逃げ適正らしいですが、せっかくなので追い込みで勝とうと思います(勝てるとは言っていない) 作:ツルハシブンブン丸
幼少期のウマ娘であれば、誰でも魅入るものがある。
一般的な例に漏れず、彼女もそれに魅入り憧れ焦がれる1人のウマ娘であった。
毎週、その時間が来れば必ずテレビ画面の前に座り、
リモコンを操作し決まって同じ番組に切り替える。
そこに映し出されるのは、広大なレース場。
そこで駆け抜けるのは、多種多様な勝負服に身を包んだ競争ウマ娘たち。
夢を背負い、覚悟を乗せて走り続けるウマ娘たち。
中でも彼女が好きだったのは、『神』以来となる三冠ウマ娘。
最後方からの豪脚、タブーとされる迷信を真っ向から打ち破り
快活に笑うそのウマ娘に、彼女は憧憬を抱いた。
夢を抱き、想いを乗せ、勝っても負けても喉を枯らすまで叫び応援し続けた。
……母親に「うるさいから静かにね」と怒られてちょっとシュンとなった時もあったが。
何はともあれ、この世に生を授かったウマ娘のほとんどがそうであったように。
彼女もまた、
将来自分がトゥインクルシリーズ最高峰のレースを戦闘で駆け抜ける。
そんな夢を抱く、どこにでもいるごく普通のウマ娘であった。
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転機となったのは、来年から中学校に上がろうかという時分だった。
中央トレセン学園から、とある打診があった。
曰く、受験する気持ちはあるのかと。
その素晴らしい才能を本校で存分に活かさないかと。
少女は大層、驚いた。
なにせ自分は一般ウマ娘。
良家の出でもなければ、アマチュアのレースで素晴らしい記録を残したわけでもない。
というかそもそも、アマチュアのレースに出たことすらない。
ただただ夢を見ながら1人で河原をせっせと走る、そんなどこにでもいる普通のウマ娘である。
思わず開封した手紙と、その封筒の宛名を見る。
これはひょっとして誤送ではないかと。
しかしそこに書かれているのはたしかに自分の宛名である。
少女は悩んだ。
それはもう、ものすごく悩んだ。
常日頃、まったく考えない少女にしては珍しく悩み考え頭を抱えた。
そして少女が出した結論は、親に手紙を見せて相談するというごくごく普通のものであった。
思考時間、実に3秒と長考の末でのことであった。
母親に手紙を見せる。
あらあらと笑って、母親は言った。
「良かったわね。夢が叶うわよ」
「受験していいの?」
もちろん。
母親は強く頷いた。
少女はよっしゃと喜んだ。
「日本で走るのが不安なら、フランスで走る?」
あなたは何を言っているんだ。
少女はひどく訝しんだ。
「お母さん、フランスで走ってたから知り合いのトレーナーさんに頼んでみるわよ?」
母親、フランスで競争ウマ娘だったんかい。
「お母さんと一緒に凱旋門賞とかたくさん勝ってるトレーナーさんだから、信頼できるわよ?」
母親、凱旋門賞を勝ってるんかい。
……この手紙来たのって、お母さんの娘だからじゃない?
少女は大きく首を傾げた。
……
…………
………………
………………よく分からんが、受験できるからまあいいか!
考え込んだ末、少女はそう結論付けた。
その思考時間、なんと驚異の2.5秒である。
そうして少女は中央トレセン学園の受験を決めた。
なお、推薦は出なかった。
「フランスには行かなくていいの?」
すまねえ、英語とフランス語とヨーロッパ語はサッパリなんだ。
もう続かない。