ガールズ&ファイター 聖グロリアーナのエース 作:ゲオルギーJr
この辺りが折り返し地点です
太平洋の空で、レシプロ戦闘機に乗った女子高生達が戦っている。
互いに編隊を解き、合計で五機の戦闘機が乱戦状態になる。
そんなことは、この世界では日常茶飯事であった。
*
スピットファイアが空を裂く。
数の上では不利だが、サザーランドにとっては何の問題もなかった。
彼女はこれまで、似たような状況をいくつも凌いできた猛者だからだ。
「二対一ね……」
散開したアンツィオの編隊三機のうち、二機がサザーランドに向かってきた。
機体はどちらも同じ、mc.202だ。
その片方を操縦しているのが、シラクサだった。
「ジェノバ様が手を下すまでもありません!」
数で勝っているシラクサは得意気だ。
その相手がエースパイロットであることも知らずに……。
「挟み撃ちにしますよ!」
僚機に指示を出し、スピットファイアを取り囲むように飛ぶ。
二方向から一気に仕留める作戦だ。
だが、サザーランドも黙ってはいない。
右に急旋回をし、片方の敵機へ接近する。
「そこよ」
背面飛行に移り、降下しながら機銃の弾幕を張る。
あっという間に、二機の片割れを落としてみせた。
「なんですか、あの動きは!?」
シラクサは驚愕した。
自分の作戦が、わずか数十秒で崩されてしまったのだ。
「……いえ、問題ありません。私が仕留めれば同じことです!」
作戦は変更せざるを得なかったが、まだシラクサには自信があった。
アンツィオのエースの右腕である、という自信だ。
だがそれも、すぐに崩壊することになる。
「行きますよ!」
敵に照準を合わせ、機銃を撃つ。
だが次の瞬間、スピットファイアが視界から消える。
「甘いわね」
大きく円を描くようにバレルロールをすると、
敵機の尾翼を刈るようにサザーランドは弾を撃った。
「しまった!」
シラクサは急いで回避機動をとるが、手遅れだった。
7.7mm弾が尾翼付近に命中し、昇降舵(エレベーター)が効かなくなったのだ。
こうなると、戦闘を継続するのは難しい。
「ジェノバ様……申し訳ございません……」
シラクサはなんとか機体を制御し、撤退を試みた。
「もう十分でしょう」
サザーランドはそれを深追いしなかった。
まだ倒すべき相手がいるからだ。
*
同じ空では、もう一つの戦いがあった。
アンツィオのエース、ジェノバが操るG.55チェンタウロに、
メイヨーのハリケーンが挑んでいた。
いや、それは戦いとは呼べないかもしれない。
「おかしい……。相手は後ろを取ってるのに撃ってこない……」
メイヨーは果敢に敵に向かうも、技量の差が大きすぎて相手にならなかった。
素早い
これで勝負は決したように見えたが、ジェノバはどういうわけか攻撃してこない。
「美しく戦い、そして勝つ。それが僕のポリシーなのさ」
華麗なる勝利、それがアンツィオのエースの流儀だった。
このまま撃墜しては、あまりにもあっけなさ過ぎる。
ジェノバは、言ってしまえば<見せ場>を作りたかったのだ。
そんな意図を知らずに、メイヨーは必死の抵抗を続ける。
「落ち着くんだ、私。相手に後ろを取られたときの対処は学んだはず……!」
自己暗示のようなものを唱えると、メイヨーはスロットルレバーを絞った。
エンジン出力を下げ、機体の速度を低下させる。
これにより、敵機をわざと追い越させ、形勢逆転を狙う。
これはオーバーシュートと言って、空戦では基本的なテクニックだ。
「やった!背後を取れた!」
このとき、メイヨーは一縷の希望が見えていた。
この有利な状態を維持できれば、
強敵チェンタウロを返り討ちにできるかもしれない。
だが、それは甘い考えだった。
「慎重に狙って……、えっ?」
メイヨーが相手を照準器に捉えた、その時だった。
突然、G.55が急減速したかと思うと、縦に90度回転。
ハリケーンの背後を再び取り返した瞬間、ジェノバは機銃のボタンに手をかけた。
「いやああぁっ!」
メイヨーの機体を弾丸が貫いた。
12.7mm機銃と20mm機関砲の強力な弾幕だ。
ハリケーンでは到底耐えられない。
「メイヨー、応答して!何があったの!」
悲痛な叫びは無線越しで、サザーランドに聞こえていた。
「先輩っ、ごめんなさい……。被弾しました……」
メイヨーのハリケーンは悲惨な状態だった。
胴体は弾丸によって、無数の穴が空いている。
大きな黒煙が機体を包み、飛ぶので精一杯といった状況だ。
いや、むしろ飛んでいるのが奇跡とも思えるような感じだった。
「無理しないで。今すぐ撤退しなさい」
サザーランドが撤退命令を出す。
「分かりました、先輩。どうかご武運を……!」
メイヨーはボロボロの機体を何とか操縦し、学園艦の滑走路へ戻っていった。
敵は追いかけてこなかった。
「うーん、素晴らしい勝利だねぇ。相手に背後を取らせてからの、一気に逆転!
我ながら美しい動きだったなぁ」
ジェノバは自分自身に酔いしれていた。
美しく勝つ、という流儀を成し遂げて見せたからだ。
「さてと、お次はあのスピットファイアだね」
余韻に浸っていたのもつかの間、ジェノバは次なる目標を定める。
「……メイヨー、あなたの仇は私が取るわ!」
サザーランドも同様に、敵に視線を向ける。
一対一、エース同士、邪魔する者はいない。
「美しく勝ってみせよう!」
「サザーランド、
大空の決闘が今、始まった。
次回はいよいよエース対決です。
今後もエース対決が、章における最大の見せ場になる予定です。
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