が何やら目をひん剥いてこちらを見ている。高円寺の本気など、早々見れるものでは無いのだから当然ではあるか。一瞬だけ時が止まったような感覚があり、そのままゴールテープを切った。横に置いてあるカメラがコマ送りでゴールシーンをモニターに映している。私も高円寺も荒い息をしながらそれを眺めた。

 

 ほんの僅かな差。それこそコンマ単位。ハナ差とも言うべき非常に小さい差で、私の勝利であった。

 

「ブラボー!」

 

 高円寺はそう言いながら口笛を鳴らす。

 

「どうもありがとうございました」

「こちらこそ、感謝をするべきだろうねぇ。君のおかげで、この退屈な学校でも非常にエクセレントかつエキサイティングなレースが出来た。次は私が勝つだろうけれど、またやろうでは無いかね?」

「機会がありましたら、喜んで」

 

 差し出された手に応じ、握手を交わす。久方ぶりにではあるが、全力で走った。鈍っていた感覚が一気に蘇ってくるのを感じる。これは良い効果だ。下手なトレーニングよりよっぽど感覚を取り戻すのに使える。卒業前に高円寺と勝負すれば昔の感覚をフルに使えるかもしれない。個人的にも闘志が燃やせた良い勝負だった。

 

「勝ちはひとまず君に預けるとするよ、ミスター諸葛」

「返すつもりはありませんが、またいつでもどうぞ、高円寺君」

「そうさせてもらうさ。ハハハ!」

 

 高円寺は優雅に去って行く。激走した後はスピーチだ。他の生徒は死んでいるだろうなぁと予感しつつ、教師の指示に従った。

 

 結果的に、Aクラスは問題なかった。体力的にも辛かったはずだが、それでも根性はある。しっかり良い喋りが出来ていた。私も問題なく話せたと思っている。そもそも司令官の仕事の1つに演説が存在している。

 

 そんな馬鹿なと思われそうだが、真実だ。士気を上げるにはこれが手っ取り早い。演説が上手いと言うのは、司令官には重要なスキルだ。かつての乱世で舌戦が行われていたのと同じように、今でも喋りは重大な武器なのである。私は司令官を務める身なので、当然のように出来ている。……うちの組織はブラックなので指揮官も平然と前線に駆り出されるけれど。

 

 山内を筆頭に、他のメンバーも問題なく話が出来ている。後は女子の結果を見るだけだった。

 

 

 

 

 

 

 こうして1日がかりの長い試験を終える。特別試験終了後、全校生徒の大半が疲労で満身創痍になる中、男女共に体育館へと集められた。いざというときはポイントで退学を回避できるよう、初日に回収された携帯は既に返却されている。平均点勝負ならかなりいい線言っていると思う。1位も狙えるのではないだろうか。少なくとも4位以下ではないと確信している。

 

 群衆の中で真澄さんを発見した。グループの女子たちに囲まれている。色々話しかけられていた。何だかんだで責任者としてしっかり任務を果たし、いい結果を残せたようである。坂柳もいい顔で座っていた。彼女は彼女で色々と動き成果を出せたので満足なのだろう。真澄さんに声をかけるか迷ったが、結果発表の後でも良いだろうと思いなおした。折角作った人間関係でのコミュニケーションを私が邪魔するのも良くない。

 

 ほかに特筆するべきこととしては、真鍋グループが会話もなく無言で立っている。あそこはいつも喧しいイメージだったが、坂柳の戦略がドはまりしたようだ。山下に声をかけたと言っていたが、そのあと藪や諸藤にも声をかけ、相互に分裂させたようだ。全員が全員反目しあっている。仲良しグループの面影は既に無い。

 

「林間学校での8日間、生徒の皆さんお疲れ様でした。試験内容は違えど、数年に1度開催される特別試験。前回行われた特別試験よりも全体的に評価の高い年となりました。ひとえに皆さんのチームワークが良かったことが要因でしょう」

 

 貴方は誰だ、と言うべき見知らぬ初老の男性が壇上で話を始める。いや、ホントに誰だ。葛城や他の生徒も知らないと言っている。この林間学校の責任者なのはわかったが誰なのだろう……。この施設の管理者かもしれない。

 

「それでは、これより男子グループの総合1位を発表しますが、ここでは3年生の責任者のみを読み上げます。その大グループに属する1年生、2年生、3年生の生徒には、後日報酬としてポイントが配布されることになります」

 

 後日とはいつなのか分からないが、これまでの傾向的に1週間以内なのは間違いないだろう。

 

「ではまず総合1位――3年Cクラス、二宮倉之助くんが責任者を務めるグループが1位です」

 

 このグループはウチの大グループ、つまりは堀北学の所属するグループだった。Cクラスが責任者なのは3年生同士の交渉の結果であると聞いている。CクラスはAクラスに協力する代わりに責任者を譲ってもらい報酬を倍にする方針を取ったらしい。リスキーではあるが、Bクラスを倒したいCクラスと、Bクラスの台頭を防ぎたいAクラスにしてみれば妥当な戦略だ。

 

 葛城や他の生徒も安堵している。我々が1位なのだから当然だ。特に葛城は緊張していたのだろう、ほっとした顔をしている。

 

「やったな諸葛」

「ええ。葛城君もお疲れさまでした」

「良い経験になった。指揮を譲ってくれたことに改めて感謝したい」

「いえいえ、こちらこそ、面倒なことを押し付けてしまって……。あなたの高いリーダーシップを見ることが出来ました」

「いや、俺もまだ足りないところを自覚させられた。俺は山内を矯正することだけを考えていたが、お前は山内を教育し、自分で努力するように指導した。それは俺にはない視点だった。人との向き合い方、人物の使い方。より学ばねばならないと思えている」

 

 彼は大分向上心がある。結果が良くとも、それだけで納得はしないというのは非常に頼もしい考え方だった。終わり良ければ総て良しとは言うが、それでも反省点が皆無というのはあり得ない。自身と向き合い続けるひたむきさは、彼の美徳だろう。

 

 さて、これで男子の結果は全て分かった。男子だけの結果は以下の通りである。

 

 

<男子> 小数点四捨五入、責任者クラスは報酬倍

 

1位:①A×12、B×1、C×1、D×1 責任者……葛城

A……cp336 pp各9万

B……cp14 pp各4万5000

C……cp14 pp各4万5000

D……cp14 pp各4万5000

 

 

2位:②D×12、A×1、B×1、C×1 責任者……神崎

A……cp9 pp各2万2500

B……cp9 pp各2万2500

C……cp9 pp各2万2500

D……cp216 pp各4万5000

 

 

3位:③A×7、D×6、B×1、C×1 責任者……真田

 

A……cp70 pp各5万4000

B……cp5 pp各1万3500

C……cp5 pp各1万3500

D……cp30、pp各1万3500

 

 

4位:④B×7、C×7、A×1 責任者……金田

 

A……cp-2 pp各-5000

B……cp-14 pp各-5000

C……cp-14 pp各-5000

 

 

5位:⑥B×5、C×5 責任者……幸村

 

B……cp-15 pp各-1万

C……cp-15 pp各-1万

 

 

6位:⑤B×5、C×5 責任者……平田

 

B……cp-25 pp各-2万

C……cp-25 pp各-2万

 

 

 

男子cp変動

 

A……+413

B……-26

C……-26

D……+260

 

 

 である。結果は上々。Aクラスは問題なく上位にいる。Dクラスのcpは全部こっちに回ってくるので、女子が大損害を出していない限りは全く問題なく金策は成功したといえるだろう。ここからBクラスやCクラスがどうするのかは知らないが、少なくともマネーゲームでは圧倒的に不利になるのは間違いない。

 

「それでは次に……女子の結果発表をしたいと思います。1位のグループは、3年Cクラス、綾瀬夏さんの所属するグループです」

 

 女子の中から歓声が上がる。あれは……一之瀬の率いるグループだ。女子の結果は以下の通りである。

 

 

<女子> 小数点四捨五入、責任者クラスは報酬倍

 

1位:①D×12、A×1、B×1、C×1 責任者……一之瀬

 

A……cp14 pp各4万5000

B……cp14 pp各4万5000

C……cp14 pp各4万5000

D……cp336 pp各9万

 

 

2位:②A×12、B×1、C×1、D×1 責任者……坂柳(代理神室)

 

A……ccp216 pp各4万5000

B……cp9 pp各2万2500

C……cp9 pp各2万2500

D……cp9 pp各2万2500

 

 

3位:⑤B×6、A×1、C×7、D×1 責任者……堀北

 

A……cp5 pp各1万3500

B……cp60 pp各2万7000

C……cp35 pp各1万3500

D……cp5 pp各1万3500

 

 

4位:④B×9、C×5 責任者……軽井沢

 

B……cp-18 pp各-5000

C……cp-10 pp各-5000

 

 

5位:③A×7、D×5、B×1、C×1 責任者……白石

 

A……cp-21 pp各-1万

B……cp-3 pp各-1万

C……cp-3 pp各-1万

D……cp-15 pp各-1万

 

 

6位:➁B×3、C×5 責任者……椎名

 

B……cp-15、pp各-2万

C……cp-25、pp各-2万

 

 

女子cp変動

 

A……+214

B……+47

C……+20

D……+335

 

 女子は特に一之瀬のグループが大健闘してくれた。葛城率いるグループと同一の結果を出していることから、自クラス中心とはいえ一之瀬の高い指導力が伺える。次点の坂柳・真澄さんグループもよく頑張ってくれた。運動のできない坂柳の分を真澄さんがよくフォローし、頭脳担当と実働担当で役割分担をしていたようだ。そのおかげか、坂柳も色々工作が出来ている。

 

 堀北のグループは櫛田が妨害していたとはいえ、卒なくこなしていたらしい。こういう系は意外と得意なのだろうか。あるいは櫛田の工作も意外と上手くいかなかったのか。どちらにしろ、それなりに点数を得ている。逆にウチのクラスの勝てるはずで編成したグループは5位と振るわない。

 

 これの原因は明白で、真澄さん筆頭に動ける面子を坂柳グループに集めすぎた。その結果、リーダー格も不在かつ動ける人もあまりいないので駅伝で大きく失点する、というグループになってしまった。ここは反省点だが、坂柳も自分たちが1位得点を大量に得ることでリカバリーするつもりでの損切りだったのだろう。しかし、メンバーたちの内心は不安のはずだ。ここは、後でフォローしないといけない。責任者をやる羽目になった白石のフォローもしておく必要がある。とはいえ、森下とかにしないだけ英断ではあった。

 

 これにてクラスポイントの変動は以下の通り。

 

cp変動総計

 

A……+627

B……+21

C……-6

D……+595

 

 Dクラスのcpはこちらに移譲される契約になっているので、はAクラスは1189cpを得ている。結果的な各クラスのポイントは以下の通り。

 

A……3354

B……323

C……256

D……0

 

 二番手に位置しているBクラスとの差は約10倍。これだけの差を付ければ、よほどのことがない限り我がクラスの安泰は揺るがない。それこそ、cpを数千ポイント没収されるとかがない限り、まったく揺るがない計算だ。十名退学になってもまだBクラスよりcpが高い。

 

 そして、これにより来月からAクラス生徒の貰えるppは33万5400となる。もうここまでくるとその辺のサラリーマンの手取りより高いのではないだろうか。9割を貰っているので、それを42人分となると1264万8120ppが毎月手に入る計算だ。それこそ、二カ月に一回のペースでクラス移動をさせることが出来るようになる。残りのDクラスは38人。それでもまだまだ間に合わないのが現状だ。やはり、坂柳YouTuber計画をはじめ、より高い収入を得るための手段を確保したい。

 

 また、ほかのクラスがどう動くのかも気になるのが現状だった。ともあれ、これでこの試験は終わり。特段退学者なども出ないまま、無事に終了した。南雲は結局堀北学には勝てなかったものの、こればっかりは仕方ないと割り切っていたらしい。

 

「今回も俺の負けっすね。いやぁ、今回くらいはもしかしたらと思ったっスけど……」

「お前はこの学校をどうするつもりだ」

「どうって、前にも言ったじゃないっスか。全部ぶっ壊すんスよ。現に一年を見てください。学校なんか屁とも思わないで好き勝手にやってる奴もいる。視野が狭かったんスよ、俺たちは」

 

 それだけ言うと、南雲は静かに学年の方へ戻り、バスへと向かっていった。堀北学を筆頭に三年生たちは呆気にとられていたようだが、南雲も決して余裕綽々ではないだろう。私と同じ成果を求められるようになった彼の苦悩も察するに余りあるところだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 帰りのバスの雰囲気はよかった。しかし、皆眠そうである。それも仕方ない無いだろう。ここ数日、緊張状態と慣れない環境にいたのだ無理もない。カーテンを閉めて、半分寝る態勢に入っているので、試験の総括はまた日を改めて行う必要があるだろう。とはいえ、やるべきことはしておきたい。先生からマイクを借りて立ち上がった。

 

「皆さん、まずは一週間お疲れ様でした」 

「「「お疲れ様でした」」」

「各自、色々と反省することや上手くいったことなどあると思いますが、お疲れのようですので反省会はまた後日行うことにします。私からは短めに全体の総括をさせてください。今回の試験ではコミュニケーション能力や普段使わない部分の能力が求められたと思います。掃除や料理などもそうですね。この辺りも磨いておくに越したことはありませんので、何かしらの対策を用意したいと考えています」

 

 掃除は外注、料理もお金さえ出せばいいものが買える時代になった。しかし、それでも出来るけどやらないのと、出来ないのでやらないの間には大きな差がある。特に料理は古来より外交などの場で大きな役目を果たしてきた。歴史や文化とも密接に関連し、マナーなどとも絡む結構大きな分野である。家庭科が軽視されているこの学校ではあるが、その辺の対策もした方がいいだろう。まもなくバレンタインだ。これにかこつける、というのも悪くない。お料理教室くらいなら、週一で無理なく出来ると思う。

 

「それでも皆さん、良い結果を持ち帰ってくれたと思います。金策という面では上出来でしょう。まずは健闘した自分をたたえ、しっかりと休んで疲れを癒してください。計画の完遂にはまだ多くのポイントが求められています。Dクラスとも協力し、より多くの資金を得られるよう、ご協力をお願いします」

 

 私は丁寧に頭を下げた。貰える30万を超えるポイントを好きに使いたいという思いがあるのは理解している。それを曲げて協力してもらっているのだ。そこには十分に配慮しないといけない。幸運なのは、Dクラスの生徒が上手く馴染んでくれていることだろう。柴田も白波も、ちゃんと試験ではAクラスの平均水準には達していた。

 

「あの、すみません、少しいいでしょうか」

「どうぞ」

「白石です。全体的に良い結果の中、皆さんの努力に水を差してしまう結果となり、申し訳ありませんでした」

 

 5位になったことに一応責任感は感じているのだと思う。白石飛鳥は平均的なAクラスの生徒だ。何を考えているのかよくわからないところがあるが、温厚なので孤立しているというわけではない。ただ、休日に出歩いているところをあまり見かけない印象だった。

 

「いえ、今回の結果は」

「今回の結果は私の采配によるところです。グループ分けの主導は一之瀬さんが行いましたが、その割り振りを考えたのも女子の指揮を担当していたのも私です。私の責任でした。申し訳ありません」

 

 私が言う前に坂柳が頭を下げた。明日は太陽が西から昇るかもしれない。冗談はさておき、坂柳が頭を下げたのはかなり意外だった。彼女もリーダーとは何かを学んでいるのかもしれない。責任を取るのが指揮官の務めだ。采配が上手くいけばそれは指揮官の功績が大きいが、失敗すれば同時に指揮官のミスということになる。部下の責任をしっかり自覚し、それに対して頭を下げる。それは最低限ではあるが、出来ない人も多い行動だった。

 

 坂柳が頭を下げることで、白石グループの生徒が感じている責任感やマイナスな感情を少し薄めることが出来る。やはり自分たちの責任と言われるよりも、責任を負ってくれる人がいた方が気は楽になるものだ。坂柳にとってもメリットはあり、責任感のある人物という印象を与えることが出来るだろう。これまであまり目立って活躍してこなかった彼女は、今回の結果で全体で見ればよい戦果を持って帰ってきた。

 

 しかし、一部失点となっていると、どうしてもそれが目立つ。そこを上手くどうにかする方法と言えば、ここで頭を下げることであった。そして彼女はそれを実行した。打算ありきかもしれないが、それでもプライドの高い彼女の謝罪には意味がある。

 

「確かに坂柳さんの責任はありますが、それも戦略のうちだったのでしょう。であるのならば、それを咎めはしません。もし咎めようとする人がいるのであれば、全体総指揮を担当していた私を咎めてください。それが筋です。また、全体的な視点で言えば結果はきちんと出していますし、当然白石さんたちが努力していたことも認識しています。私は今回の試験で誰かを責めるつもりはありません。全員、よく頑張ってくれました」

 

 白石グループの女子たちがホッとした顔になっている。足を引っ張ってしまったのではないかという不安が少し解消されたのであればよかった。しかしこれで放置ではなく、帰った後も個別にしっかりフォローしておくことが大事だろう。その辺はDクラスとも上手く協力していけるはずだ。

 

「坂柳さんも積極的に色々と計画を立て動いてくれたと認識しています。私が万が一指揮出来ない状況になった場合、葛城君と合議の上で両名が指揮を執ってください。それが出来ると、今回の試験で判断しました」

「感謝します」

 

 彼女の口角がわずかに上がる。求めていた地位をひとまず手に入れたという顔だろう。なんだかんだで内心はまだまだ黒い。それでもそれを隠せるならば、今は合格点とする。事実、葛城と共同でならそれなりに上手くクラスを動かせると思う。真澄さんもいるし、まぁそこまで酷いことにはならないはずだ。それくらいの信頼はしてもいいと思うし、信頼しないと彼女も動いてくれないだろう。

 

 権利には責任が伴う。それをある程度自覚している今だからこそ、任せられるはずだ。

 

「さて、あまり長々とお話ししていても皆さんの疲労が増してしまうでしょうから、本日はこの辺にして、詳細は学校に戻り次第とします。今回も皆さんのご協力、ありがとうございました」

 

 頭を下げて、席に座る。行きは多少話声のあった車内も、今は静かだ。私の話が終わった瞬間に寝息を立てている生徒もいる。よほど疲れていたのだろう。今は静かに寝かせてあげるのが正解だ。

 

「お腹すいた」

「早くない?」

 

 カーテンの隙間から見える高速道路の街頭の光が流れていく。それを見ながら、真澄さんは呟いた。

 

「今回一週間頑張ってたから、仕方ないか。駅伝、女子で一番速かったって聞いたけど」

「まぁ、あれくらいは」

「でも誰にでも出来ることじゃないからね。坂柳の分も走っての結果だし」

 

 彼女一人で男子とあまり変わらない量を走っての結果なので、普通にちゃんと活躍していた。実働部隊の担当としては十分な結果だ。

 

「修学旅行みたいで、ちょっと楽しかったし。今までの修学旅行は、全然つまんなかったから」

「友達いなかったからね」

「うっさい」

 

 彼女は私の足を軽く蹴ってくる。その言葉に反して声音と足は随分と優しかった。

 

「リクエストは?」

「エビフライ。あと、ハンバーグ」

「女子高生のチョイスじゃないねぇ」

「いいでしょ、好きなんだから」

 

 彼女はそれだけ言うと、静かに目を閉じた。数分もしないうちに、スース―という寝息をが隣の席から聞こえてくる。私の肩に、彼女の首が預けられた。これはしばらく動けないなぁと苦笑しながら、私も目を閉じる。少しくらい、いい夢が見れそうだった。




Aクラスの1月の収入

 805万89960pp(1月分pp収入の9割×42人分)
 
合計所持金
 1366万640pp

今回でこの章は終わりです。次回は閑話を挟み、9巻……なんですが、一之瀬さん誹謗中傷事件はこの世界線だと起こり得ないので、全然違う話と一緒に彼女の過去に関して扱うことになると思います。
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