八雲家の白い吸血鬼 作:tex
魔法の森の外れに、一つの小さな古道具屋が建っている。
半妖の青年が趣味で経営する、幻想郷に流れ着いた古道具を扱うお店だ。霊夢や魔理沙がよく世話になっている店で、白も話程度は紫から聞いていた。なんでも博麗大結界が出来る前から生きていたとか。
魔理沙の華麗な箒捌きでふわりとお店らしき小屋の前に降り立った白は首をかしげた。──ここが本当にお店?
白の疑問を感じ取ったのか、箒を肩にかけた魔理沙が苦笑する。
「……あいつは趣味人みたいなもんだからな。商売人って訳でも無いんだよ。まぁでも緩いからな。私にとっては良い場所だぜ」
──何が緩いのか。ジト目で魔理沙を見つつ、白はお店を眺める。──香霖堂。外からでも中に大量にモノがあることがわかる。
「……入れるよね?」
「んなこと気にしなくていいから。ほら行くぞ。──香霖ー、来たぜー」
白の逡巡を無視して、魔理沙がずかずかとドアの前まで行き思い切り開ければ、どこかホコリ臭い匂いが漂ってきた。──ホコリ臭い匂いだけじゃない。魔力や霊力、妖力はては神力さえ感じ取れる。中々いわくつきのものが多いようだ。
魔理沙の声と共に、奥から青年がやってくる。
「──魔理沙、また来たのか……って彼女は、もしかして八雲の?」
「知ってんのか」
白にとっては目の前の青年は初対面だが、青年にとってはそうでなかったらしい。青と黒を基調とした和服なのか洋服なのか分からない服を来た、銀髪に金眼の青年だ。紫の言っていた条件と一致する。──彼が森近霖之助か。
「──お初にお目にかかります。八雲白と申します。以後よろしくお願いします」
「これはどうもご丁寧に。森近霖之助だ、ここ香霖堂の店主をしている」
「香霖、白の事知ってたのか?」
「紫からね。なんでも後継者候補と言うじゃないか」
魔理沙の疑問に答えた霖之助の面白そうな表情に、白は困った風に笑った。
「……まだまだですよ、ろくに能力も制御できないのに、大げさです。母様からお話は聞いていました。なんでも魔理沙の魔法の道具を作ったのも霖之助さんらしいじゃないですか」
「あぁミニ八卦炉か。確かにあれを作ったのは僕だけど」
「すごいですよね、だって八卦炉ですよ? ヒヒイロカネなんてどこで手に入ったんですか」
「それはちょっと教えられないけどね。まぁでも君はまともそうだ。霊夢や魔理沙みたいにツケもしなさそうだし」
興奮する白を宥めて、霖之助は意地悪そうに笑った。魔理沙がうげ、と顔をしかめる。
「……ツケ?」
「知らなかったのかい? 霊夢も魔理沙も……」
「ストップストップだぜ、その話はなしだろ。ちゃんとツケにはしてるじゃないか」
「どういう意味だいそれは」
霖之助の話を途中で遮った魔理沙の言葉に、にっこりと笑顔を浮かべて問う霖之助。冷や汗をかいた魔理沙と笑顔の霖之助を見て疑問符を浮かべる白。
「ええと……」
「白は気にしなくていいぜ。唯の香霖の独り言だ」
「独り言って……。全く。まぁ……店の中にある古道具は自由に見ていいよ。売るかどうかは別だがね」
平気でいけしゃあしゃあと嘯く魔理沙に大きくため息を付いた霖之助は、諦めたような声色で白に店について話す。
「八雲に言うことでもないと思うけど、結構危ないものもあるからね、気をつけなよ」
面白そうに目を輝かせて古道具の方に寄っていった白の背中に向かって、霖之助が注意するが──白からの返答はなく。新しい客の様子を確認した霖之助は魔理沙を無視して、普段の定位置──奥のカウンターへと戻っていった。