ガールズ&ファイター 聖グロリアーナのエース 作:ゲオルギーJr
大洗女子学園の上空で空戦が繰り広げられている。
「ねー見てよー麻子ー、上で戦闘機が戦ってるよ!」
「なんだ……私はまだ眠いんだ……、沙織……」
それを目撃していた二人の生徒がいた。
どういうわけか眠そうな少女がおんぶされている状態だった。
「もー、早くおきてよー!」
「んー、あと三時間……」Zzz……
「三時間も寝たら学校終わっちゃうよー!」
大洗上空での戦いは続く―――。
*
「なんてことは無いわ。相手が零戦でもね」
「……先輩、やっぱり危ないかと……」
聖グロと大洗のエース対決。
勢いに乗るサザーランドは、その調子で最後の一機を落とそうとした。
後輩の言葉には耳を傾けなかった。
「そう易々と落とせると思うなよ」
大洗側のラストバッターと化したパイロット。
それがエースであることを、彼女は気がついていない。
「さすがの旋回性能ね。でも結果は変わらないわ」
スピットファイアは優れた旋回性能を持つ機体だ。
だが、それ以上の性能を持つ機体も存在する。
「私に巴戦を挑むとは……、面白い!」
それが零戦だ。
太平洋戦争の序盤、圧倒的な機動力で連合機を凌駕していた戦闘機。
欧米ではゼロ・ファイターと呼ばれていた。
「この……ちょこまかと!」
絶好調だったサザーランドに次第に陰りが見えてくる。
彼女は零戦の旋回性に翻弄されつつあった。
「スピットファイアも悪くない、だが零戦には及ばない」
大洗のエース、ムサシは零戦のことを知り尽くしていた。
何せ三年間も、この機体に乗り込んでいるからだ。
「先輩!零戦の旋回性能は……」
「黙ってて、メイヨー!私は今集中してるの!」
追い詰められていくサザーランド。
そこには普段の冷静さが消え、焦りが出始めていた。
『聞こえるか?スピットファイアのパイロットよ』
突如、オープン無線が入ってくる。
それはムサシからのメッセージだった。
『お前は何故生きて、何故空を飛ぶ?』
『いきなり何よ、挑発のつもりかしら?』
唐突な質問。
サザーランドに対して何かを伝えたいようだ。
『その問いに答えられなければ、私に勝つことはできんぞ!』
『訳の分からないことを……、さっさと落とせば済む話ね!』
*
ドッグファイトを続けるエース二人。
「何て戦い……、私の入り込む余地がありませんね」
それを少し遠くで眺めているメイヨー。
下手に水を差してはいけないと、彼女は考えていた。
「先輩……、大丈夫かな……」
追い詰められていくサザーランドを、メイヨーはただ見つめることしかできなかった。
*
『もらったわよ!』
激しい格闘戦の末、ついにサザーランドが背後を取る。
『さあ、耐えられるかしら!?』
照準を敵機に合わせる。
零戦の装甲は脆い。
7.7mmでも致命傷を負わせられるだろう。
『それはどうかな?』
しかしムサシも黙っていない。
回避機動を取り、スピットファイアの射線から外れる。
『私がここまでイライラするの、いつ以来かしら!?』
段々と感情的になっていくサザーランド。
彼女はそれを自覚しつつも、怒りをコントロールすることができない。
『怒りに駆られた状態で、私を倒すことはできない……』
『うるさい!そろそろ決着つけるわよ!』
このときのサザーランドの焦りには別の理由があった。
学園艦から飛び立ち、その後の戦闘が長引いていく中、スピットファイアの残燃料が少なくなってきた。
このままでは帰りの燃料が持たない。
『私には時間が無いの!』
スピットファイアの弱点、航続距離の短さ。
それが徐々に露わになりつつあった。
『ほう?なら燃料切れまで付き合ってもらおうか?』
それを知ってか知らずか、ムサシは戦いを長引かせる立ち回りをしていた。
ぐるぐると旋回を繰り返し、時間を稼いでいく。
『さあ、これでおしまいよ!』
堪忍袋の緒が切れたサザーランドが、再び零戦の背後を取った。
そのときだった―――。
『秘儀・木の葉落とし!』
突如、零戦が失速し、スピットファイアに追い越される。
『え……、どこにいったの!?』
一瞬、サザーランドが敵機を完全に見失う。
『さらばだ』
気が付くと、ムサシが背後を取り返していた。
『しまっ―――
サザーランドが回避しようとするが、もう遅い。
そこはすでに零戦の20mm砲の射程内だった。
「先輩!」
戦いを見守っていたメイヨー。
次の瞬間、炎に包まれるスピットファイアを見た。
「どうして……、私が……」
それは間違いなくサザーランドの機体だった。
見る見るうちに高度が下がっていく。
「せんぱーーーいッ!!」
海面で木端微塵になるスピットファイア。
それは聖グロリアーナのエースの敗北を表していた。
「うそ……、先輩が、負けた……?」
動揺する余り、周りが見えなくなってしまったメイヨー。
すぐそばに二匹目の獲物を狙う存在に気がつかなかった。
『そこのハリケーン、お前もだ』
サザーランドを落とした零戦がメイヨーを狙う。
「え……?あ……」
現実が飲み込めないまま、メイヨーは先輩と同じ末路を辿った。
*
「全機撃墜だな……」
エース対決に勝利した、大洗女子学園。
「管制塔、二人のパイロットを落とした。救助を出してやれ」
ムサシは戦果を報告し、元の学園艦に戻っていった。
この日、サザーランドとメイヨーは洗礼を受けた。
大洗の<サムライ>によって―――。
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