二度目の人生は高難易度   作:もえみ

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有里兄妹

10年前、巌戸台近辺で暮らしていたがムーンライトブリッジでの交通事故により、両親を亡くした。
妹はその事故でのケガにより半年ほど入院。入院中も酷い怯えを見せ、睡眠障害に陥っている事から心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症している可能性がある。
対して兄は事故について質問しても淡々とした受け答えが印象的で、ショックにより感情が希薄になっていることが伺える。

その後は親戚に引き取られ、各地を転々として、2009年4月に月光館学園へと編入。


6月-2

 

6/12 金

 

山岸さんの入寮準備のため、早めに帰宅。この土日に引っ越しを済ませるらしい。

急な話だったからって業者雇う余裕くらいあったでしょうが・・・。

 

なんでこの寮は何でもかんでも生徒にやらせんだ。

仕事しろ、理事長!!

 

 

 

「ゴキブリとか出ませんように・・・」

「出たら速攻で逃げます」

「その場合、明彦を呼んできてくれ」

「いや、逃げるんで」

「逃げるならそれくらいしてよ!」

 

 

やだ。でも戦線離脱は許してくれるらしい。

 

影時間、寝ていたら起こされた。いつもの少年だ。彼と友人となった。湊もなったらしいし、大丈夫でしょ。

彼いつも忠告に来てくれるし。名前はファルロスというらしい。

 

 

 

 

6/13 土

 

山岸さんの引っ越しの手伝いも終了―大きいものは明日で今日は自分たちで持ってこられる小さな荷物という訳だ。ベッドは備え付けのものがあるからいいけど、ゆっくりしたらよかったのに。そしたら私たちもゆっくり準備できたし―し、ラウンジでゆっくりしていると、湊が帰ってきた。

 

山岸さんがお帰りなさいと声をかけてこちらに気が付いたようだ。

今日は部活のマネージャーと一緒に遊んできたらしい。駅前のわかつでガッツリ定食を食べてきたらしいけど、私の食べているカレーをじぃと覗き込んでくる。

ハンバーグは一つだけだからね、と念を押してOKを出した。

 

同じく横で食べていた山岸さんは、少し緊張した様子。

 

 

「あの、リーダー、ですよね?」

「です。食欲が旺盛で」

「挨拶とか・・・」

「この前の作戦室でみんなにしたじゃないですか」

「でもこれからお世話になるんだし」

「確実にお世話する方ですよ。貴女のナビ頼りになるんですから」

「ねえ、奏。福神漬けはどこ?」

「炊飯器の横に無い?」

「あった。ハンバーグもう一個・・・「それ食べたら怒るから」・・・」

「あの、私の分なら」

「いいの?」

「はい」

「ありがとう」

 

 

 

甘やかさないで欲しい。

この調子で食べる癖がついたら成人して代謝が落ちてきたころにはメタボまっしぐらとなる。

 

二つのハンバーグが乗った大盛カレーを私たちの前で頬張り始める。

ハムスター・・・。

 

 

 

「いつもお料理してるの?」

「まあしてます」

「その、私料理が得意じゃなくて・・・お金は払うので一緒に私の分もお願い出来ないかな?」

「いいですよ」

「ほんと?」

 

出費してくれるんなら全然。真田さんには出費されても作らんけど。まとめて作った方が料理サイトに載っている分量を二人前に量りなおさなくてもいいし、材料もお得だし。

 

アレルギーと好き嫌いだけは確認させてもらう。知りませんでした、じゃ済まないし。

あと、私、椎茸が嫌いなので月に一度しか作りません。

 

 

 

「月に一度?」

「湊が好きなので・・・」

「仲がいいんだね?」

「後は嫌いでも食べれないってのは無くしたいので。先輩の嫌いなものも月に一度は出てくることになります」

「ふふ、特に嫌いなものはないの」

「・・・」

「栗ごはんとか好きなかなぁ」

「僕も食べたい」

「二杯目はダメ」

「この後タルタロスで動くから」

「ハンバーグ食べたでしょ。山岸さんの誕生日っていつです?」

「え?十二月だけど」

「・・・秋過ぎるのか。なら秋に栗ご飯やりましょう」

「明日は?」

「カレーうどん」

 

 

 

カレーしたら二日は献立考えなくていいから楽だ。

 

タルタロスにて。

 

 

 

「い、いいさ、着ようじゃないか。これもまた戦いだ」

 

「ねえ、湊」

「・・・何?」

「確かに防御力的にはあれがいいと認めるけどさ、そこに邪念はないんだよね?」

「・・・黙秘権を行使」

「それが立派な肯定だよ!!」

 

 

 

思春期真っ最中の兄は少しばかりエロにも興味が出てきたらしい。

 

ハイレグ桐条先輩はこちら(戦い)の方が向いていると生き生きしていた。クリティカル出しまくっていたが、シャドウを蹴り倒す姿は女王様にしか見えなかった。

桐条先輩の勘を取り戻すのと、山岸さんのナビゲートの慣らしで上に上がるよりも今まで塔破していた階層をウロウロして本日は終了。

 

 

本日の収穫は、山岸さんのコミュニケーション能力の不足が良くわかった―ナビを入れるタイミングが悪かったり報告連絡の基本である短く簡潔に、が出来ていない。しばらくはこちらのフォローに回る必要がありそうだ―のと、湊の感情の幅がどんどん増えてきている―そういう意味では健全な男子高校生をしている伊織さんに感謝だ―というのが分かったことだった。

 

 

 

 

6/14 日

 

本来の山岸さんの入居日。

彼女の荷物が搬入されるのを手伝い、終わってのんびりと過ごした午後。そろそろ夕食を作るかと重い腰を上げようとしたところ、物々しい雰囲気で桐条先輩と黒沢(くろさわ)さん―横流し警察―が入ってこられた。

 

え?

え?

 

 

 

「有里、山岸、君たちも念のため部屋の確認をしてくれ」

「何かあったんですか?」

「物盗りだ。伊織の部屋が荒らされていてな・・・。もし伊織に連絡がついたら教えてくれ。携帯に掛けてはいるんだが繋がらないんだ」

「了解です。今日は人の出入りも多かったから犯人分からないかもしれないですね」

「私の部屋は少し前に片付いたところなのでたぶん大丈夫です」

「そうか。では黒沢巡査、こちらです」

「ああ」

 

 

 

二人は二階に上がっていく。

山岸さんは見守るだけの私を見て階段と視線をうろつかせた。

 

伊織さんは健全な男子高校生だ。いい意味でも悪い意味でも。

そして私は知っている。部屋を片付けるのが下手な人種が存在することを。

 

 

 

「お部屋の確認はいいの?私はさっきまで手伝ってもらってたから大丈夫だけど」

「大丈夫ですよ。物盗りなんていませんから」

 

 

 

それでもお巡りさんは調べなければならない。通報があったのだから、私と同じ考えに至っていたとしても彼は現場検証に行く義務がある。

少ししてから伊織さんが帰宅した。

慌てて声を掛けそうな山岸さんを静止して、お帰りなさいと声をかけた。

 

 

 

「おーう。今日は何作ってんだ?」

「昨日のカレーだからサラダとか副菜だけですね」

「毎日頑張るねぇ」

「まあ。ところで、伊織さんって部屋が綺麗なタイプですか?」

「なんだ、藪から棒に。俺っちの部屋が気になるのか?そうだな!そのカレーをくれるってんなら教えてあげてもいいぜ」

「一杯だけですよ」

「え、まじで?」

「で、どうなんです?」

「い、いや。そんな綺麗好きでもないし多少散らかってるっつーか」

 

 

 

うんうん、そうだろうな。お昼の残ったご飯にカレーをよそってあげる。

 

奏が優しい!?と驚いているだろうが、これはこれから起きるだろうお叱りへのいたわりだ。

 

前借?先払い?

とにかく、桐条先輩から処刑を喰らうだろうことを願う。

 

いい食べっぷりでご馳走様を言ってくれた伊織さんには、たまには作ってあげてもいいかもしれない。

 

少しして一件落着となったようで、黒沢さんは帰って行った。

微妙な顔をした桐条先輩は私たちに物盗りの件は誤解で大丈夫であると謝罪をしてきたので、それには及ばず。

下々の食べ物でよければ、と、カレーをよそった。こちらも目を輝かせて食べてくれるので次元の違う食事をしているわけでもなさそう・・・?たまには誘ってみよう。

 

 

 

 

6/15 月

 

生徒会を手伝ってきたという湊は人体模型を片手に帰宅した。

・・・何があったの。

 

 

「化学の大西(おおにし)先生から貰った」

「貰ったって・・・」

「エリザベスの依頼」

「・・・ああ、あれ。不気味な巨大人形だったっけ」

「そう。貰えるとは思ってなかったけど」

 

 

 

だろうね。

あんまり動じない湊でも人体模型を片手に帰宅するのはちょっと勇気が必要だったみたい。最近は頼りがいも出てきたしその勇気はギリギリってところか。

 

この人体模型を可愛いと言ったエリザベスはベルベットルームに飾り出した。イゴールの顔が凄いことになっていたが見なかった振りをしてそのまま退出した。

 

人体模型を持って歩いていた私は相当目立っていたため、路地裏から出てきてそれを持っていなかったのを通行人から見咎められた気分で帰って行った。

この視線の中帰ってきた湊まじパネェ。私の勇気も上がったわ。

 

 

 

 

6/16 火

 

昨日の今日で、まだ通行人も忘れ去っていない頃なのに私はポロニアンモールの路地裏にいる。湊が今日がいいって言うから!!!

 

デート(笑)である。

 

巌戸台駅に行ってみたいという話なので、さっさと行くことに。

初手からエスカレーターを逆走するエリザベスは案内音声に怒られていた。腕を掴まれて同じように走るしかなかった私も一緒に。

理不尽だ・・・。

 

 

 

「足元にお気を付けください!この先に落とし穴がございます」

「どこ?」

「・・・マンホール?」

「柵で囲まれた、この中心にでございます」

「誰が落ちるの?」

「この柵で守られてるのに?」

「だからこそです。目を引く看板で囲んだうえ、“立ち入り禁止”の文字。ですが、人は往々に、禁じられたものほど触れてみたくなる・・・。落とし穴は隠すものという常識を逆手に取った、高度なトラップでございます」

 

 

 

エスカレーターに続いてマンホールで、よくもそこまではしゃげるものだ。発想がパネェ。前回でツッコミ疲れてるんだ。私は知らん!!

 

駅前から移動して、商店街の方へ来た。

ここいらは湊の方が詳しいだろう。私がここにこうやって寄ったのは実に4月から初めてである。

スーパーとかある方なら行くんだけど、こっちにはマジで用事がないのだ。

 

 

 

「これは!」

「どうかした?」

「この、かぐわしい香りは、まさか!」

「香り?あー、美味しそうな匂いするね」

「では参りましょう」

 

 

 

うん、私の腕を掴んで離さないもんね。振り回されるのは知ってた。

後からのんびり歩いてくる湊が憎らしい・・・。

 

店主さんとオクトパシーのタコ焼きについて話しているようだ。いい匂いが私の食欲を刺激する。

たまには買い食いもいいよね!!

 

 

 

「たこ焼き一つ下さい」

「お!毎度アリ!そっちの面白い格好の姉ちゃんはどうすんや?ほっぺた落っこちてまうほどのもんやさかい、ちいと買うたってや」

「“ほっぺたが落ちる”料理!!現実には非常事態のような気も致しますが、ぜひとも体験してみたく存じます」

「なら、アーン」

「は、アーン・・・はふはふ」

 

 

 

湊にもおすそ分け。みんなで仲良く分けっ子だ。

 

 

 

「私、実際にほっぺたを落としている方をお見かけしたことがございませんでした」

「いねーよ」

「恐らく、市井の者には易々と手出しできない価格と推測していましたが・・・奏様はとても裕福な暮らしをなさって?」

「ほら、エリザベス。価格見て」

「あ・・・1パック400円?そ、それではもう1パックお願い致します」

 

 

 

今度はエリザベスが私と湊の口にたこ焼きを突っ込んだ。

 

せめてアーンとかの前振りをください!!

私、自分の食べてる最中!!!

 

口の中が真夏の砂浜となり、舌でたこ焼きを転がした。

湊は私があっぷあっぷしている間に私の手にあったたこ焼きを完食する。

 

 

 

「この近辺には、まだまだ飲食の場がある様子・・・ハシゴというのをしてもよろしいでしょうか?」

「もちろん」

「はふはふ!」

「まずはマンガ喫茶と呼ばれる場所にあるドリンクバーなる食材から参りましょう」

「はふはふ!!」

「混合比によって無限の味が生み出せるというドリンクバー」

「食べ歩きは久々だね」

 

 

 

本当に全店回った・・・。

漫画喫茶のドリンクバーからして凄かったけどあの大喰らいの湊でさえ苦しそうにしていたので、私が途中でギブアップしたのは仕方のないことだった。

 

エリザベスの胃はどうなってんの?

宇宙なの?

ブラックホールなの?

あの細見にどうやって入っているの?

 

こんなところでファンタジーが仕事するの???

 

 

 

「本日は文字通りの美味しい体験をありがとうございました。宜しければまたいつか・・・ご一緒させて頂きたく存じます」

「次はハシゴなしでね」

 

 

 

イゴールのお土産としてオクトパシーのたこ焼きを持って帰った。食べるのかな?

ちなみに依頼にあった真田さんからもらったアマプロテインもエリザベスからイゴールへ渡されたので、たこ焼きとプロテインという高カロリー摂取となった。

 

本日もタルタロスで頑張りました。

エリザベスたちと取り過ぎたカロリーはこれで消費できたかな・・?

 

失踪者の探索と依頼の為にかなり戦ったので、全員疲労していた。すまんかった。

 

 

 

 

6/20 土

 

「復讐依頼サイト?」

「そー。有里さんってば、この前怪談について調べてたじゃない?」

「あー、あれ。桐条先輩に頼まれたからね」

「今度は頼まれる前にこういうのを調べるってどう?」

「どうって・・・それって本物なの?」

「なんか、依頼に書かれていた人が行方不明になってるんだって!」

「うわー、警察の仕事でしょそれは」

 

 

 

私は警察の仕事だと切って捨てたが、クラスメートは燃えていた。

以前から話しかけてくれるいい子なのだが、山岸さんの時からこういった話を集めるのが好きになったようで色んな所に顔を出しているようだ。

元々生徒会所属ってこともあって、学校の事や周りの話には敏感だったけど。変なことに首をつっこまないように声は掛けておこう。

 

放課後は彼女を連れ添って以前湊が言っていた骨董屋さんに行ってみたが、ペルソナ関連の話―部外者がいるからか?それとも湊と違ってワイルドの適性者ではないからか?ペルソナを武器にしたらなくなるもんね―はしてくれなかった。

 

彼女は中学生が来るようなところではなかったからか少し楽しそうに興奮していた。

うんうん、楽しんでくれたならよかったや。危ないことに突っ込むのは止めようねー。

 

 

少し遅くなったが帰宅。たまにはいいだろう。

 

でもまさか、理事長が来ていて全員が帰ってきてる日だなんて思ってなかったの。なんで誰も連絡くれないの・・・。

誰も居ないからと四階に上がると「遅いぞー」と伊織さんに窘められる。

 

湊を見ると、桐条先輩の方を見て、桐条先輩を見ると、驚いていて、山岸さんを見ると、携帯を手にしていた。

私は急いで携帯を見るも、電池切れ。うん、私が悪い。

 

 

 

「はは、全員揃ったことだし、例の満月に出るシャドウの件について話そうか」

 

 

ありがとう、理事長。心の中でおっさんって呼んでたけど改めます。

 

 

「シャドウはその性質によって12のカテゴリに分けられる。この事は、だいぶ前から分かっていてね。生物学の何科や何目みたいなもんだ。で、これまで出現したシャドウをこれに分類してみると、実に興味深い!」

 

 

改める事にしたばっかだけど、目がいっちゃってるのでおっさん呼び継続で。

 

 

「あの、続きお願いします」

「おっと、済まない。でだ。これまでのシャドウ4体は現れた順に、カテゴリのⅠからⅣだと分かったんだよ!」

 

 

 

以下略。

大きなシャドウは全部で12体。残りは8体。シャドウの目的はまだ不明。

 

なんでこの時期に動き出したかも不明だけど、そこはファンタジー。私の中で主人公と確約している我が兄がここに来たからだろう。

ならば、物語の終了に向けて走っていると考えて良い。

 

タルタロスがあることといい、この土地には何かがあるし、そこに学校を建設した桐条グループも限りなく黒。

そこの理事長やってるおっさんも限りなく黒。

確実に白なのは私たちよりも後から入った伊織さんに山岸さん。

先にこの寮に入っていた三人はグレー。

 

ま、とりあえずはシャドウ倒していけば何かしら分かるでしょ。

 

 

岳羽さんと桐条先輩の仲がちょっと気になるけど、それ以外戦いに関しては問題ないだろう。

見てる感じは岳羽さんが桐条先輩を嫌ってるだけだろうし。女だもん。あんな文武両道で完璧人間見てればこっちが劣等感を覚えてしまうなんてあるある。

 

私より少し大きいだけ―数字にしても片手分の差―の山岸さんのスタイルが超絶いいとか。

仕方ない。

仕方ないね。

 

風邪を引いていた岳羽さんは休んでもらってタルタロスへ。体調悪いと余計に悪い方へ考えちゃうからね。

ゆっくりしてもらって。考えごとは昼にどうぞ。

 

 

 

 

6/26 金

 

「へぇ、山岸先輩写真部なんだ」

「この前有里君も入ってきたのよ」

「運動部に文化部に生徒会って、どんだけ青春するつもりだろう」

「順平君にもらったネットゲームとかもしてるって聞いたわ。すごいよね」

「あー、そんなのもあったな」

 

 

 

これがすべてコミュニティってやつとか恐れ入る。こんなの、過労死まっしぐらでは?

今はペルソナで強化されてるとかさ。はは、ねえわ。

 

理事長という名のおっさんのオヤジギャグから逃げて、私の自室で機械が得意らしい先輩に特製イヤホンの作り方を教わっている最中だ。

湊のアレもそろそろ長いので買い替える時期だろう。

 

けど、いいものって高いじゃない?

高性能な機械を自作できる先輩がそこにおるじゃろ?そういうことよ。

特製の半田ごてはお借りしている。

 

 

 

「でも私が得意っていう話は内緒にしてて欲しいな」

「いいですけど、普段ラウンジでノートPCずっと触ってるのはいいんです?」

「・・・あれは解析の為ですし」

 

 

 

なんだ、本当に可愛いなこの人。機械が得意っていうのは女の子らしくないらしい。

 

 

 

「あと、聞きたかったんですけど、その・・・」

「?」

「あの、ですね」

「はい」

 

 

 

言いよどむようなことがあったのだろうか?

もしかしてこれ、間違えてる??試作段階だから全然いいんだけどさ。

 

しばらく黙った後に小さく告げられた。

 

 

 

「ゆかりちゃんと、何かありました?」

「なんで?」

「呼び方もそうですけど、見てて距離があると思ったので」

「あー、まあそうですね」

 

 

 

ぶっちゃけ、仲良くしようと思っていない人と無理に仲良くなろうと思ってないだけである。

 

社会人あるある。

ここまで露骨にはしないけどさ、疲れるじゃないですか、無理に仲良くしようとして人間関係に悩むくらいなら放り出すくらいにはこの人生山あり谷ありだったわけで。

 

それを話すのもなぁ・・・。この人に他意はないわけだし。

 

 

 

「出来れば皆さんと仲良くしたいと思ったので」

「あー、はい頑張ります」

 

 

 

最長でも後8か月の間柄なんだし、いいじゃん、とは言えない。どうにも私は彼女には弱いらしい。

岳羽先輩含め、この寮の皆さま良い声だからなぁ。

 

とりあえず露骨作戦は止めよう。中学生だからって許してもらえると思ってたけど、あからさま過ぎて周りに迷惑が掛かるらしい。

まあ、桐条先輩も真田さ・・・先輩も戦えればOKみたいなもんで気にしてないだろうけど。

 

こうやって色々教わってるわけだし、彼女の顔を立てるとするが、何をしよう。

 

 

 

「あー、そういえばクラスメートに聞いたんですけど、今度の影人間は男女ペアで見つかってるそうですね」

「そうなんですね。理事長が言っていた大型シャドウが満月に出るという話、的中している可能性が高いかもしれません」

「今日は真田先輩が居ないから明日タルタロスへ行きましょうか」

「分かりました。皆さんには声を掛けておきますね。後聞いてください!私のペルソナに、新しい能力が加わったんです。相手に発生している補助効果を視覚的に皆さんにお伝えすることが出来るんです。敵を攻撃する時や味方に補助を行う時の参考になると思うので活用してください」

「分かりました。これからもお願いします。あと、また敬語に戻ってます」

「あっ!」

 

 

 

くっそ可愛いな、おい!

私が後輩なんだから敬語なしでって言ったでしょ!!

私の方が油断したら敬語無くなっているので気を付けなくては。社会人経験のせいだけどさ、彼女が年上の女性って感じしないんだよなぁ。

 

 

 

6/29 月

 

「それに言いたくはないけど、桐条先輩ってタルタロスの話になるとちょっと様子おかしいし」

「そうかな?」

「事件の事詳しく知りたいの。関係無いなら、無いでいいし」

「・・・うん、そうね。分かった、調べてみるね」

「あーと、失礼?」

 

 

 

作戦室に入るタイミングをかなりミスった。

岳羽先輩も山岸先輩もこちらを見て驚いている。

 

食事の用意が出来たから呼びに来たんだけど、完全に内緒話だったよね、これ。

 

 

 

「た、ただの世間話よ?」

「いや、無理がある」

「だから世間話だっての。本当だよ?ね、風花!」

「はい、ただの世間話です。役に立てて嬉しいとか、そんなんじゃないよ?」

「もう答えてんじゃん。何?タルタロスの話です?」

 

 

 

なんで隠そうとするのか、分からん。

桐条先輩の様子はこの前の作戦室でのおっさんの話の際もおかしいところはあったし、不信感は分かる。

 

それを私に隠す理由ってある?私を仲間に入れた方がお得だぞ。それなりに彼女と話す機会はあるし、変だなと思ったところは共有する所存。

 

 

 

 

「だから何もないって言ってんでしょ!」

「・・・はいはい。山岸先輩、ご飯出来たんですぐ食べるならよそっときますけど?ちょっと忙しいですかね」

「あ、うん。後で戴くね。ありがとう」

「いーえ。じゃあ内緒話の続きどうぞ」

 

 

 

歩み寄ろうとした途端にこれだよ。やっぱり苦手な人種とは関わらないに限るんじゃないか?

 

つーか、なんであの人私に対しての当たりきついんだろ?壁作ってたから?

 

だってあからさまの陽キャで、今どきの女子高生とか無理無理。

こちとら陰キャでオタクで中身は元社会人。自分と正反対の人間って基本合わないからなぁ。

 

悪い人じゃないのは分かってんだけど、ままならないなぁ。

 

 

 

 

6/30 火

 

影時間。

 

またファルロスは忠告に現れた。

一週間後の満月に気をつけてと言ってくれるが、彼が助けてくれたりしないのかな?お助けキャラ的な。

お知らせキャラなだけ?

 

 

クラスメートが話してくれていた男女ペアでの影人間はどんどん増えている。

タルタロスは既に上がれるところまでは行っているが、気を引き締めて行こう。

 





愚者
魔術師
女教皇
皇帝
法王
戦車
正義
隠者
運命
剛毅
刑死者
死神
節制
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