二度目の人生は高難易度   作:もえみ

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人口島計画文書01

電源の増設干渉の報だが、明らかに供給量が異常値だった。
ただ学園があるだけのこの島に、どうしてこれ程の電力が必要なんだろうか?


5月

5/1 金

 

「この暑くなっている時期にコート着込んだ人?」

「真田さんの友達らしい」

 

 

 何それ、キャラ立ち過ぎワロタ。

 絶対に主要なキャラっぽい人だ。

 もしかしたらお助けキャラ的な感じかもしれんけど。関わりはあるとにらんでいい。

 

 この学校 ―特に高等部だが― の先生や生徒がユニークすぎるので、判断がつかない部分もあるけど、私も会いに行こう。

 

 ってか、真田さん検査入院って、骨だけでそこまでするか?

 2-Eの名簿が必要ってのも気になるなぁ。お仲間フラグ?

 だったら今の湊の周りに居る誰かが候補に挙がるだろうが、2-Eの人と友人になった話は聞かない。まったくフラグを立ててない仲間入り?

 

 休み明けに高等部を覗きに行こう。

 

 

 

「本屋行ったの?」

「あ、うん。メロンパンのお礼に」

「どうだった?」

「コミュニティってのは分からないまま。私にはないのかもね」

「ならどうして一緒に呼ばれたんだろう?」

 

 

 それは私にも分からない。今度イゴールさんに聞いてみよう。

 私が兄の助けとなるのか、私もそのコミュニティの一つに入っているのか。聞いてみるも、そんなもの感じないらしい。

 

 そら、ずっと一緒に居て今更兄妹仲を深めるなんて、ねぇ?もう深まってるわ。

 

 

 仲を深めるなら本屋さんで出会った高等部の先輩のような方々だろう。能登さんボイスを聴ける日が来るなんて私は幸せ者だ。

 思わずご挨拶してしまった。

 

 

 

「あのあの!私有里と言います!えっとえっと、あ!その本!片付けるの私も手伝いますね!」

「え?あ?ありがとう?」

「は?ちょっと邪魔なんだけど」

「え、本屋でぎゃはぎゃはしてる人の方が邪魔ですけど?」

「違うの、森山さんは」

「とりあえず、片付けましょう」

 

 

 

 いわゆるギャルたちは、面白くなさそうに去っていったが、能登さんボイスの彼女はそれをチラチラと名残惜しそうに見ていた。

 それでも崩してしまった本の山を片付けるのを優先させたようで、彼女たちが本屋から出たところで本を手元に集め出した。

 集め終わると、早々と礼を言って彼女たちを追ってしまったので、名前は聞けていない。

 

 が、中学生ではないだろう。

 そもそも中等部にあんなキレッキレなギャルはいないのだ。

 

 

 また会える、というか探す。 ―小学生のいつかの夏に行った先の田舎で、小清水さんボイスと出会ったのだ。今でもずっと覚えている。しかし、彼女は同じく小学生。そしてファンタジーは知らなかった。つまり、モブっぽい人やまったく関係のない方々でも、前世を生きていた頃の声優に近い声を持つ人間は存在するのだ― 是が非でもお友達になってやるぜ。年とか関係ない。

 

 明日からは調べ事なので、コート着込んだ人と能登さんボイスの人はまた今度。

 

 

 

 

5/3 日

 

「あなたのテレビに時価ねっと田中~、みんなのよくのとも!」

 

 

 

 ペルソナについて調べたいと言って作戦室から借りてきた本を抱えて、部屋で通販の番組を見ていた。

 妙に耳に残るという話だったそれは頭に入って来なくて、―話題合わせのためだったのに休み明けの中学生たちの話に付いていけないかもしれない―昨日の少年の言葉が頭を埋め尽くしている。

 

 

 

「一週間後は満月だよ。気をつけて。また一つ、試練がやってくるからね」

「満月に何が?」

「君たちが試練に出会う日のことさ」

「・・・満月に出会う?」

「試練と向き合うのは準備が必要だ。でも時間は、無限じゃない」

「ちゃんと鍛えておけって言いたいの?」

「そういうこと」

 

 

 

 満月が過ぎたらまた会いに来ると言っていた。明日はタルタロスに行くかな・・・。

 真田さんもまだ復帰に時間掛かるらしいし。ま、骨折なんだから当然か。

 

 あ、ネオフェザーマン見忘れた。

 

 

 

 

5/4 月

 

「暇?」

「暇っちゃ暇」

「出掛けよう」

「帰り荷物持ちね」

「うん」

 

 

 我が兄のお誘いは、ポロニアンモールだった。というか、ベルベットルームだった。

 

 以前、エリザベスからお願いされていたお出かけだそうだ。

 うん、なるほど。だったら先に行って欲しかったなぁ。

 

 今日くらい何も考えずに遊んでも良いかと思って出てきたのにさ。

 

 

 まず彼女が目に付けたのは噴水だった。

 どこにでもあるようなやっすい噴水である。あっちにもあるし。このポロニアンモールだけでも三つはある。

 

 そして、彼女はイタリア(だっけ?)の願いを叶える噴水についての話を知っていて、硬貨をどぶに捨てるが如く降り注いだ。

 

 

500円を2000枚で100万円?

 

 

そ ん な バ カ な 。

 

こ の 人 は 何 を 考 え て い る の か 。

 

そ ん な こ と す る な ら 私 に く れ 。

 

 金額が金額だけに一時的ショックで立ち尽くしていたが、彼女が違う噴水にも行こうとしたので急いで止めた。

 

 

「なぜお止めになるのです?」

「そんなのしても願いはかなわないから!」

「では私が聞いたお話は?」

「少なくともここにはない!」

「先ほどは願いを考えていなかったからです。次こそ叶うかもしれません」

「ちょっと湊!!」

「どうでもいい」

「ああもう!せめて願いを決めてからにしてっ!」

「そうですね。奏様の言う通り、願いを決めてから近いうちに訪れる事と致しましょう」

 

 

 凶行を止める事が出来一安心である。―先延ばしになっただけだと後で気が付いた―

 

 次に彼女が見たのは交番だった。交番を知らないらしい。

 まあ、ベルベットルームって異次元だもんね。影時間にしか現れないタルタロスにもあるし。

 

 中でも指名手配の写真を見て自身がわたしたちに依頼している討伐依頼と同様か?と尋ねてくる。

 

 

「同じだ」

「ちょおおい!」

「討伐の証はどのように確認を?同じということは・・・体の破片を持参せよ、と?」

「違う違う」

「では、首を持ってこいということでしょうか?歴史にはそういったお話があったと聞き及んでおります」

「もっと違う!!」

 

 

 誤解を解く前に彼女の興味は別のモノに移った。

 とても疲れる。湊は困った顔なだけで何もしない。

 

 次はクラブの前で踊り出すし。パラパラはもう流行ってないよ・・・。

 

 

 オススメは?ということで、私の提案でカラオケに行くことに。

 

 ツッコミに回された私のストレス発散だ!!

 思い切り歌ってやる!

 

 

 彼女の秘密のレパートリーには敵いませんでした。すごく上手かったのでまた一緒に行きたいな。

 インターネットも開通しているし、ネットの音楽聞いて練習しよう。

 

 

ちなみにエリザベスはイゴールにベルベットルームをクラブにして欲しいと頼んで断られていました。こちらをジト目で見てくる ―今まで表情を変えることのなかったのだが― 長鼻じいさんはとっても新鮮だったことを記しておく。

 

 

 

 影時間はタルタロスへレベル上げに行って、各自ばらけて戦闘をすることに重きを置いた。

 不利なところは私がヘルプに行く形だ。私はまだ武器の扱いに慣れていないし、ペルソナも補助魔法ばかり覚えている。仕方ないね。

 

 

 

 

5/6 水

 

 ゴールデンウイーク中、調べたけど全然出て来ん・・・。

 

 ペルソナに関しての資料も今教えてもらってる以上の事が全然。

 シャドウに関してはもっと出てこない。怪しすぎて草生えるわ。

 

 まあ、確かに?

 中学生に出来る事なんて少なすぎるけどさ。私たちみたいに気がついてて、大人しくしておいた人間だって一定数いるはずだ。

 ホラー・オカルト系の掲示板だったり、都市伝説のような作り話に似たものだったり、噂程度のものが存在しておかしくないのに、微々たるものしか出て来ない。

 本当に影時間は存在している?いや、体感はしてるんだけどさ。

 

 

 これ、私の夢とかってオチない?

 だから私が知っている以上の事もしくは想像できる以上のコトは出てこない。とか。

 

 でも無気力症の人間とか私が思いつくだろうか?知っていただろうか?

 

 あの事故の日からずっと植物状態的な。・・・流石にないか。

 時間経過がリアルすぎる。それに一度死んでるんだから、あの時からって方がしっくりくる。マイナスに考えるのは止めよう。

 

 信用が出て来ないなら疑いを持っておこう。味方は兄のみだ。私が信じるのは兄だけにしておこう。

 

 

 

 ・・・帰ってきた兄は神社で幼女と知り合いになったらしい。

 あれ~?私、信じる対象間違えちゃった?

 

 その後は本屋のお爺さんたちのお財布探しを手伝った今時珍しいタイプの男子高校生なので良しとする。

 

 

 

5/9 土

 

 ニュースでも言っていたが、無気力症の人が街にかなり増えていた。影時間の彼が言ってた一週間。そして満月だ。

 

 もう何か起きる前兆じゃないですかやだー。一応何があってもいいように湊も影時間に現れる彼の忠告を聞いて早めに寮へと帰宅してきた。

 

 私は部活もしてないから商店街で買い物してから帰るくらいのルーチンワークよ。たまにクラスメイトたちが誘ってくれるけど、寮母のいない寮生活ってことで頻繁ではない。

 

 

 影時間になると、私は桐条先輩に呼ばれて作戦室にいた。どうやら市街地に出てきているシャドウがいないか監視するのに付き合って欲しいそうだ。

 

 影人間が増えるという前兆があって桐条先輩も不安らしい。

 

 

 

「元々私のペルソナは探索が出来るだけで得意なワケではないからな」

「私のペルソナで能力強化、ですか」

「ああ、そうなる」

「私で良ければ」

「君にしか出来ない事だ」

 

 

 

 この人、スレてなさすぎ?

 財閥のお嬢様ってみんなこんななの?

 

 評価してもらえるのは純粋に嬉しいので頑張ろう。

 

 

 しばらく機械をいじくる桐条先輩といると、真田さんも来た。この二人ってこの活動が長いって割にはペルソナがそんなに強くないんだよなぁ。

 

―今までは市街地に飛び出してきたシャドウの対処に当たっていただけだそうだから仕方がないとも言える。タルタロスは戦い慣れするにも効率がいい―

 

 

 

「ペルソナの力というのは、想像していたより、だうぶ幅拾いものらしい。何しろ、君の兄のように次々とペルソナを替えながら戦える者や直接の攻撃手段がなくとも周りの補助に特化した君のような者まで現れたくらいだ」

 

 

 

 うん、たぶんファンタジーが仕事を始めたんだと思うよ。私はともかく、やはり湊はこの二人からも高評価らしい。我が兄ながら鼻が高い。

 

 そんな話をしていると、機械に反応が出た。

 しかも先月出た ―私と湊がペルソナに覚醒した日だ― デカいやつらしい。全員を起こし集合させたが、なぜか制服。

 ずっとここにいた桐条先輩は分かるが、なぜに?

 影時間終わった後に補導されんぞ?

 

 今後、タルタロスへ行く時の恰好も改めさせた方がいいかもしれない。

 

 

 

 私の思考は余所に真田さん以外で出撃することが決まった。

 桐条先輩は準備があるから先に行けと。

 

 理事長はまだ戻っていないらしく、真田さんが出迎える。あのおっさん、社畜か?

 

 

 反論していた真田さんの声で思い出した。

 

 緑川光さんだわ、あの声。

 あれ?この寮ってば声優の宝庫??

 石田彰ボイスに緑川光ボイス・・・。

 

 伊織さんもどっかで聞いた事がある気がするんだけど、あれ~?軽薄すぎてイメージが湧かない。

 

 いつもの如く湊がリーダーで、私がサブ。伊織さんがぶつくさ言うが、先輩命令だ。

文句はそっちにどうぞ。

 とっとと駅前に行ってしまおう。

 

 

~バイクで颯爽と駆け付けた桐条先輩を置いて巌戸台駅付近電車内へ向かった~

 

 

 不自然に開いていた扉から罠である事は明白。なのにそれに乗って先に一人で突っ走った伊織さんにグーパン決めてやるとたった今決めた。

 

 私の手が痛いのは嫌だからボクシング部である真田さんにお願いしよう。威力も期待できる。

 

 

 私にとって唯一である武器の拳銃は外した場合と当たっても貫通してしまった場合、影時間が明けた後に矛盾を残してしまうため、使用が出来ない。

 

 

 はー、まじつっかえ!

 ようやく照準があってきたというのに。

 

 

 一人抜けた今、二人への負担が増える。申し訳なさからペルソナを連発する。とりあえず合流するまでばてないようにだけ気をつけた。

 

 

 合流してからも試練は尽きない。本当に試練だった。

 

 

 

 後日談だが、あの後電車が動き出してボスシャドウ ―車両内が狭いから仕方ないが態勢がM字開脚になっていて笑いそうになった。それはそれとして道中に現れた雑魚敵も召喚して時間稼ぎをしてくる様子を見るに一定の知性も宿していたので、手こずった相手だった― 倒して、それでも電車は止まらなくて湊が運良くブレーキを掛けた ―ゲーセンの電車でGOを一緒にプレイしたでしょ?と事なしげに言ってくる兄に現実へとゲームを似せてくれていた製作会社の方々に感謝した― おかげでなんとか死なずに済んだ。

 

 

 やったね、さすが主人公。

 

 

 

 寮に戻ってから理事長 ―何もしていないはずなのに疲労困憊といった表情で聞けば、研究所(電車で30分はかかる)から自転車を飛ばして戻ってきたらしい。あの、・・・ほんとお疲れさまです― と真田さんに出迎えられたので、伊織さんを差し出してワンパンお願いした。

 断られたので、桐条先輩にもレイピアで切り刻んで欲しいとお願いしたがこちらも断られた。二人とも苦笑いである。

 

 

 

「お前の妹過激すぎんだろ!?」

「今回は本当に危なかった」

「そうよ、順平。反省しなさい」

「いや、そうだけどよ!」

「あ、反省しなくてもいいですよ?私は勝手に報復します」

「怖ぇよ!本当に悪かったって!」

「真田さんも桐条先輩もしてくれないとなると・・・」

「まあまあ、有里さんが焦った気持ちも分かるさ。今回の事は予想も出来ない事だったからこちらのバックアップも足りていなかった。伊織君も次回からはこういったことが無いように気をつけて行こうね」

 

 

 

 この中ではオトナである理事長がまとめてあの場を締めた。

 

 はー、つっかえ!

 

 

 

 

5/10 日

 

「昨日、新都市交通“あねはづる”の最終電車が停止信号を無視してオーバーランしました。今日は早朝から警察と事故調査委員会による現場検証が行われました。オーバーランは700mに及びましたが、幸い怪我人などは現在、報告されていません。事故調査委員会では、運転手の過失と見て詳しく事情を聞く方針です。新都市交通は会見を開き、安全性の見直しと再発防止に努めるとのコメントを発表しました。なお現在、モノレールあねはづるは平常通り、運行しています」

 

 

 

 トイレに行ってから ―入る前は体調悪そうにしていたのに出てきたときにはスッキリしていた― 友人と外で食事してくると言って朝から遊びに行った湊に疲労という文字はないのか?

 寮でゆっくりし、体調回復に努めた私はラウンジのテレビでニュースを見ていた。傍には桐条先輩と理事長と真田さんもいる。

 

 

「しかし今回の作戦、外向きにはモノレールのオーバーラン事故として決着しているが・・・これだってよくよく考えれば、運営会社の一大不祥事じゃないか」

「今さらですね」

「確かに大本の原因はシャドウだが、それでも申し訳ない気持ちで一杯だな」

「それはそうだが、とにかく無事で何より。犠牲者ゼロというのが最大の戦果だよ」

「俺は不参加だったが、お手柄だったぞ」

「お手柄は湊です。ブレーキ掛けてなきゃ全員死んでましたから」

「お前の補助があったからシャドウをいち早く倒しその結果に繋がったんだ、自信を持て」

「ムリですね。この件、責任を取らされるのはおそらく運転手の方になるでしょう?そうなればご家族の方にも迷惑が行きます。既に被害者を出しているのでもっと全体的に真剣にならないといけません」

 

 

 

 そこまで言うと、理事長が重い腰 ―既に筋肉痛が始まっている様子― を上げて、どこかに連絡を始めた。桐条先輩も追随している。

 どうやら今回の件で、責任を取らされる運転手のフォローに回ってもらえるようだ。

 ありがたい。本当に関係のない人間の人生とか抱えられません。

 

 来週からは中等部も高等部も中間試験だし、今週は疲労回復したら一度タルタロスに向かうくらいでいいだろう。

 

 

 

 

5/15 金

 

タルタロス

 

「なんでタルタロス今日なんだよ」

「作戦終了後は風邪ひいていた方がいたじゃないですか。土日は控えて欲しいと桐条先輩から頼まれましたし」

 

 

 風邪を引いたのは伊織さんだ。勉強もしてないのに拗らせやがった。

 

 念のため、昨日も様子見で本日タルタロスに来た訳だ。

 岳羽さんも勉強を中断して来てくれているから感謝しかない。実のところはエリザベスの依頼とタルタロスの奥が開かれたという話の確認である。

 明日はさすがにみんな試験前だし、嫌かなって思ったんだけど、今日もそれはあまり変わらなかった。

 

 今日は鉛のメダル・・・宝物の手が落とすアイテムだそうだ。ついでに湊が昨日伊織さんからもらったゲーム機も渡してしまいたい。

 

 

 依頼は何とかなったが、桐条先輩のサーチが離れすぎて難しくなってきていることが判明。

 

 そして上の階層 ―雰囲気もかなり変化して下の階層にあった学校っぽさはなくなっている― は敵がかなり強かったのもあり、1ブロックを重点的に回る事で本日のタルタロス散策は終了した。

 

 

 

「試験勉強はどうだ?」

「ぼちぼちってところです」

「そうか。素晴らしい結果であれば、渡すものがある・・・まあ、ご褒美だな。頑張れよ」

「やる気を出させる天才ですか?」

「うん?そうか?」

「ご褒美が貰えるってだけで現金な話ですが頑張ろうと思えました」

「なるほどな。まあ、君にはシャドウの監視や私の訓練にも時折付き合ってもらっている。頑張った暁にはキミが喜ぶものを用意するとしよう。期待していてくれ」

 

 

 

 

 

5/23 土

 

「真田さんが言ってた他にも適正ありそうな女子?そんなん誘ってきなよ」

「桐条先輩のファンらしくて、この前の影時間見られてたんだと思う」

「へ?」

「バイクに乗ってる桐条先輩の夢を見たんだって」

「・・・桐条先輩、免許は持ってるって話だから」

 

 

 

 真田さんが全快で復帰したというのにまた厄介ごとか。

 

 

 影時間になるとタルタロスには向かい、25階までの中ボス ―20階まで上がった際に分かった― を目標にしたがそこまで辿り着けなかった。

 真田さんが入ったことで格段に戦いやすくなったのが分かったのは良かったが、敵に即死魔法をしてくるのが出てきたのだ。これは充分な準備が必要だ。突っ走った真田さんが犠牲となり、瀕死状態に。

 そうなると、先週の時とあまり変わらない戦いとなり、苦戦を強いられた。

 

 明日の昼間に十分な準備を整えてから、再度タルタロスに望むこととなった。

 なんで薬局で売ってるか知らないが、あそこの地返しの玉がいくつもいる。桐条先輩から預かっている探索準備のためのお金は足りるだろうか?

 

 翌日、預かっている活動資金が心もとなくなったが、無事25階までは辿り着けた。

 

 

 

 

5/27 水

 

 昨日桐条先輩からいただいたエペ ―三角剣を持ってきてというクエストである― を私だけでベルベットルームへ持って行って、湊の帰りを待ちながら食事を用意した。

 

 そう言えば、コートの男性と能登麻美子さんボイスをちゃんと探してないな。なんやかんやで忙しかったからね、仕方ないね。

 コートの男性は会ったこともないし、おそらく高等部の人であろうあの人を探しに高等部に乗り込む勇気などない。ちらちらと本屋さんを覗いてはメロンパンを押し込まれる日々。

 あのギャルたちとお友達って雰囲気でもなかったし、駅裏手の溜まり場みたいなとこに出入りしているはずもないだろう。

 

 

 今日は何を作っているんだと寄ってくる真田さんと伊織さんを押しのけてチキンライスに卵を包んだ。

 半熟は難しいし、まだ戻っていない湊には上げない。うまく出来たこれは私のだ。ふふん。

 

 寄ってくるな、特に真田さん。プロテインを牛丼に振りかけて食べているの知ってるんだからな。私はあんたに絶対メシ作らんから。

 

 コンソメスープも出来上がった時に湊が戻ったので一緒に食事をする。

 そんな目で見てもこの半熟オムライスは私のだ。タイミングよく帰ってきたとて私のだ。

 

 

 

「留学生とのコミュニティ・・・」

「裁縫出来たよね?」

「いや、靴下とか服とかの穴の修繕程度を出来るとは言わんでしょう?ファッション同好会?レベルが違う」

「ミシンとか使ってなかった?」

「基本手縫いだよ。物借りて壊したらヤダし」

 

 

 

 親日家のようで、少々こちらの文化を勘違いしているそうだ。とりあえず、話だけ聞いて、エリザベスからもらったベストを渡す。

 

 えっと、クラスメイト・部活・部活マネージャー・特別課外活動部・生徒会・生徒会書記・本屋さん・インターネット・神社の幼女だっけ?いったいコミュニティってのはいくつくらいあるんだろう。10個くらい?いや、今回の同好会がラストだとは思えない。

 

 クラスメイトとか、部活とか、そういった括りのものならば、この寮生のコミュニティとかはないのかな?解放条件を満たしてない?・・・うーん。

 

 男性のコミュニティもあるからギャルゲーではないと思うんだよなぁ。でも石田彰ボイスと緑川光ボイスぞ?

 あってもおかしくは、ないのか・・・?

 

 

 

「桐条先輩が攻略対象だとして、どうやったら彼女の守備範囲に入れるかな?」

「?真面目な人だから最低限勉強が出来ないとじゃない?」

「岳羽さんは?」

「?ファッションとか今時の女の子だからある程度の魅力というか引き付ける何かがないとダメ?」

 

 

「さすが男の子。いい意見」

 

 

「じゃあ、逆に真田さん」

「筋肉馬鹿だし、多少のトレーニング知識?」

 

「順平」

「・・・適当に褒めとく?いや、それはそれで見え透いててむしろマイナス?」

 

 

「・・・ちゃんと女の子してる?」

「してない・・・」

 

 

 

 だって、だって・・・!女の子の方が好きだし!!

 タルタロスに行って中ボスがいる36階まで行ってやった。疲れたので明日は休もう。

 

 

 

 

5/30 土

 

「高等部の校門前に倒れてたの?」

「無気力症なんだって」

「影時間付近に学校にいて襲われたんじゃないの?」

「昨日岳羽に聞いたいじめをしてた子らしいんだよね」

「むしろ当然」

「相変わらず厳しいなぁ」

「いじめって、犯罪だからね?」

 

 

 今日は皿洗いを任せ、作戦室に行った。

 桐条先輩と彼女の索敵能力向上の訓練のお付き合いだ。訓練中も今回の件について厄介な事件で見過ごせないと呟いていた。だからと言って、何が出来るという訳でもなく模索しているようだ。

 真面目だなー。

 

 最近ヒトカラにハマっている湊はカラオケに。勇気が付きそうだというが、着くのは歌唱力であり、勇気ではない。

 私にそんな頻繁に通う金はないのだ。バイトが出来るようになる高校生までの我慢しよう。

 

 

「そういえば、君の試験結果はどうだったんだ?」

「あれ?言ってませんでしたっけ?いつも通りです」

「いつも?」

「ええと、一応トップで」

「一応?謙遜するような成績ではないだろう。素晴らしいな」

 

 

 彼女の称賛は歯がゆい。

 確かに努力の結果だから滅茶苦茶に嬉しいのだが、どうしても二週目の自分が負い目に感じられるのだ。ま、ご褒美を貰えるってんなら頑張る現金なやつです。

 

 

「試験結果が良かった事だし、前に言っていた褒美が必要だな」

「・・・」

 

 

 

 今世でそういうことなかったから意識してなかったけど、そうかご褒美か。

 元々自分で頑張る子だったから何もしてなかったな。

 湊も成績いいし、何か美味しいものでも食べに行く?でも無駄遣いする余裕はないし。

 

 湊のカラオケやら外食は自分のお小遣いとタルタロスで稼いだ分 ―1:9くらいの割合だ。お小遣いは私よりは少し多いくらいである― でやっているのでいいの。

 

 

 

「近々用意しておこう」

「ありがとうございます。期待してますね?」

「・・・ハードルが上がったな」

「先輩が上げちゃいましたからね」

 

 

 世間慣れしていない人から貰うものだし、突拍子のないものが来そうだと思っていることは内緒だ。




愚者
魔術師
皇帝
法王
戦車
正義
隠者
剛毅
刑死者
節制
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