八雲家の白い吸血鬼 作:tex
1.博麗霊夢
幻想郷にある博麗神社の巫女である少女──博麗霊夢は神社でまったりと茶をすすっていた。
同居している妖怪──吸血鬼の少女がプレゼントしてくれた茶葉はとても美味しく、何杯でも飲める代物だ。そろそろその少女が帰ってくる時間なのだが──。
「──霊夢、帰ったよー。見てみて、沢山山菜貰ったから夕飯で食べようね」
──真っ白な少女が、霊夢の前に山菜を抱えて姿を現した。
膝くらいまである長い髪も、その肌も真っ白な少女だ。唯一瞳だけが赤い。人外らしく背中からは翼が生えているが──これもまた変な形をしている。コウモリの翼から皮膜を取り去った骨のようなものに透明な宝石のようなものが8個ぶらさがったもの。宝石はぼんやりと光り、夕暮に入りかけたこの時間では綺麗に輝いている。この翼のようなものは左だけ──片翼しかないのだが、目の前の少女は普通に飛んだり浮いたりしているのであまり関係ないのだろう。
霊夢はらしくないと苦笑して、目の前の少女の名前を呼ぶ。──博麗神社の居候にして妖怪の癖に神社の台所を掌握した、隙間妖怪と同じ名字の少女の名を。
「──白、あんた妖怪の山まで行ってきたの?」
「霊夢も知ってるでしょ、私文と仲いいからね。母様からも貰ったけど、大半はおすそ分けだよ」
「……まぁ無事ならいいけど。それにしても美味しそうね。天ぷらにするつもり?」
「そうだね。とれたてだし、やっぱり天ぷらでシンプルに塩をつけて食べるのが美味しいでしょ」
妖怪──それも吸血鬼の癖に血を飲まず、人間のように食事をする少女──八雲白は手慣れたように神社に上がり、山菜を水で軽く洗い始めた。
「あんた本当に珍しい妖怪よね」
「まぁ私は能力で色々と自分を改造したし、他の妖怪の参考にされても困るんだけど。そうかもね。でも霊夢も珍しい人間だと思うよ」
「博霊の巫女なんだから当然でしょ」
訳のわからない返答を返して畳に寝転がり、30分ほどすぎれば。ぱちぱちと油が跳ねる音と香ばしい香りでぼんやりとしていた意識がはっきりする。霊夢の目の前のちゃぶ台にはすでに食事の準備がされており、ほかほかの白米ときのこの味噌汁、湯気を立てる揚げたての山菜の天ぷらの乗った大皿と塩の小皿が置かれていた。どれも作りたてのようで、空っぽの胃を擽るような──食欲を増進させるようないい香りが漂っている。
「あんた本当に料理がうまいわよね。吸血鬼の癖に流水も平気だし。紫にでも習ったの?」
「母様じゃなくて藍様だけどね、習ったの。流水は母様に何とかしてもらった。流水って日常の至る所にあるから不便で仕方なくて。私の能力でもなんとかなると思うんだけど、まだ完璧に制御できてないから」
「あんたの能力訳解んないもんね」
「霊夢に言われたくないなぁ」
天ぷらにかじりつきながら放たれた霊夢の言葉に、白が苦笑する。
食事が終わってから風呂に入り、ちゃぶ台を片付けて2組の布団を敷く。
隣り合わせの布団に二人して入って顔を見合わせて、ふふ、と笑う。
「霊夢なんで笑ってるの?」
「白こそなんで笑ってるのよ」
真っ暗な中でこっそり手を伸ばして繋いで、妖怪と人間はお互いに言い合う。本来の妖怪と人間の関係ではありえないような関係。──友人。
真っ白な吸血鬼と巫女は互いの手を握りしめたまま──睡魔に身を委ね、夜が更けていく。
その様子を妖怪の賢者はスキマを通して見つめ──嬉しそうに口元が緩んだ。