ガールズ&ファイター 聖グロリアーナのエース   作:ゲオルギーJr

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アンツィオ編第四話
この辺りが折り返し地点です


イタリアン・バトル

太平洋の空で、レシプロ戦闘機に乗った女子高生達が戦っている。

互いに編隊を解き、合計で五機の戦闘機が乱戦状態になる。

そんなことは、この世界では日常茶飯事であった。

 

*

 

スピットファイアが空を裂く。

数の上では不利だが、サザーランドにとっては何の問題もなかった。

彼女はこれまで、似たような状況をいくつも凌いできた猛者だからだ。

 

「二対一ね……」

 

散開したアンツィオの編隊三機のうち、二機がサザーランドに向かってきた。

機体はどちらも同じ、mc.202だ。

その片方を操縦しているのが、シラクサだった。

 

「ジェノバ様が手を下すまでもありません!」

 

数で勝っているシラクサは得意気だ。

その相手がエースパイロットであることも知らずに……。

 

「挟み撃ちにしますよ!」

 

僚機に指示を出し、スピットファイアを取り囲むように飛ぶ。

二方向から一気に仕留める作戦だ。

 

だが、サザーランドも黙ってはいない。

右に急旋回をし、片方の敵機へ接近する。

 

「そこよ」

 

背面飛行に移り、降下しながら機銃の弾幕を張る。

あっという間に、二機の片割れを落としてみせた。

 

「なんですか、あの動きは!?」

 

シラクサは驚愕した。

自分の作戦が、わずか数十秒で崩されてしまったのだ。

 

「……いえ、問題ありません。私が仕留めれば同じことです!」

 

作戦は変更せざるを得なかったが、まだシラクサには自信があった。

アンツィオのエースの右腕である、という自信だ。

だがそれも、すぐに崩壊することになる。

 

「行きますよ!」

 

敵に照準を合わせ、機銃を撃つ。

だが次の瞬間、スピットファイアが視界から消える。

 

「甘いわね」

 

大きく円を描くようにバレルロールをすると、

敵機の尾翼を刈るようにサザーランドは弾を撃った。

 

「しまった!」

 

シラクサは急いで回避機動をとるが、手遅れだった。

7.7mm弾が尾翼付近に命中し、昇降舵(エレベーター)が効かなくなったのだ。

こうなると、戦闘を継続するのは難しい。

 

「ジェノバ様……申し訳ございません……」

 

シラクサはなんとか機体を制御し、撤退を試みた。

 

「もう十分でしょう」

 

サザーランドはそれを深追いしなかった。

まだ倒すべき相手がいるからだ。

 

*

 

同じ空では、もう一つの戦いがあった。

アンツィオのエース、ジェノバが操るG.55チェンタウロに、

メイヨーのハリケーンが挑んでいた。

いや、それは戦いとは呼べないかもしれない。

 

「おかしい……。相手は後ろを取ってるのに撃ってこない……」

 

メイヨーは果敢に敵に向かうも、技量の差が大きすぎて相手にならなかった。

素早い戦闘機動(マニューバ)で、あっさりと背後を取られてしまったのだ。

これで勝負は決したように見えたが、ジェノバはどういうわけか攻撃してこない。

 

「美しく戦い、そして勝つ。それが僕のポリシーなのさ」

 

華麗なる勝利、それがアンツィオのエースの流儀だった。

このまま撃墜しては、あまりにもあっけなさ過ぎる。

ジェノバは、言ってしまえば<見せ場>を作りたかったのだ。

そんな意図を知らずに、メイヨーは必死の抵抗を続ける。

 

「落ち着くんだ、私。相手に後ろを取られたときの対処は学んだはず……!」

 

自己暗示のようなものを唱えると、メイヨーはスロットルレバーを絞った。

エンジン出力を下げ、機体の速度を低下させる。

これにより、敵機をわざと追い越させ、形勢逆転を狙う。

これはオーバーシュートと言って、空戦では基本的なテクニックだ。

 

「やった!背後を取れた!」

 

このとき、メイヨーは一縷の希望が見えていた。

この有利な状態を維持できれば、

強敵チェンタウロを返り討ちにできるかもしれない。

だが、それは甘い考えだった。

 

「慎重に狙って……、えっ?」

 

メイヨーが相手を照準器に捉えた、その時だった。

 

「Addio!」(アッディオ)*1

 

突然、G.55が急減速したかと思うと、縦に90度回転。

ハリケーンの背後を再び取り返した瞬間、ジェノバは機銃のボタンに手をかけた。

 

「いやああぁっ!」

 

メイヨーの機体を弾丸が貫いた。

12.7mm機銃と20mm機関砲の強力な弾幕だ。

ハリケーンでは到底耐えられない。

 

「メイヨー、応答して!何があったの!」

 

悲痛な叫びは無線越しで、サザーランドに聞こえていた。

 

「先輩っ、ごめんなさい……。被弾しました……」

 

メイヨーのハリケーンは悲惨な状態だった。

胴体は弾丸によって、無数の穴が空いている。

大きな黒煙が機体を包み、飛ぶので精一杯といった状況だ。

いや、むしろ飛んでいるのが奇跡とも思えるような感じだった。

 

「無理しないで。今すぐ撤退しなさい」

 

サザーランドが撤退命令を出す。

 

「分かりました、先輩。どうかご武運を……!」

 

メイヨーはボロボロの機体を何とか操縦し、学園艦の滑走路へ戻っていった。

敵は追いかけてこなかった。

 

「うーん、素晴らしい勝利だねぇ。相手に背後を取らせてからの、一気に逆転!

我ながら美しい動きだったなぁ」

 

ジェノバは自分自身に酔いしれていた。

美しく勝つ、という流儀を成し遂げて見せたからだ。

 

「さてと、お次はあのスピットファイアだね」

 

余韻に浸っていたのもつかの間、ジェノバは次なる目標を定める。

 

「……メイヨー、あなたの仇は私が取るわ!」

 

サザーランドも同様に、敵に視線を向ける。

一対一、エース同士、邪魔する者はいない。

 

「美しく勝ってみせよう!」

「サザーランド、交戦開始(エンゲージ)!」

 

大空の決闘が今、始まった。

*1
イタリア語で「じゃあな!」的な意味。




次回はいよいよエース対決です。
今後もエース対決が、章における最大の見せ場になる予定です。

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