ガールズ&ファイター 聖グロリアーナのエース 作:ゲオルギーJr
聖グロリアーナ女学院の会長室──―。
「おのれ黒森峰!よりにもよってエース不在の隙を狙ってくるとは!許さん!」
生徒会長の幸子は頭に血が上っていた。
まあ、彼女の場合は何かと怒りやすい性格もあるのだが……。
「落ち着いてください、会長。ストレスは体に毒ですよ」
「我が校の飛行隊を荒らされて、冷静でいられると思うか!?」
秘書の宥めにも動じない幸子。
まさに怒り心頭である。
そこへ扉をノックする音が聞こえた。
「会長?私です、サザーランドです」
「む?もしや継続高校から帰還してきたのか?」
ドアを開けて入室するサザーランドとメイヨー。
ビシっと敬礼しながら、帰還の報告をおこなう。
「ただいま戻りました、会長」
「メイヨー、同じくです!」
「おお、よくぞ戻ってきた!」
帰還した二人の姿を見て、すっかり機嫌を良くした幸子。
暗いムードだった聖グロリアーナに、エースが舞い戻ったのだ。
「話は聞いている。先のプラウダ戦、大変ご苦労だった。よくぞサンダース付属の支援を受けずに勝利したものだ」
「ええ、そうですね。本当に苦しい戦いでした」
「継続高校のパイロットさん達の協力もあっての勝利でした!」
プラウダに対する勝利は、確かに朗報ではあったが、悪いニュースもある。
「しかし、味方の損害も大きかったです。援軍に出した20機の内、半数以上が墜落あるいは損傷しました。搭乗機を損失したパイロットにつきましては、人員輸送機で後日に帰還してくる予定です」
「そうか。やはり代償もそれなりか……」
全航空戦力の3分の1に当たる飛行隊が、半壊状態まで追い込まれた。
聖グロにとっては、これだけでも大損害だろう。
だが今はそれ以上の問題があった。
「参ったな。ただでさえ今は、我が校の戦闘機事情は苦しいというのに……」
「ああ会長。その件ですが、詳しく教えてもらえますか?黒森峰の仕業であるのは先程聞きましたが」
戦勝報告もつかの間、議題は現在の状況についての話になった。
「うむ。黒森峰の赤い戦闘機乗りについてだろう?実を言うと、以前から私の元にそれらしき情報は入っていたのだ」
「え?てことは、事前に来ることは分かっていたんですか?」
「そうだな……。いずれ来るかも、という程度は予測していた。ただ、このタイミングで来るとは想像もしていなかったのだ」
幸子は、以前からレッドバロンの動きをマークしていたらしい。
ただ、それが聖グロまで来るタイミングまでは掴めなかったようだ。
「既に他の学校の会長やパイロットの証言から、奴の狙いが何なのか分かってきた。どうやら各校のエースパイロットを執拗に追い回しているらしい」
「やっぱり、エースを落とすのがレッドバロンの目的なのでしょうか?」
「奴はレッドバロンと言うのか?ふむ、黒森峰のエースだけあって、ドイツの英雄の名を冠しているのか」
レッドバロンとは、第一次世界大戦におけるドイツ帝国の伝説的パイロット、マンフレート・リヒトフォーフェンの異名でもある。
黒森峰のパイロットは、ドイツの撃墜王と由縁のあるTACネームを付けられているので、実に相応しい名前だろう。
「これまで集めた情報から察するに、奴が倒していないエースは、あとわずかしかいないと推測している」
「ということは、それ以外のエースは全員落としたってことですか……」
「もしや大洗のエースまでやられちゃったんですか?先輩に勝ったパイロットにも?」
レッドバロンが制したエースの中には、かつてサザーランドを返り討ちにした大洗のエース、ムサシも含まれていた。
あの格闘戦の名人すら、エース狩りの魔の手からは逃れられなかったようだ。
「現在、レッドバロンが未だ制覇していないのは、ここ聖グロと、サンダース付属、それとプラウダの三校だと思われる」
「プラウダもですか?でもあそこのエースって……」
「確か、コサックさんはレッドバロンさんの友人でしたよね」
まだプラウダには姿を現していないのは、恐らくエースのコサックと親しい間柄だからだろう。
さすがに友人を手にかける程、レッドバロンも無情ではないらしい。
「そうか。となると、実質あと二校だけだな」
「ここ聖グロと、サンダース付属ですか……」
「ミニットマンさんが、レッドバロンさんと戦うことになるのでしょうか?」
もしレッドバロンの最終的な目標が、全エースパイロットの撃破ならば、サンダース付属のエースであるミニットマンとの対決は避けられないだろう。
「ミニットマン、アイツの実力は確かよ。でもレッドバロンとの戦いとなると、勝敗の予想はつかないわね」
サザーランドは友人としてだけではなく、一人のパイロットとしてミニットマンの強さを信頼していた。
だが相手は数多のエースを屠った怪物だ。
彼女としても、一概に勝利を確信できる訳ではなかった。
「いずれにせよ、再び聖グロリアーナにも来る可能性は高いだろう」
「でしょうね。間違いなく、レッドバロンは私の首を狙っている」
ある意味、レッドバロンは肩透かしを喰らっている。
元々サザーランドとの対決を望んでいたのだろうが、丁度その時は継続高校に行っていて留守だった。
結局、他のパイロットを一方的に撃ち落して気を紛らわせたのだろう。
ならばもう一度、今度はキチンとサザーランドと決着をつけに聖グロにやって来るだろう。
来るべきその日に備えて、何か作戦を練らなければならない。
「いい加減、我々も受け身のままではいられない。向こうがその気ならば、こっちから黒森峰に奇襲をかける手を考えてある」
「本当ですか?」
どうやら幸子には、黒森峰に対する反攻作戦を用意しつつあるらしい。
もしそこでレッドバロンを倒せれば、彼女の野望を止められるだろう。
「ああ、本当だ。まだ完成はしていないがな。近いうちに、黒森峰に攻勢をかける予定だ」
「分かりました。その時は、私も参加させて下さい」
サザーランドにとっては、仲間の敵を討つチャンスだ。
もちろん他の聖グロのパイロットにとっても、それは同じことだろう。
「前向きに検討しておこう。今日は以上だ」
「ありがとうございました。では失礼します」
お辞儀をしてから、会長室を後にする二人。
次に呼ばれるときは、黒森峰に出撃する直前のときだろう。
サザーランドとメイヨーは、その時を待ち遠しく思っていた。
*
サンダース付属高校、学園艦──―。
「Take me on your mighty wings tonight~♪」(今宵、大いなる翼で導いてくれ♪)*1
エースパイロットのミニットマンは、アラート任務についていた。
趣味のポーカーゲームに興じながら、適当に暇を潰していたが……。
そこにスクランブル発進を命ずるサイレンが鳴り響いた。
「Oh. Incoming!」(おっと、来やがったか!)
急いでカードを片付いて、発艦準備を手早く済ませる。
彼女の愛機であるF4Uコルセアの翼が展開され、巨大なプロペラが回転し始める。
そのまま滑走路を駆け抜けて、迎撃態勢に入った。
「Follow me!」(ついてこい!)
サンダース付属の編隊は、合計4機の戦闘機から成る。
編隊長はもちろん、エースのミニットマンだ。
「Where is enemy?」(敵は何処かな?)
辺りを注意深く見回し、敵機の姿を探す。
しばらくすると、二機の戦闘機が向こう側から飛んでくるのが見えた。
「Ah. that's you?」(ああ、お前か?)
それは真っ赤な塗装を施した機体が率いていた。
そう。黒森峰のエース、レッドバロンの操るFw-190d-9だ。
「ウェーイ!ウチのお出まし~!」
もう一機は後輩のハルトマンが搭乗するBf-109g-6。
フォッケウルフに比べると細身の機体である。
「センパイ、相手はコルセアですよ。これは楽しめそうですね」
黒森峰のエースの情報は、ミニットマンも気になっていた。
だからこそ、サザーランドにも情報の提供を求めていたのだ。
しかし、こうして目の前に現れた以上、撃墜して勝利するしかないだろう。
『You picked the wrong school fool!』(ケンカを売る相手を間違えたな、間抜け!)
『ウチのためにも、アンタには落ちてもらおっかな!』
激突するサンダースと黒森峰のエース。
果たしてミニットマンは、レッドバロンの進撃を止められるだろうか?
今後のサザーランドの動きにも関わる対決が、今始まった──―。
今更ですが後輩キャラ二人の見分け方は、
漢字で「先輩」と言う方が聖グロのメイヨー。
カタカナで「センパイ」と言う方が黒森峰のハルトマンです。
口調は両者とも似ていますが、メイヨーは真面目な喋り方で、ハルトマンは毒舌で意地が悪そうな喋り方です。
一番好きな学校は?
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大洗女子
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聖グロリアーナ
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サンダース付属
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アンツィオ
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プラウダ
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黒森峰
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知波単
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継続
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その他(BC自由等)