約束の三ヶ月が、過ぎた。
神夷さんにも、稽古をつけてもらえたのは良かった。
相手が刃物を持っていても対処ができるようになったしね。
鳴滝さんは、すごく驚いていたからかなり珍しい事なのだろう。
「それじゃあ、お二人とも。ありがとうございました。学校に行ってきますね。」
「気をつけて行ってきなさい。」
「あァ、おそらく帰る頃には俺もここを離れてる。」
「それは…、寂しいですね。」
少ししょんぼりとした私に、神夷さんは軽く頭を叩く。
仕方ない、これは神夷さんが決めたことだから、邪魔はできない。
それでも、笑顔で別れる事ができて良かった。
私は振り返らずに、明日香学園へと向かう。
明日香学園に着くと、早朝だったのにさとみが待っていた。
私に気づいたさとみが私に走り寄って、抱きついてくる。
「どうしたの?」
「転校するって…ほんと?」
誰にも言ってなかったのに、担任から聞いたのかな。
さとみは私が何も言わないのを、理解していた。
「…あの時からよね。莎草くんとの事があってからでしょ?ひーちゃんが転校しようと考えてたの…って。」
「えへ、バレたか~。」
少しふざけて笑うと、さとみは私から離れ、顔を見る。
泣きそうな顔をしている。
いや、もう泣いちゃったのかもしれない。
「きっと、どこかで…、ひーちゃんの力を必要としている人がいるのね。」
「そう、だといいかな……。」
「ひーちゃん……。」
握ったままの手に力が強まる。
さとみと、もっと早くに仲良くなってればよかったなあ。
「いつか――また逢えるよね?」
「……うん。必ず、また逢おう。」
「うん……、手紙書く――必ず…。だからあたしたちの事忘れないでね。」
「当たり前だよ……。」
「あたしたちも――あたしも、ひーちゃんの事忘れない。忘れないから……。」
いつの間にか、二人で涙が零れ落ちていた。
別れが苦しく感じられた。
さとみと別れて、赤い目になりながら下駄箱へ向かうと焚実が立っていた。
焚実も、転校の事を聞いたのか複雑な顔をしていた。
どう、声をかけたら、動いたらわからない、そんな顔。
「焚実、さとみを任せた。」
「ッ……!」
だからこそ、焚実の胸に拳を当てて、一言残す。
職員室に向かおうと、歩き出すと後ろから焚実の大きな声が聞こえた。
「任せろッ!!緋勇、ありがとう!」
その言葉に周りの生徒が、訝し気な顔で見ている中で、私は、振り向いて笑って手を上げた。
その心意気でさとみとカップルになっていくのかな……?
なんて、考えてしまうのは私も寂しいんだろうなぁ。
1998年 東京 春
「龍麻、ここが今日から君が1年間住む部屋だ。」
「……でかくないですか?家賃って……?」
私がいるのは、転校先の学園の近くにあるマンションだった。
曰く、このマンションも鳴滝さんが管理している建物の一つで安全性はバッチリだそうで……。
「家賃は君の叔父から払ってもらっている。そしてこれを……。」
「こ、れは……。クレジットカード?」
「ああ、暗証番号は――」
「いやいや!!ダメでしょう!そんな大事なカード渡しちゃッ!」
その後、正座で今後の事を話し合った。
これから何があるか分からない中で、鳴滝さんは日本を離れなくてはならない。
支援できる範囲を考えた結果、このカードを好きに使っていい、と。
いいの?本当に……?
「でも、叔父から生活費も貰ってますし……。」
「私も、少しでも君の助けになりたいんだが……。」
「……。……っ、家計簿は書きますかね!無駄遣いもしません!!」
「少しはハメを外しても構わないが、こちらとしては了解した。」
くっ!私を甘やかしてくるのに、稽古ではあんなにボコボコにするなんて!
「とりあえず、明日から真神学園へ通う。気をつけて、いや……楽しんできなさい。」
「……はいっ!」
龍麻は満面の笑みで、鳴滝に返事を返す。
その後の未来では、どうなるか、なんて今は考えてなんかいなかった。
今は、それでいい。
『強く生きろ、龍麻―――』
女の子だから防犯バッチリなお部屋をご用意されてました!!
鳴滝さんなら、マンション位持ってるよね!