黄龍さんの間違いでは?   作:メケ子

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第零話 龍之刻 7

「龍麻、強く生きろ。誰よりも強く。誰よりも優しく。そして、叶うのなら平凡な一生を送ってくれ。」

 

 

いつもの夢の言葉。

分かっている、貴方の言ってる言葉は分かってるよ。

 

 

「だが、もしも――、宿星がお前を闘いに導くのなら―。」

 

 

この夢の続きは、初めて聞く。

思わず、夢の中の内容に集中してしまう。

 

 

「友のために闘え…。」

 

 

<力>は何かを護ろうとする心から生まれる……。

それを……きっと忘れないよ、父さん……。

 

 

 

 

目を覚ますと、一度見覚えのある部屋だった。

拳武館の道場だ、ということは……。

 

 

「…目が覚めたね。」

 

「鳴滝さん……。」

 

「ずいぶん手酷くやられたものだな。傷は残る事はないだろうが……。」

 

 

殴られた頭の傷を、鳴滝さんが優しく撫でる。

心配してくれているのが分かる。……ついでに怒ってるのも。

 

 

「さとみ……女の子を見ませんでしたか?」

 

「私があの場所に着いた時にはベンチに横にされている君だけだった。」

 

 

焚実がいない上に、ベンチに……?

きっと焚実が私を置いて、追っていったのか!

このままでは、いられない!!

 

 

「鳴滝さん!私は、行かなくちゃ。莎草の居場所、知りませんか!?」

 

「君の傷はまだ激しく動いていいものではない。それに、彼の<人ならざる力>はいわば魔人。一介の高校生が勝てる相手ではない……。」

 

「それでも、行かなくちゃいけないんです。」

 

 

二人を、護りたい。

鳴滝さんの部下は優秀だろう、けど時間がかかってしまう。

すぐに、動けて二人を護れる確率が高いのは私が行く事だと思ってる。

 

思い上がりだと思う。

鳴滝さんにも失礼だ、でも、あの夢を見てしまったら止まれない……。

 

 

「自分を犠牲にして誰かを助けようなどと思っているのか……?……君は、君だけは生き続けるんだ……。どんな事があっても。」

 

「さとみを、救けに行きます。」

 

 

鳴滝さんの眼を見て答える。

父や母を想って言ってくれてるこの人に、酷い事をしている。

でも、今、やらなきゃダメなんだ!!

 

しばらく睨み合っていると、諦めたように息を吐く。

 

 

「ひとつ条件がある。私の部下と闘ってもらう。覚悟を私に見せてくれ。」

 

「……わかりました。」

 

 

返事をして、怪我の様子を確認する。

手足は大丈夫。殴られた頭も包帯はしてるけど、問題ない。

大丈夫、幼い頃から傷の治りは早かった。

 

鳴滝さんの部下たちの目の前に立ち、叔父さんの教えを思い出す。

 

 

『いいか、龍麻。へそより下の、ここ。ここを意識して動いてみろ。氣を練るんだ。そうすれば、お前ももっと強くなる。』

 

 

義兄さんに負け続きの私に、言ってた言葉。

これを意識した時に、初めて義兄さんに勝ったんだ。

 

 

「ふぅぅうぅ……。手加減などせずに、よろしくお願いします!!」

 

 

一礼をして、手合わせは始まった。

 

仕掛けたのは私。

呼吸を意識して、相手の懐に入り込み、掌底を打つ。

不良たちに喰らわせた技より強く入り込む。

 

喰らった一人がダウンした事で残りの門下生が気を引き締める。

仕掛けてくる拳を受け止めると、傷が痛み思わず呻き声を漏らす。

それでも、相手の流れに乗る前に、半歩後ろに避けて掌底で倒す。

 

残り二人は息を合わせて、私に攻撃の隙を見せない。

捌き、避けて、自分の氣を練る事を考える。

 

大きく後退して距離をとって、大きく深呼吸をする。

そして、一気に距離を詰めて……。

 

 

「龍星脚ッ!!」

 

 

足技を繰り出して、一人を吹っ飛ばしもう一人を巻き込み倒れるのを確認する。

息を整えながら、鳴滝さんの方へ顔を向ける。

 

 

「っは、はぁっ、……場所は、何処ですか?」

 

「……。それが、君の答えという訳か……。因果は巡る…か。」

 

 

深く考える様に目を閉じて、私を見つめ直す。

息を整えながら、鳴滝さんの話を聞く。

 

私の父は<人なるざる者>と闘って…、命を落とした、と。

 

この世界には、人知れずに人ならざる異形の存在がある。

<外法>、現在も受け継がれる代物がこの世には存在する。

 

一通り話をした後に、諦めたように続ける。

 

 

「明日香学園の近くにある廃屋へ行きたまえ。」

 

「廃屋……。」

 

「もしかしたら、君の仲間を護りたいというその心が、陰を照らし、道を切り開くかもしれない。…さっき闘った時の気持ちを忘れない事だ。」

 

 

道場を出る時に、聞こえるかギリギリの音量で鳴滝さんは言った。

 

 

「生きて帰って来い…必ず。」

 

「……。はい!」

 

 

日が落ちて、真っ暗な中で私は廃屋へ走る。

少しでも早く二人を護る為に……。

 

 

 

 

 

 

 




まだだ、まだ終わらんぞ!!
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