二度目の人生は高難易度   作:もえみ

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人口島計画文書02

桐条のエルゴ研が島に“ラボ”を置くという。
・・・おかしい。単なる一研究員の私でも分かる。この島で何かが始まろうとしている・・・


6月-1

6/1 月

 

 

「そう言や、ゆかりッチさ。学生用のネット板とか、見てる?先週、E組の子が倒れてんの見つかったっしょ?あれ、怪談にでてくる“オンリョウ”の仕業じゃねーかってサ」

「オンリョウとか、マジやめてよ・・・。ウソくさい!」

 

 

 

本日より夏服に切り替わり、みんなの様相が真新しい。

ブレザーはしばらくお休み。

いいね、学生の制服ってその時しか着れないものだからグッとくる。

 

学校やこの辺の方々の中では持ちきりの怪異現象。

最近また流行っている無気力症や被害者の人たちがいじめをしているという噂も相まって、少々気味の悪い話になっている。この寮でもその話はみんな気になっているみたいだ。

 

 

 

「その怪談というのは、どんな話だ?」

「ちょ!?どうせ、作り話に決まってるし、き、聞かなくていいと思いますが!」

「興味ある。話してみろ」

「う・・・」

 

 

 

怖がっているのか否定的な岳羽さんをしり目に、私は仕込みの為に少し離れた場所に居た。

ほんと、いつも先輩らしくもないのに、こういう時に限って先輩命令とか言ってくる伊織さんにはいつか絶対に桐条先輩の処刑を経験していただきたい。

合図がきたので、電気を消すと、彼は懐中電灯で自身の顔を照らす。

 

 

 

「どうも、こんばんは。伊織順平アワーのお時間です。・・・世の中にはどーも不思議なことってあるよなんですよ・・。ご存じですか?遅くまで学校にいると・・・死んだはずの生徒が現れて、喰われるよ。って怪談・・・」

 

 

 

この怪談はとあるいじめが原因だそうだ。

まあ、今回の被害者が軒並みいじめ加害者。そう言われるようになったとしても不思議なことではない。これでこの学校でのいじめが無くなるといいけど。

結局、いじめなんて加害者以外にとって、面倒で決していいものではないんだから。

 

小学生でやらかしていじめにはあったけど、まあ、小学生だし、とか思っていたら内容はどんどんエスカレートした。いやー、子どもって怖いね!

過去を思い出して ―現在の雰囲気も相まったのだろう― 少しばかり身震いした。

 

 

 

「・・・私の知り合いに、まあ、仮にAとしておきましょうか。Aがね、言うんです。“伊織さあ、オレ、変なもの見ちゃった”って。あんまり真剣なもんだから、“なにが~?”って、私聞きました、彼に。彼、首をかしげながらね、“実は例のE組の子なんだけどね・・・事件の前の晩、学校来てるとこ見たよ”って言うんです!“うそだ~、そんなんあるかい、うそだ~”って、私、彼に言ってやりましたよ」

 

 

 

そう。先にこの話を簡単に聞いていた私は知っている。

伊織さんが嘘だと断じたのはE組のいじめ被害者は夜遊びをするようなタイプではないそうだ。典型的な文化部タイプと言えば伝わるだろうか?

 

まあ、学校と家で見せている姿が違うって可能性もあるが。

 

 

 

「でも、彼、真っ青なんだ、顔。確かに見たって、ガタガタガタガタ震えてる・・・私、考えましたよ。そうなんだ、倒れていたE組の彼女ぉ?・・・食われたんですよ、死んだはずの生徒に!夜中に学校に居たから食われて、だから倒れていたんだ!って。私、ぞくーっとしました。ドゥーっと、冷や汗が溢れ出しました・・・世の中には、どーも不思議なことって、あるようなんですよ・・・まあ、全部私の推測なんですがね」

 

 

 

再び伊織さんからの合図があり、電気をつけてみんなの傍へと行った。

 

桐条先輩は真田さんに意見を求め、この事を調べる方向になっていた。

二人が調べるなら勝手にすればいいと思うけど、桐条先輩はいつ休んでるんですか?この人だって人間だろう?

 

 

 

「しっかし、ゆかりッチさ。お化けがニガテとは、チョイ情けないよな。な、奏」

「こっちに振るな」

「な!?情けないって言った!?い、いーわよ順平。だったら、調べよーじゃないの」

「うっわ」

「何よ、奏まで!お互いに、これから一週間、色んな人からテッテーテキに話を聞いて回るワケ。怪談なんて、ゼッタイ嘘に決まってるし!」

 

 

 

岳羽さんはこちらも見ている気がするんですが・・・。巻き込まれた?

三年生はこの話に乗っかりやがった。

 

まんじゅう怖いかよ!人が悪い!こっちに押し付けんなよ!

 

一人逃れようとしていた湊もガッツリ巻き込んで私たち四人で、この噂について調べることとなった。もしも神様ってやつが居るなら、伊織さんに天罰もしくは桐条先輩の処刑をお願いします。

 

 

タルタロスでは中ボス攻略 ―こっちもかなりしんどかった。毒々させてくるわ、伊織さんの弱点が主流の攻撃だわで最悪― だけではなく、彼が疲労するまで戦ってやった。

 

岳羽さんにはパスされたけど。いや、ネットとか調べるなら影時間には止まるしいいじゃんってなったけど、疲労したら探しものは難しいよなと勝手に納得した。

 

でも、こっちを巻きこまんで。

私には中等部での話を聞いて来てほしいらしい。はは、コミュ障に無茶言いなさる。

 

 

寮に帰って眠る準備をしているとまたあの少年が現れた。

 

「約束通り、また会いに来たよ。調子はどう?」

「出てけ」

「連れないなぁ・・そんな邪険にしないでよね」

「着替えの最中だが?」

「おっと、そいつは失礼」

 

 

 着替えが終わったのでまた彼を呼んだ。どうやら兄の方に行っていたらしい。そこでも出ていけと言われたそうで、血のつながりを感じる。

 まあ、湊は少しでも寝たくて出ていけと言ったんだろうな。

 

 

「さて・・・あと一週間で、また月が満ちる」

「また試練?」

「ああ、そうだよ。気をつけて」

「死にかけるのはごめんなんだけど」

「じゃあ、強くならなきゃ。・・・また、会いにくるよ」

「あ、名前・・・また聞けばいいか」

 

 あの少年、どういう立ち位置なんだろうか。さっさとベッドに入った。

 

 

 

 

6/5 金

 

 あの噂に関しては、日に日に情報が増していく。みんなが面白がっているせいだ。

 で、桐条先輩のご命令で調べてるって言ったら、みんなが挙って私にこういう話が合っただのと報告してくれるようになった。

 

 話した事のない下級生までが来たのには驚いたけど。情報だけは量が多くなったので、本日の話し合いには十分だろう。

 伊織さんとか見た感じ調べて無さそうだったし。てめぇが巻き込んだ癖してよぉ・・・。

 

 昨日の探索で入手した人口島計画文書02をエリザベスに見せてから寮に戻った。

 

 

 

「ハイ、では月曜に約束した通り、集めた情報の確認会をしますッ」

「おー、ノリ気じゃん」

「当然。私的にはバッチリ色々掴んで来たから。礼の噂は、やっぱりオンリョウの仕業なんかじゃないよ」

「あ、そこ重要なんだ・・・」

「まず、この怪談騒ぎの、そもそもの発端からだけど・・・校門で倒れてた例の子の話は、確かにちょっと怪談の内容と似てる。でも、一人がそういう目に遭っただけでこんな騒ぎになったのは、何故でしょう?」

「やはり、オンリョウだった」

「有里くん?」

「・・・」

「もうっ!ややこしくなるから、適当にボケないで・・・奏は分かる?」

「実は被害者が三人居たんだよ、湊」

「そうそう。驚いたよ!最初の事件のすぐ後に、実は二度も同じことが連発してたんだから!怪談と同じシチュエーションで、三人も病院送りじゃ、そりゃ騒がれる訳です。えー、では次は奏から」

 

 

 

 もう全部勝手にやって欲しい。

 彼女の中で私は伊織さん枠らしく、ちょっとでもふざけたりしたらすぐに罵倒が飛んでくる気がするのでちゃんと答えないわけにはいかない。

 

 

 

「えっと、被害にあった三人のクラスはバラバラ、何の関係もないように見えるんだけど共通点がありまして」

「その意外な共通点とは何でしょう?」

「何なんだよ、このノリ。誰のマネなんだよ?つか、お前答えろよ。被害にあった三人の共通点だってさ」

 

 

 だから!自分でやって!

 

 

「よく出家をしていた」

「出家じゃねぇよ・・・。しかもよくって何よ・・・」

「家出ね、家出。ちょくちょくしてたらしいよ」

「幾つかワルイグループと関わってて、路上オールとかしてる時に知り合ったみたい。三人とも同じ状況で見つかってんだから、この繋がりはゼッタイ何かあると思う」

 

 

 

 この繋がりを調べるべく、被害にあった三人がようたまり場にしていたところの現場取材とやらに今度は巻き込まれるらしい。

 

 ウソだろ、おい。

 面倒この上ないし、彼女は不良ってのを軽視しているらしい。

 ポートアイランド駅前裏手の溜まり場は不良な中学生の間でも絶対に近寄るなとお達しが出ているくらいには危ない場所だ。

 

 

 

「ねぇ、一緒に来るでしょ?」

「どうでもいい」

「それ、拒否しないって事だよね?」

「奏は?」

「え?行くの?マジで?」

「・・・」

「あー、はいはい」

 

 

 

 伊織さんは行きたくないらしく、遠回しに止めさせようとしている。逆に岳羽さんはやる気だ。

 

 

 

「だって、今まで私たち、先輩の言われたまんま動いて来たでしょ?このままでいいのかなって、そういう風に思わない?」

「や、そうかも知んないけどさぁ・・そこで真顔かよ、ズリぃなー。えぇー、行かなきゃダメ?」

 

 

 

 ・・・あー、ゴールデンウイークに調べても出て来なかったシャドウの資料、また漁るかな。

 明日の夜に出発することとなった。

 

 

 

「決着つけるからね。あんな伊織順平アワーなんてモノ、明日限りで打ち切りなんだから。有里くんも奏も、まさかビビッてないよね?」

「ビビッてる」

「大丈夫」

「大丈夫よ、頼りになるお兄さんがいるんだから、ね?」

 

 

 

 あんたの猪突猛進すぎるところと普通に不良のたまり場にビビッてます、とは言えん。

 死の危険があるタルタロスの方が怖いだろうに、今さら不良にビビるのも違うか・・・。

 でも、怖いものは怖いし、ビビるものはびびるんだよ。そういうのってこの人には分かってもらえないのかな・・。

 

 湊は私の雰囲気を察して頭を撫でてきた。

 

 

 だったら止めてくれ。

 

  ―無理。

 

 ですよね。

 

 

 

 

6/6 土

 

「ねえ、あの情報桐条先輩に伝えたの?」

「一応昨日報告会だったからね。協力してくれてありがとう」

「うーうん、全然!でも特別課外活動部ってそういうこともするんだね!なんか格好いいね!」

「うーん、やってる身としてはこんなことに巻き込まれるのは面倒くさいんだけどね・・・」

「有里さんってばそういうトコあるよね、ドライだ」

 

 

 

 中身が成人済みのおばさんだからね!!

 ちなみに昨日報告に行ったら好成績のご褒美として、枕を頂いた。訓練時の雑談で寮の枕の寝心地がいまいちであると話したのを覚えていたらしい。

 めっちゃいいやつだよ、アレ。ふかふかだし、手触りもいい。

 

 湊はトップではなかったので何も貰っていないらしい。二度目だからちょっと反則だけど、次も頑張ろう。

 

 

 ところ変わって夜、制服で集まる高校生に疑問符を浮かべた。

 

 

 

「昨日の約束通り、出かけるよ」

「えっ!?」

「なーに、怖くなったの奏?」

「いや、え?」

「すげー、ノリ気だから諦めろよ奏。やべぇと思うけどなぁ」

 

 

 怨霊がダメでこういうのがいける口なのか、と愚痴る伊織さんに賛同。

 見えないものが誰だって気味が悪いのも岳羽さんに賛同。

 見えるものの方が怖いのも伊織さんに賛同。

 

 でも普段タルタロスの探索で釘バットを振り回している貴方がバットを怖がる権利はあげません。

 

 彼女のなぞ理論に、制服に言及するのを忘れ、寮から出てきてしまった。

 私は制服着てなかったら小学生に間違えら・・・いやない、ないったらない。うん。

 

 

 

 

 

 

 

 

「写メとか撮っちゃおっか。パパとかが気ぃ失うよーな、セクスィーポーズなやつ!」

 

 

 

 女達の嫌な笑い声が響いたのに腹が立った。ハイレグ着ちゃうような先輩 ―もちろんタルタロスの中で拾った防具だが― がいるんだからセクシーポーズとか言われても、既に私の目は肥えている。

 ハイレベルなものを要求するぞ?

 

 

 

「へぇ、じゃあ撮影会します?お姉さんたちのクソみたいなお身体で興奮するような奇特な方がいらっしゃるかもしれませんし?」

「はぁ!?おま、おま!?」

「ダメだよ、汚いもので目が汚れるだろ?」

「お前もダッタカー!!」

 

 

 

 悲鳴に近い叫びをあげる伊織さん。無視して近寄ってくる男たちに向けたのは拳銃。

 

 

 

「は?」

 

「何持ってきてんだお前ーーー!?」

「普通に武器持ってきただけですよ。危なくならないかぎりは打ちませんて。最近は的を外すこともなくなってきましたし、弾の無駄遣いはしませんよ」

「ちょ、それはやばいんじゃ」

「ヤバいって、こんなとこに連れてきておいて今さらでは?」

 

 

 

 焦る岳羽さんに冷たく言い放った。そのヤバい事をさせたのは彼女の行動からだ。持ってきた判断は私だから責任転嫁だけどね。私の出した拳銃にビビったのか、不良たちは一歩下がった。なんだろう、確かにこれは本物だけどさ、彼らはこれを見たことあるのかな?私、実物は警察に横流ししてもらって初めて見たよ。

 

 微妙な混乱状態な不良のたまり場で助けてくれたのは、以前湊が言っていたコートの男性だった。不良たちは彼の頭突きを受けて散って行った。

 

 

 

「バカ野郎が!特にお前、なんて物を出してやがる!」

 

「ゾロだ!!!海賊だ!!!」

 

「あ?」

「海賊?」

「ちょ、空気詠み人知らずパート2か!?」

「おっと失礼しました。助けて下さってありがとうございます」

 

 

 

 まさか、大海賊時代の賞金稼ぎの剣士殿ボイスにお会いできるとは。

 中の人の名前、ええっと、中井さん?・・・うん、前世の好きだった声優覚えてるだけいっか、うん!

 

 岳羽さんが呼び止め、荒垣(あらがき)さんは三人が真田さんの知り合いである事に気が付いたようだ。

 ついでに私たちが怪談話について聞きたいのも感じ取ってくれたので、彼は話をしてくれる態勢になった。

 

 

 

「病院送りになった女どもが、その辺にタムロって毎日話してた。山岸って同級生を色々イジってるってな」

「山岸って・・・E組の山岸風花(やまぎしふうか)?あいつ、イジメに遭ってたのか・・・」

「おかげで騒がれてるぜ。犯人は、その山岸の怨霊だ、とかな」

「ああ、昨日からネットでもそんなネタが上がってきてましたね」

「は?山岸さんの怨霊って、え?それ、どういう事なの奏?」

「私に訊かれても・・・高等部の人らが知らないのに中等部の私が知るワケないじゃないですか」

「中等部・・・?」

 

 

 

 お?なんだ?やるのか??

 

 

 

「もう一週間かそこら、家にも戻ってねえらしくて、山岸ってやつが死んでるかもって話だ。なんで学校に毎日通ってるお前らが知らねえ?」

「そこら辺どうなんです?」

「山岸って、確か、病気だって」

「行方不明ってこと?」

「これ、もう怪談じゃないよ。E組の担任って江古田(えこだ)でしょ?アイツ、この事知ってんのかな」

 

 

 

 荒垣さんが急に立ち上がり何かを呟いていた。

 流石に聞こえなくて全員で首を傾げていたが、彼は気が付いてなんでもないと告げた。感謝をしてから寮へ戻った。

 

 三年生が居たのでとりあえず結果報告。真田さんに節度を持って行動するように呆れられた。

 こ、この人に呆れられるとか、なんだ、この敗北感は・・・。

 

 

 少年が言っていた満月も近くなっているので、レベル上げの為にタルタロスを探索した。

 いつ見ても、防具だからといってハイレグを着て平然としている先輩とは文化が違うと感じざるを得ない。

 

 

 

 

6/8 月

 

 森山(もりやま)さんとやらは、あの本屋でぎゃはぎゃはしてた人だった。

 ・・・もしや、山岸さんとはあの時の能登麻美子さんボイスか!!?仲間フラグは私が立てていた??

 

 彼女らが山岸風花を体育館倉庫に閉じ込めて、おそらくタルタロスに迷い込んでいると判断され、今夜みんなで助けに乗り込むことになった。

 そして、シャドウに狙われる可能性が高い森山さんを寮に連れてきたという事らしい。

 ちなみに、担任は学歴に瑕がつかないようにと病欠扱いしていたらしい。失踪する生徒は居ないと。ただのクソヤロウだ。

 

 

 放課後に高等部の生徒会室に来るよう桐条先輩からメールが来た時は驚いたが、こういう話だったのだ。

 

 閉じ込められたのが10日前、しかし、タルタロスは影時間にしか存在しない。

 よって、彼女の体感では10時間程度にしかならないはず。シャドウに襲われていなければ今も生きている可能性は高い。

 

 

 そもそもが適性者って話だし、ご都合主義でペルソナを覚醒させてるかもしれないね、

 なんたって能登麻美子さんボイス。やられ役ではないだろう。

 

 ないって言ってください、お願いします!

 何でもはしないけど、出来る事は頑張ります!

 

 否定的な意見と真っ向からぶつかった真田さん。

 過去に何があったかは知らないが、向こう見ずな行動には巻き込まないで戴きたい。 ―一昨日、それでイヤな目にあったばかりだからな― 桐条先輩も賛成はしていなかったが、彼の情熱に押された形で夜の学校への侵入が決まる。

 

 

 

 夜、作戦室に集まる面子。理事長が捕まらず、結局森山さんは寮に一人で放置した。あのおっさんなら、また自転車で来てくれるでしょ。

 

 

 

「理事長の口添えがないとなると、夜の学校にどう入ったものか・・・」

「それ、ご心配なく。その事なら“仕込み”が済んでマス」

「仕込み?・・・爆薬か」

 

「「!?」」

 

「フフ、いいだろう。今回は任せよう」

「時間が惜しい。出るぞ」

 

 

 

 ツッコミを放棄して真田さんは先に出て、桐条先輩もそれに倣った。残された私たちは集まる。確認しなければならない。

 

 

 

「・・・爆薬?」

「い、いや。鍵開けといたってだけなんだけど・・・」

「そうだよね」

「良かった・・・、本当に良かった。いや、良くないけど」

 

 

 

 これで鍵が開いたままってことは、警備の人の落ち度だ。

 仕事をちゃんとしてくれてないと入れないから困るけど、入れたらそれはそれで問題だよな・・・。

 ・・・そのまま入れてしまった。ああ、もう・・・。

 

 警備の人に見つからないよう、近くの教室に入った。

 

 教室も鍵が開いてるのは何故?この学校がそういう管理なの?私の常識が間違ってるの??

 誰も疑問に思わないので、私の常識を更新するべきなんだろうか・・・。

 

 

 体育館の鍵を入手するために職員室と校務員室にそれぞれ向かうことになった。

 校務員室に向かうはずだったが、伊織さんが変なことを口走って私とチェンジになる。

 まあ、どっちでもいいんだけどさ、生徒会長権限でお昼間に借りておくとかできなかったの?

 

 

 

 職員室で鍵は見つかった。

 その道中で、岳羽さんがすごくかわいかったの ―湊がトイレに寄ったら滅茶苦茶不安そうにするし、ホールで警備の人が通った時は湊に対して強がるし、自分の携帯が鳴ったらビビって湊に抱き付くし、そんな姿を見られて可愛いって言われて照れてるし、面白がってビビらそうとした湊に怒るし、私が明かりの為に携帯取り出したら可愛い小さな悲鳴を上げるし― をここに記しておこう。

 

 

 

 潜入組と待機組に分かれ、影時間を待った。

 

 私は待機組。

 桐条先輩の探知機能を少しでも上げて、離れた場所でも彼らと連絡を取れるようにヒルコの出番というわけだ。

 潜入組はそれ以外。遠距離攻撃が基本な岳羽さんが潜入組になるのは少し不安だったが、山岸風花さんを見つけるための眼は多い方がいいという判断だ。

 

 

 試練の日だし、タルタロス内部で何かが起きても人数多い方が対応できるでしょ、たぶん、おそらく、メイビー。

 

 絶賛私の中で主人公な湊が頑張ってくれると信じて。私は私にできる最大限の努力をするので、後はよろしくお願いします。

 

 

 

「毎度済まないな」

「いえ、こういった役割があった方がいいので」

「私にもっと能力があれば良かったんだがな・・・」

「ペンテシレアは元々出来るってだけで、本来戦闘向きのペルソナって話じゃないですか。十分では?」

「実際、このタルタロスを攻略していくなら不十分と言わざるを得ない。悔しいな」

 

 

 

 つーまーりー。

 山岸風花さんが探査能力を持ち合わせたペルソナ適性者である可能性が高いか。

 探査出来ないのでタルタロスに登れません、じゃ、話進まないもんね。

 

 通信感度は最大。私のヒルコもずっと召喚して、彼女に魔法をかけている状態だ。

 こんなことは初めてなので結構きつい。そろそろ向こうから何かしらのアクションがあってもいい頃合い。

 

 私のSPが尽きる前にお願い。切実に。

 大事な時に動けません、なんて状態になったら困るので、以前の探索時に見つけたソーマは湊から貰ってる。

 

 

 

「美鶴、聞こえるか?」

「私だ、想定よりも音が拾えているな。いま、そちらの位置を確認した。場所は思ったより上だったが、これ以上となるとノイズが酷くなるかもしれん。四人とも無事か?」

「他の奴らはどこに居るのかわから・・」

「明彦!おい!」

 

「はあっ・・、すみません、気力尽きちゃって・・・」

「なるほど、私のペルソナの能力だけでは届かない場所ということか」

「大丈夫かな」

 

 

 

 しかし、同じ場所でタルタロスへ入ったはずが、バラバラにされてしまったのか。

 これは急いで合流してもらわないと危惧していた二重遭難の可能性が上がってしまうな。

 

 

 

「一度休憩していてくれ。場所は特定できている。こちらから他にも呼び掛けてみるさ」

「ありがとうございます」

「無事か?有里、岳羽、伊織、聞こえていたら返事をしてくれ。山岸風花は見つかったか?距離が思ったより遠くてこちらからのサポートが届きづらい。済まないが、急いで明彦たちと合流してくれ」

 

 

 

 湊は割と下の階層で、真田さんたちに追いついて貰わないといけない。岳羽さんと真田さんは合流したみたいだ。

 

 よっし!もう一回頑張ろう!

 

 

 

「現在地はどこだ?応答してくれ」

「桐条先輩?」

「繋がったか!有里、感謝する」

「いえいえ、時間制限付きだし湊との連絡を優先してください」

 

「誰?」

「!?」

 

 

 誰かが混線してきた。能登麻美子さんボイス!!!山岸風花は生きている!!

 

 

「初めまして、山岸風花さん!助けに来ました」

「この声は山岸風花か!?」

「タルタロスで知らない声って、もうそれは正解でしょう!」

 

 

 

 能登麻美子さんボイスだから分かったんだけどね!

 

 

 

「・・・・・」

「あ・・・」

「切れたか。有里」

「「はい」」

 

「・・・兄」

「はい」

「どこだ?」

「奇顔の庭アルカのどこかです」

「そうか。明彦たちは上にいる。今、伊織も合流したようだ。君も急いでくれ。そして、先ほどの山岸風花の発見を」

「はい」

 

 

 

 桐条先輩は湊の合流のめどが立ったから、先ほど混線してきた山岸風花さんがどこにいるかに注力をしている。

 彼女もふらふらと移動しているようで見つかりづらい。距離もあるせいか。

 

 しばらくすると、真田さんから連絡が入った。

 

 

 

「美鶴、聞こえるか?山岸風花が見つかった」

「そうか、ならすぐに帰還してくれ」

 

 

 

 向こうの方が先に見つけたらしい。

 私の休息タイム。ヒルコの魔法はタカルジャとかの強化魔法に近いが、それとは格段に性能が違う。その為かSP消費量も激しい。

 

 ・・・しかし、試練の日、なんだよね?まだ何にも現れないけど、彼女を救う事が試練だったのかな?

 

 少年は満月を奴らと出会う日と言っていた。

 奴ら・・・。奴らって、大型シャドウか!?

 

 なら、タルタロス内部じゃなくてあいつらは外の街で・・・!

 

 

 そこまで思考すると、衝撃が飛んできて残念ながら意識は途絶えた。だって、ほとんど気力を使い果たした状態で奇襲喰らったんだ。無理ゲーです。

 

 

 

 という訳で後日談。

 大型シャドウは自身の弱点属性を一定で変化させてくるタイプだったそうで、見事覚醒を果たした山岸風花の索敵能力のおかげで倒すことが出来た。

 

 

 私が倒れているのを見た湊が怒ってシャドウに突撃をかましたり、そのおかげで捕らえられていた桐条先輩の救出に成功したり、寮にいるはずの森山さんがタルタロスまで来ていたり、まあ、なんやかんや色々あったらしい。

 

 倒れたまま影時間も明け、翌日も疲労から風邪を引いた私は山岸風花さんへの挨拶も出来ないまましばらく寝て過ごした。

 

 ちっくしょう!!

 私が仲間フラグ立ててたとか知らんし!

 私にもコミュニティってあったりするの!?

 本当は!!!

 どうやったらそれは分かるの、仕事しろファンタジー!!!

 

 

 湊が保健室で貰ってきた強烈な薬は飲んでみたが、良くならなかった。滅茶苦茶に怪しい薬だった・・・。

 こんなところで仕事しろなんて言ってないよ、ファンタジー!!!

 勇気はメチャクチャ上がった気がする。もうちょっと上がったら、またあの路地裏に行けるかもしれない。・・・昼間限定で。

 

 

 

 

6/10 水

 

 ペルソナを使って武器合体を行う骨董屋さん・・・?

 そこに入り浸ればペルソナについて学べるかも?

 ってか、ワイルドの適性者しか出来ないよな?そこの主人、この出来事についてかなり詳しい?

 

 

 昨日見に行ってきたという湊から話を聞いただけなので元気になったら行ってみよう。

 先輩方は今日も今日とて山岸風花のお見舞いだ。私も行きたいと言ってみたが、病み上がりだからと断られた。

 まだ見舞われる側だしな・・・。風邪っぴきでも学校休む程じゃないし。寄り道はしないけど。

 

 

 

 

 

 

6/11 木

 

 本日、山岸風花さんが退院したらしい。夜には彼女を交えて話したいからなるべく早くに帰ってきてほしいと桐条先輩からメールがあった。

 

 風も治ったから噂の骨董屋さんに寄ってから帰るつもりだったけど、真っ直ぐ寮に戻った。

 

 作戦室には理事長も来ていて、山岸風花を待つ。・・・、誰が迎えに行くねん・・・。

 

 

 山岸さんを迎えに行った。初めましてのご挨拶。

 とは言っても彼女も本屋の事は覚えていたようでお礼を言われた。

 

 やっべえ、かわええ。癒しだ。拝みたい。

 

 

 作戦室まで案内して、全員と顔合わせ。初めましてはおっさんだけか。

 

 この待ちの構図、人見知りだったら威圧するよなぁ。

 もうちょっと和やかな雰囲気出せないかな。

 

 案の定、理事長から声を掛けられて山岸さんは弾かれたように立ち上がった。

 そんなに緊張する相手ではないのだが、それは私が彼を知っているからで、初対面で理事長というフィルターを外せる人はなかなかいないだろう。

 

 

 

「みんなも本当にご苦労だったね。山岸君の件、よく突き止めてくれた。あ、そうそう、それとね。例の、意識不明で見つかった女生徒たちは、みんな意識を取り戻したらしい」

「よかった・・・」

「彼女達は三人とも、警備員が帰る夜中の零時近くを待って学校に来てたんだ。そして門の前で零時を迎え、影時間に落ち、シャドウに襲われた」

 

 

 

 月光館学園に昔からある階段と状況が似ていたらしく、今回の騒ぎになったそうだ。

 

 怨霊なんていないと岳羽さんが言うが、自分が悪いと責め始める山岸さん。人が良いというよりも、劣等感が強すぎる感じか・・・。

 うわー、せっかくの能登麻美子さんボイスが勿体ない。今の彼女もいいけどさ。もっと自信を持って欲しい。

 いじめなんてしてくるヤツは地獄へ流してしまえ(別の作品の中の人繋がり)

 

 いい感じの事は桐条先輩が言ってくれたので頷いておいた。私は後日聞いた話だから知らんがな!

 

 気を失っている間に終わったけど命の恩人であることには変わりない。

 

 

 そのペースのまま勧誘する桐条先輩はお誘い上手。褒められてからお願いされたら断りづらいよね。

 分かる。

 

 しかも、高等部だけでなく中等部でもその名を轟かせている桐条先輩からのお誘いだもん。

 一度戦って勝利もしているなら、恐怖から戦えないという事もない。

 断らんだろう。

 でも即日回答するとは思わんかった・・・。

 

 

「一緒に戦うなら、この寮に入ってもらう事になるけど・・・」

「それは、たぶん大丈夫。どうせ家には私の居場所は無いし」

「?」

「ありがとう。協力、心から感謝する」

 

 

 

 重い事をさらっと言いよって・・・。うちは親戚も放任どころか厄介払いできればOKって感じだからなぁ。奨学金制度を受けられる入寮は願ってもなかったんだよね。

 

 

 

「ところで、また今月も例の普通じゃないシャドウが出たね。何処から現れるか、とかなぞは残るけど真田君の予測は、恐らく当たりだ。ヤツラは満月にやって来る。今後の指針にしてくれていいと思うよ」

「来月からは満月が近づいたら、ご注意ってことッスね」

「敵の来訪周期が掴めたというのは大きなアドバンテージだ。対戦の日取りに合わせたトレーニングを頼むぞ、有里妹」

「皆さんも体調管理よろしくお願いします」

 

 

 

 遅い時間でもあるので、桐条先輩と真田さんが山岸さんを送って行った。

 

 理事長、車持ってなかったっけ?あんたも送って行けよ。と優雅に紅茶を飲むおっさんに突っ込みたくなった私は悪くない。

 

 

 岳羽さんがやり方が強引ではないかと不信感を募らせているけど、私らの時もそうだったからね。

 むしろもっと強引なやり方だったからね、貴方含め。

 

 人が生きて行く上で大切な衣食住の一つである住むところを抑えてきて、勝手に適性者であるか調べて、戦いに巻き込んだうえで勧誘してきましたがこれは強引ではないんか?

 

 口に出したら喧嘩になるの分かってるから言わないけどさー。

 なんだかなー。

 悪い人ではないし、純粋に山岸さんの心配しているからそうなんだろうけどさー。

 




ペルソナ:ヒルコ(奏専用ペルソナ)

アルカナ:永劫

斬:-
打:-
貫:-

火:-
氷:-
雷:-
風:-
光:耐
闇:耐

習得スキル
突撃
シングルショット
強化(特殊スキル:ペルソナを強化)
ディア
タルンダ
スクンダ
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警戒

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