ガールズ&ファイター 聖グロリアーナのエース 作:ゲオルギーJr
「皆さん直ちに安全な場所へ避難してください!」
継続高校では生徒や住民達の避難が進んでいた。
これは生徒会長の芬からの指示であり、万が一プラウダの戦闘機が空襲してきた場合に、被害を最小限にするための行動だった。
「おい会長さん。この学校はどうなっちまうんだい!?」
避難中にパニック状態になった住民の一人が芬に問いかけた。
「分かりません。今は上で戦っている彼女たちに命運を託すしかないんです」
上空では、いくつもの戦闘機が縦横無尽に飛び回っていた。
あまりにも目まぐるしい戦いで、艦上からは何か起きているのか理解が追いつかないくらいだ。
「さあ、あなたも早く避難を」
「お、おう。よく分からんが頑張ってな!」
パイロットではない人間にとっては、ただ空を見上げて祈ることしか出来なかった。
*
「……モルテン、敵機撃墜……」
「わたくしも一機仕留めましたわ!」
いよいよ始まった継続高校上空でのプラウダとの戦い。
全勢力合わせて120機以上の戦闘機が飛び交う、史上稀に見る大空戦だ。
「何て数の戦闘機なの!?」
「もうどれが敵か味方か分かりませーん!」
このレベルの戦いは、いくらサザーランドといえども初めてだった。
どこを向いても視界には大量の戦闘機が入ってくる。
適当に撃てばどれかには当たるような状況だ。
「落ち着いてメイヨー。ちゃんと味方を識別しなさい」
「そんなこと言われても、どうすればいいんですかぁ!?」
こういう乱戦では、味方同士のフレンドリーファイアが発生しがちである。
しかし、ただでさえ不利な状況だ。同士討ちだけは絶対に避けなければならない。
ここで問題になるのは、どうやって敵と味方を見分けるかだ。
現代の戦闘機であれば、識別装置を見れば済む話だろう。
しかし、彼女たちが操るのはレシプロ戦闘機だ。
そんな高度なアビオニクスは残念ながら備わっていない。
となると、自分の目で判断するしかないのだ。
「そうだわ。管制塔、現在の状況は?」
サザーランドが藁にも縋る思いで、管制官に助けを求める。
「申し訳ありません。現在こちらはパンク状態です。処理が追いつきません!」
しかし、レーダーサイトは完全に機能を喪失していた。
周辺の空域に存在する戦闘機の数があまりにも多く、コンピューターの処理能力の限界を超えてしまったのだ。
こうなると管制官は正しい情報を伝えられなくなる。
「くうっ。各自で判断しろってことね……」
「うーん、せめてレーダーを搭載した航空機がいれば楽になるんですが……」
結局、見つけたら手当たり次第に敵機を落としていくしか方法はないのだ。
大変な労力だが、それを続ける以外に勝利の道は開かれない。
*
「ちっ、何で俺が出なきゃならねえんだよ……」
同じころプラウダの学園艦では、エースパイロットのコサックが発進準備をしていた。
見たところ、あまり乗り気ではないようだ。
「俺は継続に恨みなんて無いんだがな……」
実のところ、継続とプラウダの対立は学校レベルの話だけであり、生徒個人が全員憎み合っている訳ではなかった。
コサックも例外ではなく、あくまで会長の露音からの一方的な命令で戦わされているだけだ。
「結局、あの独裁者には逆らえねえか」
渋々準備を済ませ、搭乗機のエンジンを始動させる。
「ま、ひと暴れしてくっか。この37㎜砲で蹴散らしてやるぜ」
そして滑走路を駆け抜けて発艦していった。
*
「こちらサザーランド、敵機4機目を撃墜!」
「こちらウェリントン、わたくしは3機ですわ!一先ずはノルマ達成ですわね?」
継続高校上空での戦いは未だ続いていた。
押し寄せる大量のプラウダの戦闘機を相手に、継続・聖グロ連合側は何とか凌いでいる。
今のところ、学園艦本体に到達したプラウダ機は存在していない。
元の戦力差を考えれば、驚異的な粘りだろう。
「……モルテン、7機目撃墜……」
「すごいですねモルテンさん!」
だが一番注目するべきは継続のエース、モルテンの活躍だろう。
獅子奮迅の勢いで、敵をせん滅していく。
「ちくしょう。こいつ、変な形の機体に乗ってるくせに強いぞ!?」
「そいつは例の守護神だ、油断するな!」
その活躍はプラウダ側からも恐れられていた。
実はこの戦いが起きる前にも、プラウダが継続に小規模の飛行隊を送り込んだことが何度かあった。
だがそのことごとくはモルテン一人によって退けられていた。
そしていつしか、プラウダのパイロット達から<継続の守護神>との異名で呼ばれるようになったのだ。
「あれで二年生なの?味方ながら恐ろしいわね……」
同じエースとは言え、学年が下のパイロットに戦果で追い越されるとは、サザーランドにとっても想定外だったようだ。
「……9機目……」
「ひえーっ。私なんてまだ1機しか落としてないのに……」
ともあれ、エースの活躍もあって戦況は有利になりつつあるように思えた。
だが……。
「おかしいわね。敵が一向に減らないわよ?」
「言われてみれば、確かに……」
相変わらず空の大半を埋め尽くすのは、プラウダの機体ばかりだ。
これだけ撃墜すれば少しは数が減っていくはずだが、敵味方の比率は最初と同じに見える。
「シーファイア*1が被弾した!悪いが、これ以上は戦えない!」
「こっちもやられちゃった。もう少し稼ぎたかったんだけどね……」
その理由は敵のみならず、味方が撃墜される数も多いからだ。
いくらこちら側の士気が高いとは言え、数的不利は中々覆せない。
「こうなったらノルマ上乗せよ!一人5機以上に引き上げるわ!」
「5機ですか!?ちょっと厳しいですね……」
「とんだブラック企業ですわね。まあ致し方ありませんわ!」
当たり前の話だが、撃墜されるパイロットが増えるたび、残された味方の負担は一層大きくなる。
だからこうして無理やりでも、ノルマを上げるしかないのだ。
「……11機目……」
そんな中、黙々と戦い続けるモルテン。
既にノルマの倍以上の戦果を挙げているが、まだまだ彼女は止まらない。
というより止めるつもりが無いのだ。
今の彼女は視界に入った全ての敵機を落とさなければ気が済まない、ある種の戦闘マシーンだ。
「やばい!守護神がこっちに来た!」
高速でプラウダ高校のLa-5に接近するモルテン。
相手にとっては恐ろしい光景だろう。
「避けられない!ヘッドオンか!?」
回避機動が間に合わないと判断したプラウダのパイロットは、真正面から撃ちあう体勢に入った。
お互いの機首が前を向き合って攻撃し合う、ヘッドオンの状態だ。
「……落ちて……!」
そのまま敵に突っ込んでいくモルテン。
彼女にとっては、これが一番得意なシチュエーションだった。
「ぎゃあああっ!?」
瞬く間に木っ端微塵になるLa-5。
一方のモルテンのJ21は、ほぼ無傷だ。
「……これで12機……」
これはJ21が機首に武装を集中配備された構造の機体だからこそ、成しえる戦法だ。
「真正面から突撃なんて、すごい戦い方ですね!」
「荒々しい戦法ね。私は好きじゃないわ」
「え?どうしてですか、先輩?」
「リスクが大きすぎるからよ。私なら絶対に取らない戦法だわ」
サザーランドの言う通り、ヘッドオンはハイリスクな戦法だ。
例え敵を落とせたとしても、同時にこちらも被弾して相打ちになることが多い。
そういう意味では、エースである彼女にとっては回避する方がベターなのだろう。
何せ正面からの真っ向勝負など、互いの練度など関係なく決着がついてしまうからだ。
「ハッキリ言って馬鹿がやる戦法ね。真似しちゃダメよ、メイヨー」
「馬鹿って……。そんなに悪く言わなくてもいいじゃないですか?」
どうやらサザーランドは心底ヘッドオン戦法が嫌いらしい。
ここまで明確に彼女が罵倒するのは珍しいだろう。
「……13機目……」
ともあれ、モルテンにとってはヘッドオンがお気に入りの戦法のようだ。
事実、今の撃墜数がそれを物語っている。
「ああもう!ウジ虫みたいに湧いてきますわね!」
ウェリントンは一向に減らないプラウダの機数にイライラしていた。
それは彼女に限った話ではないだろう。
物量の面では、まだまだプラウダ側に有利がある。
「でもエースっぽい機体がいないですね」
「そうね。そこが不安材料だわ」
幸か不幸か、まだ敵のエースらしき姿は見えなかった。
これほどの大戦力ならば、エースも出撃しているはずだが……。
*
「ふう。何とか持ち直してきましたね」
継続高校の管制塔では、パンク状態のレーダーを修復する作業が進んでいた。
戦闘が長引いて両陣営の機数が減少したのもあり、レーダーも元の正常な状態に戻りつつあった。
これならば戦闘中の味方に、周辺の状況を伝えられるだろう。
「……この反応は!?」
早速レーダーを確認した管制官だが、北西から不穏な機影が出ているのを目撃した。
もしかするとプラウダ側の増援かもしれない。
だとしたら一刻も早く味方パイロットに警告する必要がある。
「こちら管制塔。只今復旧しました。聞こえますか?」
*
「ん?管制塔から?」
必死に防衛を続けるサザーランドの元に管制官の無線が来た。
「聞いてください。現在、北西方面から謎のレーダー反応があるんです」
「北西から?それってもしかして……」
「はい。おそらくプラウダからの増援かと思われます」
その通信は他のパイロット達も受信していた。
「まだ新手が来るんですの?もうウンザリですわ!」
「どれくらいの数ですか?もうこっちは大分キツイんですけど……」
メイヨーの要請を受け、管制官が増援の数を確認する。
「3機、ですかね。そこまで多くないでしょう」
「たったの3機?なら大丈夫そうね……」
思いのほか少ない数字にホッとするサザーランド。
「……アイツかも……」
しかしモルテンは別の気配を感じていた。
「アイツって?」
「……プラウダのエース……」
その3機の中に敵エースパイロットが存在するという予感だ。
第六感とも言うべきか、怪しいところだが。
「あなた、プラウダのエースについて知ってるの?」
「……うん。225番の機体……」
どうやらモルテンは敵エースと出会ったことがあるらしい。
それを聞いたサザーランドは彼女の勘を信じることにした。
「分かったわ。ならどちらかが新手の対応をしましょう」
もし本当に相手がエースパイロットならば、こちらもエースで対抗したいところだ。
しかし、敵は全方位から攻めてきている。
だから敵エースに全戦力を集中させる訳にはいかない。
幸い、こちらにはエースが二人いるので役割分担ができる。
エースと戦う役と、引き続き他の敵機を始末する役に分かれるのだ。
「……私、アイツと戦う……!」
「了解。雑魚はこっちに任せなさい」
モルテンの熱い闘志を感じたサザーランドは、増援の対処を彼女に任せた。
「大丈夫ですか先輩?モルテンさんを行かせて……」
「心配無用よ。いざとなったら私も助けに向かうわ」
味方エースを一人欠いた状況になったが、現状の戦力で戦闘を続ける。
プラウダのエースを仕留めれば、一気に勝利に近づくはずだ。
*
「……やっぱり、コサック……!」
北西に飛んでいったモルテンは増援の編隊を確認した。
やはりプラウダの戦闘機であり、その中の一機は見覚えのある機体だった。
「お?ありゃモルテンか?」
それこそプラウダのエースパイロット、コサックの搭乗機だった。
胴体に書かれた225の番号がそれを証明している。
『ようモルテン。俺とやるってのか?』
『……コサック、また会ったね……!』
モルテンとコサックは以前に手合わせしたことがあるようだ。
要するに因縁の仲である。
『いいぜ!ここらで白黒つけてやる。来いよ!』
『……絶対倒す……!』
激突する二校のエース。
この大空戦の結果を左右する対決だ。
今、北の寒い空で熱い戦いが始まった──―。
一番好きな学校は?
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大洗女子
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聖グロリアーナ
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サンダース付属
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アンツィオ
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プラウダ
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黒森峰
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知波単
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継続
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その他(BC自由等)