逃げ適正らしいですが、せっかくなので追い込みで勝とうと思います(勝てるとは言っていない) 作:ツルハシブンブン丸
チクショウめ。
誰もが「強い」と称するウマ娘がいる。
とある名家の最高傑作と謳われるウマ娘は言う。
「彼女のトップスピードにはとても追いつけませんわ」と。
とある鉄の女と称されるウマ娘は言う。
「どんな馬場状態でもまったく変わらず走り抜けるそのパワーは同世代でも随一です」と。
とある皇帝と畏れられるウマ娘は言う。
「レースの展開を読む力、仕掛けるタイミングには自分も学ぶところがある」と。
とある同期のダービーウマ娘は言う。
「あの子が競りかけてきた時の勢いにはゾッとするの」と。
誰もが「もったいない」と嘆くウマ娘がいる。
とあるシャドーロールの怪物は嘆息する。
「なんで馬群が苦手なのに最後方から突っ込んでるんだアイツは」と。
とある変幻自在の脚質を持つウマ娘は首を傾げる。
「なんで自分の脚質と逆の作戦で走るのか分かんない」と。
とあるサイボーグと呼ばれるウマ娘は嘆く。
「彼女は間違いなく私と同じタイプの逃げウマ娘だと断言できます」と。
とある帝王と褒め称えられるウマ娘は評する。
「賢いけどバカだよね、あの子」
そのウマ娘を知る関係者は口を揃えてこう言う。
「素質はある。素質は……」
果たして彼女がG1の栄光を掴み取る日は来るのだろうか……。
『月刊トゥインクル 増刊号』
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「だってさ。皆ひどくな~い?」
トレセン学園の中。無数にあるトレーナー室の1つ。
そこに置かれたソファーに寝転がり雑誌を読んでいたウマ娘は、自身のトレーナーに同意を求めた。
「……うん、そうだね」
どこか苦笑いしながら相槌を打つトレーナーに満足そうに鼻を鳴らし、昼寝でもしようかと横になり目を閉じる。
「……ところで、次のレースの作戦はもう決めてるのかい」
「当然、最後方からの追い込み一択でしょ!」
「……そうかい」
雑誌を顔に被せている彼女は、トレーナーが眉間のシワを揉みほぐしたことに気が付かない。
「……たまには先行とか逃げとか、前目の勝負をしてもいいんじゃないかい?」
「やだ! つまんない!」
「……そうかい」
彼女は気が付かない。
トレーナーが貧乏揺すりを繰り返していることに。
「……馬群が苦手なんだし、馬群のいない場所を走ろうとは思わないかい?
そう、例えば先頭とか……」
「つまり大外ブン回して勝てば良いってことだね!」
「……(ブチッ)」
彼女は気が付かない。
トレーナーの堪忍袋が切れた音に。
「どう考えてもお前の脚質逃げだろうがボケェェェェェェ!!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛うるせえ私は追い込みで勝つんだあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
この物語は、三冠ウマ娘を打倒し世界まで制した、1人のウマ娘の物語である。
続かない。