ホロライブスタッフは特撮好き   作:R.N.

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風真いろはと侍戦隊シンケンジャー

あの日から数日が経った。

俺はあれからも変わらない日々を送っている。

彼女をいつでも迎えられるよう、このホロライブで精一杯頑張っている。

ただ変わったこともある。それはホロメンたちに対して敬語を使うのをやめたこと。そして苗字ではなく、名前で呼ぶようになったということ。

未練がましいかもしれないが、そこはどうか理解してほしい。これは一つのケジメでもあるんだ。もうあんなことが起きないように、これからはもっと彼女たちに寄り添えるするべきと考えた結果だ。

 

 

でも名前で呼ぶようになってから色々大変だった。

フブキは顔を赤くしてぶっ倒れるわ、おかゆは獲物を狙う狩人の目になっているわ、ちょこ先生は何やらいやらしい目線を向けてくるわ、ラミィは顔をニヤつかせて酒瓶片手に晩酌に連れて行こうとするわ、さらにこより博士は興奮して怪しい色の液体を飲ませようとする始末。

いや、本当大変だった。それでも今まで以上に充実した日々を送れているのもまた事実な訳である。

 

「僕らが変えてく未来…絆は途切れやしない…」

 

今日はウルトラマンメビウスの歌を口ずさみながら仕事をしている。

というか最近はこの歌ばかり歌っている。彼女と離れていても、心は繋がっていると願っているからだろうか。我ながら本当に未練がましいな……。

 

 

 

「章二殿ー!」

 

すると背中に刀を携えた、侍のような格好をした少女が飛び込んでくる。

 

彼女は風真いろは。

ホロライブ6期生、秘密結社holoXの用心棒を務める侍の少女。

本人は侍と名乗っているが、語尾にござるとつけて話すせいか、どうにも忍者疑惑がリスナーの間でまことしやかに囁かれている。

 

「いろは、どうした?またパソコン壊したか?」

 

「いきなり失礼でござる!?章二殿は風真のことなんだと思ってるでござるかー!?」

 

いや、初配信直前にパソコンぶっ壊せばこんなこと言いたくもなる。叩けば何とかなるという昭和理論でトドメ刺した時はふざけんなと思った。あれ修理するのマジで大変だったんだぞ。予想外の徹夜で軽く幻覚見えたからな。

 

正直このまま適当に流してもいいんだろうけど、ちゃんと聞いてなかったら刀の餌食にされそうなので一応面と向かって聞くことにする。

 

「それで、なんの用だよ?」

 

「風真は気づいたでござる。どうすれば皆殿に風真が忍者ではなく侍だとわかってもらえるか」

 

「うん」

 

やはりいろはも自身の忍者疑惑を気にしていたか。というかまずはそのござる口調を止めるのが一番手っ取り早いのでは?と思ったが、言えば斬られそうなのでやめておく。

 

「それは風真の侍としての証を皆殿に知らしめることだと!』

 

「なるほどなるほど」

 

なんかちょっと違う気がするけど、まあいいか。

 

「そして以前ルイ殿から、侍のスーパー戦隊がいると聞いて、早速これを手に入れたでござる!これで風真も立派な侍でござるよ!!」

 

そう言っていろはは左腕を見せてくる。

彼女の腕には、鳥の尾羽を模したマークが描かれた赤いメダルが付いたブレスレットがあった。

ていうかそれって……

 

「ふっふっふっ。章二殿もようやく風真の侍としての威厳というものがわかったでござるか」

 

「いや、あのいろは、それ侍じゃなくて……忍者、忍風戦隊…」

 

「……えっ!?」

 

そう。いろはが見せてきたのは侍戦隊のアイテムではない。

忍風戦隊ハリケンジャーの変身アイテム『ハリケンジャイロ』であった。

 

「か、風真としたことが……一生の不覚でござる」

 

風真さんは膝をつき、がっくりとうなだれている。というか手に入れる過程でそれがハリケンジャーという忍者の戦隊のアイテムだと気づかなかったのだろうか。

 

「間違えてそれ選んじゃう辺り、やっぱりいろはって忍者なんじゃ…」

 

「ち、違うでござる!風真は正真正銘の侍でござる!のっとニンニン!いえすジャキンジャキンでござる〜!!」

 

「はいはいわかったから、その刀閉まって」

 

流石holoXの清楚系ポン。素でこれなんだからしようがない。ていうか刀を背中に背負ってるせいで余計に忍者感が……

 

「章二殿は最近風真の扱いが雑でござるよ〜!」

 

なんか近所に住んでた年下の子を思い出す。その子によく忍者ごっことかに付き合わされたことがあったが、今の状況はそれと何ら変わらないような気がする。目の前にいるのはただの背の高い子どもだ。

 

「はぁ…しかたない、俺がちゃんとした侍戦隊を教えてあげるよ」

 

「ほ、本当でござるか!?」

 

「うん、ほらこれ」

 

俺はスマホからH◯L◯のアプリを開いて、いろはに見せる。

 

「おぉ!これが侍の戦隊、シンケンジャーでござるか!!」

 

侍戦隊シンケンジャーはスーパー戦隊シリーズ第33作目の作品。志葉十八代目当主である丈瑠と、彼の元に集った4人の侍達が、この世とあの世の狭間を流れる三途の川に棲む外道衆から、この世を守る為戦う物語である。

シンケンジャーは戦隊では珍しい、平成一期ライダーに近いシリアスな作風が特徴であり、終盤にはレッドのとんでもない秘密が明かされることになる。

和風戦隊ならではの殺陣、登場人物の葛藤、秀逸な伏線回収等が高く評価されており、主演の松坂桃李さんの知名度も相待って、放送から10年以上経った今でも戦隊シリーズトップクラスの人気を誇っている。

 

「早速見てみるか?」

 

「御意!先輩の侍たちの活躍を、この目に焼き付けるでござるよ!」

 

それじゃあスタート!

 

 

 

『『『『『一筆奏上!』』』』』

 

『シンケンレッド、志葉丈瑠!』

 

『同じくブルー、池波龍之介!』

 

『同じくピンク、白石茉子!』

 

『同じくグリーン、谷千明!』

 

『同じくイエロー、花織ことは!』

 

『天下御免の侍戦隊!』

 

『シンケンジャー!参る!!』

 

 

 

『侍合体!』

 

『シンケンオー!天下統一!』

 

『ダイシンケン、侍斬り!』

 

『これにて一件落着!』

 

 

 

「す……素晴らしいでござる!これが現代に生きる侍たちの生き様…!」

 

「現代っていうかもう10年以上前の作品だけど」

 

いろははかなり興奮している様子だった。でもまあシンケンジャーはかっこいいからこうなるのもわかる。

漢字を模したマスクのデザインなんて本当秀逸だし。同じように顔に文字があるジオウがネタにされているのを見ると、アレンジの加減が絶妙なんだと常々感じている。

 

「風真…わかったでござる!」

 

「ん?なにが?」

 

「侍としての証……まずはモヂカラを習得することだと!!」

 

「アホか」

 

この子何もわかっちゃいねぇよ……どうするんだよこのポンは。

 

「それでは早速ショドウフォンを買ってくるでござるーッ!」

 

行っちゃったし。これは後で絶対泣きつかれるだろうなぁ……

 

 

風真いろはの立派な侍としての道のりは、まだまだ険しい。

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