ガールズ&ファイター 聖グロリアーナのエース 作:ゲオルギーJr
捕虜のシチュエーションは、あんなことやこんなことをやりがちですが、このシリーズにはそういった要素は無いのでご了承ください。
「聖グロの33番、ここがあんたの部屋。さっさと入りな」
「…………」
大洗のエース、ムサシとの対決に敗れたサザーランド。
彼女は墜落した後救助され、捕虜になっていた。
「……最低の気分だわ……」
大洗の捕虜収容所―――。
独房のようなこの個室にはベッド、簡易トイレ、それと小さな机ぐらいしか無い。
母校から連絡が来るまで、ここで過ごすしかないのだ。
「何を考えていたのかしら、私……」
今になって思えば会長の命令を受けていた辺りから、何かが狂い始めた。
空戦が始まると次第に感情の制御が効かなくなり、
後輩からのアドバイスも耳に入らなくなっていた。
「後悔しても遅いわね、もう寝ましょう……」
寝返りをするたびにギシギシいうようなボロいベッドに、サザーランドは仰向けになった。
「メイヨー……、大丈夫かしら……?」
今の一番の心配は、後輩のメイヨーの安否だった。
ハリケーンが墜落するのは見たので、大洗に捕まっているのは予測できた。
ガチャッ
突然、部屋の鍵が鳴る。
そして扉が開くと、一人のパイロットが入ってきた。
「誰かしら、あなた?」
「よう、どうだ?気分は」
入室したのは、大洗のエースパイロット、ムサシだった。
ついさっき、サザーランドを撃墜した相手だ。
口に爪楊枝を咥えていて、腰には木刀が刺さっていた。
「落とされて捕虜になって、いい気分だと思う?」
「ああ、それはそうだな。悪かった」
数時間前まで戦闘機で戦った相手と対面で会う。
なんとも気まずい空気が流れてくる。
「それで?私に何の用?」
「そうだな、お前は知ってるよな?捕虜に対する決まりを……」
捕虜に対する暗黙のルール―――。
それは撃墜された捕虜は自分を撃墜したパイロットの言うことを何でも一つ聞く、というものだ。
「知ってるわよ。何をすればいいの?下着姿になったら満足する?」
「いやいや、私にそんな趣味はない。
代わりにお前に聞きたいことがあるんだ」
ムサシからの願いは質問に答えろ、という案外あっさりしたものだった。
「お前……、もし自分の学校が消えたらどうする?」
「……ごめん、言ってる意味が理解できないのだけど?」
「そのまんまの意味さ。明日学校が消えるって言われたらお前は何をする?」
「非現実的すぎる質問には答えられないわ」
サザーランドの返答に、ムサシは呆れた表情をする。
「非現実的か……、そりゃあそうだよな……」
「当たり前よ、生徒が数万人もいる学園艦が急に無くなる訳ないじゃない」
浮かぶ街とも言えるような学園艦が突然消えるわけがない。
サザーランドの意見は至極真っ当なものだった。
「それが現実になりつつあるのさ。この大洗がな……」
「どういう意味かしら?」
悲しげなムサシの顔に真剣みを感じたサザーランドは話を聞くことにした。
「廃校が決まったんだ。この大洗女子学園……」
「廃校?冗談でしょ?この規模の学校が?」
唐突にでた廃校の言葉に動揺をし始める。
「会長が言ってたのさ、ウチは廃校になるってな……」
日本の学園艦の管轄は文部科学省にある。
その文科省ではここ数年、財政上の理由から予算削減に走っていた。
そこで、あまり実績のない大洗が廃止が決まった、という内容だった。
「ここ最近
「なるほど、どうせ廃校になるからってヤケになってたのね……」
廃校を知らされたパイロット達が、最後にひと暴れしたくて侵入を繰り返している。
それが、一連の騒動の真実だった。
「でも、転校してからも空戦道を続ければいいだけじゃない」
「そういうわけにもいかないんだ、特に私に限ってな……」
ムサシは自分が空戦道を始めた理由について語り始めた。
「私は生まれも育ちも大洗の人間だ。
小さい頃、大洗の空を飛ぶ零戦の姿を見て、私はパイロットになることを決意したんだ。
そしてパイロットになってからは、この大洗の空を守ることが、私の飛ぶ理由だった」
大洗の空を守る。
それがムサシが飛び続ける理由だった。
「だが今、それは失われた。大洗女子学園は廃校する。
私は何のために生きて、何のために飛ぶのか?
もう私には、空戦道を続ける意味がないんだ……」
大洗のために生きて飛び続けた以上、それが無くなるのならパイロットを辞める。
それが彼女の導いた答えだった。
「間違ってるわ、そんなの!生まれてからずっと空を目指して生きてきたのなら、これからも飛び続けるべきよ!」
珍しくサザーランドが怒りの声を上げる。
しかし、ムサシは反論した。
「ならお前は何のために生きて、何のために飛ぶ?それを教えてもらおうか」
「それは……」
ムサシの問いに答えが詰まる。
「ふっ。その様子じゃあ何も考えていないみたいだな。まあ無理もないか……」
何のために生きて、何のために空を飛ぶのか?
今のサザーランドに、その答えが出せないのは事実だった。
「でも……、だとしても希望を捨てるべきではないと思うわ。
もし何かしらの実績を上げれば、廃校は回避できるんでしょう?」
「できると思うか?こんなマイナーな学校が……。
天才的な転校生が現れたりしない限り、不可能だろうな」
長年大洗に居たからこそ、この学校の限界も知っていた。
「でも、お前の言うことも確かだな。もう少し希望を持ってみるか」
「そうよ。可能性がある限り、諦めてはいけないと思うわ」
最初の気まずさが嘘のように、二人には友情が芽生えていた。
それは両方が人生を空に捧げてきたエースだからこそ、分かり合えるものがあったのだろう。
「ありがとう。私の話を聞いてくれて。これを渡しておこう」
ムサシはポケットから二つの鍵を取り出した。
「この鍵は?」
「ここの部屋と、お前の相方が捕まってる部屋の鍵だ。好きに使え」
相方、つまりメイヨーが捕らえられている部屋の鍵だ。
「本当に渡して大丈夫?」
「いいんだ。それともう一つ。明日の朝ここと聖グロを結ぶ連絡船が出航する。
会長から、お前と相方に対する連絡船の乗船許可が降りた。
それに乗って帰るといい。以上だ」
そう言ってムサシは収容所を後にした。
「大洗のエース、ね……」
サザーランドは同じエースパイロットとして、ムサシの生き様に思うことがあったようだ。
「そうよ。メイヨーの所に行かなくちゃ」
同じく捕虜となっている後輩の元へ、彼女は急ぎ足で向かった。
早いもので、次で第二章最終回です。
一番好きな学校は?
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大洗女子
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聖グロリアーナ
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サンダース付属
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アンツィオ
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プラウダ
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黒森峰
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知波単
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継続
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その他(BC自由等)