二度目の人生は高難易度   作:もえみ

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人口島計画文書03

島に、新設の機関が発足。
・・・聞いた事もない予算額だ。
そして私に参加せよとの通達。だが迷う・・・この計画からは異様な気配を感じる・・・


7月-1

7/5 日 ※主人公の誕生日は公式で〇月5日

 

本日はいい天気で清々しい。料理の数々も準備OKだ。

 

 

「誕生日おめでとう」

「ありがとう」

「ほい、風花と一緒に作ったイヤホン」

「自作出来るんだ」

「私も驚いた。合作っても、ほとんど風花が作ってくれたんだけどね」

「山岸と仲良くなったんだね」

「まあ、お世話になってるし、名前でいいって言われたし」

 

 

食事の世話をしているのでお互いにお世話になっている状態である。

この寮に一番後に入ってきた人なのに、湊を除けば一番話してる。

風花が入るまでは桐条先輩か。彼女の訓練に付き合う事も多かったしね。風花と違って雑談はほぼなかったが。どちらも同性ってのもあって話しやすいのだ。

 

 

「今日のご飯は?」

「湊の好きなもの尽くし」

「おかわりは?」

「無制限」

「さすが」

「誕生日だからね。17歳おめでとう。また何か欲しいものがあったら教えて」

「プレゼントはもらったよ?」

「言った通り風花がほとんど作ったの。私のプレゼントとは言い難い」

「なら、また考えとく。・・・これ、滅茶苦茶音質がいいね。最高」

 

 

あまり表情の変わらない湊が笑った。雰囲気で察せるけど、ちゃんと表情に出ているのを見ると表情筋が死んだわけではないってのを安心するなぁ。

食事の為、湊の部屋からラウンジに移動する。

 

 

「あれ?今日はいっぱい作ってるんだね」

「湊の誕生日だし」

「山岸、イヤホンありがとう。大切に使わせてもらうよ」

「え?今日がリーダーの誕生日なんですか?」

「言ってなかったっけ?」

「聞いてませんよ!あの、おめでとうございます!」

 

 

そうか、来月という話はしたが、日付までは言っていなかったな。椎茸を使った料理をいつも以上にしているだけで察してほしいというのも無理があったか。

 

 

 

 

※ちょっとアレな表現が出てきます。

 

7/7 火

 

満月の夜。影時間にはいつもと違って全員で作戦室に集まっていた。風花の探査で本当にシャドウが出ているか確かめるためだ。

 

 

「見つけました!市街地に大型シャドウ反応!」

「ホントにきた!」

「フンフン。満月の件、どうやら確実と見ていいね」

「場所は巌戸台の、ええと・・・白河通り沿いのビルです」

「!白河通りか・・・」

 

 

おっさんは納得したように呟いていた。こちらにも分かるようにプリーズ。

こっちきてからも買い物が出来るところと中学生が遊ぶようなところ―つまりポロニアンモールとか商店街とか公園のある神社―くらいしか行ってないんだよ。

 

風花も分からないようで、桐条先輩・岳羽先輩は分かる組。

なんだ?陽キャと陰キャ?

 

 

「!あ、そっか、ホテルんとこか。だから二人一組なわけね」

「あ、そういう」

「どうでもいい」

「いやいや。高校生はともかく中学生がラブホに入っても大丈夫でしたっけ?」

「ラブホ・・・え、白河通りってそういう!?」

「おいおい、何を妄想してるんだ?内装が凝ってるだけの単なるホテルだから。言ってみれば、そう、アミューズメントホテル?」

「アレ、そうなんスか?」

「いや、アミューズメントホテルってラブホの言い換えですけど?間違った知識を植え付けないで」

「なんでお前はそんなことを知っているんだ?」

「なんです?セクハラですか?」

「なっ!そういうつもりじゃ・・・」

 

 

真田先輩は突っ込まなくていい事に突っ込んでくるからセクハラとか言われるんです。

中身が元社会人だからある程度の知識はあるってもんよ。なけりゃ自分の身も守れないしね。騙されてホテルに連れ込まれるとか、お酒の中に薬盛られるとかマジであるし。

 

岳羽先輩の行きたくない発言に、突っ込んだ伊織先輩。岳羽先輩、煽り耐性無さすぎで心配になる。

この子もヘンに騙されそうな予感。大丈夫かな。

 

 

「私、今日の作戦は、前線で戦うの予約します!」

「どうするの?」

「いいよ。後は真田先輩と順平も来てほしい」

「あれ?」

「前回の反省も込めて、桐条先輩と奏には山岸の護衛」

「ふむ、前回のように複数の敵の可能性も鑑みればその方がいいだろう」

「前回、岳羽先輩一人になっちゃって危なかったんじゃ?」

「ヤダ。ダメって言われても絶対行くからね!」

「ヤダって・・・いや、別にいいんだけど、湊、私を外した理由は?」

 

 

私のペルソナの特性を考えたら前線に立たせた方がいいだろう。

前回は桐条先輩のフォローをすべきだったからあれで良かったんだけど、ペルソナの強化は大型シャドウと戦うなら必須だろうに私も外した理由がない。

風花の護衛なら桐条先輩一人で事足りる。

 

 

「妹をラブホに連れて行く兄がどこにいる?」

「・・・は?」

「あー、湊ってば奏のモンペだよな」

「いやおかしいだろ。風営法で18歳未満も入っちゃダメですけど!?」

「有里君は物知りだね。風営法なんて中学生は知らないだろう」

 

 

オトナでも知らない人の方が多いんじゃないですかね!!

そこら辺の詳しい法律関係!!

 

 

「理由はもう一つある」

「何?」

「男女ペアで影人間にされるんだからペアにならないようにした方がいいだろ?」

「ああ、だからオレっちと真田さんってわけね」

「残す人員も男女ペアにならないようにと配慮か」

「なら納得するけど、なんかあったら突入するよ」

「何もないようにする」

「よっし!じゃあ、行こっか!」

 

 

ホテル前にて待機。

 

 

「3階に巨大な反応があります!宿泊客は無事ですが、至急、向かってください!」

「敵法王タイプ。気をつけて!」

「もう接敵しましたか」

「はい。前回のように自身のタイプを変えたりするシャドウではないみたいです」

「ふむ。内部でも他のシャドウが居た訳ではないようだし、今回は難しくないのかもしれないな」

 

 

 

そうだといいけどな~。

4月は寮を襲ってきて、5月はモノレールを乗っ取って、6月は二体同時に相手することになった。

今までのパターンなら面倒な攻撃能力を持っているはず。それに男女ペアで影人間にしていることもある。

 

 

「滅亡の予言?」

「相手に恐怖を植え付けるみたいです!」

「逃げ出してしまったら厄介どころではないぞ。援護に行くか?」

「すぐに動ける準備だけしておきましょう」

 

 

この前依頼の報酬にもらったメパトラジェムのおかげで恐怖心はすぐに治すことが出来、無事シャドウ討伐に成功。

 

良かった良かった。

帰還してもらうように風花が指示を出して待っているが、部屋から出る事が出来ないという。

まだ部屋からシャドウの反応があると風花は探り出す。

 

私と桐条先輩は顔見合わせて頷く。風花にヒルコで強化を施してから二人で突入した。

すると、目の前が真っ白になった。

 

え?

死んだ??

 

 

 

 

 

しばらく漂っていただけの気もする。自分が何をしていたか分かってもおらず頭がぼんやりとしているが、どうやらまだ生きていた。

ラブホの一室のようで私はベッドで横になっていた。案外寝やすいな、このベッド。枕は桐条先輩にもらったやつのがいい。あれはいい品。

バスルームから聞こえてくる水音は止んだ。

 

 

なんでここに居るんだっけ?何か忘れてない?温かいものが私を包む。

 

 

温かさが心地良くて、もっと感じたくて抱きしめ返す。ああ、柔らかいなぁ。気持ちいいなぁ。湊にはない柔らかさだ。

 

 

湊が嫌いな訳ではないが私はこの柔らかさ好きだ。心が安らぐ。女の子の柔らかさだ。

 

もっとぎゅっとしたい。

もっともっと、口をぱくぱくさせて女の子の息ごと喰らう。吸う。

 

 

湊にはそんなことしないのに、なんだろう、誰だろう。湊はどこ?あれ?なんでここに居るんだっけ?

 

 

 

我、汝が心の声也。見えざるものは幻、形ある今だけが真実。

 

「そんなことはない」

 

 

未来など幻想、記憶など虚構。欲するまま、束縛から解き放たれよ。汝、それ望む者也。

 

「うるさい、勝手に決めるな」

 

 

汝、真に求むるは快楽なり。汝、今まさに快楽の扉の前にあり。

 

「今はよしておく」

 

 

 

意識がハッキリしてきた。そうそう。湊たちが出れなくなったっていうことで桐条先輩と一緒に突入したんだっけ。んじゃ、この声はシャドウか?ベッドが軋む。

 

 

んん!?思わず抱きしめていた手を離す。

 

思わずってなんだ!?誰を抱きしめてた!?近い近い!赤?・・・?

ねえ、我々、ちゅーしてませんか!?

 

待って待って待って待って!!!!!

桐条先輩!!!!??落ち着け!!?!

 

なんだなんだなんだ!!!!

 

息をさせろ息を!!!舌!!舌!!!!

気持ちいい!うっわ、柔らかっ!!ぬるぬるする!?あ、吸い出され・・・違う!はな、離せ!!!

 

役得!!?

 

 

 

「あっ・・・私とするのは、いやか?」

「あっ、ってなんですか!!期待するだろうが!通常時ならウエルカムですが!!?」

「そうか、ふふ・・・え?な、な!?」

「よかった!戻った!!よっし、服着ましょう服!!そして、私の服から手を離しましょう!こんな貧相な身体見せられるほどじゃない!」

~~~~~!!!!

 

 

桐条先輩は声にならない悲鳴を上げて、傍にあったバスタオルを身体に巻き付けた。

くっそ可愛いな、おい!!

さっきまで、私、この人と、キス、してたわけで・・・。

 

ああー!!!煩悩よ、去れ!!!!

 

なんだよ!さっきのシャドウの言葉に乗っておけば最後まで行けたか!?

くそ、勿体ないことした!!!違う!!

 

 

口元に垂れ流されていた涎を手の甲で拭った。私の手には他の液体を付いているように見えたが気にしない事にする!

 

でも気になるのでシーツに血痕がないかだけ確かめる。・・・・・良かった、ない。

 

 

 

「よかった!通じた!二人とも聞こえますか?」

聞こえます!!!

「わ!え?」

「シャドウの精神攻撃ですよね!他の方々と合流するので場所のナビ任せます!!」

「あ、うん。桐条先輩も大丈夫ですか?」

「っああ、問題ない」

「分かりました。シャドウは先ほどの部屋なのでまず皆さんと合流してください」

・・・その、すまない

 

 

真っ赤な桐条先輩は蚊の鳴くような声でぼそぼそと言う。

 

いえ、むしろこちらが謝らないといけない。シャドウの言葉に乗っておけばとか考えてしまった。

桐条グループのご令嬢だぞ?私が男じゃなくて本当に良かった。最低な話ではあるが致してしまったとしても責任なんて取れない。

 

私に致せるものがなくて、よかった・・・。

 

 

合流した全員なんだか気まずそうだった。

 

そりゃそうだ。みんな心当たりはあるだろ。湊は頬に綺麗な紅葉を咲かせているくせにいつも通り何でもない表情だった。強すぎ。岳羽先輩に手を出したなら私は彼女に土下座をすべきだろうか・・・?

 

 

 

この後、人影が映らない鏡を割って結界解除後、シャドウの掃討を行った。

 

特に岳羽先輩と桐条先輩の気迫がすごかった。いや、まあ、人の心を弄ぶシャドウだもの。こうなっても仕方ない。

 

男女ペアが多かっただけで、男同士でも女同士でも精神攻撃は出来たようだ。ほんと、今さら分かっても仕方ない事だったけどね。

 

 

魅了攻撃が得意でこちらの手勢を魅了しまくってくる面倒な敵だった。伊織先輩と私が標的にされたのか、滅茶苦茶魅了されて正直すまんかった。

私のペルソナ―ヒルコ―でシャドウをめっちゃ強化するから普段通りなら全然倒せるはずの相手に手間取った。

 

私、前回から足引っ張ってばっかりじゃない?

 

 

皆様の活躍でシャドウは撃破。

 

あーあ。なんだかなぁ。ホテル前での解散で先輩方が先に戻り、二年生組も岳羽先輩の合図で戻ろうとした今、伊織先輩が湊に突っかかる。

 

 

 

「お前、またなんか活躍したみてえだな」

「別になにも・・・」

「ホントか・・・?ま、今さらいっけど」

「ちょっと、なにツッかかってんの?もしかして悔しいわけ?」

「岳羽先輩!」

うっせえなっ!!

「あー・・・」

 

 

 

揶揄うつもりがあったかどうかわからないが、今のはない。

伊織先輩も八つ当たりだけど、岳羽先輩ももう少し言いようがあった。湊に突っかかるの止めてくれないかな、あの人(伊織先輩)

 

先に戻って行ってしまった。

同級生の男の子ってだけで無駄に意識してんのか。

 

 

「何かしたかな?」

「湊じゃないよ。アレはあの人の問題」

「そう・・・」

 

 

もう、本当に面倒くさい。

社会人なら全員オトナ・・・って訳でもないけど、それなりに分かって発言したり行動したりするからこんな幼稚なことはない。たまに居るけど。

 

 

「ラッキースケベはあったの?私土下座した方がいい?」

「・・・黙秘権を行使する」

「あー・・・、土下座程ではないと」

「そっちは?」

「・・・私は悪くない」

「何があった!?オレが土下座するべき?」

 

 

色々だよ、色々。

 

その色々を思い出してしばらくモヤモヤするかもしれない。

めっちゃ触ってしまったし、濡れてたし、胸も唇も柔らかかったあの感触は忘れられそうにないぞ・・・。

 

 

あー!ほんと、惜しい事したなぁ!!!

 

 

 

 

7/10 金

 

「そう言えばここの学校って比較的綺麗だよね。改修工事とかあったの?」

「10年前くらいに爆発事故があったらしいよ。それで校舎が壊れて建て替えたって聞いてる」

「爆発事故って結構やばいよね?何で?」

「それは聞いてないの。私も親から聞いたんだけどね、その頃、かなりの生徒が不登校になる事件もあったんだって」

「それ、私も聞いた~。ここに決めた時、親が別の学校にしないか?て言ってたもん」

「へー」

 

 

私たちが巻き込まれた交通事故と同じ時期なのかな?

10年ってここ来てから耳にすることが多い気がするし、キーワードだな。

相変わらずシャドウもペルソナもこの事象についても全然出て来ないから別方向からアプローチしてみるのもいいかもしれない。

 

 

「もしかしてそれで綺麗に作り替えたとかかな?」

「可能性はあるなぁ。今度はそれについて調べてみようかな!」

「出た、君は記者にでもなるの?」

 

 

そういう方向性もいいかもって、笑う彼女はやっぱり心配。なんか変なことに首をつっこまないといいけど。

 

 

「その前にもうすぐ期末試験でしょ?」

「今回も有里が一位搔っ攫ってく?自信のほどはどうよ?」

「いやーちょっと忙しくて自信ない。前の学校よりも授業の進むスピード早いから微妙かな。それに前回はみんなが貸してくれたノートのお陰で滅茶苦茶勉強捗ったからね」

「うるせぇ!いいから私らに勉強教えろっ!」

 

 

 

前と後ろから小突かれた。事実、休んでいた時のノートは分かりやすかったのに。

 

そして勉強が手に付かないのも本当。ふとした時に前回の満月での出来事が頭をよぎっては悶えて忘れるために走りに行っている。

忘れる為全力なので疲れ切っていてすぐに眠るので正直勉強なんてしていない。今回はご褒美なしかなぁ。

 

まあ、あの出来事がすでにご褒美だから全然いいんだけどさ。

 

 

・・・よし、走りに行こう。昼休みも終わるってのに外に走り出した私を奇妙な目で見て、チャイムが鳴っても戻ってこないもんだからクラスメートたちが先生を伴って探しに来てくれた。

 

違うんだ、誰かぶん殴って私の記憶を飛ばして欲しい。汗だくの制服のせいであの日を思い出しそうになる。

 

上から彼女の赤い髪を伝って滴ってくるお湯なのか汗なのか、色気がヤバい。

中学生にR18は刺激が強いよ・・・。

 

 

 

 

7/11 土

 

「実は、今日みんなに集まってもらったのは」

「待って下さい」

「どうしたんだい?」

「この際なんで、桐条先輩に訊きたい事があります」

「私に・・・?」

 

 

全員が作戦室に集まったこの中で、彼女から桐条先輩に訊きたい事と言えば、この前の内緒話に違いない。やっと聞かせてもらえるらしい。

岳羽先輩のその眼から戸惑いを無くししっかりと前を見た。

 

 

「私だけじゃないと思うけど、ここに来てからビックリの連続で。私、少し流されて来た気がするし、だから、この際はっきりさせたいんです」

 

 

要約すると、何か隠してないか?こっちはそこそこに調べてきたぞ。ということらしい。

調べたのは風花だよね、知ってる。この前の話だ。

 

影時間やタルタロスは10年前の事故と関係があるらしい。やっぱりキーワードだったかという気分だ。

伊織先輩は分かっていない。湊も一緒だ。二人して?を浮かべている。

 

昨日聞いた校舎を建て替えた話―話を振ったのは私だったけど、的確に知っている彼女はもしかしたら関係者なんじゃないかと疑ってしまうな―の事実は学園の周りで爆発事故があったから、とされている。

 

 

学校で何かあった?

不登校生徒が多数出た事件が?

 

 

 

「どういう意味だ?」

「私、実は学園に残ってる昔の書類とか、調べたんです。そしたら、不登校なんてのは記録だけ。ホントはみんな、急に倒れて入院したって」

 

 

はあ、なるほどね。

風花を虐めていた人らが入院したケース。アレはシャドウに襲われて無気力症になったんだったけど、もしかしたら学校に大量発生したシャドウ・・・いや風花のようになのかは分からないがタルタロスに迷い込んでシャドウに襲われて大量入院ってなったのかな。

 

今は被害が以前よりも抑えられているだけって話?

ならばここでの話はこういった大量に襲われる可能性の示唆?

 

それだけではないんだろう。彼女は何かと桐条先輩を目の敵にしている気がする。

語尾が強いんだよなぁ。

 

 

「ちゃんと説明してください!10年前の事故・・・あの日、本当は何があったんですか?」

「待って下さい。発言しても?」

「奏が何か知ってるの?」

「いや、知らんけど、桐条ってだけで彼女に詰問する内容ではないでしょう?10年前って、私ら全員小学生で当事者な訳ないんですから。理事長は当事者でしょう?こっちに聞きましょうよ」

 

 

滅茶苦茶に睨まれるけど、間違ったこと言ってないし。岳羽先輩の気持ちも分かる。

こっちも調べても調べても出て来ない不気味案件に何も知らされないまま携わっているってなると不安がおおきくなるし。

 

ただ、ぶつける人間違ってるよ。

そりゃ知ってるだろうけど、説明責任は理事長や他の子の活動に関わっている社会人にある。

 

湊は眠たそうにしている。表情に出ないからってお前・・・。

 

 

「岳羽先輩が話してからずっと黙ってますけど、当時から雇われていた理事長が知らないはずないですよね?」

「もちろんだ」

「え、幾月さんてば長いの?」

「記録上、10年と少し前から月光館学園の理事長は幾月さんでした」

「なら先輩に訊くよりいいね」

 

 

わたし達兄妹が聞く姿勢に入ったので、岳羽先輩も桐条先輩から目を離しておっさんを見る。桐条先輩は気まずそうだったが、私は常識的なことを言ったまでだ。

 

当時小学生、現在女子高生。この部の部長であっても、過去の事件など彼女に説明責任はない。

 

 

 

シャドウたちには幾つもの不思議な力がある。それは我々も認めているところだ。桐条の研究によれば、時間や空間にさえ干渉できるものらしい。―その研究の資料が欲しいわ。っていうかそんなのどこにあるのさ。研究所?そこ案内してもらってどうぞ―

 

14年前のこの力を利用しようとした人間が桐条先輩のおじいちゃん。

何かを作ろうとして数年がかりで大量のシャドウが集められ、10年前実験の最終段階でそのシャドウが暴走し、大爆発を起こした。

 

その後に残ったものがタルタロスと影時間。

 

 

そうだよなー、影時間なんて最初からはなかったし―自身に適性がなく認識できていなかっただけかもしれなかったが、それは否定された。私も湊も最初から適性を持っていたことになる―、タルタロスなんてあるとこに学校は作らんよなー。

 

 

「記録では集められていたシャドウは分かれて飛び散り“消失”したとなっている。満月の度にやって来るのは、この時のシャドウだ」

「消失・・・それでいつも、予想できない場所に」

「なんで桐条先輩が引き継ぐんです。説明責任は理事長です」

「ちょっといいですか?今の話がホントなら、なんで学校がタルタロスに?」

「実験場だったんでしょう?月光館学園が。違います?私たちが覚醒しているように、中高年の人間のデータがたくさん集まる魅力的な場所なんて使わない手ないだろうし」

「うちの生徒が何十人も入院したのって・・・」

「すべて君の考えている通りだ」

 

 

あーあ・・・、だからおっさんに説明させろと!!言ってるでしょうが!!

ヘイトが桐条先輩に集まっていくよ・・・。無関係の私たち使って後始末?嫌なら止めればいいじゃん!止められたら困るから言わんけど!!!

嫌な元社会人だこと!!

 

 

「騙したんですか?」

「待って。それは違うでしょ。岳羽先輩の勧誘のされ方知らないけど、私たち(湊・風花・伊織先輩)の時考えたら似たようなもんでしょ。人間の敵であるシャドウを倒す為に力を貸して欲しい。騙すも何もない」

「でもこんなのって聞いてないわよ!」

 

「なら今聞きましたから止めるのか続けるのか決めましょう。ね?」

「僕は止めないよ。奏もだよね?」

「え、待て待て。今そんな話してんの?」

「わ、私も止めません!自分の力が役に立ってますし、まだ恩返し出来てませんから」

「風花・・・」

「ごめんね、ゆかりちゃん。今の話を聞いても、シャドウが森山さんたちを襲ったのは事実だもの。野放しにはしたくない」

「・・・私は」

「まあまあ、少し落ち着こうじゃないか」

 

 

少しばかり勢いで暴走を始めた年下組を諫めたのはおっさんである。

もっと早くに割ってきてもよかったのでは?みんなに止められたら困るでしょ??私も困る。回復役は欲しいし、湊も岳羽先輩を気にしている。

 

 

「どの道を選んでくれても構わない。黙っていたのは確かに私の意思だ。隠す気などなかったが、筋道よりも君らを確実に引き入れることの方が私には大切に思えた。理不尽だろうと、戦えるのはペルソナ使いだけ・・・世界で私たちだけだからだ」

「はい、ストップ」

「またアンタは!」

「桐条先輩を庇いたいわけではないんです。話してくれなかったことに関しては私らが先輩の信用に足る存在じゃなかっただけで残念だけど」

 

 

はい、岳羽先輩ちょっとごめんねごめんね。話してくれなかった桐条先輩を怒りたいのかもしれないけど、また別でやってくれ。いややらないでほしいけど。

 

 

ずっと聞きたかったんですけど、ペルソナ使いって本当に私たちだけなんですか?

今も研究者っているはずなのにそこにペルソナ使いはなし?10年前の当時、シャドウの実験をしていたならペルソナ使いだって居ましたよね?

実験の最終段階で暴走したシャドウの話は聞きましたが、それまでシャドウが暴走しなかったなんてあり得ないでしょう?

それともペルソナ使いを生み出す実験しててそっちの結果がグロクて話せないとか?

 

 

 

「グロって・・・」

 

「シャドウと違って人体実験とかやってんでしょ。人間がペルソナ使いなんだからそれこそシャドウよりも材料は豊富じゃないですか。何百と死んだとか、ペルソナの力って精神力っぽいし、精神異常になったとか?考えられるなら色々ありますけど。ないとかないでしょ。10年前から今年の春まで桐条先輩と真田先輩だけがペルソナ使いだったとか、ほんとない。それまでにシャドウに殺された人だっているでしょうに」

 

「奏君は色々考えているんだね」

「だっておかしいですもん」

 

 

人間は障害をそのままにしない。出来る限りの対処を行う。

タルタロスという障害にシャドウという障害に、今まで何もしませんでした、は嘘だ。

 

 

たぶん桐条先輩は10年前からずっと一人で戦って、適性見つけたら勧誘してってしてきたんでしょ?

 

もしかしたら今までに死んだ仲間もいるかもしれない。今の私たちみたいにもうやってらんねってなった人もいたかもしれない。

真田先輩みたいな戦いをゲーム感覚で楽しんでいる人の方が少ないんですから、世の中。ええ、貴方は希少価値の高い存在です。もちろん馬鹿にしてます。ちゃんと考えてください。

 

自分の命をかけているのに楽しめる馬鹿なんてそんなにいないってだけですからちょっと黙ってください、まだまだ言い足りないので岳羽先輩には悪いですが私のターンですよ。

 

で、そんな8歳の子どもが頑張ってるのに周りの大人が動かなかったわけがない。そんな存在ばっかりなら桐条グループなんて解体してしまえ。

まあ私らと違って当事者もいただろうから自分から実験台になったとかもありえそうですね。

生きていることが苦痛でそんな道を選んだバカもいそうだ。

 

え?湊?それは言い過ぎ?

 

いやいや、こうやって後に害を残したまま自分の勝手な罪悪感で死んでるならせめて何か助言くらい残して欲しいよね。

シャドウの実験してたんだから今よりももっと詳しい資料もあるだろうに。

 

 

 

「そこら辺どうなんです?」

「ペルソナ使いのことはひとまず置いておくが、分かっていることもあってね」

「ひとまずですね?後で聞きますよ?」

「ああ。こちらも話すための準備をしておくよ」

「つまり人体実験はあって資料も残っていると。・・・ああ、すみませんどうぞ」

 

「シャドウたちが今になって目覚めたのかは分からない。でも目覚めたってことは、見つけて倒せるってことでもある」

「消失ではなく隠れていたってことですか?」

「そうなのかもしれないね。あの12体こそ、全ての始まりなんだ」

「・・・つまり?」

「!奴らを全部倒せば影時間やタルタロスも消える?」

「その通り!さっきは話の腰を折られちゃったけど、朗報だろ?」

「ソースは?自分たちが消えるかもしれないのに大型シャドウは倒されるために現れたと?」

「倒されるためか分からないが、確証となる記録もある」

「本当なんですか?」

 

 

 

その記録をみせろや?風花、頷いただけでは信用にならんぞ。

 

今まで話してこなかったのはこの人も同じなんだから。どちらかと言えばこの人の方が有り得ない。良識的な大人の行動ではないよ。それを言えば桐条先輩の親もか。

 

今のグループの会長ってお父さんだっけ?会長とか―一般社会人しか経験してない私に分かりかねるから想像でしかないが―忙しいのかもしれないけど、戦力が増えてきていた4月か5月時点で何かしらのアクションがあってもよかったんじゃないか?

 

自分の父親がクソなせいでこんなことになってしまったので協力してくれ的なね。

あー、桐条先輩がこの活動してるのってそこら辺が要因か・・・。まあ、身内の恥だもんな。

 

 

 

「シャドウたちはだんだん力を付けてる。待っているだけじゃ勝てない。それにタルタロスはまだまだ謎も多いからね。僕らの知らない答えがきっとあるはずだ」

 

 

 

作戦室での話は終了した。

 

伊織先輩が話が難しくて分からなかったからと、復習するため風花をラウンジへ連れて行った。おっさんはそれに付いていっている。

 

 

湊はちょっと飲んだくれた坊さんに会ってくるといって行ってしまった。

 

待って、坊さんもコミュニティってやつ?

飲んだくれの坊さんってポロニアンモールにいるの??

たまに明け方に戻ってくるのは坊さんからのお説法でも聞いているの???

 

 

気まずい中、桐条先輩も岳羽先輩もさっさと自室に引きこもってしまった。

確かに整理する時間は必要だ。

今は二人ともそっとしておこう。

 

 

真田先輩も外に出たようで寮にはいなかった。馬鹿馬鹿言ってしまったからな。謝りたいんだけど。

あれだけど、ラウンジで風花が説明している横で理事長をせめてやる。強気で居られるとはまったく思っていないが。

誰かに当たりたいのだからオトナである彼しかいない。

 

 

「本当に済まないと思っているよ。知りたいことがあれば遠慮なく訊いてくれ。すぐに答えられないものもあるからそこだけは了承してほしい」

「後から資料もつけてください。知らない事でシャドウに負けるなんて嫌ですから」

「ああ、もちろんだ」

「ではまず12体のシャドウとは?」

「満月に出る類のシャドウの事で、10年前の事故もとい実験の産物さ。相当量のシャドウを凝縮させたものが事故で12個体に分割されたんだよ。その力は強大で、タルタロス内部の個体とは別格だと思ってくれ」

「なぜ満月に出るかは」

「それはまだ分かっていない」

「ですよね。事故に関して世間の反応は?同級生が中学受験をする際に親が渋ったという話を聞いたんですけど優しいものではなかったでしょう?」

「ああ。あの事故での犠牲者は最終的には50人を超えた。集団不登校に関しても事故による心的外傷だとマスコミが騒ぎ立ててね」

「マスゴミは健在でしたか」

 

 

 

ほっとけよな。

一人の研究員が首謀者として吊るしあげられたらしい。

 

実際の首謀者は桐条グループの当時会長―桐条先輩のおじいさんらしい。お父さんだと思ってた。なるほど、血を引いている―。世間の納得を背負わせる生贄のようなもので、犠牲者の一人であった彼が選ばれた、と。

つまり、既に亡き人だったから押しつけたんだろ。それ、家族持ちとかだったら最悪だな。

残された家族のフォローは行われたのだろうか?

 

 

 

「いいや、我々にもそんな余裕はなかったからね」

「当時理事長は研究員だったんです?」

「末端の末端だったけどね。だから雇われ理事長との二足の草鞋だったのさ」

「だったらこう言うことはもっと早くに教えて下さい」

「ああ、済まないね」

「桐条先輩は・・・あそこでは言及しませんでしたけど、ペルソナ使いの人体実験の成功例*1、ですか?」

「やはり鋭いね。この活動に関しても中枢を安心して任せられるよ」

 

 

任せないで欲しい。学生に任せるなんてどうかしている。

しかも、桐条の娘と言うだけで実験体とされた当時の彼女への重圧は小学生が受けるものではないだろう。

 

 

「・・・ああは言いましたが、真田先輩はいつから?」

「中学の時さ。お互いが最上の理解者と言ってもいいだろう」

「売り言葉に買い言葉って感じですらすら言っちゃいましたけど、後で謝ります」

「彼にゲーム感覚の側面がなかったとは言い切れない。言っちゃなんだが、いい薬にはなっただろう。我々は止めて欲しくないばっかりにきつい言葉は避けていたからね」

 

「・・・もう一人」

「?」

「もう一人居ましたよね。嫌になって止めちゃった人員が」

「本当に鋭い。さっきの話の時の反応かい?」

 

 

 

私が、「やってらんねって言って辞めた人が居るかもしれない」と言った際に、桐条先輩も真田先輩も顔をしかめた。

覚えがあったのだろう。人が死んだって方じゃなくて安心した。

真田先輩の普段の態度からそっちがないと踏んではいたが、あったら彼女らの空気は死んだだろう。

 

幾月さんからは真田先輩が参加した当時は三人で活動していたと聞いた。

 

 

「なんで止めちゃったんだろうな。ペルソナっていう折角の特別な力だってのに」

「特別って言っても死ぬかもしれないと思いながら戦えって酷ですよ」

「強くなりゃいいんじゃね?」

「私たちってどこまで強くなれるのかな?」

 

「「え?」」

 

「あ、ほら!私のペルソナって戦えないじゃない?だから成長が止まっちゃったら付いていけなくなるかもしれないと思って」

「そもそも風花の成長が止まった時点で私らお手上げですね」

「なんで?俺たちだけで大型シャドウを倒せばいいだろ?」

「タルタロスには登れないですよ。あそこの厄介さは伊織先輩も身に染みてるでしょ?」

 

 

 

あんまり長居してもということばを最後に理事長は自宅へ帰って行った。

 

ペルソナ能力なんてなくていいっていうのが私の見解だ。伊織先輩に私の意見を押し付けるのは良くないだろう。彼が適正を持ったのは4月らしいし。

 

 

毎日、親戚の誰かが棺桶になっていて、家の中なのに電気も付かなくて、外で何かが這いまわっているのが怖くて、怖ろしくて、湊に泣きついて、必死に抱き付いて、影時間が過ぎ去るのを震えながら待っていた。

 

今でこそ、ファンタジーと笑えるが、湊がいなかったらとっくに壊れてた自信しかない。

初めから図太かったわけでもない。

 

両親が死んで、入院して幻聴や幻覚が見えて、親戚にたらい回されている中で入院中の幻覚が幻覚でなかったと影時間に気が付いて、正気を疑った。事故当時、私も大きなケガだったからおかしくなってしまったのかと思っていた。

でも湊も同じだったから安心できた。呼吸が出来た。

 

私は何があっても彼といる。私の唯一の家族だ。

まあ、たぶん主人公だしついていけば大丈夫でしょ。これからもずっと一緒に居てくれるでしょ。

 

 

 

 

 

*1
ネタバレになるので言及しませんが、原作をご存知の方はそういうことです




3-A日誌

現状生徒会所属生徒もおり、いじめなどの問題も発生していない。
夏休み前と言う事で中弛みしそうな時期ではあるが、生徒たちにそういった要素は見られなく不安は大きくない。
担任としての不安要素は転校生の有里奏である。

稀に不安定になるというのは資料から可能性としてあり、PTSDが発症したのか、7月半ばから何かを吹っ切るように走り回っている姿が見受けられる。授業の時間になっても戻らない事が度々。
本人に面談をしても、何でもないとの返答のみで大人を頼る素振りを見せない。

桐条グループのご息女が部長を務めている特別課外活動部という特殊な部活動に参加しているのもあり、桐条美鶴に相談するのもどうかと促してみるが芳しくない。

生徒会の○○や隣の席の○○に気にかけてもらうよう声を掛けて、彼女の動向を今後も確認し、クラスにもっと馴染めるよう文化祭などのクラス行事は早めに行動していく。
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