二度目の人生は高難易度   作:もえみ

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さあ、始まるよ


4月

 人身事故の影響で長いこと電車内で待たされてしまったが、それもようやく終わり。車掌は目的の駅の名を告げてくれた。

 隣で人の肩を使って眠っていた兄の(みなと)を起こして、私もようやく開放感を得た。これ、絶対に明日肩こりだ。喘息まで出ないといいけど。細身な兄だが、私よりは全然大きいのだ。

 

 

 時間が時間なので当然ではあったが、改札を抜けると外は真っ暗であった。流石に都会とは言え、12時を回ってしまったらこんなものか。人がいなくなってしまったかのように静かで空に浮かぶ少しばかり欠けた月が綺麗で印象的だった。

 

 

 

 私たち兄妹が今度転校する場所は月光館学園。家庭の事情というやつだ。入寮の出来るところならどこでも良かったが、まさか昔住んでいた近くに戻ってくると思わなかった。

 あれから10年も経っているので懐かしいという気持ちよりも、普通に知らない場所に来た感覚だ。不気味な棺桶のようなオブジェまで立ち並んでるし。ただ趣味が悪い。

 

 

(かなで)、こっちで合ってる?」

「うん。こんな時間だし同じ寮で助かったね」

「そうだな」

「男女混合とかありえんけど」

「そういうもの?」

「そういうもの」

 

 

 

 かなり大きな建物があった。恐らくここだろう。

 電気も消えてしまっているが、今日到着する予定だと言ってあるし、電車が人身事故の影響で遅れていることも連絡している。

 私もここまで遅くなるのは予想外だったけどさ。携帯は使えないから再度の連絡もしようはない。

 

 扉を開けて中に入る。ごめんくださいと告げても返答はなかった。

 

 ・・・やっぱりこの時間だからかな?

 

 

 湊に視線を送って少し待つことにすると、兄と同じではあったが、まったく違うところから声が聞こえた。

 石田彰ボイスがこの世に二つと存在するだと!?

 

 私は急に反応が返ってきたことよりもそちらに驚いて声の方を振り返った。

 

 

 小さな子供だった。男女混合の寮ってだけでも驚いてたけど、年齢も問わなかったんだね。彼の身長的には私と同じくらいの年齢の人かな?

 顔色が悪く頬にある泣きボクロが印象的だった。

 

 

 

「遅かったね、長い間君たちを待っていたよ」

「え、あ、待たしてすみません」

「ふふ。この先に進むならそこに署名を」

「署名?」

「一応契約だからね」

「け、契約?」

「怖がらなくていいよ。ここからは自分の決めたことに責任を持ってもらうっていう当たり前の内容だから」

 

 

 

 彼は面白そうに笑った。怖がるというよりも、もう入寮のための手続きはほとんど終わらせているはずだ。違ったっけ?ともあれ、私たちは順に名前を書いた。

 

 

 

「確かに」

「えっと、貴方は?」

「それはまた今度。時は全てのものに結末を運んでくる。たとえ耳と目を塞いでいてもね。・・・さあ、始まるよ」

「え、今の手品?」

 

 

 

 囚人服のようなボーダーを着ていた彼は契約書を手元から消し、自分自身も暗がりに消えてしまった。

 

 あー、この類の現象にはまだ慣れないが、この世界は一部がファンタジーっぽいし、深く考えないことにした。

 

 湊なんてすでに眠いってしか考えてない。これでもずっと一緒に暮らしてきた兄妹だ。表情に出にくい兄だが、大体わかる。

 

 

 

「誰っ!?」

「あ、・・・どもです。本日からこちらでお世話になります。有里と申します。こちらは兄です」

 

「は?・・・・はっはっ」

 

「待て岳羽(たけば)

 

 

 ストップが入った。どうやらこの人は岳羽と言うらしい。

 

 

「連絡以上に到着が遅れたようだね、有里(ありさと)兄妹。私は桐条美鶴(きりじょうみつる)。この寮に住んでいる者だ」

「・・・誰ですか?ってか、彼女、今日からここで世話になるって言ってましたけど」

「彼らは転入生だ。ここへの入寮が急に決まってね。いずれそれぞれの寮に正式に割り当てがされるだろう」

 

「いいんですか?」

「さあな」

 

 

 

 内緒話ならもっと小声でやるか、私たちが来るまでに済ませていて欲しい。

 電気が戻る前に彼女たちが姿を見せたし、何かはあるんだろう。物語だとしても、今まで展開がなかったし、急に何が動くとも限らない。

 別の寮に割り当てられるまでは注意深く見ておくか。

 

 

 

「彼女は岳羽ゆかり。この春から二年生だから、兄と同じだな」

「岳羽です」

「よろしくお願いします」

「よろしく」

「あ、はい。こちらこそ、よろしく」

「今日はもう遅い」

 

 

 

 12時を回ってしまっている。大人からしたら特に大した遅さではないが、成長期の私からしたら大問題である。もう寝なければ身長が伸び悩むかもしれない。

 

 兄は二階、私は三階に部屋を用意していただけているそうで、それぞれ岳羽さんと桐条さんに案内をしてもらい、挨拶をして休むことにした。

 

 ・・・絶対に朝一でシャワーを浴びよう。私は既に届いていた荷物の中から布団だけを取り出してそう誓った。

 

 

 

 

 

4/7

 

 

 昨日の誓いに準じてまずはシャワーを浴びた。

 

 既に起きていた桐条さんに簡単なルールを確認すると、この寮の設備の使用は各自の部屋とトイレを除いて12時まで、朝は6時から使用可能となる。冷蔵庫、キッチンは共同なので使用後の片付けはすぐに行う事。

 

 と、言ってもここのメンツはほとんど使用せず、外食などが多いそうだ。せっかくの調理器具が泣いている。結構揃ってるのに。

 しかし今日は食材もないし、学校へ行く前にコンビニでパンでも購入するか。

 

 

 桐条さん頼まれたという岳羽さんと湊を呼びに行き、一緒に学校へ向かった。

そこで私の年齢を伝えると、岳羽さんは大げさに驚いた。

 

 ははっ、そこまで驚くことはないだろう?

 小学生だと思っていた、だと?よろしい、ならば戦争だ。

 

 雰囲気で私が不快に思ったことが伝わったらしく、慌てて謝罪が飛んできた。きちんと中等部に案内してくれたので良しとしよう。

 

 

 

 二人と別れて、私は中等部の職員室へ向かった。普通に挨拶すると、私が転校生であると通じたようで、対応してくれた。

 

 両親が10年前の事故で亡くなっていること、親戚をたらいまわしにされていること、・・・なんだ?その資料にどこまで書かれてるの?

 ちょっと見せてみて?そろそろ生徒のプライバシーについてとやかく言われる年代に入ってきてるでしょう?

 

 流石にクラスメイト達は私の事情を全く知らなかったので安心した。クラスメイト達は私の事情を全く知らなかったので安心した。

 

 

 3-A組。

 

 一年はここで暮らせるだろうから、仲良くしておかないとな。・・・今さらJCのノリについていけるか分からない。

 とりあえず、テンションが高いので、質問を返すのも大変だった。

 

 初日って事で授業はほとんどなくて、オリエンテーションで終わった。

 寮で暮らしているからと一緒に帰ろうという誘いを断り、兄のいる高等部へ足を運んだ。

 

 門の前で見かけた兄は早速帽子をかぶった友人をゲットしたらしい。あの感情希薄な湊が・・・。感慨深い。

 

 

 

「あれ?初等部の子?誰か待ってんの?」

「兄の友人だろうがいい値で喧嘩は買うぞ?」

「ん?兄貴がいんの?へー、見ない子だよな、名前は?」

「中等部の三年、有里奏」

「中等部?しかも三年!?お前の妹!?」

「奏は人よりちょっと成長が遅いだけ」

「へー、あ、オレ伊織順平(いおりじゅんぺい)ってんだ。よろしくな」

「伊織さん、よろしくお願いします。私も帰り一緒でもいい?」

 

 

 

 調子がいいというか、ノリがいいというか、伊織さんは許可をくれたので、湊のよこを陣取った。

 彼はほとんどずっとしゃべり続けてくれたので、私たちは相槌を打ったり、しらないところを聞いたりするだけで済んだ。

 

 途中で道が違ったので別れ、湊の食べたい物を作るため商店街に買い物へ出かけた。

 

 色々購入したいが、荷物持ちは兄一人。米とみそ汁のインスタントと卵とソーセージ、冷凍食品。これだけで私たちの手はいっぱいになった。

 普通、寮母とかいらっしゃるんだけど、あの寮は本当に変わっている。

 

 

 

 

 

4/8

 

 

 朝ごはんを作り、湊にお弁当を持たせ、片付けを済ませてから私も寮を出る。今日から授業も始まるようで、朝はこのスタイルが確立しそうだ。

 

 授業は変わりない。特に問題なく。

 進学校とは言え、年上の湊の勉強を見ていたため、中三の勉強なんて復習である。今日のご飯はどうしようかしら。

 明日用の食材だけ買って、商店街にあったご飯屋さんで何か食べて帰ろうか。少し遅くなるが、夜遅くに外に出歩かなければいいと桐条さんも言っていた。

 まあ、最近少し物騒になってるからね。是非もないね。

 

 

 難しくない授業の時間はすぐに過ぎ、放課後クラスメイトの誘いを断って、兄を迎えに行った。

 

 今日は伊織さんもいないらしい。商店街のわかつという和食屋さんで食事をした。

 DHA盛りだくさん定食とやらを食べる湊をしり目に私は通常の日替わりお魚定食にした。私、まだ綺麗に三枚おろし出来ないからね。

 

 美味しく頂き、明日の朝食とお弁当のおかずになりそうな食材を購入して寮へ戻った。私たちの手には袋がいっぱいである。重い。

 

 ラウンジには知らない人と岳羽さんが居た。なんだ、この寮にはおっさんまで居るのか。

 

 

 

「私は幾月修司(いくつきしゅうじ)。君らの学園の理事長をしている者だ。い・く・つ・き。言いにくいだろ?」

 

 

 

 おっさんは理事長で名前は彼の持ちネタらしい。私たちに座るように指示した。

 

 ので、先に私は冷蔵庫へ向かわせてもらった。冷凍食品もあるからね。仕方ないね。

 

 私たちを見に来たっていうところだろう。兄にいくつかの質問をして、彼は上の方へ向かった。なんだ、やっぱりここに住んでんのか、あのおっさん。

 おっさんの言葉に気になる事はあったか確認したが、湊的に引っかかることはなかったようだ。ちゃんと質問に答えて貰えなかったから気にしようがない、だと。

 

 明日の仕込みだけして私は部屋に籠った。

 

 

 月の光で本を読んで、キリの良いところで寝た。

 そしたらヘンな夢見たけど。湊もいたけど。

 長鼻じいさんから鍵を渡された。

 起きてもあって、夢ではなかった?と驚いた。

 

 

 

 

 

4/9

 

 

 授業は相変わらず。

 今日は昨日買い物したから何かを買う必要はない。湊に連絡を入れてクラスメイトの誘いを受けることにした。あんまり断りすぎてもハブられて、学校で生き辛くなっちゃうからね。仕方ないね。

 

 でも、そのせいで疲れたので早めに休むことにした。

 

 けど、大きな振動にたたき起こされた。地震かもと思ってすぐに着替えと大事なものだけ持って湊のところへ向かった。

 岳羽さんも途中で合流して起きていた兄を連れ出した。

 

 

 

「裏口から逃げる?」

「地震じゃない?」

「説明は後っ!」

 

 

 

 桐条さんの声が脳内に響いて、裏口の扉を強く叩かれた。寮は何かに捕まれているようにかなり揺れているし、その焦りのせいで岳羽さんは普通の判断が出来ていない。

 

 ・・・私の手を取って強めに上へ引っ張られるし、窓が割れた音でこちらに向かってきているのが分かり、余計に判断を鈍らせている。

 

 屋上からどうやって逃げるんでしょうか?四面楚歌。是非もないよね。

 

 

 敵はキモチワルイ仮面を持ち、手には大量の剣を持っていた。

 イッツアファンタジー!

 

 

 

「ここを襲ってきたバケモノ、シャドウよ」

 

 

 

 彼女はそのバケモノに突き飛ばされてしまった。彼女の持っていた拳銃は湊が広い、私は彼女の傍へ。

 そしたら、湊が何かしたのか、オルフェウスと自称した何かが出てきた。その後すぐにオルフェウスの中からどこか懐かしいものが出てきて、湊は叫ぶ。

 暴走、だろうか?

 

 

 

「終わった、の?」

「フラグ建設乙!!」

「は?」

 

 

 

 敵を倒すと、暴走だと思われる懐かしいものは引っ込み、先ほどのオルフェウスの姿に戻っていた。

 しかし岳羽さんのフラグ建設により、フラグ回収としてさっきのよりも小さいが同じようなものが出てきた。

 湊が出来たんだから私も出来る!謎の自信により、私は彼とは違う何か、ヒルコを呼び出すことに成功した。

 

 敵を倒しきると、湊は倒れていた。

 うん、これ、かなり疲れるね。岳羽さんが湊に駆け寄ってくれたので、私は安心して座り込んだ。すぐに倒れるほどじゃない。きっと私はさっきのやつを暴走みたいなことしてないからだね。

 

 

 

「無事か!?」

真田(さなだ)さん、ですかね?まあ、多分?」

「起きてったらー!!」

 

 

 

 彼女、かなり心配してくれてるけど、たぶん、寝てるだけだよ。私もめっちゃ眠い。

 

 

 

「じゃあ、私のこと、ベッドまでよろしくです」

「え、あ!おい!!」

 

 

 

 また兄とヘンな夢を見ている。

 長鼻おじさんがこの力はペルソナだよって教えてくれた。

 コミュニティを築くことで力を強く出来るとも。人との絆が大切だって。

 

 色々教えてくれたのはありがたいけど、一週間も寝てたってことも一緒に教えて欲しかったな!!

 

 色んな人に心配を掛けたようで、目を覚ましたら傍には一緒に夢を見ていた兄と岳羽さんがいた。

 

 

 

 

 

4/18 土

 

 

 早速退院したので、病院から学校へ行くと、やはりクラスメイトたちに心配された。転校のことで疲れが溜まっていたようで風邪をこじらせていたと話すとみんな納得してくれた。

 

 あまり無理すんなよー、と頭をぐしゃぐしゃにしてくるのは仲良くしていきたいからだろう。

 こちらとしても休んできた分のノートが必要なので是非とも仲良くしていただきたい。前の席の女の子が心地よく貸してくれたため、休んでたくせに勉強できる鼻持ちならないヤツって評価は回避できそう。

 小学生の頃に一回やらかしたのでもう勘弁である。

 

 放課後は、桐条さんから大事な話があるから早めに戻って欲しいと言われていたので、みんなの誘いを断った。

 建前として、倒れたばかりだからゆっくり休んで体調を戻すと言ったらすぐに帰れとむしろ背中を押してくれた。

 

 うん、良い人ばかりだ。

 

 

 寮に戻り、最上階の入ったことのない部屋に案内される。湊はまだだった。

 少しして湊も入ってきた。よかった、この黙ったままの空気、私には無理だった。

 

 

「実は、一日は24時間じゃないって言ったら、君は信じるかい?」

 

 

 影時間のこと、この前のバケモノ・・・シャドウのこと、特別課外活動部のこと、ペルソナのこと、シャドウを倒すために力を貸して欲しいということ。

 

 

 

「要するに君らに仲間になって欲しい」

「直球ですね」

「回りくどいのは好まない」

「で、どうだ?」

「分かった」

「・・・毎日は無理です。成長期なので」

「あはは、僕らも毎日夜更かししている訳じゃない。もちろんだとも」

「なら、日常生活に支障のない程度で」

「ふぅ、良かった。貴方たち断るかと思ってた。ちょっと心強いかも」

 

 

 

 そして、このままこの寮で暮らすことも決まった。

 なるほど、理事長もグルでこの現象に対して適性があるか確認してから他の寮へ移動させてる訳か。このファンタジー現象の主軸か?シャドウという言葉は何処かで聞いたことがある。でも前世だ。

 

 考えても分からないので、明日の朝食のしこみをしてから寝ることにした。影時間に寮へ来た時に受付に居た石田彰ボイスの少年が部屋へきた。

 

 どうやって入ったか知らないが、女の子の部屋に無断で入るものではない。それがどんなにイケメンでも、だ。

 

 

 

「ごめんね。でも何となく思い出したから君にも伝えなきゃって」

「思い出した?」

「もうすぐ“終わり”が来る」

「終わり?」

「すべての終わりだよ。って言っても、実は僕もハッキリとは分かんないんだけどね」

「分かんないって」

「それより!君も力を手に入れたんだね。お兄さんとは違う、普通の力だ」

「湊にも会ったの?」

「もちろん」

 

 

 

 彼はあと二言ほど話してから消えた。彼もきっと影時間に関係するキーパーソンだろう。私は普通の力、か。すでに転生なんて不思議なことしてるから、特別な力なんてあっても困る。

 

 これもなんかのアニメだろうか?でも、見たことない。

 

 彼が言う感じだと、湊は特別な力があるっぽいからたぶん主人公だろう。

 結構イケメンだし、石田彰ボイスだし。

 すごい危なそうだけど、湊にくっついていれば死ぬこともないだろう。なんたってたぶん主人公。補正がある。大抵主人公は死なないものだ。

 

 考えるのを止めて、私はもうひと眠りすることにした。

 

 

 

 

 

4/20 月

 

 

 昨日、伊織さんもこの寮へ入り、シャドウと戦う事が決まった。

 話振り的には、全然りかいしてなさそうだけど。

 

 桐条さんから今日はラウンジ集合ってメールが来たので「OK○」って返したら、何の暗号だと帰ってきたので、大丈夫です、行きますと再度返した。冗談が通じねえ・・・。

 

 桐条さん、俗世には疎そうだけど、これからやっていけるのか?

 

 

 夜、影時間より少し前、タルタロスという迷宮の探索を開始することを告げられ、その場所に向かわされた。

 

 まさかの学校である。

 

 影時間だけに現れる迷宮。うわー、物語っぽい。中に入り、真っ白なエントランス、どっかのホテルよりもきれいだ。

 

 

 探索は新人だけで行う。

 

 リーダーは湊。

 

 実戦経験があると理由だ。私だと、伊織さんから反感出るだろうからちょうどいいや。

 

 

 青い ―後から聞いたがみんなには見えない― 扉の中に入ると、後から湊も来た。

 中はあの不思議空間で長鼻おじさんことイゴールさん。

 都合よく力に目覚め、彼が色々と教えてくれる。・・・まさか、黒幕?

 

 いや、立ち位置的には理事長とか桐条さんの身内とか怪しそう。だって、桐条グループってくっそでかい財閥だし。何かあるでしょ。

 ペルソナ出せないのに、影時間に適応してる理事長も怪しい。まあ、ダントツでイゴールさんだな。長鼻は嘘つきって言うし。めちゃくちゃキャラ立ってるし。

 

 

 扉から戻ると、みんなに心配された。・・・どうやら私たちは突っ立っていたように見えたらしい。

 不思議過ぎるだろ、ファンタジー。もうちょっと融通を利かせて欲しい。

 

 

 

 中に入ると、 ―学校の名残っぽいものはあった― 声が響いた。

 桐条さんのペルソナの特性で色々指示を出してくれるみたいだ。そんな形の支援に岳羽さんは不満があるらしい。あまり仲良くない感じはあったが、彼女が一方的に嫌っている感じかな?

 

 それぞれがペルソナ召喚と手持ちの武器でシャドウを確実に倒していく。

 

 桐条さん上手いな。着実に成功経験を積ませ、それを褒めることで自信をつけさせる。・・・高校生が考えることじゃないだろ。流石は財閥のお嬢様、人心掌握もお手の物って感じなの?

 

 

 危なげなく、本日の探索をクリアした。

 湊のリーダーはなかなか様になるかもしれない。そんなことを考えながら私は大きなあくびをした。

 眠いというより、疲れたっていうのが正しい。

 

 それは私だけではなく、岳羽さんと伊織さんもだった。我が兄はそう言った様子を見せないので恐らく体力バケモノである ―これは昔からだったか― 。私も年齢の割には体力もある方だが、高校生と中学生、基本スペックが違うのである。

 

 今日は全員で帰ることにした。今日だけはこうやって全体行動をしているが、疲労が過ぎると各自で判断して帰るようにしていこうと思います。

 

 私は体力馬鹿に付き合えん。でも悔しいので少し鍛え直そうかな。体力をつける方向で頑張っていこう。

 

 

 

 

 

4/21 火

 

 

「へぇー、桐条さんが生徒会長になったんだ」

「俺は寝てたから選挙も参加してないけどね」

 

 

 中等部も生徒会のお披露目会があったけど、それは高等部も一緒らしい。

 湊は興味無さげに野菜炒めをつついて白米をかき込んだ。それよりも教えて欲しいのは武器のことだ。

 

 警察が横流ししてくれているそうで、今度私も行こうと誘われた。

 待って欲しい。

 

 

警察が武器を横流し。

 

 

 パワーワード過ぎるわ。

 湊は色んな武器を使うつもりのようだが、兄のように私は器用ではないので一つを極めたいな。

 

 聞くと、伊織さんは大剣、岳羽さんは弓矢、真田さんは拳 ―流石ボクシング部― 、桐条さんはレイピア ―こちらも流石フェイシング部― 、近接系の武器が多いのはペルソナ召喚が有効打だからだ。

 なので、武器はあくまで身を守るためのものだと考えていればいいみたい。

 

 うーん、とりあえず、品揃えを見てからかな。

 

 

「あと、探索の日程は俺に任せるって」

「つまり一緒に考えて欲しい?」

「うん。他にも夜の買い物も許されたから、何か買い忘れがあったら言っておいて」

「両方了解」

 

 

 

 お互いお腹も満たされたので、片付けてシャワーを浴びた。浴槽が無いの、痛い。近場に温泉ないかな。

 部屋に戻ってからタルタロスの探索をどうやって行うか考えるとしよう。

 

 

 

 

 

4/24 金

 

 

「無気力症の人間を影人間という」

「で、棺桶になるのが象徴化」

「そうだ。その象徴化をしない適性を持った人間が我々ペルソナ使い」

「象徴化してないと襲われるリスクもあると」

 

 

 

 私はクラスメイトに付き合って話をしてから寮に戻って、桐条さんに色々と教えてもらっていた。

 湊が部活動に入ったため、私は湊のフォローと称して、サブリーダー的な扱いになった。本日タルタロスに潜る予定なので、再度桐条さんに教えを乞うていた訳である。

 

 

「岳羽さんは回復系も覚えて、伊織さんは炎、斬撃系、真田さんは雷、打撃系、桐条さんは?」

「私は氷や斬撃だ。君のペルソナ、ヒルコは」

「特定の属性は覚えていませんね」

 

 

 補助系のスキルが多いのだ。

 誰かのフォローが得意、なのは昔から。フォローってか、社会人として当然の確認作業と空気読みスキルがあるだけだから誇れるものではない。

 

 私は一人で戦うのには向かない。

 今までずっと兄と生きてきたので、きっとそういうものもペルソナの能力に反映されてるのだろう。おんぶにだっこで申し訳ない。

 元社会人とか言われても、もう15年近く前の事だし、今は子供だからいいんです。

 

 

 

「あとは現時点で桐条さんがタルタロスに行けない日を教えてください。それみて今後の活動を考えます」

「・・・リーダーは兄でなく、君に任せるべきだったか?」

 

 

 それはないと、彼女の考えをぶった切った。

 こういう計画を立てたり考えたりするのが得意なだけで、適材適所である。

 実際に行動するのは湊に任せる。無気力に見えてあれは動き出したら早いのだ。初動が遅い私よりも余程有能である。

 

 

 

 

 

タルタロス

 

 

 とりあえず、今日は五階くらいまで進んでみようと思う。そう話しておいた。それがどれだけの疲労度になるか分からないが、目標は立てるべきだろう。

 

 

 

「もっと高くてもいいんだぜ?奏、ビビってんのか?」

「じゃあ、一人でどうぞ。私は五階まで上がったら帰るんで」

「なっ!じょ、冗談だって!マジになんなよ!」

「あんたはともかく、私と有里君は部活もあるんだし、ちょっとは考えてよね」

 

 

 

 後ろで岳羽さんと伊織さんが言い合ってるのを放置して私は湊から与えられた武器、拳銃を片手にエントランスから迷宮部に入っていった。

 召喚器も拳銃だけど、私の身体で扱えるものは多くないため、絞られはする。だから、湊が選んだのはこれなんだろう。

 

 五階まで到達すると、桐条さんからアナウンスがあったように通常のシャドウよりも強い ―といっても、湊と私が覚醒した日に出逢ったのほどではない。これからは中ボスと呼ぼう― シャドウが居て、苦戦しつつも倒すことが出来た。

 

 いやー、補助って大事だよね。目標は高くていいと大口ほざいていた伊織さんは疲労困憊で誰よりも先に帰っていった。

 まあ、相性のお陰で ―貫通技が苦手だったようで岳羽さんが大活躍。私?初めて使う武器なのでお察し― 中ボスもちゃんと倒せたし、途中から攻略を始められる移動装置も見つかったし、収穫もバッチリだ。

 

 次のタルタロス探索はみんなの疲労が回復するだろう明後日以降かな。

 

 

 

 

 

4/27 月

 

 

「生徒会?」

「うん、手伝い」

「いきなり色々と手広くやりすぎじゃない?」

「イゴールもコミュニティを築けって言ってたし」

「実感あるの?」

「奏は無いの?」

「残念ながら」

「ワイルドの力と関係があるのかな」

「そうなのかもね」

 

 

 

 今日はあんかけうどんだ。

 

 

 

「今のとこ部活に生徒会にクラスメイト、特別課外活動部、商店街の本屋さん、あとはたぶん、生徒会書記、部活のマネージャーもあるかも」

「ヘルプ必要だったら呼んでね」

「うん」

 

 

 今日もタルタロスを探索だ。

 今日の目標は10階まで。あまりありすぎてもね。もう少し慣れたら進む階数を増やしていってもいいかもしれない。今日も中ボスを倒して終了。

 

 もうすぐゴールデンウィーク。私は何をして過ごそうか。

 

 

 

 

 

4/29 水

 

 

「ご飯くらい食べに来なさい!!」

「うわっ!?」

 

 

 

 もう夜になる。一日中ネットゲームをしていた湊に説教した。

 ここでもコミュニティが出来たらしい。

 

 なんでもアリだな!ファンタジー!!

 

 でもだからって、一日ご飯食べないなんてダメです。

 

 成長期の男の子なんだからちゃんと食べて!!

 いつも食べすぎなくらいの大食いだけど!!

 羨ましいくらい太らないけど!!

 

 

 

 

 

4/30 木

 

 

 湊からお土産で本屋の老夫婦がメロンパンをくれたというのでこれは明日の朝ごはんにしよう。

 あとエリザベスから電話があったそうだ。それは私と一緒に来てほしいとのこと。先延ばしにする理由もないので早速ベルベットルームへ向かった。

 

 

 

「実は・・折り入ってお願いがございます」

「お願い?」

「ええ。私、思うところがございまして、お強い方を探しておりました。もし宜しければ、私よりの“依頼”にお応え下さいませんでしょうか」

「それってどういう?」

「中にはあなた方のエスコートが必要な特別な依頼もございますが、もちろん依頼達成のあかつきには、相応の“報酬”もご用意しております」

「いや、頼みごとなら別に報酬なんて」

「助けてもらってるし、ねぇ?」

「いえ、それでは示しがつきません。お客様がお力を示しにいらっしゃるのを、私・・・心よりお待ち申し上げます」

「今からとか?」

「いえ、時ではありませんので、またの機会に」

 

 

 

 エスコートに関しては昼間もしくは放課後に誘いに来いということらしい。ポロニアンモールはすぐそこなのでいつでも構わないだろう。湊と日程調整すればいいだけだし。

 戻ってからご飯の支度も面倒なので、はがくれでラーメンを食べて帰ることにした。

 

 今日もタルタロスへ行く。

 この前より期間を開けずに、そして、エリザベスからの依頼物を探すため。

 

 後は皆さんの体力はどれくらい上がってるか、確認のため、15階を目標にせず、もう一つ上の16階だ。それでも余裕そうだったら一気に上げてみてもいいかもしれない。

 

 

 今度は14階で中ボス ―一定ではないようだ― に出会い、目標の16階は行き止まりだった。

 とりあえず、これ以上先に進めないのであれば仕方がない。また10階からここまで上がってみんなのレベル上げをした。レベリングがファンタジー過ぎるわ。

 

 明日から五月だし、何かしら状況は動くと思うんだけど、この世界、ほんと何なのかな?

 中高生にしかこの力がないとかあり得ないし、そもそも私たちは10年前からこの現象を知っている。本気で解決しようと思っているのならもっと大々的にペルソナ使いを探せばいいのにそれをしない桐条グループと理事長。怪しい事この上ない。

 

 ゴールデンウィークは調べ事で過ごすことになりそうだ。

 






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