ガールズ&ファイター 聖グロリアーナのエース 作:ゲオルギーJr
「Let's begin!」(始めようか!)
「
相対する二校の戦闘機隊。
片方は、ミニットマン率いる四機のF4U-1dコルセア。
もう片方は、レッドバロンとハルトマンの
互いに、ほぼ同高度での接敵で戦闘が始まった。
「ハルトマン~、ちゃんと援護してよ~?」
「いいですよ。精々、流れ弾には当たらないで欲しいですね」
手始めにペアを散開させて、戦闘態勢に入るのは黒森峰の二人。
「Right left go!」(右と左だ、行け!)
対するサンダース付属側は、二機ずつに分かれて対応する。
二対一で有利な状況だが、ミニットマンは気を抜かず攻めていく。
「Criss-cross!」(交差しろ!)
分散した二つの編隊に更なる指示を出す。
それは一機が前に、もう一機が後ろに飛行しながら絶えず双方のポジションを交換していく、サッチウィーブ戦法だ。
これは以前、ミニットマンがサザーランドとコンビを組んだ時に使ったのと同じ戦法である。
サンダース付属のパイロットにとって十八番とも言える戦い方だろう。
「Time for turkey shooting!」(七面鳥撃ちの時間だ!)*1
定石通り、囮役が前に出て攻撃役が後ろでカバーできる位置につく。
それぞれの編隊が、黒森峰側の二機を前後で挟み撃ちにする。
「ふ~ん。そういう感じで来るんだ?」
「センパイ、さっさと片付けますよ」
敵に囲まれるような格好になった二人だが、この程度では動じない。
これまで数々のエースと戦った経験と実力は伊達ではないのだ。
囮役と攻撃の位置関係を確信しつつ、前にいる敵機を攻撃する。
「くらえアメ公!」
フォッケウルフの13mm機銃と20mm機関砲が、コルセアに降り注ぐ。
「オーマイガー!」
四門の総砲火を食らい、囮役の一機がたちまち炎に包まれる。
だがここまでは、サンダース側も想定内だ。
サッチウィーブの真髄は、片方が落とされても容易にカバーできる点にある。
「Fire!」(発射!)
その後方、攻撃役を担っていたミニットマンが報復を試みる。
12.7mm機銃6門が火を吹くが……。
「あっぶな!」
レッドバロンはすぐさま機体を急降下させ、機銃の雨から逃れる。
彼女は元々、囮役を落としたら即座に離脱するつもりでいたので、F4Uコルセアの攻撃を間一髪で回避できたのだ。
「Are you kidding me?」(冗談だろ?)
ミニットマンがお得意のサッチウィーブを失敗したのは、これが初めてだった。
知波単のエース、カグツチの場合はサッチウィーブにそもそも付き合わない方針だったため、不発に終わった。
だが今回は完全に挟んだ状態から囮役が落とされた上で、攻撃役のカバーも凌がれた。
彼女にとっては前代未聞の現象だったのだ。
「こちらヘルファイア。メッサーシュミットを仕留め損ねた!」
ハルトマンの機体を追っていた別の編隊の攻撃も、失敗に終わる。
こちらも囮役は犠牲になった。
「ひゅー。ちょっと危なかったかな~?」
「サッチの機織りってやつですね。知っていれば何とかなります」
早くも二機を損失し、サンダース側は数の有利を失った。
「……OK. You're good」(……なるほどね。やるじゃないか)
この結果から得られる情報は一つ。
黒森峰の二人には、並大抵の戦法では通用しないということだ。
ミニットマンとしても、それは元から察していた。
ただ、これほどまで見事に対処されると逆に感動すら覚える。
「I'll do my best!」(本気を出そうか!)
まだミニットマンの心に残っていた僅かな油断が、完全に消えた。
相手は本物の強者だ。
気を抜いては一瞬で撃墜されるだろう。
ならばエースパイロットとして全力を尽くすのが礼儀というものだ。
「Hellfire. Let's do this!」(やってやろうぜヘルファイア!)
自分の機体と、生き残りのパイロットで再び体制を整える。
今度は二対二の平等な勝負だ。
「また来ますよ、センパイ。ちょっとは骨のある敵ですね」
「第二ラウンド開始、って感じ~?」
レッドバロン達も正面から迎え撃つ。
ただひたすらに熱い戦いを求める彼女たちとしても、この対決は望むところだ。
「You're strong. but I'm better!」(お前は強い。だが私の方がもっと強い!)
「この重圧感……。エース対決でしか味わえないかなぁ!」
ミニットマンのF4Uコルセアが、下方から仕掛ける。
レッドバロンのFw-190を突き上げる形だ。
「当てられるかな~?」
下から来る猛烈な弾幕を、レッドバロンは機体を回転しながら回避していく。
フォッケウルフのロール性能は優秀だ。
こういった状況では役に立つことだろう。
「Fall down!」(落ちろ!)
ミニットマンも必死に攻撃するが、素早いエルロンロールを続けるFw-190には中々ヒットしない。
そうこうしているうちに運動エネルギーが減少して、上昇速度が低下していく。
「Ahh this is bad」(これはマズいか?)
仕方なく攻撃を中断し、機体を水平に戻そうとするミニットマン。
「チャーンス!」
するとレッドバロンが突然、機体を上下反転させ降下に入る。
これは釣り上げという空戦機動と一致している。
そう、これこそが彼女の作戦だったのだ。
ミニットマンは自分の意思で下方からの攻撃を仕掛けたのだろうが、それが逆に利用されてしまう形となってしまった。
「Damn……」(くそっ……)
「今度はウチのターン!」
敵を追う身だったミニットマンが一転、追われる身となる。
今まで上昇した距離が、そのまま降下する距離だ。
二機は急激に高度を落としながら戦っている。
レッドバロンが放つ機銃と機関砲の嵐から、何とか逃げ切ろうと模索する。
「Calm down……」(落ち着け……)
ミニットマンはスロットルレバーを絞り、F4Uコルセアの速度を下げようとする。
あえて減速することで敵機を追い越させる、つまりオーバーシュートさせ形勢逆転を狙う戦法だ。
降下しながら追われる場合は、とても有効な作戦だが……。
「バレバレだっての!」
レッドバロンも同様に、スロットルレバーを絞ってエンジン出力を低下させているため、そう簡単には逆転できない。
となると、ミニットマンは何かしらの方法で更なる減速を行わなければならない。
「I have an idea!」(いい手を思いついた!)
とっさにひらめいたミニットマン。
F4Uコルセアの車輪を展開し始める。
本来なら車輪は着陸及び着艦の時しか使用しないのだが、何故このタイミングで展開したのだろうか?
「へえ~。そういうことできんだ」
するとF4Uコルセアの速度が更に低下し、レッドバロンのFw-190との距離が縮まってくる。
そう、車輪が新たな空気抵抗を生み出し、エンジンを切るだけでは出来ない程の減速に成功したのだ。
これはF4Uコルセアという機体が、元々空母で運用するために足回りを頑丈にしてあるからこそ可能な戦法だった。
並の戦闘機の車輪では、空戦時の高速機動状態で展開しようものなら空気力に耐えきれず展開できないか、できてもシュポーンと吹っ飛んでいくだけで終わるだろう。
「でもそれ、ウチのドーラでもいけんだよねー」
するとレッドバロンも真似して車輪を展開した。
彼女の言う通り、実はFw-190も足回りが頑丈な設計の機体なのだ。
元々ドイツの技師たちが、地面の状態が悪い不整地での離着陸性能を重視したからこその造りだった。
結果的には両者共に車輪を出しながら戦うという、傍から見ればシュールな光景となった。
「What's the hell!?」(何が起きてるんだ!?)
だがミニットマンにとっては笑い事ではない。
自分の渾身の作戦が空回りし、ピンチからの脱却に失敗した。
レッドバロンの攻撃は未だ続いている。
このまま降下しても、いずれ海面に激突するだけだろう。
どこかのタイミングで機体の引き起こしをしなければならない。
「そろそろキツイんじゃな~い?」
だがそれは容易ではない。
迫りくるレッドバロンの弾幕をかわしつつ、もう一度水平状態に戻すのは至難の業だ。
しかも──―。
「センパイ、こっちは片付けましたよ。今から援護に向かいます」
悪いことに、ハルトマンがもう一機のF4Uコルセアを撃墜したことでサンダース側の戦力は、ミニットマンの単騎だけになってしまった。
こうなるとエースである彼女でも非常に厳しい。
「Jesus christ……」(頼むよ神様……)
今は限界近くまで失速している状態なのだ。
もし速度の乗ったハルトマンのBf-109に狙われようものなら、振り切るのは不可能だろう。
ミニットマンの脳裏に
「そろそろ仕上げよっか、ハルトマン!」
「え?私が貰ってもいいんですか?」
いよいよトドメを刺そうとする黒森峰の二人。
Fw-190とBf-109が連携して追い詰めていく。
そのコンビネーションは抜群だった。
「No……」(やめろ……)
ミニットマンは上から来る赤い戦闘機と、背後から接近する僚機を見て絶望した。
次の瞬間、最後のコルセアは二機の猛攻を受け、あっという間に炎上しながら墜落していった。
またしても一人、エース狩りの犠牲者が増えたのだ。
「はいおしまーい。サンダースも攻略しちゃったー」
「目標達成ですね、センパイ。追手が来る前に退散しましょう」
そのまま二機は急いでサンダース付属の上空から撤退した。
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