ガールズ&ファイター 聖グロリアーナのエース 作:ゲオルギーJr
「Sutherland follow me!」(サザーランド、援護を頼む!)
「分かってるわ、ミニットマン!」
「わっちに挑むつもりかのう?」
サンダース付属学園艦の上空で出くわした三人のエース──―。
聖グロリアーナのサザーランド、
サンダース付属のミニットマン、
そして知波単学園のカグツチ。
これだけのエースが一同に揃う戦いは、そうそうないだろう。
それをメイヨーは薄々感じていた。
「あれ?もしかして私、すごい戦いに巻き込まれてません?」
「何よメイヨー、今更気が付いたの?」
「It's showtime!」(ショータイムさ!)
言うなれば三帝会戦ならぬ、三エース空戦だろうか。*1
そんな戦いを生で見られるメイヨーは、ある意味幸せだろう。
最も、本人にとってはいい迷惑かもしれないが……。
「ふっふっふ。わっちは知波単のエースぞ?容易く落とせるとは思うまいて?」
「カグツチ殿、油断は禁物ぞ。どうやら相手も
「承知しておる、アラハバキ殿。中々楽しめそうじゃ」
お互い相手のことは知らずとも、これがエース同士の戦いであることを察していた。
それは言葉では言い表せない、エース特有の勘というやつだろう。
「とにかく、まずは状況を……」
そんな異質な空においても、サザーランドは冷静だ。
高度を上げ、周囲を見渡す。
「なるほどね。相手は疾風が五機、おそらく一人はエースかしら」
現在の戦況はというと、数の上では若干知波単学園が有利か。
サンダース側にはエース二人とメイヨー以外は、損傷した機体が1機いるだけだ。
ただし、エースの数ではサンダース側に分がある。
パイロット同士の連携が試される場面だ。
「Sutherland let's do it!」(やってやろうぜ、サザーランド!)
「あの戦法でいきましょう」
サザーランドはスピットファイアを降下させると、コルセアの横に並んだ。
そして加速し、敵の射線に
「むっ、何を企んでいる?」
自分の目の前に意味ありげに現れたスピットファイアに知波単のパイロットは戸惑いつつも、機銃のボタンを押し込んだ。
『当ててみなさい』
放たれた四式戦闘機の弾丸を、巧みなバレルロールでひるがえすサザーランド。
「ぬぅ、生意気な!」
それを知波単のパイロットは躍起になって追いかける。
しかし、彼女は気がつかなかった。
既に自分が、敵の術中にハマっていることを──―。
「Stay still」(じっとしてな)
スピットファイアの背中を必死に追いかける疾風。
実はそのさらに背後に、ミニットマンのコルセアが控えていた。
「Fire!」(発射!)
敵機に照準を合わせ、12.7mm機銃を撃つ。
「む?この音は……!?」
知波単のパイロットが発砲音に気が付いたとき、それは遅かった。
目の前のスピットファイアを追いかけるのに夢中で、後ろの敵に意識が向かなかったのだ。
そのまま被弾し、撃墜されてしまった。
「Frank kill!」(フランクをキル!)
「ナイスよ、ミニットマン!」
二人のとった戦法は<サッチウィーブ>というものだ。
二機のうち、一機が前に出て囮役を引き受ける。
敵を引き付ける間に、もう一機がとどめを刺すのだ。
相手としては、前後両方に意識を向けなければならないので厄介だろう。
事実、大戦中にこの戦法を採用したアメリカの戦闘機たちは、
それまで劣勢だった零戦との戦いで有利を取ることができた。
「すごい……。あんな完璧な連携がとれるなんて!」
「さあ、まだまだこれからよ!」
「Who is next one?」(お次は誰かな?)
だがこのサッチウィーブは、二機の連携が抜群でなければ成功しない。
最も、サザーランドとミニットマンにとっては朝飯前のようだ。
「むう、敵ながら良い連携也……」
ダブルエースの魔の手はアラハバキにも迫っていた。
戦法は分かっているはずなのに、どうしても対処ができない。
単純に二機の圧力が同時にかかるだけでも辛いのだ。
それが両方エースパイロットならば尚更だろう。
「落ちなさい!」
「Goodbye!」(じゃあな!)
「無念……。カグツチ殿、御武運を……」
二機に完全に挟まれたとき、アラハバキは自身の敗北を悟った。
そして勝利をカグツチに託して墜落した。
「Yeah we did it!」(よし、やった!)
「残りは誰かしら?」
「あと二機です、先輩!」
累計三機を撃墜し、知波単側の残りは二機となった。
*
「なるほどのう、おおよそ分かったぞよ」
そのうちの一機にエースのカグツチもいた。
彼女は敵の戦法を見るために、高度を上げて様子見をしていた。
「あの二機はわっちが頂く。汝はもう一機ゑ参れ」
僚機をメイヨーのタイフーンへ向かわせる。
そしてカグツチも降下し、エース二人へ挑んだ。
*
「来た……!先輩じゃなくて私の方に!」
メイヨーは上空から迫る疾風に気が付いた。
それに対応するために、機体を旋回させる。
「笑止!その程度でこの大東亜決戦機に挑むとは!」
だがタイフーンの弱点が露呈した。
機動力が低く、まともに回避ができないのだ。
ましてや相手は俊敏な四式戦闘機。
とてもかわし切れない。
「ぐうっ!?」
敵の弾丸を受けるメイヨーの機体。
だが今度はタイフーンの良さが光った。
頑丈な構造故に、攻撃を耐えきったのだ。
もしハリケーンのままだったら、即座に撃ち落されていただろう。
「耐えられた!?」
その頑丈さが知波単パイロットの誤算を生んだ。
敵はすっかり、今の攻撃で撃墜したと思い込んだのだろう。
離脱するのを忘れ、勢い余ってタイフーンの射線に入ってしまった。
「たあっ!!」
その瞬間をメイヨーは見逃さなかった。
照準が重なった直後、機関砲を打ち込んだのだ。
「これは参ったーっ!」
注がれる20mm砲四門の大火力。
あっという間に敵機は木っ端微塵になった。
「えっ……、これって撃墜……?」
自分の目の前で落ちていく機体を、メイヨーはその目で見た。
初めての撃墜を、彼女は成し遂げた。
記念すべき一機目撃墜の戦果だ。
「先輩!私やりましたよ!一機撃墜しました!」
自身初の偉業達成を先輩に報告する。
「ちょっと待ってて、メイヨー。こっちは忙しいから」
だがサザーランドには別の問題があった。
知波単のエース、カグツチとの決戦だ。
それに勝たなければ、メイヨーの頑張りも水の泡に終わるだろう。
*
「That's mighty enemy!」(こいつは強敵だな!)
「骨が折れそうだわ」
『ほれほれ、どうしたのじゃ?』
サンダース上空の戦いも佳境を迎えようとしていた。
相対する三人のエースによる空戦が始まったのだ。
「Damn it!」(くそっ!)
「サッチウィーブが通用しない!?」
『汝らの戦法はお見通しじゃ!』
サザーランドとミニットマンは、先程同様にサッチウィーブを仕掛ける。
だがカグツチはそれに乗ろうとしない。
既にネタがバレてしまったからだ。
『わっちがそう簡単に騙されると思ったら大間違いじゃ!』
サッチウィーブは最初に囮役が前に出るところからスタートする。
ならば対策は至ってシンプル。
囮に付き合わなければいいのだ。
「仕方ないわミニットマン、戦法を変えましょう」
「OK」(分かった)
このままでは勝てないと判断した二人は作戦を変更した。
編隊を解いて分散し始める。
『む~?今度は何じゃ?』
新たな戦法を警戒しつつ、カグツチも応戦する。
『Come on come on!』(かかってこい!)
『また挑発かのう?』
ミニットマンのコルセアが前に出る。
だが今度はサザーランドのスピットファイアが見当たらない。
明らかにサッチウィーブとは違う動きだ。
『好機じゃ!』
これをチャンスと捕らえたカグツチはコルセアを追いかける。
それに合わせてミニットマンの機体は上昇を始める。
『I'm in danger……!』(まずいな……)
どんどん高度を上げていくF4Uコルセア。
次第にエネルギーを失い、速度が遅くなっていく。
『もう虫の息じゃな!』
追いかける四式戦闘機は、まだ余裕がありそうだ。
減速するコルセアを射程に捉える。
『終わりじゃ!』
上昇が頂点に達し、コルセアの動きが止まりかかった。
次の瞬間──―。
『そこまでよ!』
雲間から颯爽とサザーランドのスピットファイアが姿を表す。
そしてカグツチの機体に全弾を叩き込んだ。
『なんじゃと!?』
あっという間に炎上する四式戦闘機。
見る見るうちに高度を失っていく。
『わっちのはんばあがあああっ!』
無念の叫びを上げながら、カグツチは機体と運命を共にした。
*
「こちらサンダース付属高校管制塔。上空の全ての敵機反応を消滅確認。
「Yeeeees!」(よおおおおし!)
「流石に疲れたわ……」
「お疲れ様です、先輩方!」
カグツチを撃墜し、勝利を収めた三人。
思い返せば圧倒的不利な状況からの逆転だった。
「
「当たり前よ。あなたと私の仲でしょう?」
「先ほどの動きって……」
カグツチを仕留めた戦法は、サッチウィーブと異なる動きだった。
まず片方の一機が敵を引き寄せながら上昇していく。
その上昇を限界近くまで続ける。
当然、相手も追いかけた場合は徐々に速度が落ちていく。
これは位置エネルギー保存の法則に基づけば必然的にそうなる。
「そこに、私のスピットファイアが合わせたワケ」
「Good job!」(よくやった!)
敵機が減速したタイミングに合わせ、もう一機が攻撃をする。
最初にサザーランドの機体が見えなかったのは、こっそり高度を稼いでいたからだ。
「でも、それって大分難しいですよね?」
メイヨーの言う通り、この戦法はサッチウィーブ以上に難しい。
サッチウィーブは比較的、平面の連携が取れていれば可能な戦法だ。
しかし今回の場合は、僚機の高度やエネルギー状況なども考慮しなければならない。
「まあ、私たち二人以外には不可能な動きかもしれないわ」
「You are my best friend!」(お前は最高の友達だ!)
あまりに高度な連携である故に、この戦法に名前を付けることは難しい。
それを成し遂げたサザーランドとミニットマンには脱帽しかないだろう。
「さて、サンダース学園艦に戻りましょうか。メイヨーの初撃墜のお祝いもしないとね」
「あっ先輩!覚えていてくれたんですか!」
「Congratulations!」(おめでとう!)
戦いを終え、着艦をしようとする三人。
「……ん?エンジンが……」
「どうしましたか?先輩……、あれ?」
突然、スピットファイアとタイフーンのエンジンが止まる。
「What's up?」(どうした?)
「エンジンが効かない!?」
「私もです、先輩!」
慌てふためくサザーランドとメイヨー。
落ち着いて、計器の数値を測ってみる。
「先輩、
「燃料切れ!?おかしいわね、確かに給油したはずなのに……」
残りの燃料を示すFUELのメーターが0を指している。
つまり二人の機体が燃料切れを起こしているのだ。
いくらスピットファイアやタイフーンの航続距離は長くないとはいえ、
こんな短時間で燃料が空になるはずがなかった。
「Why do your engine stop?」(何でお前たちのエンジンが止まってるんだ?)
「うーん、整備員さんのミスでしょうか?伝えた燃料の数値は正しいはずですが……」
「数値?……、あっ。」
何かを察したサザーランドに悪寒が走る。
「ねえミニットマン。ここの整備員が使ってる単位は?」
「
「ヤードポンド?……あー、そういうことですか……」
メイヨーも気が付いたようだ。
給油の際に二人が整備員に伝えた数値はメートル法だった。
しかしこのサンダース付属ではヤードポンド法を普段使いしている。
つまり同じ数値でも単位が違うのでズレが生じるのだ。
それが燃料切れを起こした原因だった。
「そういう大事なことは最初に言ってくださいよ!!」
「おのれヤードポンドおおおおぉっ!!」
「HAHAHA! This is funny!」(ハハハ!これは傑作だな!)
結局、二人はエンジンもプロペラも停止した状態での着艦を余儀なくされた。
幸い高度はあったのでグライダーのように滑空して降りたのだった。
その後の彼女たちがヤードポンド廃絶を訴えたのは言うまでもないだろう──―。
今回のヤードポンド法が原因による燃料切れの流れはエアカナダ143便の航空事故、通称ギムリーグライダーが元になっています。
気になる人は検索してみてください。ニコニコ動画に当時のドキュメンタリー番組の動画もあるので併せてどうぞ。(もう助からないぞってタイトルのやつです。)
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