ガールズ&ファイター 聖グロリアーナのエース 作:ゲオルギーJr
ようやくウェリントンのメイン機体が登場します。
サザーランドとガーランドによる空中戦が始まる、その少し前のこと―――
「ついに来るべき日がやってきましたわ!このウェリントン、全身全霊で今回の任務にあたらせてもらいますわよ!」
聖グロリアーナの学園艦では、ナンバー2パイロットであるウェリントンが発艦準備を着々と進めていた。
目的はもちろん、黒森峰のエース、レッドバロンの撃墜である。
今回は生徒会長の幸子からの直々の命令でもあり、ウェリントン及び他の聖グロパイロット達の士気も高かった。
また、それに加えて彼女には嬉しい知らせもあった。
「おうよ、ウェリントンのお嬢さん!コイツの整備は済んでるよ!
「感謝致しますわ、整備班長さん。この新鋭機を持ってすれば、レッドバロンとやらも一捻りですわね!」
以前のプラウダ戦の際、ウェリントンが搭乗していたのはスピットファイアだったが、それは彼女の欲する機体ではなかった。調達などの問題から、その時は妥協せざるを得なかったが今日は違う。彼女が最も乗りたい戦闘機が、ようやく手配できたのだ。これでレッドバロンとの決戦にも、全力で臨めるだろう。
「さあ出陣ですわ!皆さん、ついてきて下さいまし!」
次々と滑走路から飛び立つ聖グロの戦闘機たち。これらの指揮を執るのはウェリントンだ。隊長として各隊員に指示を送る。
「全機、進路を修正。北方から攻めますわよ!」
*
同じ頃、黒森峰の学園艦―――。
「ガーランドさんの飛行隊、行っちゃいましたね」
エースであるレッドバロンと、その相棒のハルトマンはアラート任務についていた。本来であれば彼女達は今すぐにでも聖グロに向かって、サザーランドと一戦交えたい気持ちだったが、生徒会長の普美から下された謹慎処分により、それは許可されなかった。なのでその代わり、しばらくはスクランブル待機に徹するしか、パイロットとして活動できなかったのだった。
「はーおもんな。いっそサザーランドの奴がこっちに来てくんないかなー」
「うーん、その線は微妙ですかね。今日は天気が悪いですし、向こうも戦闘機を飛ばす気分にはなれないでしょう」
この日は発達した低気圧の影響で、全国的にぐずついた天気になっていた。黒森峰の学園艦周辺の海域も例外ではなく、灰色の雲に覆われてどんよりとした雰囲気になっていた。
「ちぇっ。ガーランドなんて雷に打たれて墜落しちゃえばいいのに」
「あはは。相変わらず捻れた性格してますね、センパイ」
レッドバロンの本心としては、二番手のガーランド如きに、自分の最後の獲物であるサザーランドを獲られたくなかった。エース狩りの終止符は自分自身で打ちたいというのが、彼女の願いだった。
「ところでセンパイ。さっきから私に何してるんですか?」
「え?ハルトマンは可愛いなーって。だから髪をイジってるだけ」
この二人、今は滑走路の横にあるパイロット待機所でスタンバイしているのだが、ソファーに座っているハルトマンの髪の毛を、レッドバロンが無性に触っているというシュールな状況だった。
「あんまりわしゃわしゃされると髪型が崩れるんで止めてもらえません?」
「えー、いいじゃん。何か新しい妹ができたみたいでさー」
ハルトマンがやんわりと拒絶しても、レッドバロンは変わらず髪を弄り続ける。
「妹って。確かセンパイにはれっきとした妹がいるって、この前言ってませんでした?」
「あー、一応いるよ。一歳年下の妹。もうしばらくは会ってないけど」
「どうしてですか?学校が違うとか?」
「いや、同じ黒森峰。でも中学時代に喧嘩別れしてから、ちょっと気まずくてさー。だから会ってないってワケ。まあ、アイツは機甲科だし。航空科のウチとは別のところに行ってるから、大して支障ないけどねー」
そう言うとレッドバロンは髪の毛いじりを止め、今度はハルトマンの頬に触ってきた。
「ねえハルトマンー。ウチの妹になってよー、寂しいからさー」
「嫌ですよ。センパイみたいな人間の妹になったら、歪んだ性格になりそうですし」
「あれれー?先輩の命令に逆らうのかなー?そんな悪い後輩には、こうしてやるっ!」
ハルトマンの頬をもみくちゃにするレッドバロン。
「くぁwせdrftgyふじこ(解読不能)」
「アッハハ!やっぱハルトマン可愛いー!」
そんな平穏なひと時を過ごしていると、室内に大音量のサイレンが鳴りはじめた。二人が予想だにしなかったスクランブル発進命令である。
「マジで?本当にサザーランドが来た感じ!?」
「絶対違うと思いますよ、センパイ。あと髪型崩れたの直してください」
すぐさま各自の搭乗機に飛び乗り、エンジンを始動しプロペラが回り始める。小雨が降っていてイマイチな天候だが、構わず発艦を始める。
「ちーっす、こちら80番のレッドバロン。管制官の凸待ちでーす」
「凸待ちって……。ライブ配信じゃあるまいし」
「こちら黒森峰女学園管制塔。所属不明機は北から接近中の模様。交戦を許可します」
管制官の誘導に従って二人は機体を北方向へ向かわせる。使用機体はミニットマンと戦った際と同じFw-190d-9とBf-109g-6だ。
「あー、前方に何か見えるわ。3機くらいって感じ?」
早速、レッドバロンが分厚い雲の合間から薄っすらと映る複数の機影を目視した。
「管制塔より。レーダー反応は合計で3機、こちらで捉えています」
「3機ですか。まあ大したことありませんね」
レーダーサイトからの情報にも頼りつつ、前方の編隊に接近していく黒森峰の二機。
するとそこへ部外者からの無線が聞こえてきた。
『そこの二機、聞こえまして?』
突然のオープン周波数による無線に困惑するも、レッドバロンが返信を出す。
『ウチらに何か用?ていうかウチの学校の空域に侵入してんだから、アンタ撃墜されるよ?』
『わたくし達は誇り高き聖グロリアーナ女学院の戦闘機隊ですわ!その真っ赤なフォッケウルフ、貴方がこの前散々聖グロを荒らしまわったレッドバロンですわね?』
その通信主がお嬢様言葉で聖グロ所属と名乗ると、レッドバロンは嬉しそうに興奮して答えた。
『マジ?聖グロから来たってことは、サザーランドもいるワケ?』
『残念ながらサザーランドは不在でしてよ。わたくしは聖グロの暫定ナンバー2パイロット、ウェリントンですわ!黒森峰の
聖グロ側の編隊にサザーランドがいないことが分かると、レッドバロンは一転して不機嫌な態度になった。
『は?誰アンタ?ウチはエースのサザーランド以外、アウト・オブ・眼中なんですけど?ウザいからさっさと消えてくんない?』
『それはわたくし達の戦術を破ってからの話ですわ。貴方に、このウェリントンの飛行隊が突破できまして?』
エースと相対しているのにこの強気っぷり。ウェリントンには余程の自信があるようだ。
しかし聖グロ側の編隊は一見すると3機程度しかいない。たったこれだけの戦力で、あのレッドバロンに挑むつもりなのだろうか?
『ちょっとアンタさぁ、ウチら相手にたったの3機で挑むって舐めてんの?しかもエースもいないって、勝つ気を感じられないんですけど?』
『失礼ですわね。わたくしは如何なるときも真剣勝負を心掛けていますわ。もちろん、それは今日も同じですわよ』
双方の編隊が互いを目視できるくらいまで接近する。一体聖グロ側はどんな戦闘機を用意したのか、目を凝らして観察するが……。
「肩透かしですね。あれはただのハリケーンですよ、センパイ」
あろうことか、それは旧式で低性能のハリケーンだった。これでは機体性能の面でも、黒森峰の二機には敵わないだろう。ウェリントンは一体何を考えて、こんな旧式機を集めたのだろうか。
「馬鹿にされすぎてムカっときた。こんな雑魚パパッと片付けちゃお、ハルトマン!」
レッドバロンの指示で二機は分散し、各個撃破を開始する。聖グロ側のハリケーンは逃げ回るしかない。
「ダッサ!自分から喧嘩売った癖に、しっぽ巻いて逃げるとか!」
「無駄な抵抗ですね。低速なハリケーンじゃあ、私たちは振り切れませんよ」
二人の言う通り、ハリケーン如きではメッサーシュミットやフォッケウルフから逃げ切るのは難しい。追いかけっこが長引くにつれて、機体性能の差が顕著になっていく。
「んじゃ!」
「終わりです」
二人は素早く敵機を追い詰めて、ほぼ同時に二機のハリケーンを撃墜してみせた。これで残るは一機だけである。
「あと一機。どうするー、ハルトマン?」
「他愛もなさすぎです。退屈ですよ」
最後の生き残りのハリケーンは必死に逃げ回っているが、追い付かれるのは時間の問題だろう。これで聖グロ側の勝ち筋は消えたかに思えたが……。
「じゃあウチが貰っちゃお!ハルトマンは適当に後ろ飛んでて」
「はいはい」
トドメを刺すべく、レッドバロンが最後の一機に狙いを定める。これで決着がつくと思われた、その瞬間―――。
「おや?上空から変な音が……
後方を飛行していたハルトマンの機体の頭上から、突如として銃弾が降りそそぎ、瞬く間に撃墜されてしまったのだ。
「ちょっ、ハルトマン!今の何!?」
レッドバロンもすぐさま異常事態に気がつき、攻撃を中断する。
これはおかしい。残る敵機は目の前のハリケーン一機だけのはずなのに、一体どこから奇襲を受けたのだろうか?
『えーと、ウォレントンだっけ?アンタ今何した?』
『ウェリントンですわ!言っておきますけど、既に貴方はわたくし達の罠に嵌っておりましてよ!』
レッドバロンは周囲を見回すも、分厚い雲で視界が悪化しているのもあってか、前方のハリケーン以外に敵の姿は見当たらない。そこで管制官からレーダーの情報を聞いてみる。
「あのさー、今この空域にいる敵機っていくつ?」
要請を受けて、管制官は急いでレーダーを確認した。しかしそこにもハリケーン以外の機影が見当たらない。
「残りの敵は一機です。増援は確認できません」
「んなことある?じゃあハルトマンは誰に撃墜されたワケ?」
ここで考えられるのは、レーダーが捕捉できなかった機体から攻撃されたという可能性だ。
一般的に、航空用レーダーが上空の航空機に反応できない理由は複数考えられるが、大抵の場合はこの三つだ。
レーダーが故障しているか、
レーダーの範囲外を飛んでいたか、
もしくはレーダーに映らない特殊な機体だったか、である。
「ちょっと管制官さぁ、レーダーの点検とか最近やってんの?」
「毎日していますよ。今朝も異常なし、でした」
レッドバロンは真っ先にレーダーの故障を疑ったが、管制官曰く毎日欠かさず点検しているので、それは有り得ないとのこと。
「じゃあ範囲外を飛んでたとか?」
彼女が次に疑ったのは、レーダーの範囲外を飛んでいたという可能性だ。極端に低かったり、または高い高度で飛行した場合は捕捉できない可能性があるが……。
「一応お伝えしますが、我が校のレーダーは高度300メートルから、2万メートルまでの範囲で飛んでいる航空機には確実に対応していますよ」
「さっきの攻撃は上から来たから、300メートル以下は絶対有り得ないっしょ?」
現在レッドバロンがいる高度は大体2500メートル前後。少なくとも300メートル以下の低高度からの攻撃は届かない計算だ。しかし同時に、2万メートル以上の超高高度からの攻撃というのも有り得ない。そもそも空戦道で使用できる機体で、高度2万メートルまで飛んでいける機体は存在しないのだが……。
「じゃあ、相手はステルス機ってこと?マジで?」
こうなると残る可能性は一つしかない。聖グロ側はレーダーに映らないステルス戦闘機を使用したのだろうか。
「戦中機でステルスなんて冗談っしょ?確か一番早いのでも冷戦後期のF-117とかだし」
彼女の予測通り、レーダーに映らないステルス機というのは冷戦時代まで実現しなかったはずだ。ましてや空戦道レギュレーションである1945年には夢のまた夢である。
ただ、それは完全なステルス機の場合であって、部分的にレーダーに映りにくい戦闘機というのは既に存在していた。
「おっほほ!わたくしの戦闘機は時代を先取りしておりますのよ!」
レッドバロンはじっと感覚を研ぎ澄まして、周囲の状況を探る。
「プロペラの音……。上から複数ってトコ?」
上空の分厚い雲の中から姿は見えないものの、何機かの戦闘機のプロペラ音が聞こえてきた。少なくともレシプロ機であることは確かである。
「イギリスで、レシプロ機で、ステルス……。あ、ウチ分かっちゃったかも!」
数少ない判断材料から、レッドバロンはウェリントンの搭乗機を特定した。彼女は昔、似たような戦闘機の話を聞いたことがあったからである。
『もしかしてさぁ、アンタ達が乗ってるのってモスキート?』
『ご名答ですわ!チャラチャラした性格の割には、それなりに博識みたいですわね?』
予測的中。ウェリントンが使用しているのは、イギリスが開発した戦闘機モスキートである。この機体は金属製が多数派だった当時にしては珍しい木製で製造されていた上に、機体表面がツルツルで滑らかだったので当時のドイツ軍レーダーからも映りにくい航空機だったのである。
それに加えて、ウェリントンは更なる仕掛けを用意していた。
「このキラキラの金属片。巷ではチャフと言われておりますけれど、現代のレーダーにも効果覿面でしたわね!」
あらかじめモスキートの爆弾倉に大量のチャフを仕込んでおき、黒森峰上空に到達するタイミングで一斉にバラまいて、学園艦のレーダーを妨害していたのだ。先述の通り、元々モスキートはレーダーに映りにくい機体だったが、このチャフと併用することで、完全にレーダーから姿を消したのである。
『ふーん。それでこっそり隠れてから、タイミングを見計らって上から不意打ち喰らわしたってコト?なんか最初は典型的なお嬢様かと思ったけど、アンタ意外と姑息な真似すんのね』
『勝者こそが正義!それがわたくしのポリシーですわ。そのためなら手段は問いませんことよ!』
これで聖グロ側の作戦は露呈されたが、黒森峰側としてはそれでも厳しい状況だ。
僚機のハルトマンが撃墜され、ただでさえ数では不利な上に、相手はレーダーから姿を消していて位置が特定しずらい。おまけに天候不順で視界も悪いとなると、いくら数多のエースを屠ったレッドバロンといえども苦しい。
「ウチがここまで追い詰められんのは久しぶりかも。でもさ、サザーランドの奴に勝ってエース狩りを終わらせるまで、アンタみたいな格下相手に負けられないっつーの!」
レッドバロンは雲の中に突っ込んでいき、モスキートの姿を探す。
この勝負、一見するとお互いに雲で視界が遮られて戦いずらい状況に見えるが、実はそうではない。
『ほーっほっほ!雲中をあてもなくさまよう貴方の姿、わたくしにはハッキリと見えておりますわよ!』
どういうわけか、ウェリントンだけが一方的にレッドバロンの位置を捉えて、奇襲を仕掛けることができた。何故だろうか。
『このモスキートが夜間戦闘機としても優秀なこと、貴方はご存知でして?』
そう。モスキートは夜の暗闇の中でも活動できる戦闘機として、機内にレーダーを搭載可能な機体だったのだ。今は夜ではなく昼だが、雲で視界が悪いという点では夜の空と似たような状況である。そんな中で一方的にレーダーで居場所を特定できるというのは、凄まじいアドバンテージだ。言ってしまえば、レッドバロン側だけが目隠しされたようなものである。
「……ダメ。目に頼ってちゃ一方的にやられるだけだわコレ」
レッドバロンはどこから来るかも分からない攻撃に翻弄されていた。彼女はモスキートが出すプロペラの音だけを頼りに、何とか寸前のところで回避していたが、それも限界があった。
「管制塔より。増援の準備を進めていますが……」
彼女が苦戦していると見るやいなや、黒森峰側は新たな迎撃機の投入を打診する。
しかし―――。
「余計なお世話だし!エースのウチが、エース以外に負けるわけないっしょ!」
レッドバロンは確固たる意志で、その提案を蹴った。それは彼女のエースとしてのプライドが、他人からの援助というものを拒んだからだろう。
とはいえ、レッドバロンすら手こずる相手に普通のパイロットが増援に来ても足手まといになる可能性が高かった、というのもあるが。
「うん、いったん落ち着こ。モスキートの機動は大体読めてきた。あとはどう反撃するかだけ……」
呼吸を整え、冷静に状況把握に努めるレッドバロン。しばらくの空戦で、おおよそだが聖グロのモスキート隊の数や動きの癖は理解できていた。
彼女は自分が持つ天性の才能と、今までの実戦経験を振り絞って、打開策を考える。
「この雲、高度が上がるにつれて段々薄くなってくる……。じゃあ雲が無くなるまで上昇すればいいんじゃね?」
現在、上空の雨雲は高度6000メートル付近までを覆っていた。レッドバロンは試しに、雲が晴れる高高度まで上昇してみることにした。
「うわっ、まぶしー!でもこれで雲は抜けたし、何とかなるかなー」
雨雲の中を上昇し続けた機体を、強い太陽光が出迎えた。表面の水滴が照らされて、虹色に光り輝いている。これなら視界を確保できるだろう。
「さーて、
レッドバロンは聴覚を研ぎ澄まし、雲中のモスキートの所在を探る。一般人が聞いてもさっぱり分からない雑音だが、彼女にとっては貴重な敵機発見の足掛かりだ。
「うっし!この辺に潜んでる感じだし、思い切って突っ込んじゃえ!」
空気中に響くエンジンとプロペラの音から、モスキートが飛行していると思われる場所へ、一直線に降下するレッドバロン。再び突入した雨雲の中に、その目標は存在した。
「しまった!こちらモートン、敵に発見されました!」
一機目のモスキートが、レッドバロンの照準に捉えられる。モートンは何とか振り切ろうとするが……。
「バーカ!双発機が単発機に機動力で勝てるかっての!」
鈍重な双発エンジンのモスキートでは、身軽な単発エンジンであるFw-190から逃げ切ることができない。
そのまま機関砲の直撃を受けて、一機目のモスキートは撃墜された。
『やりますわね!けれど、まだまだ我らがモスキート飛行隊は健在でしてよ!』
初の損失を被ったウェリントンが反撃に出る。敵機の背後から忍び寄り、不意打ちを試みるが……。
『ふふーんだ!ついてこれるならついてきな!』
レッドバロンは急降下態勢に入り、それを回避する。
『いい度胸ですわ!ならば、とことん追い詰めて差し上げますわよ!』
それを追いかけるように、ウェリントンも急降下を開始する。このまま有利な位置で決着をつけようとした彼女だったが―――。
「4000、3900、3800……。このままだと雲を抜けますよ、ウェリントンさん」
ウェリントンの隣の座席*1に座っていた航法手が、徐々に下がる高度へ警鐘を鳴らす。雲のない低高度まで降下すると、自慢のステルス作戦が破綻してしまうからだ。
「そうでしたわね。敵に姿を晒す愚行は犯しませんわ。降下を中止しましょう」
航法手からの助言を聞き入れ、ウェリントンは急降下を中断する。
が、それがレッドバロンの狙いだった。
「ダイブアンドズーム、いっきま~す!」
それまで降下していたFw-190が、一転して急上昇を開始したのだ。しかもそれは真っ直ぐに、モスキートへと向かっていく。
「マジですの!?回避しますわよ!」
ウェリントンは慌ててラダーペダルを踏み込むが、やはり双発機であることが祟って、フォッケウルフからの追撃に対応しきれない。
というよりも、この急降下して敵を引き寄せてからの反転上昇というダイブアンドズーム戦法は、Fw-190にとっては十八番のようなものだった。優れた急降下耐性とエネルギー保持力によって、並の戦闘機よりも縦方向の機動力は高い。ましてや双発機相手なら楽勝だろう。
「このぉっ!やっぱりスピットファイアに比べると舵が鈍いですわ!」
モスキートに限らず、双発のレシプロ機は単発レシプロ機に比べて機動力で劣りがちだ。ゆえに空戦道では双発機はマイナーである。
『ちゃおー!ウォレントンちゃん。今度はこっちの番ってね!』
『だからウォレントンじゃなくてウェリントンですわ!』
『あーそうだっけ?もうどっちでもいいや。だってアンタはここで散る運命だからさ!』
この無線の応酬が、二人の最後のやり取りとなった。
直後、Fw-190の13mm機銃と20mm機関砲の嵐を受け、ウェリントンのモスキートは炎に包まれた。
「何故ですの!?わたくしの作戦は完璧だったはず……!」
「もうこの機体は駄目です、ウェリントンさん!制御が効きません!」
ウェリントンと航法手は必死に機体を立て直そうとするが、無駄だった。炎上するモスキートは錐揉み回転をしながら真っ逆さまに降下していき、そのまま海面へと激突したのだった。
「ウェリントン隊長、指示を……」
残された最後のモスキートは、何度もウェリントンからの指示を仰ぐが返事が来ない。当然だろう。彼女はたった今、撃墜されたのだから。
「おや?レーダーが回復してきました!」
さらに聖グロ側には悪いことに、最初にバラ撒いたチャフの効果が、時間の経過と共に薄れていき、黒森峰の管制塔からモスキートをレーダーで捕捉できるほどに復旧してきたのだ。
これではステルスが意味を成さない。
「管制塔より80番へ。敵機の位置を確認しました。北東方向です!」
「やーりい!これで逃げも隠れも出来なくなったって感じ?」
レーダーから感知された最後のモスキートの末路は言うまでもない。あっという間にレッドバロンに追い付かれ、ウェリントンと同じ結末を迎えた。
「お見事です、全機撃墜を確認しました。帰還してください」
「くぅーっ、マジで疲れた!帰ってシャワーでも浴びよーっと!」
聖グロからの刺客を全て退けたレッドバロンは、勝利の余韻を味わいながら、学園艦へと帰投した。その途中、彼女は荒れる海を見ながら、こう呟いた。
「ごめんね、ハルトマン……」
海へと落下した後輩の無事を祈る先輩の姿が、そこにはあった。
基本的にナンバー2のパイロットは、自分たちが単純な技量ではエースに及ばないことを自覚しているので、様々な搦め手を使用してきます。
ただ、結局ガーランドもウェリントンも善戦こそしまししたが、エースを撃墜するまでには至りませんでした。
一番好きな学校は?
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大洗女子
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聖グロリアーナ
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サンダース付属
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アンツィオ
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プラウダ
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黒森峰
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知波単
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継続
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その他(BC自由等)