ガールズ&ファイター 聖グロリアーナのエース 作:ゲオルギーJr
「降伏する……?このままでは……」
継続高校の会長室で悩む一人の女性。
生徒会長の
それはつまり、プラウダからの脅しに屈するか否かの決断だ。
「しかし我が校にプラウダと対抗できる戦力は……」
ただ、継続高校単独では確実に勝てない戦いである。
相手は国内でもトップクラスの規模を誇る学校だ。
もちろん、その事実を芬は理解していた。
ここで重要なのは、他校から支援を得られるかどうかだ。
有力な学校から援軍が来れば、継続側にも勝ち目はある。
「そんな学校、いるわけがない……」
ただし、継続の味方につくということは即ち、プラウダを敵に回すということだ。
そんな度胸がある高校が、果たして存在するのかどうか?
いたとして、継続高校に支援を出してくれるのか?
それが今の彼女の最大の悩みだった。
「会長、失礼します」
悩みすぎて胃薬のオーバードーズを起こしそうな芬に救いの手が伸びたのはその時だった。
突然、他の生徒会メンバーが入室してくる。
「ごめんなさい、今は他のことを考えられなくて……」
「いえ、そのことではなく……」
その生徒が芬に用件を伝える。
「ええ!?聖グロリアーナの方達が!?」
「はい。代表者が今、この部屋の前まで来ています」
聖グロの人、つまり援軍のパイロット達が到着したという情報だった。
代表者とはエースのサザーランドを指しているのだろう。
芬が夢にまで思わなかったヒーローの登場といったところか。
「すぐに入室させて!後はお茶の用意を!」
「申し訳ありません会長。茶葉は切らしています」
「ならお湯でもいいから!」
芬の指示で、直ちに会議が開かれることになった。
聖グロと継続による、対プラウダ作戦会議だ。
*
「初めまして。今回、聖グロリアーナを代表して来ました。サザーランドです」
「継続高校へようこそ。私が生徒会長の小峰芬です。どうぞお座りください」
聖グロ側の生徒たちが入室し、緊急会議が始まった。
部屋に右側には会長の芬と生徒会メンバーたちが、
反対側にはサザーランドとメイヨーが座る。
参加者の手元には湯吞みが置かれた。中はお茶ではなく、ただの白湯だった。
「あのう、先輩。私が参加していいんですか?」
「問題ないわ。けど騒がないようにね」
こういう堅苦しい会議に慣れないメイヨーは、どこかそわそわしていた。
そんな彼女でも、自分が今とても重要な場にいるのは察していた。
「さて、本来なら貴方達を歓迎したい所ですが、あいにくとそういう状況ではないんです」
「分かっています。まずは今の継続高校が置かれている立場について教えてください」
前置きの雑談をする暇もなく、本題へと入る。
それほど切羽詰まった状況なのだろう。
「そうですね……。では最初に継続とプラウダの歴史的関係から……」
「その説明は必要ないです。既にプラウダとの緊張状態に至るまでの経緯は把握しています」
淡々と話すサザーランドに、芬は表情を和らげる。
「それなら話は早いです。では先日の中立高校での会談についてお話しします」
「分かりました。メモをしたいので何か書くものをくれませんか?」
すると生徒会メンバーの一人が紙とペンを渡してくれた。
サザーランドが話を聞く態勢に入る。
「では始めますね。事の発端は今年二月。この日、我らが継続高校とプラウダ高校による、合同の戦車道の練習試合がありました。その直後、プラウダ側から自校の戦車が一両、行方不明になっているとの情報が伝えられたんです」
「はい」
黙々とメモを取っていくサザーランド。
芬の話は続く。
「当然、真っ先に我が校の戦車道履修の生徒が疑われました。そこで私は戦車道の隊長に直接問い合わせようとしたんです。戦車道の管轄は当の隊長の仕事ですから」
「隊長ですね……。それから?」
「ここで問題が発生したんです。隊長の名前はミカというんですが、彼女の居場所がつかめないんです」
「ミカ、居場所……。つかめない?どういうことですか?」
おもむろにペンを止めるサザーランド。
かなり複雑な事情のようだ。
「どうやらミカという生徒はかなりの自由人のようでして……。いつも何処かに放浪しているみたいなんです。そのせいでいくら捜索隊を派遣しても発見できず……」
「随分と変わった人間みたいですね。ミカさんという人は」
再びペンを走らせるサザーランド。
どうやらミカという人物がキーマンらしい。
「事情が変わり始めたのは今年四月からです。それまでは戦車の返却を求めるメッセージはプラウダの戦車道関係者だけから来てたのですが、そこから向こうの生徒会長が直接問い合わせるようになったんです。早く我々の戦車を返せ、と」
「プラウダの会長……。入一露音ですか」
「そうです。それまでは、あくまで戦車道だけの問題だったのですが、徐々に会長同士の話し合いが増え、ついには学校全体での対立にまで発展してしまったんです」
「なるほど。先日の会談も、その一環というわけですね」
「その通りです。実はそれまでにも何度か電話会議も含めた話し合いがあったのですが、やはりミカが不在では話が全く進まず……。結局、現在に至るまで彼女の所在は不明です」
「で、交渉決裂と」
ようやく会談の決裂までの経緯が把握できた。
議題は次に移る。
「問題はここからです。中立高校での会談後、一本の電話がかかってきたんです。プラウダ高校からの電話でした。その内容は、期日までに戦車の返却ができない場合、相応の処置を取る、といったものでした」
「相応の処置……。それはつまり……」
「隠しても仕方ないでしょう。実力行使です」
実力行使という言葉に、周りの生徒が反応を見せる。
それをお構いなしに、芬は話し続ける。
「具体的にどういった行動に出るかは不明ですが、ほぼ確実に戦闘機を送ってくると思います。それもかなりの数になると予想されてます」
「でしょうね。もしやるのなら、確実に息の根を止めてくる」
「といっても、考え方によってはとっくに実力行使は始まっているのかもしれません」
「どういうことですか?」
芬曰く、プラウダは既に動き始めているという。
「ここに来るまでの間、艦内の様子はご覧になられましたか?」
「はい。何か異常事態が発生しているように見えましたが……」
ここで言う異常事態とは、行列のできるスーパーや昼間から閉店しているシャッター街のことだ。品薄状態のコンビニも含まれる。
「あれは我が校に向かう船や飛行機を、プラウダ側が圧力を掛けて殆ど止めているのが原因です」
「船や飛行機?」
「詳しく言えば、物資を送る輸送船及び輸送機のことです。それらが現在ストップしている状態です」
この問題を理解するには、学園艦という場所の性質を把握する必要がある。
学園艦とは、言ってしまえば海に浮かぶ巨大な町だ。
町ということは、必然的に多くの人間の生活の場でもある。
学校の生徒以外にも、多くの関係者が住んでいるのだ。
そこで必要となる、食料や生活必需品の調達は、基本的に外部からの運搬に頼ることになる。
しかし学園艦は海上にあるので陸路による輸送は出来ない。
海から船で運ぶか、空輸に任せるしかないのだ。
それらの供給が止まってしまうと、学園艦は急速に物不足に陥る。
何せそれ以外に物を運ぶ手段が存在しないからだ。
一応、母港停泊中に運び込まれる物資もあるが、いずれは尽きてしまう。
これが短期間であれば、まだ対処可能だろう。
しかし長期に渡るとなると、食糧不足などが浮き彫りになってくる。
最悪、飢餓に近い状態になってしまうかもしれない。
「スーパーに並ぶ人々は、今のうちに少しでも多くの食料を確保するために朝から並んでいるんです」
「買い占めってやつですか。かなり危険な状況ですね」
「一応、食料や生活必需品に関しては現在配給制にしているので、直ちに問題になるとは考えにくいです。しかし、いずれ備蓄も尽きてしまうでしょう」
もし艦内の食料が底をついたらどうなるのか?
言わずもがなだろう。
継続高校は学園艦としての活動が完全に不可能になる。
「もう訪問客に出すお茶の茶葉もありません」
「……おおよその事情は分かりました」
「生徒会長の私から、学校全体を代表してのお願いです。助けてください」
芬は深々と頭をさげた。生徒会メンバーも同じくお辞儀をする。
それは他意のない、純粋で切実な願いなのだろう。
自分たちの学校なのに、自分たちだけでは守りきれない。
それを完全に割り切って、外に助けを求める。
継続高校の生徒会長、小峰芬はそれができる人物だった。
「引き受けましょう。元々そのつもりで来たのですから」
サザーランドが許諾の言葉を口にすると、芬は肩をなで下ろした。
「ああ……。ありがとうございます」
聖グロ側が援軍を出した理由は、継続高校を助けたいというより、どちらかというとプラウダ高校の勢力拡大を阻止したいという意味合いが強いのだが、今は言わない方が良いだろう。
「まあ、今回援軍を送ったのは私たち聖グロリアーナ以外に、サンダース付属高校もいるので問題ないと思います」
「サンダースもですか!?」
予想外の支援勢力に、芬は舌を巻いた。
国内最大の学校が味方ならば、これほど心強いものはない。
「はい。もうすぐ合流する手はずですが……。まあ今日中に来るでしょう」
「こんな小さな学校にそれほどの手厚い支援を……。本当にありがとうございます」
「そうでした。一つ質問があるんですが……」
サザーランドが再びペンとメモを手にした。
まだ聞きたいことがあるようだ。
「プラウダ側の言う、戦車返却のタイムリミットはいつですか?」
「明日の正午、十二時です」
「もしその時間が過ぎたら?」
「今のところ、はっきりしません。一応、いつ戦闘機が空域に侵入しても対応できるようにしておきますが……。実際に何をしてくるかは不透明です」
果たしてプラウダは何を仕掛けてくるのだろうか?
期日を設けている以上、準備は進んでいると思われるが……。
「我々としても、一番望ましいのは衝突の回避です。時間ギリギリまで、交渉の余地がないか検討します。戦車道の隊長を探す努力も続けます」
「パイロットの出番がないのが理想的、ですか……」
プラウダとは昔から対立しているとはいえ、本心としては戦いたくないのが芬の本音だった。
なんだかんだで同じ日本の高校なのだ。
仲良くできるのならそうしたいだろう。
「ともかく、今日はここで泊まってください。大した料理も振る舞えませんが……」
「いいですよ。最低限の寝床さえあれば十分です」
「分かりました。こちらで手配します。それともう一つ……」
芬が一枚の写真を出す。
「我が校のエースパイロットと是非会っておいてください。この写真の生徒です。わずかでも戦力の足しになれば幸いです」
写真の生徒は何だか頼りなさそうな印象の生徒だった。
「了解しました」
会議はひとまず終わり、芬や生徒会メンバーは退室していく。
「ふうー。やっと終わりましたかあ……」
メイヨーは終始緊張していて何も喋れなかった。
「ほら行くわよ。継続のエースに会ってみましょう」
「どんな人なんでしょうかね?」
聖グロ側の二人も、継続のエースと出会うべく、部屋を後にした。
プラウダと継続の対立は、二次大戦中の冬戦争が元になっているようです。
一番好きな学校は?
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大洗女子
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聖グロリアーナ
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サンダース付属
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アンツィオ
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プラウダ
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黒森峰
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知波単
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継続
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その他(BC自由等)