ガールズ&ファイター 聖グロリアーナのエース   作:ゲオルギーJr

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二人の絆

捕虜から解放され、無事に聖グロリアーナ女学院に帰艦したメイヨー。

 

「うーん、やっぱり言える気がしないよー……」

 

だが、肝心要である行動を取れずにいた。それは先輩のサザーランドに対するメッセージを伝えることである。

 

<自分はウイングマンとしての自信を失ってしまった。だから辞退させて欲しい>

 

たったこれだけの言葉を伝えるだけなのに、メイヨーは苦しんでいた。

いや、彼女にとっては、この言葉をサザーランドに言うという行為は、言ってしまえばこれまで二人で築き上げてきたもの全てを否定するに等しいものだ。やはり簡単にはできない。

 

「やっぱり秘密にしておいた方が……」

 

かと言って、何も言わずひた隠しを続けるのも、それはそれで息苦しい。問題への先送りに過ぎない。メイヨーは悩んだあげく、一つの解決策を思いついた。

 

「そうだ。先輩以外の人に相談してみようかな」

 

直接本人と向き合う勇気がないなら、誰か他の人に頼ってみる。それならば、比較的ハードルは低くなるだろう。

では、サザーランド以外の人物で、メイヨーのお悩み相談に付き合えるのは誰だろうか?二人を繋ぐ第三者となれば、答えは明確だ。

 

「清美さん……。やっぱりあの人しかいないよね!」

 

善は急げということで、早速メイヨーは単身で格納庫に行くことにした。

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

整備班の班長、清美は少し変わった作業をしていた。

普段は主に戦闘機の整備を担当している彼女だが、今回は違う。

 

「ふーむ。戦車の改造ってのも新鮮だねぇ」

 

今、彼女が取り掛かっているのは、戦車道で使われている、イギリスのクルセイダー巡航戦車だ。

メカニックに長けている彼女は、戦闘機以外にも戦車だろうと自動車だろうと、そっけなく整備できる。

しかし、なぜ今この戦車を改造しようとしているのだろうか?理由は少し前に遡る。

 

{このクルセイダーを、もっと速く走れるようにして欲しいんですわ!}

 

聖グロの戦車道でクルセイダー戦車を操る、とある赤髪の一年生選手から、こういった依頼をされたからである。

ちょうど戦闘機整備の仕事が減っていた清美は、暇つぶしも兼ねて、この依頼を請け負ったのだ。

 

「それにしてもあの赤髪のお嬢ちゃん、ウェリントンちゃんみたいな喋り方してたねぇ。もしかして姉妹だったりして?んなわけないか、ハッハッハ!」

 

ふと思い出し笑いをしてしまう清美。それほど、わざとらしいお嬢様言葉が印象的だったようだ。

 

 

そこへ、メイヨーが申し訳なさそうに訪ねてきた。

 

「あのー……、今いいですか?話したいことがあるんですけど」

 

「おっ。メイヨーちゃん、無事に帰ってこれたかい! 良かった、心配してたよ?」

 

戦車のエンジン改造作業に没頭しながら、清美はメイヨーの話を聞いている。

 

「サザーランド先輩について、悩んでいることがあるんです……」

 

思い切って自身の葛藤を告白したメイヨー。そんな彼女の顔を見て、清美は事の深刻さを悟ったのだろう。ただちに作業を切り上げて、面と向かい合って聞くことにした。

 

「なんだい、随分と辛気臭い顔をしてるじゃないか。大丈夫さ。言ってごらん?」

 

「ありがとうございます。実はですね―――

 

メイヨーは、今抱え込んでいる悩み事を全て吐き出した。

どんなにパイロットとしての腕が上がっても、一向に自信がつかないこと。

今までサザーランドと共に戦う中で、感じたギャップのこと。

そして今後、僚機を続けるか否か。辞めるとして、直接本人に言える勇気が湧かないこと。

途中で涙を流しながらも、メイヨーは心中の思いを清美に伝えた。

 

 

 

「……そうかい。そんなに色々と思い悩んでいたとは、アタシも初めて知ったよ」

 

「やっぱり、私と先輩じゃあ不釣り合いですよね。エースの隣に私みたいな下手な人間がいても、足を引っ張るだけかなって……。それなら、いっそウイングマンを辞めちゃおうって結論に達したんです」

 

まるで何もかも諦めたような表情をするメイヨーに、清美はこう進言した。

 

「実はさ、ついこの前にサザーランドの奴とメイヨーちゃんについて相談されたんだよ」

 

「え?先輩が私についての話を?」

 

「そうさ。まあこの話は、本人から誰にも言ってほしくないって頼まれてるんだけど、面倒くさいから全部言っちゃおうかねぇ」

 

清美は、以前サザーランドから聞いたメイヨーに対する恋愛感情を暴露した。これはサザーランドから先輩としての威厳を失いたくないので誰にも言わないよう口止めされていたのだが、清美は構わず言いふらしてしまったのである。

 

「せ、先輩が私のことを好きって……。それ本当ですか!?」

 

思わず赤面したメイヨー。まさか先輩から好意を寄せられるとは、夢にも思わなかったのだろう。

 

「本当さね。あいつも動揺してたよ。私が後輩に恋愛感情を抱くわけないじゃない!ってさ」

 

 

 

 

 

すると清美は、あらぬ方向に向かって大声を出した。

 

「な、サザーランド!隠れてないでこっち来なよ!」

 

するとサザーランドがおもむろに二人の前に姿を表した。

 

「言ってくれたわね、きよみん。それは秘密にしてって約束したのに……」

 

実はサザーランドは、メイヨーを探して格納庫まで足を運んでいたのだ。だが清美と何か話しているのを見て、裏でコッソリと様子を伺っていた。だがそんな素振りも、清美にはお見通しだったのだ。

 

「わーっ、先輩!?いつからそこに!?」

 

「そうね。あなたが泣きながら話してるときぐらいかしら?」

 

メイヨーが泣きながら話したタイミングとなると、実に不運である。何せその内容は、メイヨーがサザーランドに隠しておきたかったものだったからだ。

 

「えーっと、それじゃあウイングマンを辞めたいって部分も?」

 

「……全部聞いてたわ」

 

一転して顔面蒼白になるメイヨー。

 

「うぅ……」

 

するとサザーランドは、落ち込んだメイヨーの肩を持って、こう言った。

 

「聞いて、メイヨー。あなたが誰の僚機になるかは、あなたの自由なの。だから私と別れて他のパイロットと組んでもいいし、何なら誰とも組まずに一人でいるのもいい。最終的な決定権は、あなた自身が握っているのよ。それは理解できる?」

 

「は、はい……」

 

怯えているのだろうか、メイヨーの体は小刻みに震えている。だがサザーランドは、真剣な表情を崩さない。

 

「でもね、一つだけ伝えたいことがあるの。私は、メイヨーのことを必要としているのよ。かつて他人と接することを嫌って、この聖グロで孤立していた私を救ってくれた存在。それがあなたなの。あなたがひたむきに私のことを慕ってくれて本当に嬉しかった。それまでエースパイロットなんて称号に価値を見出せなかったけど、メイヨーと出会って初めて、エースになって良かったなって感じたの」

 

「私が、先輩を救った?」

 

「そうよ。実感は湧かないかもしれないけど、少なくとも私は、メイヨーと組んで正解だと考えているわ。確かに最初のうちは、私が一方的に支えてあげる感じで不釣り合いな関係だったけど、今は対等な関係まで進展したと思うの」

 

「対等な関係……」

 

「二機がペアを組んで、お互いにサポートをし合う、それが一番機と二番機のあるべき姿。それって、私とメイヨーのタッグが達成しているでしょう? あなたはどんな時でも、私を支えてくれた。それは単なる空戦のときに限らないわ。私が落ち込んだとき、あなたは励ましてくれた。私が窮地に立たされたとき、あなたは駆けつけてくれた。これってとても立派なことよ?並のパイロットじゃ成し得ないことだわ。ましてや、あなたは一年生の新米。こんな逸材、他には絶対いないって私信じてるの。だから……、だからね……」

 

サザーランドの頬に涙が流れたと思うと、メイヨーに抱きついてこう叫んだ。

 

「ずっと隣にいて欲しいの! メイヨーおぉっ!!」

 

愛の叫びとも言うべきか。サザーランドの声は広い格納庫全体に響き渡る。

 

「せ、先輩……」

 

メイヨーは泣きつくサザーランドに抱きしめられて、感情がこみ上げる。

 

「私も、先輩のウイングマンであり続けたいです!」

 

そう叫んで、メイヨーも泣きながら抱き返した。

 

「良かった……、良かったねぇ。ようやく二人が結ばれて、アタシは嬉しいよ……」

 

号泣しながら抱擁し合う二人を見た清美も、感極まって涙を流してしまった。。彼女は元々サザーランドが孤独だった時代から面倒を見てきた人間だ。そんなかつては半ば心を閉ざしたサザーランドが、ようやく愛する人を見つけ、それが成就した。清美としても、これ以上に喜ばしい事は無いだろう。

 

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

 

「……それじゃあメイヨー、あなたは私の僚機を担当するパイロットを続けてくれるのね?」

 

「もちろんです、先輩!」

 

時間が経って、ようやく落ち着きを取り戻した二人。もう、彼女たちの決意が揺らぐことはない。

サザーランドは、先輩としてメイヨーを先導することを、

メイヨーは、後輩としてサザーランドを支え続けることを、共に固く誓ったのだ。

 

「先輩、一つ聞きたいことがあります」

 

「ん?何かしら?」

 

「私は先輩のウイングマンとして、どのように立ち振る舞えば良いのでしょうか?」

 

「そうね……。別に着飾る必要は無いわ。ありのままの自分でいいのよ、メイヨー」

 

今までメイヨーは、エースの傍らに立つパイロットとしてどのような存在であるべきか悩んでいた。

だが別に、サザーランドは何も特別なことは求めていなかったのだ。むしろメイヨーには、気難しくならずに純粋なままでいて欲しいというのが、彼女の願いだった。それが今、ようやく二人とも真の意味で理解できたのだった。

 

「わかりました、先輩!」

 

「ふふっ。そういう健気で活発な感じのメイヨーが、私は一番好きなの」

 

紆余曲折あったが、お互いの溝は埋まり、二人の絆は絶対的なものとなった。

 

 

 

 

 

「さてと、それじゃあ黒森峰との対決に備えないとね」

 

そう。今のサザーランド達には、倒さねばならない強敵との戦いが待ち受けていた。黒森峰のエース、レッドバロンとの対決である。

 

「そうですね、先輩。……あ、でも私のタイフーンはもう……」

 

「あー……、そう言えば撃墜されて損失しちゃったのよね。あなたのタイフーン」

 

以前のガーランドとの対決で、メイヨーの搭乗機であるタイフーンは、ロケット弾の餌食になってしまった。となると、新しい機体が必要である。

 

「心配ないさね。予備のタイフーンは少数だけど、まだ残ってるから」

 

清美はそう言って胸を叩いた。しかし―――。

 

「駄目ね。タイフーン程度じゃ、これから迎える激戦には耐えられないわ」

 

サザーランドは、それを良しとは思わなかった。

 

「レッドバロン、ヤツはこれまでとは比べ物にならない強敵よ。そんな相手に生半可な性能の機体で挑んでも、返り討ちにされるだけだわ。それは私のスピットファイアMk.IXも同様ね」

 

サザーランドが求めるもの……。それは、今より更に高性能な戦闘機だった。より優秀な性能の機体でなければ、レッドバロンには立ち向かえないと判断したのだろう。事実、それは正しかった。敵が使用してくるであろうFw-190やBf-109は、かなり洗練された後期のタイプだからだ。

だが問題がある。今の聖グロリアーナ女学院に、そんな高性能の戦闘機があるのだろうか?

 

「ねえ、きよみん。あるんでしょう?Mk.IXスピットやタイフーンを凌駕する、最高の戦闘機……」

 

そう質問された清美は、少し考え込んだ後、答えを出した。

 

「……あるよ。でも、ソイツは会長からの許可が降りない限り使用できない。いくぶん貴重な機体だからねぇ……」

 

「会長……。やっぱり、その名前が出てくるのね」

 

いつだって、サザーランドを苦しめたり振り回してきた生徒会長、英山幸子の存在。再び、その名を聞いたサザーランドは、ある決心をした。

 

「私、今から会長室に行くわ。そこで蹴りをつけるの。もう、会長に操られるのはゴメンだって……」

 

生徒会長に逆らうという、学園艦で最も危険な行為を実行すると宣言したサザーランド。

 

「先輩、私も行きます。会長と直接、話をしたいです」

 

「メイヨー……。ありがとう」

 

メイヨーも同じ思いだった。今こそ、幸子の鎖から解き放たれるべき時だ。

 

「そうかい。あんた達、会長に直談判するんだね? 大した度胸だ。でも応援してるよ。アタシも個人的に、会長の権力は理不尽だと思ってるからね!」

 

「その通りよ、きよみん。レッドバロンより先に、私たちには戦わないといけない相手がいるの。さあ、行くわよメイヨー。会長室に!」

 

「はい、先輩!」

 

ついに生徒会長、英山幸子への因縁を晴らすときが来た。これに勝利するまでは、レッドバロンとの対決には臨めないというものだ。

こうしてサザーランドとメイヨーは確固たる意思を持って、艦橋の最上階にある会長室へと向かった。

 

 




クルセイダー戦車の改造を依頼した赤髪の一年生。まあ、あの人しかいないですよね。

一番好きな学校は?

  • 大洗女子
  • 聖グロリアーナ
  • サンダース付属
  • アンツィオ
  • プラウダ
  • 黒森峰
  • 知波単
  • 継続
  • その他(BC自由等)
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