転生者たちの集い   作:火野ミライ

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そして少女は戦士となる…

壁を蹴り、道を蹴り、塀を蹴り、瓦礫を蹴る。音も光も置き去りにし、いつもより低速でアリシアと言う少女の元へ向かう。場所は既に透し能力で確認済み。彼女が発する微弱な魔力は一寸たりとも動いてない。

 

視界映像を流している掲示板では阿鼻叫喚となっているようだが無視、次第に戦いの中心地に入っていき足場が無くなっていく。なので移動方法を走りに変える。魔力を多少込めた脚部で駆け抜け、道をふさぐ瓦礫の山は軽々と跳び越えて進む。

 

少しボロボロのローブを風に揺らしたどり着いたのは比較的無事なビル。近くに倒れた看板にはこの星の言葉で『解体予定』と書いてあるようだから廃ビルと思う。軽く跳び上がり3階の窓を割りながら中へと入る。ちなみに1階・2階部分は瓦礫で埋まっていた。

 

内部に入って初めて気が付いたけど瓦礫がビルを支えているみたいで、いつ崩れても可笑しくない。手早くアリシアを安全な場所に連れ出す必要がある。幸い、どこにいるかは分かっているので迷いなくある部屋へと向かう。

 

その部屋にはかつて物置として使われていたのか手狭で窓も無い。そんな部屋の隅にハンドガンのような機械を持つ金髪少女が膝を抱え震えている。耳をすまさずとも聞こえてくる嗚咽。その悲しみの声を聴き、先程まで騒がしかった掲示板も静かになった。

 

アリシアの正面に立ち、腕を掴み立ち上がらせようと試みるも振りほどかれる。この時に何か罵倒を言うわけでも無く、力なく体勢を崩し赤く膨れた目元でこちらを見つめてくるだけ。

 

307:名無し転生者

管理局に攻撃された時でもこんなに落ち込んでなかったぞ……

 

308:名無し転生者

ひとみに生気がねぇ

 

309:名無し転生者

アリシアの状態から見るに勇者ニキは

 

310:虫に負ける炎

>>309 ほぼ確定でいいだろ

 

311:青の情報局

転生者であろうと、ウルトラ戦士であろうと一つの生命。たった一つの命を失えばそこまでですから…

 

312:名無し転生者

あぁ……

 

313:はぐれたメタスラ

ここも危ないみたいやし、移動できるなら移動したいけどアリシアがこの様子だからな

 

314:名無し転生者

しゃーない。女一つの身で育ててるプレシアさんには申し訳ないが、勇者ニキはアリシアにとって親に近い存在でもあったし

 

315:名無し転生者

>>314

どっちかて言うと知らない事を教え合う兄妹じゃね? まぁ、どっちにしても心の傷はデカいか

 

掲示板に書き込まれていく情報。彼らの言う勇者ニキことウルトラマンゼットとアリシアの関係がなんとなく読めて来た。こう言う役回りが得意では無いが仕方ない。本当なら確認だけして戻るつもりだったけど…

 

「いつまでそこでグズってるの?」

 

「………………………」

 

問いかけてみるがいっさいの反応は無く、顔を俯けるだけ。

 

「そうやっていれば同情してくれると思ってる? いつも通りゼットが話しかけてくれるとでも期待してる? だったらそのまま囚われの姫の様にしてると良いよ」

 

「…………てよ

 

「ま、そしたらゼットのやったか事が全部無駄になるけど」

 

……………………………」

 

『言い過ぎ』『やめろ』私達の言葉を遮ろうとするスレ民。俯いたまま体を震わすアリシア。

それを気にせず言葉を放ち続ける。

 

「その間にどれだけの人が死ぬ? もうウルトラマンになれない貴方じゃ…… ウルトラマンゼットとして戦える自分に酔っていたあなたには関係ないか」

 

「もう喋らないで!!」

 

激情に身を任せ掴みかかって来たアリシア。彼女の力に身を任せ押される形で背に壁をぶつける。その表情は怒りに染まっており、感情に身を任せて言葉を紡ぐ。

 

「ぽっとでのあなたに何が分かるんですか! 私は今までゼットさんと一緒に戦ってきた。たくさんの人達を守って来たんです。怪獣から街を、ミッドチルダを守って来たんですよ!! でもブガンは違う…… アイツは私達を、ゼットさんを殺す気で来ていた。今までの奴らと違う、言葉が通じるのに何も通じない。ソレがどれだけ怖いか、あなたには分からないでしょ!!!」

 

息をつく暇も無く語られた言葉はアリシアの心からの言葉。その言葉を聞き、彼女に同情する言葉や労いの言葉が流れていく。その様子を横目に会話に戻る。

 

「うん、分からないよ。分かるのはあなたに戦士の覚悟が無かった事」

 

「戦士の覚悟?」

 

邪険な表情を浮かべるアリシア。そんな彼女に前世の時から乏しいコミュ力をフル稼働させて語り続ける。

 

「命を奪う覚悟。正義の為とか、守る為とか、きれいな言葉でいくら固めても結局、命を奪う事には変わらない。だから譲れないもの為に殺す覚悟をする。それが出来ないなら後ろで隠れて。でないと邪魔なだけ」

 

これはあくまで私達の持論。他の誰かに批判も否定もされる考え方。

でもこの考えを持っていなきゃ今、この場所には居なかった。そんな考え方。うん、自分が語りは苦手だ。

 

「命を奪う覚悟……」

 

だけど目の前の少女にはそれだけで十分だったようで、胸に自身の手を当て瞼を閉じ何かを考えている。そして次に目を見開いた時には最初に遭った絶望感は無く、そこには何か覚悟を決めた者の顔付になっていた。

 

………小さな子が戦いの覚悟を持つ事に考える事はある。けど今は彼女にその意思を持ってもらわないと次に進めないから。いったんアリシアを連れてビルの外に出る。

 

「それは?」

 

そして懐から取り出すのは【ダークリング】と呼ばれる闇のアイテム。これはとある転生者から譲り受けた物。ダークリングを天に掲げ、1枚のカードを生成する。そこに描かれているのは胸部にZの形をしたカラータイマーを持つ光の巨人。この宇宙に唯一存在するウルトラ戦士、ウルトラマンゼットの【フュージョンカード】。掲示板で驚きの書き込みが流れる中、ゼットのカードをアリシアに渡す。

 

「ゼットさんのカード!?」

 

「周囲に散らばったゼットの光を凝縮したカード。あなたのゼットを思う気持ち、ゼットとあなたがこれまで築き上げた絆があれば再び彼を呼び起こすことが出来るかもしれない」

 

「絆……」

 

「ただし、あくまで可能性。ゼットに変身できたとしてもそこに意思が宿っているとは限らない」

 

砂漠で小さな針を見つけるぐらいの奇跡を起こさないといけない。その方法はアリシア自身が見つけないといけない。無謀の挑戦に結果は灯らないかもしれない。それでも話を聞いたアリシアの瞳は成し遂げようとする意志が宿っている。

 

「やります! 私はまだゼットさんと一緒に飛びたいから」

 

「そう。ならこれも持って行くと良い」

 

新たに懐から取り出したフュージョンカードを渡す。そこに描かれているのは黒を中心とした肉体に禍々しい赤のライン、胸部には紫に発光するカラータイマー。鋭い爪と瞳を持つその姿は怪獣使いの巨人。

 

「ゼットが復活したらブガンとか言う奴は再び現れ、あなた達を狙う。その時、そのカードが力になるはず」

 

「ありがとうございます」

 

それだけ言うとアリシアは走り出す。彼女達の運命を示すかのように夕日は輝いていた。

 


 

月が沈み、太陽が昇る事。ミッドチルダの空から五角形のシルエットの怪鳥、【宇宙怪獣 ベムスター】が舞い降りる。頭部の角から光弾を放ちビルを破壊。前日の戦いの跡が残る街が火の海となり、ベムスターから逃げようとする人で道が埋まる。その中を逆走しベムスターを睨みつける少女。

 

「暴れろベムスター! あの若造の守りたかったもん、全部ぶっ壊せ!!」

 

ブガンの剣先から放たれる闇のエネルギーを受け瞳が赤く染まったベムスター。手当たり次第に壊しては雄たけびを上げる。その一方、人が居なくなった道のど真ん中で首にぶら下げたペンダントを手に取る。

 

「私には戦士の心得とか、命を奪う覚悟とよくわかんない……… けど!私の故郷を、お母さんが返ってくる家を、リニスを守りたい!またゼット一緒に空を飛びたい!………だから帰って来てゼットォォーーーッ!!!」

 

ペンダント……待機状態のZDシューターをへスティック形態へと変形、懐から取り出したカートリッジの起動ボタンを押す。

 

CARTRIDGE

 

ZDシューターの下部スロットにカートリッジをセットし、天へと掲げながらデバイスのボタンを押す。

 

ULTRAMAN Z! ORIGINAL!

 

デバイスから音声が鳴り響く中、アリシアは百万ワットの輝きに包まれ、その肉体を巨人の物へと変える。ベムスターをアッパーで転倒させ、光が晴れるとそこには胸部にZ字の輝きを灯す【ウルトラマンゼット:オリジナル】の姿。

 

「なに!?」

 

彼の登場に驚きの声を零すブガン。一方、その様子を少し離れた建物の屋上から見つめる影。134cmの小柄な少女が巨人の再臨にホッと息を吐く。

 

584:名無し転生

祝え!勇者ニキの…… ウルトラマンゼットの再誕を!!

 

585:虫に負ける炎

勇者ニキ良かった…

 

586:名無し転生

アリシアも一皮むけたようで… お兄さん、なんか泣けてきた

 

587:銀のデラシオン所属

でもまだ安心はできない。途中からベムスターの様子がおかしい

 

588:名無し転生

それにまだブガンと言うグローザムもいるし

 

589:はぐれたメタスラ

うへぇ~

 

590:名無し転生

頑張れ勇者ニキ! 社長ニキも今ごろメタスラで1000%おじさんと戦ってるんや!!

 

591:名無し転生

>>590

なお、制御できてない模様

 

592:名無し転生

社長ニキ強く生きて……

 

そんな彼女の視線を通して、別の世界の住人もまたゼットの復活に歓喜を上げ、これからの戦いにエールを送る。

 

「デェア!」

 

ゼットの蹴りがベムスターの頭部に命中、脳震盪でふらつくベムスターから距離を取り頭部のトサカに手を添えた。

 

「「ゼットスラッガー!!」」

 

そのまま腕を伸ばしトサカから光波弾を連射。だがすべての攻撃はベムスターの腹部の口に吸収される。しかしそれこそがゼットの狙いだった。両腕を水平に構えてゼットが持つ独自のエネルギー【ゼスティウムエネルギー】を解放、Zを描くように手刀を切って大きく腕を振る溜めポーズをとり、腕を十字に組んで放つ必殺の一撃。

 

「「ゼスティウム光線!」」

 

ベムスターは腹部でエネルギーを食事した時、その直後は無防備となる。そこに本命の一撃を叩きこむことで撃破。勝利の狼煙を上げた。

 

「………お帰り、ゼット!」

 

「ただいま、アリシア!」

 

これまでの二人なら普通のベムスター相手でも苦戦は避けられなかっただろう。しかし今のアリシアはこれまでとは違い戦う覚悟を少なからず理解し、ゼットとの絆をより深めた。その事により今での何倍もの力を引き出す事が出来たのだ。

 

「奇跡の大復活ってか若造!」

 

再開をかみしめる二人を切り裂くかのように不意打ちの一撃を振るうブガン。咄嗟に前へと転がる事でその一撃を回避したゼットはいつでも動ける体制でブガンを睨みつける。空が青く染まる頃、戦いは次の段階へと向かおうとしていた。




>赤の黒のアサシン
134cmの小柄な少女の姿をした転生者。前世からコミュニケーションが苦手。
生身でもウルトラの力を自在に使え、身体能力も素で高い。「ダークリング」や「ウルトラフュージョンカード」を持っているがそれは特典とは関係なく、他の転生者から受け取った者。O-50系列のウルトラマンに変身できるようだ。

>アリシア・テスタロッサ
赤の黒のアサシンの荒治療により立ち直った。
作者の力不足で描写できてないがゼットのウルトラフュージョンカードから新たなウルトラカートリッジを開発。ゼットの事を呼び捨てで呼ぶようになった。

>ウルトラマンゼット
ウルトラの奇跡で復活、地味にオリジナルの姿で戦えるようになった(変身アイテム的な意味で)。

>ウルトラカートリッジ
アリシアがウルトラメダルの力を空のカートリッジに注いで作り出した物。
魔力を込めたカートリッジと違い何度でも使用でき、起動ボタンが存在する。普段はZDシューターの収納領域にしまってあり、必要時に取り出す。

見た目のイメージはカートリッジの形をしたサウンドドロップ……… よりウルトラカプセル。

>掲示板の転生者達
ゼット復活に歓喜を上げ、勝負の行方に不安を持ち、同時進行でメタクラ入手イベントに入った社長ニキの事が心配。

>暗黒強化ベムスター
暗黒の鎧の力で強化された子。なお復活したゼットにあっさりと敗北。泣いて良いよ。
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