ガールズ&ファイター 聖グロリアーナのエース   作:ゲオルギーJr

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いよいよラスト、第五章開始です。
敵対するはドイツ機を要する黒森峰。
これまで以上に戦闘シーンが多くなりそうです。


vs黒森峰編(第五章)
壊された誇り


「こちら聖グロリアーナ飛行編隊、隊長のサザーランド。着艦許可をお願いできる?」

 

プラウダ高校との大空戦を終え、継続高校から帰路についた聖グロの飛行隊。

勝利こそしたが戦いで喪失した機体も多く、編隊の規模は出発時と比べて大幅に縮小している。

再びのフライトの末、母校の学園艦の艦影が見えてきた。

サザーランドが編隊長として、管制官に着艦許可を求める。

 

「こちら聖グロリアーナ管制塔。着艦を許可します」

 

許可が出たので、着艦のために高度を下げる戦闘機たち。

ふと滑走路の様子を見たメイヨーが、何か違和感を感じた。

 

「気のせいでしょうか?妙に機体の数が減っているような……」

 

サザーランドも、その感覚に気が付いた。

 

「確かに、数が少ない気がするわね」

 

滑走路周辺には、基本的に複数の機体が常に配備されている。

専門用語で言うと、<エプロン>と呼ばれる場所だ。

それは単純に格納庫だけでは収納スペースが足りないため、やむを得ず外に置くしかないためである。

しかし今日の聖グロ学園艦の滑走路は、やけにスッキリしている。

いくら継続高校に大編隊を送り込んだとは言え、不自然なまでに機数が少ないのだ。

 

「多分まとめて整備中なだけですわ。これくらいは珍しくありませんの」

 

確かにウェリントンの言う通り、幾つかの機体で同時に整備を行っている可能性が考えられる。

だとすれば、単なる杞憂に終わるだろう。

 

「そうね。とりあえず着艦しましょう。事情はその後聞けば良いし」

 

上空から観察していてもしょうがないので、一先ずは全ての機体を着艦させることにした。

 

 

 

 

*

 

 

 

 

「ふう。久方ぶりの母校帰還ね」

 

編隊の中で一番最後に着艦したサザーランド。

操縦席の風防を開けて、機体から降り立つ。

 

「やっぱり、明らかに静かすぎるわ……」

 

滑走路周辺を見回しても、やはり機体の数が少なすぎる。

一応、台風などで悪天候が予想される場合などはあらかじめ格納庫に退避させる場合もある。

ただ、今日の天気は晴れていて風も穏やかだ。

となると、やはり整備中なのだろうか?

 

「先輩、エプロンには普段どのくらいの機体が置かれているんですか?」

 

「この学校だと、大体30機くらいは外に保管されているはずよ」

 

聖グロリアーナの航空戦力は、合計でおよそ60機程度。

つまり半分は外に駐機され、残り半分が格納庫で保管するというのが普通だった。

 

「でも、今は見たところ5機ぐらいしか置いてなさそうですけど……」

 

「う~ん。整備中だとしても、一度に10機以上同時に整備することなんてあり得るかしら?」

 

ますます深まる謎。

 

「こういう時は、きよみんに聞くのが一番ね」

 

「整備班の班長さんですか。確かにあの人なら知ってそうですね」

 

基本的に空戦道における戦闘機の管理は、整備班の班長が最高責任者として行っている。

聖グロリアーナなら工藤清美に聞くのが手っ取り早いだろう。

普段通りなら、格納庫で機体整備や機械イジリに没頭しているはずだ。

早速、二人は格納庫へと歩いていった。

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

 

「何よこれ……?」

 

格納庫の扉を開け、中の様子を見たサザーランドは絶句した。

 

「これはどういう状況ですか?先輩……」

 

メイヨーも同じく異常事態が起きていることに気が付いた。

何故なら目の前には絶望的な光景が広がっているからだ。

 

「あのハリケーン、胴体が穴だらけだわ……」

 

「あっちの機体も損傷してますよ……」

 

目に入るのは被弾したのか、酷くボロボロになった機体ばかり。

中には損傷が激しすぎて、何の戦闘機だったか特定できなくなるほどの状態の物もあった。

そんな傷だらけの機体達を、整備員たちは疲れ切った表情で必死に修理している。

まるで葬式のような重苦しく悲しい雰囲気が、格納庫全体を包み込んでいた。

 

「終わった。聖グロリアーナ空戦道はもう終わりだよ……」

 

そんなつぶやきすら聞こえる中、二人は急いで清美の姿を探した。

 

「きよみん!」

 

サザーランドが壁に横たわる清美を発見する。

 

「清美さん、しっかりしてください!」

 

「おう……、お二人さんか。よく帰ってきたねぇ……」

 

相変わらず薄汚れた格好をしているが、いつもの威勢のよさが感じられない。

 

「聞いてよきよみん。私たちプラウダ高校に勝ったのよ!しかもサンダース付属の支援なしで!」

 

「そうなんです!まぐれだけど、私も相手のエースを落としたんですよ!」

 

「そうかい……。そいつは良かったねぇ……」

 

勝利の吉報を聞いても、清美の表情は振るわない。

普段の彼女ならば、ゲラゲラ笑って勝利を歓迎しそうなのに……。

 

「ねぇきよみん。私たちがいない間に、一体何が起きたの?」

 

「教えてくださいよ、清美さん!」

 

「ああ、そうだねぇ……。あれは悪夢を見てるようだったねぇ……」

 

清美の口から出る()()の言葉。

とんでもない出来事が起きたのは間違いないようだ。

聖グロリアーナにおきた悲劇を、彼女が語り始める。

 

 

「つい昨日のことだった、お昼時くらいかねぇ。突然スクランブル発進を命令するサイレンが鳴った。それで待機してた戦闘機二機を発艦させたんだよ……」

 

「管轄空域に侵入したヤツがいるのね?」

 

学籍不明機の侵入を受けてのスクランブル発進。

学園艦の日常的な光景だろう。

異変が起きたのは、その後だった。

 

「そしたら3分も経たないうちに増援の要請が出たのさ。多分、迎撃に向かった二機が瞬殺されたんじゃないかねぇ……」

 

「3分!?随分早いですね」

 

「そうさ。私もこんなに短時間で援軍要請を貰ったのは初めてだったよ……」

 

迎撃機を発艦から3分足らずで撃墜される事など、滅多にない話である。

しかし清美の仕草を見る限り、嘘ではないらしい。

 

「それで追加の戦闘機を送ったけど、またすぐに撃ち落されたのさ。それで矢継ぎ早にパイロットを呼んでは動ける機体から発艦させた。それでも侵入機は撃退出来なかったよ。全部返り討ちさね」

 

「全部って、少な目に見積もっても10機以上よね!?それが全滅って……」

 

「冗談みたいだけど、本当だよ」

 

聖グロリアーナの戦闘機隊は、国内だけで比較しても高水準の機体とパイロットが揃っている。

それが一瞬で壊滅状態になるなど、まず考えられない事だった。

 

「それで気になって上空を見たわけさ。一体どんなヤツらだ?ってね。そしたらさ、敵は二機しかいなかったわけよ。しかも両方とも無傷だったかねぇ」

 

「たったの二機に、この学校の戦闘機隊が殲滅させられたってこと?」

 

「先輩、もしかして相手はエースだったんじゃないですか?」

 

メイヨーが、そう予測するのも必然だろう。

サザーランドが不在とはいえ、精鋭ぞろいの聖グロ飛行隊を二人で返り討ちにするなど、敵がエースパイロットだった可能性が極めて高い。

 

「確証は無いけど、多分そうさね。私は目を凝らして翼の校章を見た。そこには黒い十字のマークがうっすらと描かれていたよ」

 

「黒い十字のマーク?それって……」

 

日本に存在する学園艦の校章で、黒い十字の学校など一つしかない。

そう、熊本県の黒森峰女学院だ。

そして黒森峰のエースと言えば……。

 

「レッド……バロン……!」

 

サザーランドの手が怒りで小刻みに震える。

まさか自分が留守にしている間に、母校聖グロリアーナに来襲しているとは思わなかったからだ。

もしやレッドバロンは、わざとエース不在のタイミングを狙ったのだろうか?

それが分からなくても、彼女は自分の仲間とも言えるパイロット達を一方的にいたぶった事を許せなかった。

 

「そいつはレッドバロンって言うのかい?だとすれば相応しいTACネームだね。ヤツの機体は全身真っ赤に染められていたよ」

 

「赤い戦闘機……!モルテンさんの証言と一致します!」

 

赤い戦闘機乗り。そのキーワードで今回の事件と繋がった。

聖グロを壊滅させたのは黒森峰のエース、レッドバロンだ。

 

「そういえば、別のもう一機の方も中々の腕だったね。二機の連携は抜群だったよ。敵を褒めるのは嫌だけどさ……」

 

「もう一機……。レッドバロンの僚機かしら?」

 

これまでの情報で、レッドバロン本人の事はおよそ把握できていた。

しかし、僚機と思われる別の一機の情報は未だ不足している。

 

「とにかく、聖グロ航空隊は死んだよ。アタシらの誇りと共に、さ……」

 

当時の聖グロ側の戦闘機の機数は、継続高校に送った分を除けば約40機。

そして現在、稼働できる機数は10機以下。

となると実に30機以上を、レッドバロン率いる黒森峰の戦闘機に撃墜された計算になる。

これでは聖グロ航空隊が死んだ、と言っても過言ではない。

完全な立て直しには、相当のお金と時間が掛かるだろう。

 

 

「……いいえ。まだ死んでなどいないわ。私が生きているもの」

 

「その通りです!私も先輩もまだ戦えますよ!あ、あとウェリントンさんも!」

 

希望は残されている。

プラウダとの激戦を生き残った強者達が、聖グロに帰ってきたのだ。

彼女達ならば、黒森峰に報復できるかもしれない。

 

「……そうさね。こんな所で落ち込んでいられないよ。まだ整備班には仕事が残っている」

 

清美が作業用のヘルメットを被り、レンチを握る。

表情も幾分か和らいできた。

サザーランド達の帰還で、少しは元気を取り戻したようだ。

 

「お二人さん。会長室に行きな。多分、幸子会長が黒森峰への反撃作戦を企んでいるだろうから、それに協力すると良い。レッドバロンの首を取ってさ、敵討ちをしてくれないかい?」

 

「そうね。レッドバロンは許さない。絶対に対価を払わせてやるわ」

 

「仲間のパイロットさん達の無念を晴らしたいです!」

 

これでレッドバロンと戦う理由が出来た。

同じ学校の生徒を弄ばれて黙っているほど、彼女達は冷めていない。

黒森峰に灸を据えねば気が済まない、というものだ。

 

「メイヨー、会長室に行きましょう。レッドバロンは私達が倒すって会長に伝えなきゃ」

 

「そうですね、先輩。私もレッドバロンさんは見過ごせません!」

 

サザーランドとメイヨーが会長室に向かった。

今まで二人が会長室に行く時は、全て会長から命令された時だけだった。

自発的に向かうのは、これが初めてだろう。

それほど彼女達は、レッドバロンへの復讐心に満ちていた。

 

「うっしゃ。アタシ達も気合入れないとね!幸い、新型機の方は無事だったし!」

 

清美はグッと肩を伸ばして、損傷した機体の修理作業を再開した。

 

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、黒森峰学園艦──―。

 

「ん~。どっちから先に潰しちゃおっかな~♪」

 

エースパイロットのレッドバロンが、カフェオレを飲みながらスマホをいじっていた。

空戦道用のフライトジャケットを着て、今すぐにでも戦闘機に乗れる状態だ。

背番号80番、<REDBARON>の文字が背中に書かれている。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「センパイ、提案ですけどサンダース付属の方から狩りません?」

 

そう言うのはレッドバロンの後輩にして、僚機役を務めるハルトマンだった。

身長はメイヨーと同じくらいだろうか。

どこか腹黒いオーラを感じる生徒だ。

背番号は352番、<HARTMANN>の英字が背中に確認できる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「え~、どうして?」

 

「だって、聖グロはこの前散々いじめてあげたじゃないですか。今から行っても面白くないと思いますよ?」

 

「あ~それな。じゃあサンダースにしよっか~。その間に聖グロも持ち直すっしょ」

 

聖グロを壊滅させた二人の次なるターゲットはサンダース付属だった。

もう一度、同じことをするつもりだろうか?

 

「でもセンパイ、もう雑魚の相手は飽きましたよ。今度はちゃんとエースと戦ってくださいよ?元々それがセンパイの計画ですよね?」

 

「分かってるって~ハルトマン。()()()()()はウチの大本命だし~。この前は聖グロのエースが出張中だったから、ほんの憂さ晴らししただけだって~」

 

彼女達が動く理由は、基本的に楽しいかどうかで決まっているようだ。

ただレッドバロンの計画とされる、エース狩りについては未だその目的が不明だ。

わざわざ各校のエース達に喧嘩を売って、何をしたいのだろうか?

 

「んじゃ、メリケン野郎んとこに行きますか~」

 

「期待してますよ。サンダース付属の戦闘機隊は強いって聞きますし」

 

サンダース付属に向かうため、部屋を後にする二人。

そんな彼女達を遠目で見送っていた一人の生徒がいた。

彼女もまた、フライトジャケットに身を包んだパイロットだった。

 

「愚かな奴め。例え計画が成就しようとも、その先には闇が広がるだけだ……」

 

真っ黒なブラックコーヒーをすする、その生徒。

レッドバロンと関係がありそうな人物だが、正体は不明だ。

少なくとも、今のところは──―。

 

 




よくファンタジーとかで主人公の村や故郷を焼き払う悪役がいますよね?
レッドバロンがそんな感じです。

一番好きな学校は?

  • 大洗女子
  • 聖グロリアーナ
  • サンダース付属
  • アンツィオ
  • プラウダ
  • 黒森峰
  • 知波単
  • 継続
  • その他(BC自由等)
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