ガールズ&ファイター 聖グロリアーナのエース   作:ゲオルギーJr

6 / 57
今回から使用している『』の括弧は敵と味方の両方に通じている無線です


エース対エース

エースパイロット──――

空戦道において最強クラスの実力を持つ彼女たちは、

生徒会長とは別の意味で、その学校を代表する存在だ。

故にエース同士の対決というのは、両校の威信をかけた戦いでもあった。

 

*

 

聖グロリアーナの管制塔は、慌ただしい雰囲気になっていた。

敵の増援や、メイヨーの撃墜などで味方が劣勢であると判断した管制官は、

追加の戦闘機を送るべきか迷っていた。

そこで、現在交戦中のサザーランドに直接無線を送ってみた。

 

「こちら管制塔。もし増援が必要ならば言って下さい。

要請を頂ければ、10分程で当空域に味方が到着します」

 

しかし、返答は次の通りだった。

 

「必要ないわ。今の戦力で対処します」

 

サザーランドにとって、管制官の提案は何の意味もないものだった。

戦闘機同士の空戦、しかも一対一のドッグファイトは状況にもよるが、

基本的に一、二分、長くても五分あれば決着がつく勝負だ。

それなのに、増援が来るまで10分もかかるようでは、その前に戦いが終わってしまう。

だから、増援を断らざるを得なかった。

 

また、サザーランドには予感があった。

今、敵対している相手がエースであるという予感だ。

もしそうであれば、一般のパイロットが増えたところで返り討ちに会うだろう。

事実、それは的中していた。

相手はアンツィオといえど、エースだった。

そして、エースに対抗できるのもまたエースだけであった。

 

 

『あー、君。聞こえるかい?』

 

突然、サザーランドの無線に割り込みが入った。

ジェノバが周波数フリー、つまり誰でも聞きとれる無線を使って話しかけてきたのだ。

 

『もしかして、私?オープン無線で何の用かしら?』

 

サザーランドも、同じ周波数で返答した。

 

『そうそう、スピットファイアの君のことさ。

シラクサちゃんを落とすなんて、中々の腕前じゃないか』

 

ジェノバは、無線で喋り続ける。

 

『でも、あまり調子に乗らない方がいいよ。

今、君が相手しているのはエースパイロットだからね』

 

わざわざ向こう側から自分はエースです、と伝えられた。

 

『そう。で、それがどうかしたの?』

 

サザーランドが応答を続ける。

 

『物分かりの悪い子だね。つまり君がエースでもない限り、

僕に勝つのは絶対に不可能ってことさ!』

 

そのセリフと共に、ジェノバはG.55を旋回させ、接近してきた。

それに応じて、サザーランドもスピットファイアで旋回する。

相対する二機は、お互いの背後を取りつつ、相手を振り切るために旋回を繰り返した。

戦闘機同士が交差を続ける、いわゆるシザーズ機動である。

 

『無駄な抵抗を……。自分が勝てないと分かってるのかい?』

『悪いけど誰が相手であれ、自分から負けを認めるつもりは無いわ』

 

両機は旋回を続けるが、お互い相手を照準に捉えられない。

だが六回目に交差したとき、サザーランドの撃った7.7mm弾がジェノバの機体に命中した。

しかしこれはカス当たりであり、このままシザーズが繰り返されると思われた。

 

『僕の美しい機体に傷を……!?』

 

だがジェノバにとっては一大事だった。

彼女の理想とする勝利は、傷一つ無い美しい状態での勝利だった。

それが崩された、となるともう冷静さを保てない。

 

『この傷の代償は、君の敗北で払ってもらうよ!』

 

そう言うとジェノバは旋回を中断し、急上昇を始めた。

その直後エルロンロール、回転を伴いながら降下し、攻撃を仕掛けてきた。

サザーランドもそれに合わせて機体を降下し、回避していく。

 

『はははは!この僕から逃げられると思うのかい!』

 

少し前にメイヨーを仕留めた弾幕が、スピットファイアに向けられる。

だがそれを、サザーランドは巧みにかわしていく。

 

『生意気な奴だね!でもここまでだよ!』

 

降下を続け、海面スレスレまで高度を落としたスピットファイアに止めを刺そうとする。

しかし攻撃が当たらない。

 

『あまり僕を怒らせないで欲しいな!』

 

再び旋回を始めようとしたサザーランドに堪忍袋の緒が切れたジェノバは猛スピードで接近し、

確実な一撃を入れようとした、その瞬間だった。

 

「ここよ」

 

サザーランドは操縦レバーをグッと引いた直後、スロットルレバーを一気に絞った。

そしてその場で小さく宙返りをすると、

下を通過したジェノバの機体にありったけの弾丸を打ち込んだ。

 

「なにィッ!?」

 

7.7mm機銃と20mm機関砲が作り出すシャワーを、G.55チェンタウロは浴びた。

機体はあっという間に炎に包まれる。

 

『どういうことだ……!?僕はエースだぞ!?アンツィオで最強のパイロットだぞ!?』

 

怒りの混じった叫びを上げたジェノバにサザーランドはこう伝えた。

 

『悪いわね。私もエースなのよ』

 

その事実を知ったジェノバは最後の言葉を残した。

 

『Mamma Mia!』(マンマミーア)*1

 

直後、機体は海に墜落した。

聖グロとアンツィオのエース対決、それを制したのはサザーランド。

聖グロ側の勝利だ。

 

 

「管制塔へ。全ての敵航空機を撃墜したわ。もう増援は来ないわよね?」

 

管制官に現在のレーダーサイトの状況を尋ねる。

 

「こちら管制塔。当空域に他のレーダー反応は無し。全機撃墜です」

 

状況を報告する無線の後ろで、他の管制官達の会話が聞こえた。

 

「えぇ!?ホントに全部一人で撃墜したの!?」

「すごいパイロットがいるもんですね」

「さすが、我らのエース!」

「これでアンツィオの連中も懲りたかしら?」

 

あらゆる状況でも、一人で戦況をひっくり返す力を持つ存在。

エースパイロットとは、そういった人物を指す言葉でもあるのだろう。

*1
イタリア語で「何てこったい!」的な意味。

一番好きな学校は?

  • 大洗女子
  • 聖グロリアーナ
  • サンダース付属
  • アンツィオ
  • プラウダ
  • 黒森峰
  • 知波単
  • 継続
  • その他(BC自由等)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。