八雲家の白い吸血鬼   作:tex

5 / 9
5.八雲藍

 紫との弾幕ごっこの練習を終え、へろへろになった白が屋敷の中で目にしたのは机に並べられたできたての夕食だった。

 沢山のいなり寿司、きんぴらごぼう、味噌汁の和食の並ぶ様に、白は思わず唾を飲み込む。その様子を見て紫が苦笑した。

 二人が来ると同時に勝手口の方から現れたのは、金髪のショートカットに帽子を被った美女──八雲藍。九尾の狐の妖怪であり、頭に被っている帽子からは狐耳のようなとがり、服の後ろからはもふもふの九尾が生えていた。

「──紫様、白。夕餉の支度が出来ましたよ」

 ──本来妖怪に人間がするような食事は必要ないが、紫の方針により八雲家では人間のように食事を摂ることになっていた。食事の準備は基本的に藍、そして白。たまに紫、といった感じである。

 狐らしくお揚げを好む藍は、いなり寿司のようにお揚げを使った料理を作ることが多かった。

「……橙は?」

「今日は妖怪の山で食べてくるって言ってたわ。……紫様、白はどうでしたか?」

「まだまだね、でも能力の制御は大分良くなったわ。この調子なら近いうちに「大結界」についても教えられそうよ」

 白との弾幕ごっこの練習で機嫌の良い紫と藍を尻目に、白はもくもくといなり寿司を口にしていた。甘めのつゆがよくしみこんだ柔らかいお揚げに温かいごまの入った酢飯。ごまの香ばしさとほんのりとした酢の味のご飯と甘いお揚げが絶妙にマッチして、とっても美味しい。さすが狐とでも言うべきか、相当手が込んでいる。

「白、紫様との弾幕ごっこはどうだった?」

「うーん……前よりは避けられるようになったんだけど、まだまだだよ。もうちょっと私の弾幕も考えないと」

 白は藍の質問にうーん、と悩みながら返答する。──実際、能力の制御は紫から貰ったペンダント──能力制御の補助道具──のお陰で大分出来るようになったものの、弾幕の方がまだ未完成なのだ。紫と藍、霊夢や魔理沙といった身近な人物の使う弾幕を参考に考えているのだが、中々上手くいかない。──そもそもだ。白の能力は汎用性が高すぎるのだ。思い浮かぶことは大体再現できるが、白の能力じゃないと出来ない、ということは中々思いつかない。

 オリジナリティを出すことに四苦八苦している、という状態だった。

「まぁまだ時間はあるわ。取り敢えずは能力の制御と避ける、グレイズの練習ね。……あぁそうそう、隠岐奈と会ったのよね」

「神社に向かう途中で会ってちょっとお話した、って言っても本当に挨拶くらいだけどね。母様の古い知り合いなんだっけ」

「そうね、私と同じ幻想郷の賢者の一人よ」

 白の会った不思議な女性──隠岐奈の話や神社での霊夢の話をしたり──(藍は呆れて紫は苦笑していた)様々な話をしながら夕食を食べ終え、藍の妖術を使った後片付けを手伝い風呂に入った後。白は藍の尻尾に埋もれていた。

 ──ふかふかでふわふわで温かい。紫と一緒に寝るのも大好きだが、白が一番好きなのはこの尻尾だった。

 出会ったときからそのふわふわさに一目惚れした白はなんとか藍を説得し、やっと尻尾に埋もれたときはもう最高に気分が良かった。

「……ねぇ藍」

「今は白が寝ているでしょう。後にして下さい」

 紫との弾幕ごっこの練習で疲労し、美味しいご飯でお腹を膨らませ、風呂に入って身体を綺麗にして後はもう寝るだけといった状態の白が寝落ちするのは仕方のないことであった。とろけたような笑みで尻尾に埋もれて寝息を立てる白に、白に惹かれて尻尾が気になる紫と二人にため息をつく藍。

 ──八雲家のなんでもない1日は、ゆっくりと過ぎ去っていった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。