黄龍さんの間違いでは?   作:メケ子

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第零話 龍之刻 2

放課後の正門前で友達とは別れる。

クラスメイト達に挨拶をしながら、帰り道にある公園近くを通る時だった。

 

「緋勇 龍麻ーー。」

 

 

私の名前を呼ばれて、立ち止まる。

その声に聞き覚えはなく、振り返りその声の主である男を見ても見覚えがなかった。

私の名前は珍しい名前だから、聞き間違いではないと思うけど…。

返事をしないで、その男を見ているともう一度確認するように。

 

 

「緋勇 龍麻さんだね?」

 

「……はい、その通りですが、どちら様ですか…?」

 

「…捜したよ。」

 

 

一呼吸置いてから、男は話し始める。

彼は、私の出生から交友関係まで詳しく知っているようで、自分の情報と私の反応で確認するように話し続ける。

私は、明らかに不審な男に対して、何故か警戒もせずにその言葉を聞いていた。

 

 

「とりたてて、他の若者と違った点は見受けられない。それがーー昨日までの君だ。」

 

「どういう、意味ですか?」

 

 

私が疑問を投げかけると、男は覚悟を決める様に目を閉じて。

もう一度、目を開いた時は決して私の目を逸らさずに答える。

 

 

「私の名前は鳴滝 冬吾。君のーー、君の実の父親ーー緋勇 弦麻の事で話がある。」

 

 

緋勇弦麻は、叔父から聞いた私の父親の名前で間違いなかった。

実の父親の名前を聞く事になるとは思わず、固まってしまった私に対して。

その男、鳴滝さんは場所を変える事を提案してくれた。

 

 

 

明日香公園のベンチに座り、続きを話す事になった。

手には、奢っていただいた温かいココアを持って、私と鳴滝さんは向かい合う。

 

 

「突然、学校まで会いにいって、迷惑だったかもしれんが。どうしても、早く君に会う必要があってね。許してくれーー。」

 

「いえ、そんな…、混乱はしましたが迷惑ではないですよ。」

 

「ありがとう。君の寛大な心に感謝するよ。」

 

 

大人の男の人に真正面から感謝を言われ、照れながらも、話の続きを聞き直す。

鳴滝さんには、私の記憶では会った事はないが…。

言葉も喋れない頃に会った事があるらしい。

それは……、覚えてないなぁ。

 

鳴滝さんは、質問を投げかけてきた。

産まれた場所と誕生日と血液型、それを聞いては納得した顔で頷く。

 

 

「やはり…、間違いではないようだな。君の両親である弦麻と迦代さんの面影がある。」

 

 

そう言うと、寂しそうであり、嬉しそうな顔をする。

大きくなった。そう言われて少しだけ気恥ずかしい気持ちにもなった。

 

だが、父と母の知り合いならもっと早くに会いにきたりしないのか。

もしかして、仲が悪かったのかな…?

不安そうな表情に気付いたのか、苦笑いをして。

 

 

「私が、君に会いに来なかったのは、弦麻の遺言だったからだ。」

 

「遺言、ですか…。でも、どうして、父はそんな遺言を?私は、叔父の言葉と僅かな写真だけでしか両親を知りません。

……、もし知っている事があったら、教えてくれませんか?」

 

 

私の言葉に、鳴滝さんの顔は何かに耐える様な悲しい顔をしてから私を見つめる。

言葉を続けようとしては、言葉に出来ない。

ただ時間だけが過ぎていく。

 

 

「ーーすまん。私の口からは、何も言えないが、いずれ知る事もあるだろう。」

 

「そう、ですか。」

 

 

鳴滝さんの言葉に少し落胆しつつも、自分自身に納得させる。

きっと、言いたい事は沢山あるのだろう。

それを父の遺言の為に、黙ってくれているのだ。

 

 

「あァーーだが、ひとつだけ教えておこう。昔ーー君が産まれるずっと前、君の父親と私は表裏一体からなる古武術を習っていた。」

 

「私も叔父から、護身術として古武術を習っていますが、それと同じですか?」

 

「おそらく、そうだろう。緋勇家は先祖代々、表、陽の術を伝承する家系だったからね。」

 

 

続けて、小声で呟く。

 

 

「しかし、そうか…。武道を嫌がっていた弦麻の弟が、古武術を…。」

 

 

武道を嫌がる?

私の知っている叔父は、率先して私と義兄に古武術を教えていた。

もしかしたら、父と関係があったのだろうか…。

 

その後、鳴滝さんは父の事を話そうとしては、言葉を取り消していた。

そして、私に最近変わった事はないか、を訪ねる。

 

 

「心当たりがないなら、それでもいい。」

 

 

鳴滝さんが私に会いにきたのは、それが目的だと言っていた。

異変というものは、いつでも平穏な日常の陰から這い出てこようとする。

望むが望まないとに関わりなく、深い因果によって定められている、と。

 

鳴滝さんの掴んだ情報によると、ここ数日で何かが起こる。

対処する為に鳴滝さんは動くが、私自身も決して気を抜く事のないように。

父の友として、忠告しにきてくれたのだ。

 

 

「気をつけて、みます。」

 

 

私は、半信半疑のまま頷く。

鳴滝さんはそれでも良かったのだろう。

地図を差し出して、何かあったら訊ねるように言ってくれた。

 

 

「私は、しばらくはこの道場に滞在している。……また会おう。」

 

「は、はい。あのッ、ありがとうございました!!」

 

 

私が頭を下げると、優しい表情で頭を軽く撫でて去っていく。

きっと、鳴滝さんの心配も杞憂に終わるだろう。

ちょっと、変わった1日であって、明日からはまたいつもの日常に戻るだけだろうな。

そんな事を考えて、家へと帰る。

 




龍麻の叔父と義兄の設定はオリジナルですので、お気になさらずに。
何かご意見や、コレ違うよって所があったら教えてください。

作者、豆腐メンタルなんで優しくお願いします!!
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