荷物をたくさん持った女生徒は、同じクラスではないが見覚えのある顔だった。
確か、可愛いと噂されていた子だったかな?
助けたお礼を言われて、荷物を持ち直すのを見ていると、照れたようにこちらを見る。
「荷物を持ってて、前が見えなくて…」
先生も男生徒に頼めばいいのに!
そんな事を考えていると、時間が迫っているチャイムが鳴り響く。
「――あッ。あたし、もう行かなきゃ。これ、教室まで運ばなきゃならないの。」
「それなら、生物室までの通りだし、手伝うよ。」
流石に、彼女の目的地が通りにあるのなら、手伝っても問題はないだろう。
でも、彼女も顔見知り程度の私に頼むのは心が引けるのか笑顔で続ける。
「え…。いいわよ。ひとりで運べるから。」
「大丈夫!私って家の方針で護身術とかで鍛えてるからね。」
断る彼女に、ふざけながら力こぶを見せて、いくつかの荷物を代わりに持ち運ぶ。
少し困惑していた様子だったが、最後は笑顔でお礼を言って二人で教室へ向かう。
「本当はね、結構大変だったんだ。」
「女の子に頼む量じゃないよ。まったく!」
クスクスと笑い合いながら、彼女の隣を歩く。
「あたし、2-Aの青葉 さとみ。ブルーの青に葉っぱの葉、平仮名のさとみ。
あなたは?」
「私は、2-Cの緋勇 龍麻。緋色の緋に勇気の勇、難しい龍に麻縄の麻。」
「緋勇さんか。」
「幼い頃からの友達からはひーちゃんって呼ばれてるよ。」
改めて、自己紹介をして移動を続ける。
あだ名を言うと、おかしそうに笑って「じゃあ、ひーちゃんって呼んでもいい?」なんて聞かれたりして、和やかな雰囲気だ。
違うクラスだけど、仲良くしようね、なんて話している。
「でも、不思議ね。ひーちゃんみたいな人がC組にいたら、気づきそうなものだけど…。
今まで、うちの学校にいた事も知らなかったわ。」
「あれー?私ってば気配が薄いのかなー。」
「嫌味じゃないのよ?」
私の反応にさとみは、少し焦ったように否定する。
そして、前を向きなおして言葉を続ける。
「だってひーちゃんみたいな感じなら目立ちそうだから。」
「そう?でも私はさとみの事聞いた事あるよ、美人だって。」
「うそッ、そんな事言われた事ないよ。」
聞いた事のある話を言うと、照れながら笑う。
うーん、お世辞だと思われたかな…?
二人で何気ない話を続けていると、さとみも目的の教室に着く。
「それじゃ、ここでいいわ。ありがと、手伝ってくれて。」
「いやいや、私も楽しかったから問題ないよ。またね。」
「ほんと、助かったわ。じゃ、またね。」
別れの挨拶で目を逸らしたのが、よくなかったのか。
さとみは、教室に入る直前に誰かとぶつかり、荷物を落としてしまった。
ぶつかった相手は、私のクラスを覗いていた転校生だった。
転校生はチラリと見ては、荷物を無視して教室から出ようとしていた。
すると、教室から別の男生徒が近くに来た。
「おいッ、ちょっと待てよ――。」
声をかけられたからか、転校生は立ち止まる。
「ぶつかっといて、謝りもしないのかよ?」
「比嘉くん…。」
さとみの知り合いなのか、明らかに安心したような顔をする。
しかし、転校生は何も言わずに睨むように男生徒を見る。
「落ちた荷物ぐらい、拾ってやってもいいんじゃないか?
え?莎草――。」
「……あッ、比嘉くん、あたしは、大丈夫だから――。」
黙ったままの転校生との間で雰囲気が悪くなったのを感じた、さとみが声を出す。
転校生は、それを聞いて前を向きなおして歩き出す。
それを、比嘉くんとやらが声をかけたが、無視して行ってしまった。
「さとみ、大丈夫か?」
「うッ、うん。」
「ほら、拾うの手伝ってやるよ。」
「ありがと、比嘉くん。ひーちゃんも。」
落ちた荷物を拾いなおすのを手伝っていると、比嘉くん?と目があった。
不思議そうな顔をしている、彼にさとみが私の紹介をする。
「緋勇…?そういえば、なんとなく、見覚えあるなァ。」
「私も見覚えあるよ。さては、さとみの彼氏だな!」
「ちッ、違うわよッ!!腐れ縁なのッ!!」
「お、幼馴染なんだッ!!」
私の言葉に焦ったように顔を少し赤くして否定する二人。
幼馴染の腐れ縁なんて言うけど、思わずニヤけてしまう。
「俺は、さとみと同じ2-Aの比嘉 焚実。焚実でいいよ。」
「2-Cの緋勇 龍麻。あだ名は、ひーちゃんです。」
まだ少し赤い顔のまま、自己紹介をする。
少し落ち着いた空気になった時に、焚実は続ける。
「さっきの奴も、うちのクラスなんだけどな。莎草覚っていって三ヶ月ぐらい前に転校してきた。」
莎草という転校生は、東京から引っ越してきてから、住んでる場所も知らず、友達もいないらしい。
さとみは、心配だと呟くが、アレは周りに馴染もうとする気が全然しないなぁ。
「…はははッ、何か湿っぽくなっちゃったけど。
緋勇っていったっけ?よろしくな。」
「こちらこそ、よろしく!」
空気が少し和やかになった瞬間に周りが騒がしくなり始めた。
おっと、私も生物室に行かなくちゃ。
二人も周りに気付いたのか、挨拶をして別れる事になった。
生物室に入ると、ギリギリで先生が入る前に着席できた。
「龍麻、遅かったね。」
「サボりかと思ったのにー。」
「A組の美人さんと友達になってきたのさ。」
小声で友達と話すと、ズルいズルいと反感が来たが勝者の笑みでかわした。
新しく友達が増えた……それくらいの気持ちだった。
だからかな…この後の出逢いには何かが変わる気がした。
会話文多いのは、御許しください!
これでも、少しは文面変えたり主観を入れたり頑張ってます!