ガールズ&ファイター 聖グロリアーナのエース 作:ゲオルギーJr
ということで(?)今回はメイヨー視点です
「……酸っぱいですね」
暗い個室の中で食事を取っているメイヨー。
ここは黒森峰女学園艦内にある捕虜収容所、その一室だ。
彼女が食べているのは、ドイツ料理を代表するザワークラウト。キャベツを発酵させた漬物で、独特の酸味がある。ちなみにドイツ人を侮辱する言葉として、クラウト(キャベツ野郎)があるが、それはこの漬物料理が由来だ。
「はあ、まさか黒森峰に捕まってしまうなんて……」
食事を取り終えて、ベッドに横になるメイヨー。
聖グロリアーナ学園艦の上空でガーランドによって撃墜された彼女は、荒海に流されているところを偶然、黒森峰の救助隊に発見された。もちろん救助されないよりはマシだが、それでも一応、聖グロと対立関係にある学校なので捕虜となってしまった。彼女が捕虜になるのは、これで二回目。前回は大洗女子学園だった。
「……先輩がいなくて心細いですねー……」
しかし前回と違う点は、サザーランドがいないということだ。彼女は強烈な孤独感に襲われることになる。
アンツィオ高校との戦いを経て、サザーランドの正式なウイングマンとなった日から、彼女はずっと、先輩と行動を共にしてきた。しかし、今ここにはいない。
「私って、先輩がいないと何もできないのかなぁ……」
枕を抱きしめて必死に不安を抑えるメイヨー。ふと、今までの戦いを思い返す。
最初は文字通り、サザーランドに頼りっぱなしだった。敵機撃墜も中々達成できないし、むしろ被弾や被撃墜の方が圧倒的に多かった。
けれども訓練と実戦経験を積んでいくうちに、だんだん空戦技術が上がってきて、知波単との戦いで初戦果を成し遂げた。その後のプラウダ戦では、不意打ちのような形とはいえ、敵エースを撃墜し、同時にサザーランドを救うこともできた。
この数ヶ月間で、パイロットとしての腕前は劇的に向上した。しかし、彼女には消えない悩みがあった。
「私なんかが、エースである先輩の僚機でいいんでしょうか?」
メイヨーがずーっと抱えている、この悩み。
元々サザーランドの僚機をやりたいと頼み込んだのは彼女自身だ。エースパイロットに憧れて、いつか自分もなりたいと思っていた。だったら直接、エースの僚機をやってみて、エースの戦いを間近で見て勉強したい。そう考えて、彼女はダメもとでお願いをしてみた。
するとサザーランドはあっさり許可して、理想だったエースの間近で戦えるようになった。初めはウキウキだった彼女だったが、それはすぐに打ち壊された。
そう。大洗のエース、ムサシから与えられた敗北である。それまでの彼女は、もし自分に何かあっても先輩が助けてくれるだろうという、かなり楽観的な気持ちがあった。だがムサシとのエース対決による敗北で、それは甘い考えであることを身に染みて理解した。自分が天下無敵だと思っていたサザーランドでも、負けるときは負けるのだ。
その日から、彼女の姿勢は変わった。先輩に頼りっぱなしではダメだ。自分も、先輩の役に立たなくちゃいけない。そう決意した彼女だったが、それが返って別のプレッシャーを生む。
先輩のサポートをしなくては。エースの隣に立つに相応しいパイロットにならなければ。
そんな焦燥感が、次第に彼女を蝕んでいく。着実に技量は上がっているのに、なぜか満足できない。もっともっと強くならないと、先輩の足を引っ張るだけだ。それを信念に、彼女は訓練を重ねていく。
だがいくら練習しても、サザーランドに頼りっきりな印象が拭えない。普通に考えたら、一年生と三年生で対等な実力になるのは不可能だ。ましてや比較対象がエースなのだから、追いつけないのは当然である。
しかし彼女は、先輩の足手まといになりたくない。だったら対等とまでは行かなくても、相応の実力をつけなければいけない。そんな考えに固執していたせいか、いつまでたっても自信がついてこない。どんなに活躍して褒められても、素直に受け取れない。ただただ自己肯定感だけが下がっていく……。そんな悪循環に彼女は陥っていた。
「やっぱり、私じゃ力不足なんです……。先輩の役に立ちたいなんて、とんだ思い上がりでした……」
ガーランドとの対決で、それは決定的となった。自分は先輩のフォローが出来ず、あろうことか撃墜されてしまった。やはりエースの傍に立つのは早すぎた。未熟な一年生が担当していいポジションではなかった。今回の敗北によって、彼女の考えは、そう固まってしまう。実際には、僚機としての役目を果たしていると言うのに……。
「聖グロに帰ったら、もう先輩のウイングマンは辞退しますって言おうかな……」
そう呟いて、メイヨーは眠りについた。
*
ドンドンドンと、金属製の扉を叩く音でメイヨーは目を覚ました。
「ちょっとちょっと~?まさか死んでる感じ~?」
扉越しでにじみ出るギャルっぽい声に、メイヨーは返事をする。
「生きてますよ。どちら様ですか?」
身元を明かすこともなく、扉は開けられ誰かが入室してきた。
「ちーっす」
それは黒森峰のエース、レッドバロンだった。彼女はメイヨーの顔を見た途端、怪しい手つきで近づいてきた。
「へえー。サザーランドの奴、結構カワイイ子選ぶじゃん?」
そう言ったかと思うと、メイヨーの体や髪の毛に触り始める。
「ちょっ、何ですか急に!ベタベタ触らないで下さい!」
「えー、いいじゃん別に。アンタ捕虜なんだし、ウチの好きにさせてよ」
抵抗するメイヨーだが、レッドバロンは構わずあちこち触っていく。
「お、これは中々の……」
欲望にまみれたその手が、メイヨーの胸に行こうとすると―――。
「そ、そこはダメー!!」
「痛ッ!?」
メイヨー渾身の平手打ちが、レッドバロンの頬に直撃する。
「いったたた……」
ぶたれた場所を手でさするレッドバロン。彼女の頬には、痛々しいビンタの赤い痕ができた。
「わ、私の胸を触っていいのは先輩だけです!いや、本当は誰も触っちゃダメですけど、ん?や、やっぱり先輩でも胸に触れるのはダメで、でも一回くらいなら許しもいいかなって、えーと、何言ってんだろう私!?」
メイヨーは赤面しながら慌てふためいている。
「……うん。ウチが悪かった。とりあえず一旦落ち着こ?」
「ん?今の声はメイヨーさん?……気のせいですわね」
*
「……え?あなたが、あのレッドバロンさんですか?」
冷静さを取り戻したメイヨーが、ようやく状況を把握した。
「そ。ウチが黒森峰のエース。で、念のため聞くけど、アンタがサザーランドの僚機やってる子だよね?えーと、TACネームは?」
「メイヨーです。サザーランド先輩のウイングマンをやらせてもらってます。……今のところは」
思わせぶりな口調なのは、メイヨーがそのポジションを続ける気力が薄れてきているせいだ。
「ビンゴ!
「レッドバロンさん、あなたに一つ、聞きたいことがあります」
神妙な面持ちで、メイヨーが尋ねる。
「どうしてあなたは、他校のエースをつけ回しているんですか?」
「ウチこそが最強のパイロットであることを、世に知らしめるためだけど?」
「何でそんなことをする必要があるんですか?」
メイヨーの素朴な疑問に、レッドバロンは顔をしかめてこう答えた。
「……アンタみたいな凡人に分かる訳ないっしょ。天才であるがゆえの苦悩、常に完璧さを求められる家系に生まれてしまったがゆえの宿命……」
この言葉の意味を、メイヨーは理解できなかったが、一つだけ言いたいことがあった。
「サザーランド先輩は、絶対あなたには負けません!」
これは全く根拠のない言い草だった。それでもメイヨーは、もし二校のエースが激突すれば、絶対にサザーランドが勝つということを信じてやまなかった。
「ふーん。言ってくれんじゃん?何はともあれ、ウチはサザーランドの奴をぶっ倒して、最強の座に立つつもりだけどね」
そのタイミングで、レッドバロンの携帯にメールが受信される。
「お、何々……。ハルトマンが聖グロに捕まってる?マジかー」
送り主はガーランドで、近日中に聖グロと黒森峰双方で捕虜交換を行う、とのことだった。
「ハルトマン?」
「あー、ウチの可愛い後半。そうねー、アンタにちょっと似てる感じ。一年生でさ、でも才能はめちゃめちゃあるんだよねー」
メイヨーとハルトマン、両者は一致する部分が多い。空戦道の強豪校で三年生エースの僚機を担当している。身長も同じくらいで、先輩を尊敬している。
一方で決定的に違う部分もある。ハルトマンは才能に恵まれた、いわゆる天才パイロットだが、メイヨーは特にそんなものはない、平凡なパイロットだ。
(後輩……。レッドバロンさんにもいるんだ)
「今日はアンタからサザーランドについて聞くつもりだったけど、やっぱいいや。直接本人からダイレクトに聞けばいいし」
レッドバロンは、捕虜交換の場にサザーランドが現れることを予感していた。だったら自分も参加して、直接話をする方向に切り替えたのだった。
「やっぱり場所は長野の中立高校かー。んじゃ、バイバイー」
結局、大した会話もなくレッドバロンは立ち去ってしまった。
「……何だろう。早く先輩と再会したい気持ちはある。けれど……」
メイヨーは迷っていた。サザーランドの僚機を辞任したいという率直な気持ちを伝えるべきか、このまま黙っているべきか……。
いずれにせよ、サザーランド、メイヨー、レッドバロン、そしてハルトマンの四名は、すぐに直接対面することになる。
その場所は、以前にプラウダと継続による会議が開催されたのと同じ、長野県の中立高校だ。
現在の黒森峰にはウェリントンも捕まっています。
ただ、今後もう彼女の目立った活躍はないです(無慈悲)。
一番好きな学校は?
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大洗女子
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聖グロリアーナ
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サンダース付属
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アンツィオ
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プラウダ
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黒森峰
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知波単
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継続
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その他(BC自由等)