ガールズ&ファイター 聖グロリアーナのエース 作:ゲオルギーJr
「同志諸君、よくぞ集まってくれた。今年は我らがプラウダ高校の開校百周年の節目だ」
プラウダ高校で開催された全校集会。
じつに数万人の生徒たちの前で演説しているのが、生徒会長の
マイクの音感は、会場中全体に聴こえるように調節してある。
「知っての通り、プラウダは今や日本屈指の学校だ。だがそれは一日で達成したものではない。これまで我が校に尽くしてくれた、多くの同志たち。それが無くては成し得なかった偉業である」
威厳ある演説に、校内全体が静まり返る。
そして露音はスピーチの最後を、こう締めた。
「この偉大なる学校を引継ぐのが、今の君たちだ。今後も更なる努力を重ねれば、我々が日本一となる日も遠くないだろう。プラウダ高校よ、永遠なれ!」
その言葉で、生徒たちから拍手喝采が沸き起こる。
演説の原稿をしまうと、露音は盛り上がる会場を後にした。
*
「おはようございます、先輩!」
朝五時の聖グロリアーナ学園艦──―。
まだ夜も明けきらないうちに、サザーランドとメイヨーは起床していた。
「ふわぁ……。朝から元気そうね……。私はまだ眠いわ……」
「シャキッとしてください。今日は継続高校に行く日ですよ!」
まだ寝ぼけまなこのサザーランドを、メイヨーが引っ張っていく。
「朝食は済ませましたか、先輩?」
「ん~……。まだねぇ……」
食堂に行き、モーニングセットを注文する。
朝早いだけあって、まだ他の生徒の姿はまばらだ。
「ほら、ジャムトーストですよ。早く食べてください」
「むぐむぐむぐ……」
メイヨーはトーストにイチゴジャムを塗りたくると、サザーランドの口に無理やり押し込んだ。
「イングリッシュブレックファーストを淹れましたよ。飲んでください」
「……あちちちち!熱い!まだ熱いわよこれ!」
出来立ての熱い紅茶も、強制的に流し込んでいく。
火傷の危険を感じると、ようやくサザーランドが完全に目を覚ます。
「お目覚めですか、先輩?」
「ええ、おかげさまでね……」
手っ取り早く朝食を済ませると、二人は出発準備を始めた。
「メイヨー、防寒対策はしっかりしなさい。向こうは寒いわよ」
今回向かう先は、かなり北側にある学園艦だ。
とはいえ、もう春も過ぎ夏に差し掛かる時季だ。
そこまで防寒する必要はないように思えるが……。
「え?もう初夏ですよ?そんな厚着にしなくても……」
「ダメよ。これを着ていきなさい」
そう言うとサザーランドは、無理やりマフラーを首に巻かせる。
この季節としては、少々暑苦しい格好だ。
「う~、暑いですよ先輩……」
「大丈夫よ。すぐに丁度良くなるわ」
真冬の登山客のように着せ替える二人。
一見過剰にも思える服装だが、後にこれが正しいことが証明される。
「さあ、行きましょう」
「汗が……」
こうして二人は滑走路へと向かった。
*
「スピットの整備は済んだかい?ハリケーン担当の班も早くしな!」
会長の派遣命令を受け、滑走路周辺は慌ただしくなっていた。
なぜなら普段の数倍の数の戦闘機を、一度に送り出さなければならないからだ。
整備班の指揮は班長の清美が執っている。
「うわあ。何かすごいことになってますよ、先輩」
「こういう非日常感は嫌いじゃないわ」
現場に到着した二人は、その光景に驚いた。
何機ものイギリス機が、所狭しと並んでいる。
整備と補給が済んだ機体は、次々と滑走路へ送られていく。
「ふう。一段落ついたかい?」
「おはよう、きよみん。朝から大変そうね」
作業が終わりそうなタイミングを見計らって、サザーランドが話しかける。
「お~、お二人さん!よく来たね!寝坊してんのかと思ったよ!」
「私が先輩を叩き起こしたんですよ」
「熱々の紅茶をご馳走になったわ……」
オイルで汚れた手袋を外して、清美は二人を迎えた。
「いやはや、今回は一大事だねぇ。こんなに大量の戦闘機を見送るのは初めてだよ」
「私も、三年間のパイロット生活では二回目くらいだわ」
「こんな経験、二度と味わえないかもしれませんね」
今回、継続側に送る戦闘機は実に二十機程度。
聖グロの航空戦力の約三分の一に当たる数だ。
エースを送るという意味では、それ以上かもしれない。
「でも大丈夫かねぇ?相手はあのプラウダ高校だろう?これだけじゃ足りない気が……」
「問題ないわ。今回はサンダース付属も一緒よ」
「サンダースが味方なら、負ける要素はありません!」
幸子が派遣する戦闘機の機数は、サンダースとの協力が前提の数だ。
各校のおよその戦力から割り出した数字だと思われる。
それでもかなり思い切った数だろう。
いくら自校の利益のためとはいえ、他校にこれほどの支援を出すのは異例だった。
「そうかい?なら安心だねぇ」
「ほぼ勝ち戦よ。たいしたことにはならないと思うわ」
「プラウダ側も怖気づいちゃうんじゃないですか?」
そうこうしているうちに、発艦の時間がやって来た。
パイロット達がそれぞれの機体に搭乗を開始する。
「そろそろ時間ね……」
「おう、気張っていきな!」
「行ってきます!」
サザーランドのスピットファイアmk.IX、
メイヨーのタイフーンmk.Ibは両方とも整備済みだ。
エンジンを始動し、プロペラを回転させる。
「どんどん飛んでいくわね」
滑走路へ入ると次々に発艦していく戦闘機の姿が見えた。
「私たちも続きましょう、先輩!」
二人の機体も発艦位置につく。
管制塔に許可を要請すると……。
「こちらサz──―
「あーはいはい。発艦許可出すんでどうぞー」
相次ぐ許可要請でウンザリしたのか、管制官は雑な受け答えで済ませた。
「管制官の人たちも大変ですね」
「こんなに雑な対応されたの初めてだわ」
ともかく、許可は下りたので発艦を開始した。
どうやら二人が最後のようだ。
前方にはたくさんの聖グロ所属の戦闘機が見える。
「これは……、壮観ですね」
それぞれ編隊を組んで一つの大部隊が結成された。
まさに聖グロの主力が結集した大編隊だ。
「何だか本物の空軍に入ったような気分だわ」
「映画のワンシーンみたいですね!」
この大編隊の指揮を執るのは、エースのサザーランドだ。
それ以外に適任者はいないだろう。
「全機、これより我々は継続高校に向かいます。つきましては私の指示に従うように」
指揮官として、全体に無線を送るサザーランド。
するとウェリントンのスピットファイアが隣に飛んできた。
「ふん!エースだからって、リーダーみたいな振る舞いしてるんですの?」
「みたいな、じゃなくて私が正真正銘の編隊長よ」
「貴方如きに、私は命令を受けたくはありませんですの!」
またしてもエースと第二位が言い争いを始める。
見かねた管制官か釘をさした。
「こちら管制塔。編隊の全機体は、隊長機の33番に従うように」
「……了解ですわ」
明らかに不満そうな声で応答したウェリントンは、元の位置に戻った。
「ウェリントンさん、いつもあんな感じなんですか?」
「そうよ。相手するだけ無駄ね」
「ちょっと二人とも!?聞こえてますわよ!」
サザーランドとウェリントンの関係は昔から変わらなかった。
やはりエースの座というのは、色々な意味で魅力的なのだ。
それゆえお互い、ライバルのように戦績を競い合う間柄だった。
同じ学校のパイロットだから仲良くしましょう、といった単純な言葉では片付けられない。
「あ!そういえば継続高校ってどんな場所なんですか?」
再び喧嘩になる前に、メイヨーが話題を変える。
「うーん、分からないのよね。私行ったことないから」
「どうせ貧乏でちっぽけな学校ですわ。聖グロとは雲泥の差ですわね」
継続高校は謎の多い学校だった。
そもそも小規模な学園艦なので、行き来する人が少ない。
加えて、学問やスポーツで著名な成果を上げている訳でもない。
そういう点では、大洗女子学園に近しいかもしれない。
しかし継続高校に関しては、空戦道に関する情報すら曖昧だ。
どんな戦闘機を使っているのか、何機保有しているのかもベールに包まれている。
「じゃあ、謎多き学校ってことですね」
「まあ、戦力としては期待しない方が良いわね」
「我々の足元にも及ばないんですわ!」
聖グロの飛行編隊は北へと向かっていく。
少しずつ、しかし確実に下がっていく気温を肌身に感じながら、継続高校の学園艦を目指してフライトを続けていった──―。
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