桐生院邸での一件があった後、スカーレットに個別に呼ばれてトレセン学園の競技場の観客席に訪れていた。
あー絶対に怒られる奴だよなぁ……これ……
「あー凄い怒ってるなぁ……」
競技場に入り、観客席の前にある広場にこちらに背を向けたスカーレットが腰に手をやりかなりご立腹のご様子で立っているのが目に入った。いや、むしろご立腹じゃない方がおかしいよな……
「や、やぁ、スカーレット」
声を掛けると、スカーレットがは振り返りまるでこちらを汚物の様な物を見る目で見てくる。
こ、こわ、や、やベーなぁ……
「来たわね、変態トレーナーさん、何か言う事ないかしら?」
「そ、その、すまん、スカーレット」
ジト目でこちらを見て来たスカーレットはそっぽを向いてしまう。
あー完全に拗ねちゃってますね、これ……どうしようか……
「あ、あの、あれには訳があって、だから、拗ねないでくれ」
「拗ねていないわ、この、浮気変態トレーナーさん」
腕を組んでスカーレットが半分死んだ目をこちらに向ける。
それの何処が拗ねていないのか……まぁツッコミ入れたら、多分、怒られる……だろうなぁ……
「だ、だから、それは、ご、誤解なんだって」
「誤解?何が、誤解なの?変態トレーナーさん?」
ズィッとスカーレットが目の前まで来て下から死んだ目でこちらを見上げてくる。
あ、これ、多分、言い間違えたらゴルシ秘伝のドロップキック殺されるやーつ。
「ねぇ、何が、誤解なの、変態トレーナー?」
嘘偽りは許さないと言う意思のある目でこちらを見て頰が自然と引き攣るのを感じる。
「い、いや、だから、その、本当に桐生院トレーナーと温泉に行ったのは認めるけど、本当に何もやってないんだよ!」
「私を差し置いて、あんな綺麗な女性と温泉行って、あんな、発言しておいて?」
ズイッと死んだ目のスカーレットが目と鼻の先まで近寄る。本当だったら胸キュン展開のはずなのに、す、凄い、こ、怖い……その、目の奥が死んでいてドス黒い何かが見える気がする……
「何か他に弁解はないのかしら、へ・ん・た・いトレーナー?」
「うぐぐ……」
でも、まぁ確かに、桐生院邸であんな発言したこちらが悪いちゃ、悪いけどさぁ……でも、本当の本当に、何もやってないんだよ!本当の本当の本当の本当にライオンだぁ!近づいちゃってどうしてよう!富士サファ○パーァァァクって誰がわかるんだ、このネタ!
「いや、ほ、本当、本当に何もやってないんだって!」
「ふーん、じゃ、それを証明するものはあるのかしら?」
死んだ目のままスカーレットが首を傾げる。しょ、証明って何すれば、何すればいいんだよ畜生!証明するもんなんてねぇよ!どうする、どうしよう!
「え、えっと、えっと、そ、それは……その……」
証明の仕方が分からずに慌てふためいてあるとスカーレットは目を瞑りフッと笑みをこぼし後ろに下がる。
「まぁ、そうと言っても、それは、悪魔の証明になるから無理なのはわかっているわよ、だから、流石に不当にはする」
やれやれと言った技で両肩を上げ、今まで見せていた殺気が消え、いつもと同じ雰囲気に戻る。それから、腕を組んだスカーレットの眉間に皺を寄せる。
「けど、簡単に許す訳にはいかないわ」
殺気が消えた事に安堵した矢先の言葉に頰を引き釣るのを感じる。
「じ、じゃ、どうしたら、許してくれるんだ?」
顎に人差し指を添え視線をさらに向けたスカーレットは、そうねと一言置いてから右眉を上げてこちらを見る。
「私と一緒に温泉に行くって約束してくれれば許してあげる」
……え?温泉?え?温泉に一緒に行くって今、言わなかったか?
「……え?温泉に行くの?」
「えぇ、勿論、奢りとかは無しよ、お互いにお互いの分のお金出して行く、それさえしてくれれば許すわよ」
「えっと、そ、それで本当に許してくれるの、そんなんで許してくれるのか?」
あまりにも意外な言葉に呆けてしまうと、スカーレットは両手を腰に添えて下からこちらを見上げる。
「それで許すわよ、ただ、嫌だって言うなら今度は本気で足蹴るから」
そう一言加え、座った目でこちらを見てくる。
やべぇ、これ本気の目だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
「いい、拒否権はないから……ね?」
「は、はいぃぃぃぃぃ、わかりました!スカーレット様ぁぁぁぁぁぁ!」
「アンタ、私のトレーナーなんだから私に様はつけないでって!」
姿勢を戻したスカーレットのツッコミがトレセン学園の空に響く。こうしてスカーレットとの温泉旅行が決定したのだった。