ガールズ&ファイター 聖グロリアーナのエース   作:ゲオルギーJr

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最終回みたいなタイトルですが、まだ続くので安心してください。


ガールズ&ファイター

「先輩、おはようごz──へっくしょん!

 

「メイヨー、おはよう。朝はますます冷えるわね」

 

継続高校で寒い朝を迎えた二人。

亜寒帯気候の地域に属するこの場所は、6月でも最低気温が氷点下になることがしばしばある。

油断していると、体が冷えて風邪をひいてしまう。

 

「ほら。あったかいスープよ。これを飲みなさい」

 

メイヨーが朝食の野菜スープを飲む。

野菜スープとはいっても、もやしが少し入っただけの貧相な塩スープだ。

とはいえ継続高校の食糧備蓄を考えれば致し方無いことだった。

 

「ふ~。これは温まりますねぇ」

 

「このライ麦パンも食べておきなさい。ちょっと酸っぱいけどね」

 

サザーランドが配給された硬いライ麦パンを切り分けて食べる。

これは黒パンとも言われていて、普通の小麦が育たない北欧などで主食として好まれるパンだ。

ただ、酸味が強いので普通のパンに慣れた人には食べにくいかもしれない。

しかし、他に食料がない今は多少無理をしてでも食べるしかない。

腹が減っては戦ができぬ、だ。

 

「もぐもぐ……。確かに酸っぱいですね。まあ仕方ありませんか」

 

「我慢しなさい。聖グロに帰ったら好きなもの食べていいから」

 

簡易的な朝食を済ませた二人は、機体に搭乗するために空戦道用のジャケットへ着替える。

今日は何が起きるか分からない日だ。

要請があれば、いつでも戦闘機に乗れるように備えなければならない。

 

「さて、あとはプラウダの動き次第ね……」

 

「あ、そういえば先輩。サンダース付属の人たちは?」

 

「あら?まだ来てないのかしら?」

 

聖グロ側が継続高校に援軍を送ってから丸一日経つというのに、サンダースのパイロットや機体は未だ到着していなかった。

まだ時間に余裕はあったが、そろそろ来ても良いタイミングのはずだ。

 

「まあ、間に合うでしょう。まだ朝だし」

 

心配してところでどうしようもないので、二人はそのまま待機することにした。

 

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

 

 

「ミカさんは?見つかったの!?」

 

「いえ、会長。足取りすら不明です……」

 

一方の会長室では最後の足搔きともいえる状態になっていた。

今回の戦車窃盗事件において99.9%真犯人であろう、戦車道隊長のミカを連れ出すためにあらゆる手段を尽くしていたが、徒労に終わった。

プラウダ側が提示した、タイムリミットまであと3時間も残されていない。

発見は絶望的だろう。

 

「なら、プラウダとの交渉余地は!?」

 

「昨日の夜からプラウダ高校と電話が繋がりません。恐らく向こうは交渉するつもりが無いと思われます」

 

電話が繋がらないということは、もう話し合う意思すら消えたのだろう。

こうなると継続側に出来ることは何もない。

ただ時間が過ぎるのを眺めるだけだ。

 

「ああ……。やはり戦う以外に道は無いのね……」

 

「心配しすぎるのも体に悪いですよ、会長。テレビでも見てリラックスしましょう」

 

「……そうしましょう」

 

会長室のテレビを付け、気を紛らわす芬。

放送されていたのは平和な動物番組だった。

 

「犬や猫は幸せそうでいいわねぇ……」

 

無邪気にじゃれ合う動物たちに癒される芬の心。

だがそれは長く続かなかった。

 

 

『突然ですがここで臨時ニュースです。サンダース付属の生徒会長が記者会見を開くとの情報が入ってきました』

 

「え?サンダースの会長が?」

 

突然番組が打ち切られ、ニュースに切り替わる。

映像はサンダース付属の記者会見場を映すライブ中継になった。

 

『えー、あーマイクチェック……。はいオッケーね。じゃあ臨時会見を始めまーす』

 

サンダースの生徒会長もとい、プレジデントの久米子はテレビ中継されているとは思えないほど軽い口調で会見を開いた。

芬がテレビの向こうにいる人物の言動に意識を向ける。

 

『今日はね、とある学校が最近起こしてる問題について話したいんだ。プラウダ高校っていうんだけどね』

 

「プラウダ……!?」

 

会長室の緊張が一気に高まる。

それはまさに今、彼女たちが直面している問題だからだ。

 

『ここ最近、プラウダ高校が継続高校に対して不当な圧力を掛けてる疑惑があるんだ。で、それに対して我々サンダース付属が懸念してる、ってことを伝えたいんだよね』

 

「…………」

 

芬が固唾を飲んで会見を見守る。

 

『ただ、我々としては両校の平和的解決を望んでいる。だから今回の件に関しては戦闘機とかの援軍は送らないことにした。あくまで話し合いで解決して欲しいんだ』

 

「……え?」

 

『とはいえ、流石に継続高校に対して何も支援しない、ってのも非道じゃない?だから食糧援助とかの人道支援はこっちでやらせてもらうよ、ってことを伝えたかったんだ。プラウダには悪いけどね』

 

「……え?え?」

 

いきなりの情報の多さに混乱する芬。

喜ぶべきなのか、焦るべきなのか……。

 

『はい、今日は以上!いきなりの会見でソーリー!ま、私は総理じゃなくてプレジデントだけどねー。アハハ!』

 

そのままライブ中継は途切れてしまった。

 

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

「サンダースの人たち、まだ来ませんねぇ。トラブルでも起きたんでしょうか」

 

「ん?私の携帯から?」

 

同じころ、サザーランドの携帯に着信が来た。

相手は聖グロの生徒会長の幸子からだった。

 

「はい、サザーランドです」

 

「おい、今の会見を見たか!?」

 

開始早々怒号に近い声を浴びせる幸子。

サザーランドたちは久米子の記者会見を見ていなかった。

 

「会見?何のことを──―」

 

「サンダース付属会長のだ!見てなかったのか!?」

 

「え?サンダースの会長がどうしたんですか?」

 

「一大事だぞ!我が校の存亡に関わる危機だ!」

 

電話越しで、やけに焦りを見せる幸子。

理由は当然、サンダースが戦力派遣を見送った件だ。

これで彼女の計算が全て狂ってしまった。

 

「久米子の奴が、今回のサンダースの援軍をキャンセルするだの言い始めたんだ!」

 

「……は?それじゃあ……」

 

そのとき、サザーランドとメイヨーの元に、継続高校の生徒会メンバーが息を切らしながら走ってきた。

 

「はぁはぁ……。直ちに会長室に来てください。会長が呼んでいます!」

 

「え?ああ、はい。分かりました……」

 

「何があったんですか、先輩!?」

 

相次ぐ急な流れに状況の理解が追いつかないまま、二人は芬のところへ走っていった。

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

「…………」

 

「芬さん……?」

 

会長室に入ったサザーランドの目に飛び込んだのは、青ざめた顔をした芬の姿だった。

以前、中立高校での会談の際に映った中継映像のときよりも、さらに悪化した状態だ。

 

「芬さん、私です、サザーランドです」

 

「ああ、サザーランドさん……。私はどうすれば……」

 

完全に精神的に参っている様子の芬をサザーランドが支えた。

そのおかげで少しだけ顔色が改善した。

 

「何が起きたのか、教えてください」

 

「取り乱して申し訳ありません。直ちに説明します」

 

若干手が震えながらも、芬が席に座った。

そして会見の内容を淡々と説明し始めた。

 

「つい先程、サンダースの生徒会長が記者会見を開きました。内容は以下の通りです。今回のプラウダ高校の一連の行為に対して懸念を示すこと。ただし、継続とプラウダには平和的解決を望んでいること。それに伴い、戦闘機の派遣を見送ること、代わりに我が校に対し、食糧援助などの人道支援をすること。以上です」

 

「……え?待って下さい。サンダース側の戦闘機が何て?」

 

「ですから、サンダース付属は今回、戦闘機などの援軍を一切出すつもりはないということです」

 

「となると、プラウダ高校と戦えるのは……」

 

その瞬間、サザーランドは衝撃の事実に気が付いた。

サンダース付属が援軍を送れない、となると継続高校の味方は聖グロしかいないということになる。

しかも戦力の一部、約二十機の航空戦力のみで、だ。

 

 

 

その事実に気が付いたのと同じタイミングで、会長室の電話が鳴った。

 

「こんなときに?……もしや!?」

 

芬に悪い予感が脳裏に走る。

今、このタイミングで継続高校の会長室に電話をかけてくる相手。

その相手はごく限られるだろう。

身震いしながら受話器を取った。

 

 

「はい。継続高校、会長の芬ですが……?」

 

「こんにちは、芬君。どうかね、気分は?」

 

電話越しに聞こえた声は、少し前に会談で話し合った人物の声と完全に一致していた。

そう、プラウダ高校の生徒会長、露音その本人だ。

 

「露音さん?一体何の用件で──―」

 

「とぼけるな。見つかったのか?我が校のKV-1は?」

 

「いえ、まだです……。戦車道の隊長に聞かないと分からないかと……」

 

「ではその隊長の方は?」

 

「……見つかっておりません」

 

露音がわざとらしいため息をつく。

 

「はあ……。では仕方あるまい。あと一時間足らずで期限の正午だ。我が校が取る行動を伝えておこう」

 

そう言うと通話は一方的に切られてしまった。

それと同時に、一通の紙がファックスで送られてきた。

 

「これは一体……?」

 

 

恐る恐る電話機から紙を取る芬。

それを見た次の瞬間、彼女は気が滅入って倒れ込んだ。

 

「会長!?しっかりしてください!」

 

駆けつける生徒会メンバーをよそに、聖グロの二人はプラウダから送られた紙を読んだ。

 

「……これって……!」

 

「……こんなことが……」

 

その衝撃的な内容に二人は言葉を失ってしまった。

紙に書かれた文章は次の通りだ。

 

 

「非常に残念なことだが、今回我々が提示した期日までに、盗まれた戦車の返還は認められなかった。こうなると、以前から警告したように、相応の処置を取らざるを得ない。その具体的な内容は次の通りだ。今から我がプラウダ高校所属の航空機が貴校に対して攻撃を行う。それは貴校の学園艦において特定の場所を指定するわけではない。無差別的に航空攻撃を行う。もし実行されれば、艦内の設備や人員に甚大な被害を与えるであろう。しかし、我々も鬼ではない。もし今から提示する条件を直ちに受諾するのであれば、攻撃は中断しよう。その条件はただ一つ。継続高校の生徒会が持つ全ての権限をプラウダ高校の生徒会に譲渡してもらいたい。この簡単な要求を飲み込むだけで、君たちの艦は安全になるのだ。良い返事を期待している。以上」

 

 

この文章は要するに宣戦布告だ。

もし用件を飲み込むつもりが無いなら、艦に対して攻撃を行うという、完全な脅しである。

 

「生徒会の権限を譲渡……?」

 

しかし逃げ道も残されている。

継続側の生徒会の権利を丸ごとプラウダに差し出せば許してあげよう、という文だ。

一見良心的な譲歩と思うかもしれないが、これには重大な意味があった。

 

「なるほどね。完全に継続高校を支配下に入れよう、って寸法だわ」

 

学園艦における生徒会には、その学校の生徒や住民及び校内の施設やモノを管理する権限がある。

その権利を渡せ、ということはお前の学校は全てこちらの思うがままに操ってやるぞ、というメッセージと同義だ。

それを一見マシな言葉に聞こえるように改変しているだけである。

 

 

 

「また電話?」

 

すると今度はサザーランドの携帯が鳴った。

相手は再び幸子だった。

 

「おい、状況はどうなっている!?」

 

サザーランドがプラウダからのメッセージを伝える。

 

「……そうか……。まさかこんな事になるとはな……。もっと戦力を多くすべきだったか?しかし時すでに遅しか……」

 

幸子が希望を失ったような暗い声を吐いた。

普段の力強さは完全に消え失せている。

 

「サザーランド、お前は戦うつもりか?戦力差は圧倒的だぞ」

 

「プラウダはどのくらいの航空機を所持してるんですか?」

 

「あくまで諜報員からの情報だが、およそ100機だ。その内どの程度使用してくるかまでは分からんが」

 

プラウダ側の航空戦力は最大で約100機。

対するこちらは継続高校が10機、聖グロが20機の合計30機だ。

 

「キルレシオ*1が1対3でも勝てない計算ね……」

 

一人当たり三機撃墜してもなお敗北するという現実──―。

むろん、相手にもエースがいることを忘れてはならない。

 

 

 

 

 

「……降伏しましょう。今なら間に合います」

 

倒れ込んでいた芬がヨロヨロと立ち上がった。

 

「もう限界です。勝ち目の無い戦いに参加する必要はありません。プラウダ側の条件を受け入れましょう」

 

投降を決めた彼女がプラウダに電話をかけるべく、受話器を取る。

 

 

「いいえ。私たちは戦います」

 

その手を止めたのはサザーランドだった。

これほど絶望的な状況にもかかわらず、降伏せず戦うと言うのだ。

 

「……何故ですか?私たちに勝ち目はありません。下手に抵抗すれば、人々に被害が及ぶ可能性だってあるんです。それならいっそ、潔く負けを認めた方が……」

 

「芬さん。あなたは継続高校の生徒会長です。ならばこの学校とそこに住む生徒や住民を守る義務がある。そうですよね?」

 

「その通りです。だから私は降伏を……」

 

「それは間違っています。今降伏すれば、もう継続高校は永遠にプラウダの支配から逃れられないでしょう。それは果たして学校を守っていることになるんですか?」

 

「それは……」

 

「あなたも薄々理解しているのでしょう?ここで戦わなければ一生後悔するって。ならば立ち向かいましょう。その結果がどうあれ、ね」

 

サザーランドが闘志に溢れた目で、芬を見つめる。

 

「どうして私たちのために、勝ち目の無い戦いに挑むのですか?あなたにとっては、この学校を守る義務は無いはずです。それなのに、なぜ……」

 

芬はサザーランドがどうしてやる気満々なのが理解できなかった。

極端に言えば、継続高校が消滅したところでサザーランドにとっては何の影響もないはずだ。

それを踏まえれば今すぐここから逃げだしても不思議ではない。

それでも彼女は戦う意思を崩さなかった。

 

 

「私たちは戦闘機(ファイター)パイロットであり、同時に戦う者(ファイター)なのです。目の前に戦いが迫っているのなら、どんなに絶望的であっても立ち向かいます。それが私の戦う理由です」

 

サザーランドの確固たる決意を見た芬はついに降伏を取り止めた。

 

「分かりました。あなたがそこまで言うのなら止めはしません。私たちを……。継続高校を救ってください……!」

 

「お任せを。必ず勝利してみせます」

 

二人は固い握手を交わす。

お互い覚悟は決まったようだ。

 

「さあ行きましょう、メイヨー」

 

「はい、先輩!」

 

プラウダとの戦いに臨むため、聖グロのパイロット二人が退室していく。

そんな彼女の背中を見た芬は呟いた。

 

 

「戦う少女たちと戦闘機(ガールズ&ファイター)──―ですか」

 

 

そして戦闘への準備を急いだ。

 

*1
撃墜比率のこと。味方一機につきどれくらいの敵機を落としたかを数値化したもの。

一番好きな学校は?

  • 大洗女子
  • 聖グロリアーナ
  • サンダース付属
  • アンツィオ
  • プラウダ
  • 黒森峰
  • 知波単
  • 継続
  • その他(BC自由等)
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