ガールズ&ファイター 聖グロリアーナのエース 作:ゲオルギーJr
プラウダ高校との激しい大空戦を終えた、その夜──―
継続高校では、勝利を祝してパーティーが開かれた。
学校総出での、大規模な祝賀会だ。
「今日はスモーガスボード*1さ!腹一杯食べなよ!」
「うわあ!とっても豪華ですね!」
広いテーブルには、美味しそうな料理を乗せた皿がこれでもかと並べられていた。
その内容はエビやサーモンなどの魚介類や、じゃがいもに羊肉などをふんだんに使った北欧料理が中心だ。
ちょっと前まで貧相な食事しか出来なかった学校とは、とても思えないラインナップだった。
「パイロットの皆さん、本日は大変お疲れ様でした!私はもう、何と感謝したら良いのか……」
パーティー会場の奥で、マイクを握っていた生徒会長の芬が泣き崩れてしまった。
もちろんそれは嬉し涙である。
「お礼、と言ってはなんですが、本校のなけなしの食材を使った料理でおもてなし致します。どうぞ楽しんでください!では祝杯をあげましょう!」
芬がグラスを持つと、会場にいた全員もそれに続いた。
「それでは我が校の勝利を祝って……乾杯!」
「乾杯!」
会場全体に軽快なグラスの音が響く。
「さあ!もうプラウダに船や飛行機を止められることは無い!日々の食事に困ることもなくなったのさ!」
継続高校のシェフ達が、次々と新しい料理を出してくる。
プラウダからの輸送妨害が止まり、物不足にあえぐことも、もうない。
そこで今までの備蓄した食糧を、一斉に解放したのだろう。
「これ、すっごく美味しいです!」
「本当かい?まだたくさんあるから、好きなだけ食べなよ!」
宴会の主役は、何と言っても空戦道のパイロット達だった。
プラウダ高校と直接対峙した存在だからだろう。
「ほれ聖グロの人たち!どんどん持ってくるよ!」
「むしゃむしゃ……。これは美味ですわね!」
だが、とりわけ手厚くもてなされたのは、聖グロリアーナのパイロットだ。
彼女たちは校外から駆けつけて、継続を勝利に導いた救世主として扱われた。
「うーん……」
「どうしたんですか、先輩?一緒に食べましょうよ」
だがそんなお祝いムードの中で、サザーランドは渋い顔をしていた。
「私、苦手なのよね。こういう賑やかなお祭り騒ぎみたいなのって」
「むしゃ、もったいないですわね。モグ、せっかく美味しい料理がモグモグ、たくさんありますのにムシャムシャ……」
「ウェリントンさん、食べながら喋ってますよ……」
編隊のリーダーとして全体の指揮を執ったサザーランドは、最も勝利に貢献した人物といっても過言ではないだろう。
しかし肝心の本人が消極的では、何とも締まらない。
「ちょっと失礼するわ。ここにいると落ち着かないもの」
「あっ。先輩、どこに行くんですか?待ってくださいよ!」
サザーランドは足早にパーティー会場から立ち去ってしまった。
それをメイヨーも渋々追いかける。
「モグモグ、じゃあわたくしが二人の分も食べてしまいますわね。むしゃむしゃ……」
残されたウェリントンは伝統的な北欧料理を一人で楽しんだ。
「このサーモンも脂が乗っててイケますわね。モグモグ……」
「これはフィンランドの飴?サルミアッキって言うんですの?……まっず!クソ不味いですわ!」
*
会場を去ったサザーランドと、それを追いかけたメイヨー。
「先輩、やっぱり戻りましょうよ。一応私たちが主賓みたいな感じですし」
「うーん、何処にいるのかしら?」
「誰か探しているんですか?」
「モルテンよ。会場にいなかったでしょ?」
サザーランドはモルテンを探していた。
継続のエースとしてパーティーの主役とも言える存在だが、会場に姿は無かった。
「…………」
「あ、あんなところにいたわ」
そんな彼女は、外のスペースで一人佇んでいた。
やはり人見知りで、ああいう集まりが苦手で抜け出してきたのだろう。
そういった点では、サザーランドも同類だ。
「こんばんわ、モルテン。やっぱり人が集まる所は好きじゃないみたいね」
「……サザーランド……」
「気持ちは分かるわよ。私も似たような苦手意識はあるもの」
エースパイロットが二人とも途中退席するという奇妙な現象が起きたが、ある意味ではそれらしいと言えるかもしれない。
あまり他人とつるまず、一人で静かに過ごすことが彼女達の本望なのだろう。
「……今日はありがとう……」
「ん?さっきの空戦のことかしら?」
「……聖グロがいなかったら、多分負けてた……」
「それはこっちも同じよ。継続の踏ん張りが無ければ、確実に押し負けてたわ」
今にして思えば、継続と聖グロの連携は奇跡的と言えるものだった。
どちらか片方でも欠けていれば、この勝利は掴めなかっただろう。
それだけプラウダとの戦いは、とても厳しい戦いであった。
「最終的に、モルテンさんは何機撃墜したんですか?」
「……16機……」
「ホント、あなたが敵じゃなくて良かったと思うわ」
一日で16機撃墜の戦果は、ハッキリ言って人間離れしていると言わざるを得ない。
元の実力もさることながら、母校の危機という戦意高揚も合わさって前代未聞のスコアを稼いだのだった。
「そうだわ、モルテン。一つ聞きたいことがあるんだけど……」
「……なに?」
サザーランドが話題を変えて質問する。
「昨日、どうして黒森峰のエースについて聞いてきたの?」
ここ最近、彼女は黒森峰のエースという言葉を度々耳にしていた。
それは一体何故だろうか?
「……ちょっと前の話……。妙な戦闘機が二機、この学校に来た……」
モルテンが過去の出来事を話し出す。
「……黒い十字の校章……。真っ赤な機体だった……」
「黒森峰の戦闘機と戦ったってこと?」
「……うん。私、落とされちゃった……」
「ええ!?モルテンさんが負けたんですか!?」
「だとすれば、ソイツは間違いなくエースだわ」
今回、獅子奮迅の活躍を見せたモルテン。
それをたったの二機が撃墜したのなら、エースである可能性が高い。
「……後で聞いた。黒森峰のエース、他の学校にも行ってるみたい……」
どうやらそのパイロット二人の目撃証言は、他校からも挙がっているらしい。
「……もしかしたら、サザーランドも知ってるかなって……。だから昨日、質問した……」
「そういうことね。やっと理解できたわ」
「あの、先輩。一つ考えたんですけど……」
メイヨーが何かを思いついた。
「確かサンダース付属のミニットマンさんも、黒森峰について聞いてきましたよね?」
「そう。それなのよ」
「てことは、そのエースは他のパイロットにも知ってる人がいるんじゃないですか?」
「なるほど、確かにその確率は高いわね」
黒森峰のエースらしき機体が複数の場所で目撃されているのなら、他にもアテはあるはずだ。
「でも、この学校には有力な情報は無さそうですよね」
「そうね。同じ継続のパイロットから聞いても仕方ないし」
するとモルテンが密かに呟いた。
「……プラウダ……。コサックなら知ってるかも……」
「コサック?そうね、その手があったわ!」
プラウダのエース、コサックは継続高校上空で撃墜された。
ならば今は捕虜として捕まっている可能性が高い。
それに、エースパイロットならば何か情報を持っているかもしれない。
「ねえモルテン。この学校の捕虜収容所はどこにあるのかしら?」
「……艦内の奥……。私も行く……。コサックと話がしたい……」
「モルテンさんが話をしたいなんて、珍しいですね」
結局、モルテンの案内で捕虜収容所に向かうことになった。
コサックは黒森峰のエースについて、何か知っているのだろうか?
真偽を確かめるべく、彼女達は学園艦の奥底に進んでいった──―。
今回の話を書くにあたって、北欧料理について調べたんです。
そしたら海外では、フィンランド料理がイギリス料理と同レベルに不味いと評価されているのを知りました・・・。
まあ、あの辺はサルミアッキとかシュールストレミングとかのヤバイ食べ物があるんで分からないでもないですが・・・。
でも北欧産のサーモンは美味しいですよね。今は諸事情で輸入が止まってますけど。
一番好きな学校は?
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大洗女子
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聖グロリアーナ
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サンダース付属
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アンツィオ
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プラウダ
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黒森峰
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知波単
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継続
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その他(BC自由等)