ようこそ孔明のいる教室へ   作:tanuu

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Le Congrès ne marche pas, il danse.(会議は踊る、されど進まず)

シャルル・ジョゼフ・ラモラール・フランソワ・アレクシ・ド・リーニュ侯爵


8.公正

 全国屈指の名門校にして国営機関、高度育成高等学校に160人の新入生が訪れてから、一か月が経過した。入学してからの初めの一か月は特に目立つイベントが彼らを迎えることはなく、外部との接触が完全に絶たれたこの特殊な学校での新生活に慣れること、そして新たに割り振られたクラスの中及び外の生徒との交友に勤しむことに重きを置かれていた。そして、配られた10万もの大金を元手に、彼らは優雅な生活を楽しんでいた。

 

 しかし平穏と忘憂に満ち満ちた学生生活に終わりを告げるかのように、生徒たちに学校からの評価が現実を叩きつけた。曰くこの学校は完全な実力主義であり、全てが評価対象になっている。赤点は退学、Aクラスで卒業できなければ将来の保証はしない。この事実にB~Dの生徒たちは慄いた。そしてAクラスも対岸の火事ではない。

 

 クラスポイント。この制度によってクラスが移動する。ともすれば逆転される可能性も十分にあり得るのだ。クラスポイント制度に関しては他クラスよりも先に把握していたため、混乱の少なかったAクラスですら、将来の保証はないと言われてはざわめかざるを得ない。100%の将来保証。それがこの学校の謳い文句だったからだ。

 

 だが、ここは学校から少なくとも初期のこの段階では優秀と判断される人間の集められたクラス。動揺もそこそこに、会議が開かれようとしていた。参加者は全員。任意参加だが、部活をやっている生徒も自主的に休んだ。先輩も通ってきた道の為、問題なく許可されたようだった。

 

 クラス対抗戦ともなればリーダーが必要だ。多くの者は自分がそうなるほどカリスマ性があったり能力的に優れているとは思っていない。なまじ優秀な人間の為、自分の限界をよく知っている者が多い。賢い生き方だ。なので彼らは自分達の行く末を誰に託すべきか、それを見定めようとしている。今のままの派閥で良いのか。それとも……。思惑入り乱れながら、会議は幕を開けた。

 

 クラスの座席は大きく移動されていた。教壇から見て左右に席の列ができ、向かい合っている。教壇から左手側に坂柳有栖本人とそのグループ。それに近しい者が。反対側には葛城康平本人とそのグループ、並びにそれに近しい者が。迷っている者はその列の後ろで黒板側を向いて座っている。横から見ればコの字に見えるだろう。

 

 こうなった経緯は会議の始まりに起因する。

 

 

 

 

「全員が参加して下さるとはありがたい限りです。無駄に時間をかけるのも愚かしい事ですので、早速始めましょう」

 

 坂柳の号令で会議自体はスタートした。カーテンは閉められ、鍵はかけられている。しかし、席は通常のまま。彼女はあくまで自分が主導権を握りたいようだ。それ故にスピーディーに終わる自信があるのかもしれない。とは言え、それはあまり好ましくない。1人の意思で動ける集団は強力に見えるが、その指導者がいないと機能不全に陥りやすい。セカンドオピニオンは常に用意する必要がある。この世に全知全能などいないのだから。

 

「しかし、このままでは会議をするには不向きではありませんかね。席の移動を提案しますが、どうでしょう?」

 

 私の発言に反対する理由は無いはず。そもそも進行役すら決まっていない会議なのだ。現に、誰もそれに反対することなく自主的に席を移動し始めた。その辺りの行動力というかまとまりは、流石優秀なクラスと言える。

 

 まずは自分で席を動かせない坂柳とその周辺の席が出来上がる。必然的に反対側に位置するように葛城の一派の席が出来る。その他は後ろで様子見だ。私は当初後ろで様子見を決め込もうとした。会議は踊って小田原評定になってくれた方が良い。2人のリーダー候補の能力を見定められるのだから。

 

 この様子を見て何かを思案した坂柳は提案した。

 

「葛城君。このまま進行しては纏まるものも纏まりにくいように思います。どうでしょうか、議長役を選出しては」

「俺としては構わない。その方がスムーズだろう。人選は……と言っても1人しかいない、か」

「はい。その点では意見が一致していますね。と言う訳ですので諸葛君、お願いできますか?」

 

 なんとなくこうなるような予想もしていた。これは実はよい事である。少なくとも私は中立派で、またこの場の進行を出来るくらいには能力があると思われているという事だ。実際、こうして指名を受けた後、周りからは「まぁ孔明先生なら安心か」「そっちの方が良いよね……」と言う声が聞こえている。この前のクラスポイントシステム発表は大成功であることが改めて確認できたのだ。

 

「分かりました。不肖諸葛孔明、引き受けさせて頂きます」

 

 カツカツと教壇に上がり、議長席に座る。はぁ……とため息を吐いて神室はその横に後ろから席を引っ張ってきた。

 

「なにしてんの、キミ?」

「書記役。いるでしょ?」

「……ああ、まぁいるな。助かる」

「ん」

 

 私と彼女が親しいと言う風説はこのクラス内ではかなり有名だ。なので、この件も特に疑問に思われていない。実際親しさとはまた違ったベクトルなのだが、それを完璧に知る者はいない。

 

「それでは、ただいまよりクラス内会議を始めましょう。進行は私が、書記は神室真澄が務めます。また、ここで話し合われました内容に関しては他言無用でお願いしたく思います。まず、現状について整理しましょう」

 

 黒板に私の書記(便利屋神室)が書き出していく。

 

・クラスポイント……×100でプライベートポイント

 →上下する。Ex:定期テスト、部活、素行。他にもある可能性

 →点数によってクラス移動(現状970ポイント、歴代最高)

 

・赤点は退学。追試は指定感染症に伴う病欠以外無し

 

・Aクラス卒業以外に将来保証なし

 →一応進路指導はある

 

・Aクラスほど優等生、Dクラスほど劣等生

 

・他クラスの現状クラスポイント

 B:690

 C:500

 D:0

 

 とても簡潔で分かりやすい。特に原稿など渡していないでこれなので、やはり優秀だ。

 

「ありがとう。これで現状は大体整理されました。まず、現段階で不安な事項があれば意見を共有していくべきでしょう。抱え込むよりも全員で共有しておいた方が安心感もあるでしょうし」

 

 とは言ったものの中々全体の前で意見を言うというのは難しいものだ。だが、不安など何もない、という状況ではないのも明だった。

 

「といきなり言っても難しいでしょうし、私の見解をまずお伝えしますね。クラス分けはただの事実ですので不安事項から外すとしても、残った3つのうち、私がここで重要視すべきは最初の事項……つまりは『クラスポイントの上下について』だと考えています。それを中心に議論を進めた方が効率的だと思うのですが」

「いや、待って欲しい。皆が気にしているのは勿論、それもあるだろうが恐らくは『Aクラス卒業以外に将来保証なし』という点だろう」

 

 葛城の発言に多くの生徒が賛同を示す。派閥を越えて、これは懸念事項として存在しているようだ。

 

「確かに葛城君の言う事も一理あります。では、皆さんに問いましょう。皆さん、もしこの学校に受かっていなかった場合、進路はどうしていましたか?では葛城君」

「もし受かっていなかったら……近隣の高校に入学して、その後は普通に勉強をし、大学受験をするつもりだったな」

「ありがとうございます。では、矢野さん、如何でしょうか?」 

「え! えっと……私も多分、葛城君と同じような感じだったと思います」

「ありがとうございました。そうですよね、此処にいる9割以上の方は普通に受験して、勉強して大学へ行っていたと思います。Aクラスで卒業できないからと言って大学に行けない訳ではありません。勿論、勉強は必要でしょうけれど、それはこの学校を退学にならないためにやらざるを得ない事。真面目に勉学に励んでいればこの優秀なクラスの多くの生徒は学校の恩恵にあずからなくても将来の進路を実現できるのではないでしょうか?まさかとは思いますが、Bクラス以下に落ちたからと言って勉学を放棄するほど志の低い方たちでは無いでしょうから」

 

 不安を抱えていた顔が少し和らいできた。「特権を得られない!」と考えるから不安になる。なので、「その特権がなくてもどうにかなる道は存在している。将来が閉ざされる訳ではない」と思えればそう不安な物でもなくなる。ここは学校の上手いところだな。Aクラスには特権の喪失を強調しあたかも失われれば進路はお先真っ暗と思わせ、Bクラス以下には簒奪を推奨する。そうしてクラス間の競い合いを強化する。優秀な集団を作るために。そんな思惑になんて乗ってやるか。クラス間で競い合うのは別に構わないが誤った事実を認識し続けているのも馬鹿馬鹿しい。

 

「では、諸葛君はDクラスなどになっても構わない。そうなったら勉強すれば良いじゃないか、と仰りたいのですか?」

 

 やや攻撃的な口調で坂柳が問うてくる。彼女は競い合いたい側の人間だろう。このまま闘争心が消えるのを危惧しているのだと思われる。

 

「いえ、そんなことはありません。クラスの皆さんが上のままでいたい! と思うのであればそれはそれでいいと思います。しかし、誤った事実認識のままと言うのも良くありません。そう悲嘆することはない、焦る事は無いと言いたかったのです。中には自己研鑽は得意でも追い立てられながら他者と競うのを厭う方もいらっしゃるかもしれませんので」

「では、全体がAのままで居続ける事を目標とした場合は従ってくれるのですね?」

「勿論。特権は無くても問題ありませんが、あった方が便利ですからね。まぁ私は無くても一向に構わないタイプの人間ですのでダメージはありませんが、そうでは無い方の足を引っ張るのは良くありませんから」

「それは良かったです」

 

 良かっただろうねぇ。君の足を引っ張って妨害してくるタイプではないと判断できたのだからね。「全体がAのままでいることを選んだ場合」では無く「坂柳有栖がAのままでいることを選び他クラスを蹴落とす方針になった時」に従って欲しいのだろう。まぁそれは時と場合によるとしか言いようがない。

 

「何が言いたかったかと言うとそう悲嘆的にならずとも問題ないという事です。絶望なんてナンセンスでしょう。特権を失いたくないという後ろ向きなやる気よりも、前向きなやる気の方が長持ちしますから。例えば……お金が沢山欲しいとか、ね?」

 

 そこで少し笑いが起きる。張り詰めていた空気はここに来てやっと自然な感じになった。これで本番に入れるだろう。何だかんだで結論は出ていないけれど取り敢えずそんな不安になる事は無いよね?という雰囲気に誘導した。ここで結論なんて出すつもりはない。出来れば自分で考えてくれ。思考停止した機械の集団はいらない。

 

「少しずれましたが本題に入ります。『クラスポイントの上下について』です。現状は黒板にある通りですが、何かこれに意見のある方はいますか?――はい葛城君」

「直近の定期テストがやはり重要だろう。ここで高得点を取って他クラスを引き離す。そうすることで不測の事態への対処も可能だ」

「安定して点数を稼げる方法として1番確実性の高い方法と言えます。しかし、それだけではダメかもしれませんよ」

 

 司会を無視して葛城に坂柳が意見をぶつけた。止めても良いのだが、流れが悪くなりそうなので見送る。

 

「どういう事だ?」

「点数だけがポイントとして足されるのならば例えば成績不良のDクラスがAに上がるのは不可能になってしまいます。そうなっては学校としてはこの制度を用意した意味がありません。ジャイアントキリングも可能な方法が残されている、恐らくは何らかの試験でしょう。それも単純な学力以外を問う。その特別な課題が存在していた場合、どうしますか?」

「その時の課題の内容にもよるが、堅実にタスクをこなしていくべきだ。ただでさえ、ポイントの開きはそこそこに大きい。油断しなければ首位を走り続けられるだろう」

 

 彼の言いたいことは言い終わったらしい。堅実に、保守的に。それも悪くない選択だろう。防御は一見消極策に見えてその実効果は高い。

 

「なるほど。それも一つの手段ではあるでしょう。しかし、それだけで解決できることばかりではないように思います。時には、積極的に動く必要もあるのではありませんか?さもなくば、上を目指す他クラスの姦計にはめられてしまうかもしれません。というより、学校は積極的に競争を煽って来るはずです。実力至上主義、それがこの学校のモットーですから。その時に、待ちの姿勢では遅きに失することになりかねません」

「では、坂柳。お前は今後どうするのがベストだと提案するつもりだ」

「定期テストを確実に、と言う点では意見が一致しています。その後は……そうですねぇ。他クラスの点数を削ぎ落していくのはどうでしょうか」

「削ぎ落すだと?」

「素行によってはクラスポイントが下がる事もあり得るでしょうから」

「それは……! 道義的に問題がある」

「そうでしょうか。私たちに与えられた特権は確かに諸葛君の言う通り、無くても生きていくことは可能です。しかし、それをむざむざ渡してあげるほど、お人よしになる必要はありません。これは私たちが正当な努力の結果得た権利なのです。勉学を、運動を、部活動や生徒会などを、中学校の時に努力し、素行も真面目で善良な人間として生きてきたからこそ得られた努力に対する報酬です。それを奪われる……なんとも悔しいことではありませんか」

「守るだけならば他クラスを巻き込む必要はないはずだ」

「攻撃は最大の防御とも言います。他クラスは特権を求めて這い上がって来るでしょう。敗者の烙印を押されるのを好む者はいません。全力で挑んでくるはずです。表に、そして裏に。家にある宝物を守るために警備員を置いたり、泥棒防止グッズを散りばめるのはおかしな行為ではないでしょう? それと同じことですよ」 

 

 上手くまとめたもんだと舌を巻く。私が無くても何とかなる権利、と矮小化させたものを自分たちの是までの努力で得た権利を侵害されようとしているとすることで、権利の価値を再び神聖なものに押し上げた。これによって、確かに他クラスに奪われるのは納得できない、という方向に多くの生徒の思考がなっている。

 

 他クラスが攻撃をしてくるのは目に見えている。ならば、それを攻撃によって封じてしまえ。防衛よりも積極的に動いている方が強者としての感が出る。それを好む者も一定数いるはずだ。

 

「攻撃は最大の防御、と言いましたが、愚か者が使い方を誤るとこの言葉は成立しません。優秀な皆さん向けの策では無いでしょうか」

 

 最後に自尊心を刺激する訴えを残して終わる。策士だ。だが、ここで一気にこの派閥争いに終止符が打たれてはマズい。自由に動き回れる時間を残しておきたいのだ。後数か月は。

 

「両者、大変素晴らしい提案だったと思います。他に、何かある方はいらっしゃいますか」

 

 誰も手を挙げない。これの後に行くのはきついだろう。もう少し自分で考えて欲しいんだがな。自分で考えてこれなら文句はないのだが、妄信していたりするものがいそうで嫌になる。高学歴ほど騙されやすかったりする。多くの事が見えて、理解できるからこそ不安に陥りやすく、そこで自らを救済してくれる存在、導いてくれる存在に依存しやすい。某真理教の幹部が高学歴なのもこういう理由があると思っている。

 

「いらっしゃらないようですね。まとめますと、まず大前提として次回の定期テストは必ず高得点を取る。その上で今後あると思われる課題に挑んでいく。と言う事でよろしいでしょうか?」

 

 なにも言われない。頷いている人が多数なので、次へ進む。

 

「そしてその特別な課題の際の行動理念についての提案が2つ。まずは葛城君の堅実にタスクをこなす、という案です。もう1つは坂柳さんの他クラスの点数を削ぎ落すという案。それぞれに一長一短があります。今ここで決めるのは難しい、というより決めない方がよろしいかと思います。と言うのも、特別な課題があるのはほぼ確定と見て良いでしょう。しかしその内容は不透明です。前者の案が適している試験かもしれませんし、後者の案が適している試験かもしれません。何回行われるか、どのような形態か。それが分からないうちは決めない方が良いのではないでしょうか」

「それでは決はいつ取るのでしょうか?」

「その課題の時々に()()()()()()()考えて選び取り、その課題に適したリーダーを選ぶ事でどうでしょうか?例えば運動が重要視される試験に坂柳さんは不利でしょうし、逆に頭脳を活かす試験では大活躍して下さるでしょう」 

 

 なるべく今日主導権を握りたかったであろう坂柳は2つの点で失敗している。1つは自分主導で会議を開けたがクラスの声と目に邪魔され、進行を中立派(に見える)私に譲り渡さねばならなかったこと。2つ目はそれでも自分が主導でクラスをまとめる方向に持っていこうとしたが、それの決定を妨害されたこと。しかし、私の発言に矛盾も悪意もないように見え、クラスを思っての発言に聞こえている。つまり、私の発言を間違いだと指摘できない。もっと言うなら場の進行権を私に乗っ取られている。

 

「確かに、先を急ぎ過ぎてもいけませんね。今日のところはこれくらいで収めるのが良いでしょうか」

「ご理解いただけてありがとうございます。では、私の提案である『課題の時々にクラスの全員で考えて選び取り、その課題に適したリーダーを選ぶ』にご納得いただけた方は挙手をお願い致します」

 

 スッと全員の手が上がる。葛城も坂柳も、今日はここで終わりにした方が印象がいいと悟ったのだろう。言葉遣いはどうであれ、明らかに対立している2人よりも、それの折衷案に投票した方が心理的に楽だからだ。これから2人は相手の派閥を吸収、もしくは破壊するべく動くだろう。その分、私も好き勝手出来るという事だ。

 

 黒板には決定事項とまとめが書かれている。

 

《案》

 

・定期テストを確実に取る→決定◎

・堅実にタスクをこなす→自クラスを強化by葛城

・他クラスを攻撃→他クラスを弱体化by坂柳

⇒課題に適したリーダーをその都度全員で選ぶ→決定◎

 

 神室はしっかりと仕事を果たしていたようだ。手元の紙には坂柳と葛城の発言の要点が切り抜かれたメモがある。メッチャ優秀じゃないか。私が思考にふけってるときに真面目にメモしていたのか……。

 

「以上で本日の主な議題は全て終了いたしました。皆さまの円滑な議事進行のご協力に感謝します。また、葛城君と坂柳さんの両名はクラス運営の為の方針提案に感謝します。ありがとうございました。他に何か連絡のある方はいらっしゃいますか?――坂柳さん、どうぞ」

「1つだけ。定期テストで不安な科目がある方は私、坂柳有栖が勉強会を開きますのでどうぞご都合のよろしい時に参加して下さればと思います。お待ちしています」

「俺も1つだけ。坂柳と同じように俺も勉強会を開きたいと思う。部活動で忙しい者も多いだろうが、ぜひ参加してくれ」

 

 両名の勉強会はどちらに参加するか=どっちの仲間になるのか、もしくはそれに近しいのかを示すことになるだろう。トップの2人は両方とも頭が良いので問題はないだろうが。

 

「勉強会は成績の良い方にとっては教えるという最大効率のアウトプットが行えます。参加するのは自己研鑽に繋がるでしょうね。私は特に会を開いたりはしませんが、一応勉学にはそこそこの自信がありますので分からない事等あればお気軽に聞いて下さい。メール等でも全然OKです。他に何も無いようでしたらこれで本会議を閉幕と致します。本日はありがとうございました」

 

 私に対する拍手と共に、割と平穏(?)に会議は終わったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 机と椅子を元の位置に戻して、黒板を消してから廊下に出る。神室真澄は先に帰ったらしい。仕事の打ち合わせがあるから集合と言うメールを送っておいたので多分部屋の前で待機してるはずだ。長時間待たせるのも問題なので、早く行こうと思っていると私を待っていたのか廊下にいた坂柳に声をかけられた。

 

「先ほどはお疲れさまでした」

「いえ、無作法をお見せしました。恥ずかしい限りです。もう少し自分の意見を抑えねばなりませんでした」

「結果的に円滑に進み、クラスのまとまりもある程度確保できたので問題にはならないでしょう。……それよりも、私は諸葛君の意見を聞いてみたいと思います」

「意見、ですか」

「『クラスポイントの上下について』。貴方ならばどういう提案をしましたか?」

「そうですねぇ……難しい問いです。強いて言うならば坂柳さん、貴女に近いかもしれません。しかし私の少し違うのは他クラスを動かして別のクラスのポイントを下げさせるという事ですかね。そして問題が発生した際に第三者的意見を装って引っ掻き回すか、公正な仲介人を装って問題を長引かせます。会議を踊らせ、進ませない。それが私の提案ですかね。もし、提案するのであれば、の話ですが」

「会議は踊るに加え公正な仲介人ですか。ウィーン会議のビスマルクとは、中々面白い例えをしますね」

「お気に召したのならば幸いです」

「どうですか、諸葛君。私の派閥に入りませんか。貴方ならば、素晴らしい活躍をしてくれると思うのですが。貴方の()()()の神室さんも一緒で構いませんよ」

「ありがたいお言葉ですが、今は承諾しかねます。最低3回は勧誘していただかないと」

「それは残念です。ではまた今度勧誘するとしましょう。貴方が2回目の訪問で歓迎して下さるだけの成果を伴って」

「ええ。お待ち申し上げております」

 

 それだけ言うと彼女は夕焼けに染まる廊下を去って行った。さて、彼女に私を出廬させられるのだろうか。自由なままでいたいと思いながら、陣営に加わる事になったらなったで面白そうだと思う自分もいた。アンビバレントな自分を笑いながら、彼女と反対方向に歩き出す。

 

 取り敢えず神室真澄の待遇をより良いモノにしないと奪われかねないと危惧しながら。




<報告>
 Sシステムの情報に関する学校側からの詳細公表有り。しかし、まだ隠れている事項有りと判断する。また、競争を煽る学校の姿勢から生活態度や素行、試験の点数以外にもcpを増やす機会ありと推察。同日、それに対する会議が実施。結果的に主導権が2派閥のうちのどちらかに傾くことは無し。より一層生徒の実力を測れると思われる。
 坂柳有栖は攻撃性の高い策を取る傾向にあり、また他者操縦に長けている。要警戒。葛城康平は優秀だが保守的な傾向。しかし、無警戒にするのは危険。

<要求>
 現状特になし。強いて言うなら神室真澄の過去の嗜好を知りたいが情報は無いか

<返答>
 了解。引き続き使命を全うせよ。なお、要求に関しては最も近くにいる人間として自分で聞き出すことを推奨する。嗜好は歳で変化する為、過去のものは当てにならないケース多し。
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