今回は作者最推しの夜空メルちゃんとちょこ先生の回です。
ではどうぞ
その日、魔界の天才ヴァンパイアこと夜空メルは、ご機嫌で事務所の廊下を歩いていた。
メルside
ふんふんふ〜ん♪ゲーム配信も終わったことだし、章二君と一緒にキバでも見よっかなぁ〜♪
最初は章二くんとたくさんお話したくて見始めたけど、結構面白くてすっかりハマっちゃった。
この前歌枠で歌ったSuper novaも好評だったし、次はどれ歌おっかな〜♪
「こんかぷ〜!章二くん!今配信終わったところだから、これから一緒にキバでも観よ〜!」
「大丈夫大丈夫まだ間に合う全然余裕だこんなの片手間でだってこなせる俺はやれる俺ならできる俺は強い子努力の子自分を信じろこれができなきゃ俺はただのデクの棒うじ虫ドベグズ画面をスーッて降りてくる広告ベチャベチャになった足拭きマット顎の奥に埋没したニキビカピカピになった納豆……」
メルの目の前には、光のない虚な目でパソコンのキーを叩き続ける章二くんがいた。
「い……いやぁああああああああ!!!!」
「メル様!?」
ちょこside
メル様の悲鳴が聞こえたから何かと思って来てみれば、
「ちょこ先生ぇ……章二くんが壊れちゃったよぉ!」
「章二様、だいぶお疲れみたいね」
公式番組の打合せに配信用の機材の点検。ここ最近忙しそうだったけど、まさかこうなるまで…。
いつもはギアとかスタンプとかの私物が置かれた章二様のデスクは、今は大量に積まれた書類とエナドリで溢れかえっている。正直見てられない。
「あ、メルさんにちょこさん。ちょうどよかった」
「Aちゃん…章二くんがぁ…」
「わかってます。見ての通り石谷さんは今5徹目に突入して、心も体もボドボドな状態です」
「5徹!?」
「このままだと最悪の場合、地獄兄弟の仲間入りです」
「ガチィ?」
『どうせ俺なんか……仕事ひとつまともにこなせやしない。今、俺を笑ったか?ハハッ……笑えよ……笑ってくれよ…!』
やさぐれた章二様……それはそれで唆られるかも……。
「ちょこ先生!変な妄想でうっとりしないで!地獄兄弟入りなんなんてダメ!そんなの絶対にダメだよ!」
「ちぇ〜」
「というわけで、2人にはこれから石谷さんのメンタルケアをお願いしたいんです」
「でも今の章二様、何言っても聞いてくれそうにないけど?」
「その通りです。なので……ソイヤッ」
「ヴェッ!?」
A様が章二様の首筋にチョップした。
意外と容赦ないわね…。
「じゃあ後はお願いします。石谷さんが残した仕事は私が引き継ぐんで」
「はーい」
「まかせといて!メルたちがしっかり章二くんをサポートするから!」
章二様のお世話……ふふっ、昂ってくるわねぇ…。
章二side
「あれ?ここどこ?」
気がつくと、そこは自分の家、自分の部屋のベットで横たわっていた。
突然首筋に衝撃を感じたかと思ったら意識がなくなっていたし、何があったんだ…?
「あ、章二くん目が覚めた?」
「メル?…それにちょこ先生も」
なんでこの2人がいるの?全然状況が理解できないんだが。
「章二様、ここ最近無茶しすぎよ。元保険医として見過ごせないわ」
「あーそういうことか…。心配かけたみたいで申し訳ない」
確かに最近ろくに寝てなかったし、食事も兄弟ラーメンやプロテインラーメンばっかりだった。流石に無理が祟ってしまったか。
でもまだやらないといけないことがたくさんある。
なので、まだ疲れが残る身体に鞭打って起きあがろうとした。しかしなぜか2人に押さえつけられた。
「あの、離してくれない?」
「ダメ!しばらく安静にしてないと!」
「いや、俺まだ仕事が残ってるんだけど」
「仕事はA様が引き継いでくれたから問題ないわ。それより今は自分の身体のことを気にするべきよ」
「いやでも…」
「だから、メル達が章二くんを癒やしてあげるね!」
「いや、えぇ…?」
癒す?何言ってんのこのポン吸血鬼は?
「章二様は何も考えずに、ちょこたちに身を委ねてくれるだけでいいのよ」
大丈夫か…?ホロメンでも屈指のセンシティブさを誇るこの2人に対して、俺は理性を保てるのか…!?
「んっ……章二くんのここ、硬くなってる……」
「はぁっ……章二様ってばガッチガチィ……そんなに溜まってたのね…」
「ねぇ、色々と危ないからその言い回しやめない?」
ただの肩揉みじゃねぇか。なんでそんなエッチなセリフが出てくるんだよ。
まあそれはそれとして、すごく気持ちいい……日々の疲れが癒やされていくのがわかる。気持ち良すぎて不思議と身体があったかくなる。
「あ〜気持ちよかったぁ…」
「じゃあ、次はもっと気持ち良くしてあげるね」
肩揉みが終わったかと思えば、今度はメルに膝枕された。
「え、何してんの?」
うわっ、メルの太ももめっちゃ柔らか……じゃなくて!
「せっかくだから、特別に耳かきしてあげるね!メルの生ASMRだよ〜」
耳かき…だと?
「え、いや、それは別にいい。ていうか、やめてほしい」
「えぇ〜なんで!?」
俺は耳かきというものが苦手だ。
幼き日の頃、母に耳かきされる度に雑にガリガリ削られるわ、耳珠(外耳道の入り口にある出っぱり)をピンセットで挟まれまくるわでもう散々。もはや体が耳かきという行為に対して拒絶感を覚えているのだ。いや、もうほんとに勘弁してください。
なので名残惜しいが、この膝枕状態から抜け出そうとする。
「もう!つべこべ言わないの!」
しかしメルに頭を押さえつけられしまった。
「やめろぉ!痛いのは勘弁してくれ!!」
「メルはそんな雑なことしないから!はい、じっとしててね〜」
俺の耳の中に耳かきが突っ込まれる。もうダメだ…削られる…!
カリ……カリ……
えっ…?なんだこの感覚……
「うわぁ…章二くんだいぶ耳垢溜まってるね……これは掃除しがいがありそう」
「あぁ……」
耳掻きって……こんなに気持ちよかったんだ……。
「ふぅー」
あっ……メルの息が耳に……。これは…ヤバい…蕩けそう…。
「メル様、そろそろ交代よ」
「えぇ〜?今いいとこなのにー」
今度はちょこ先生に膝枕される。
「章二様、身も心も全部、ちょこに委ねてね」
あ…ヤバい……眠気が……もう……限界……。
メルside
「あら?章二様、寝ちゃったわ」
「もう!よりによってちょこ先生の膝枕で寝るなんて」
「ふふっ、役得ね」
ちょこ先生になでなでされてる章二くんの寝顔は、心なしかニヤついて見える。その顔を見たら、なんだか無性にイライラする。
どうせならメルの膝枕で寝て欲しかったのに…章二くんのバカ…。
「あ、そうだ。せっかくだからここで観ちゃおうかな」
「メル様、それは?」
「仮面ライダーキバだよ。メルの一推し作品。本当は章二くんと一緒に観たくて持って来たんだけど」
「ちょこは観たことないけど、キバってどんなライダーなの?」
「メルと同じヴァンパイアがモチーフのライダーだよ。主人公の渡くんとお父さんの音也さんの親子の絆や、種族の垣根を超えた恋愛とかが描かれているんだ」
「仮面ライダーで恋愛って、あんまりイメージ湧かないけど?」
「キバは平成ライダーの中でもかなり大人向けの作品だからねぇ。章二くんも放送当時はあんまりハマれなかったらしいし。ファンからは昼ドラみたいって言われてるんだ〜」
「へぇ…ちょっと気になるわね」
「ちょこ先生も一緒に観ようよ!絶対ハマるから!」
こうしてちょこ先生とのキバ鑑賞会が始まった。
『キバット!』
『よっしゃ!キバっていくぜ!』
『変身!』
『ウェイクアップ!』
『ドラマティックに行きましょ〜う!変身!!』
『その命、神に返しなさい!変身!』
『どんな深い夜にあっても、やがて太陽は昇る。どんなに硬いつぼみでも、やがて花となって咲き誇る。雲がどんなに厚くても、その向こうには星が光る。どんなにマズイ食い物も、やがて血となり肉となる』
『魑魅魍魎跋扈するこの地獄変、名護啓介はここにいる』
『イクサ……爆現!』
『俺にはこの世で嫌いな物は2つある。糸こんにゃくと、俺の項目を立て逃げする男だ』
『渡、お前、まだ自分が消えればいいと思ってるのか…深央ちゃんって言ったな。彼女を生かすためには…お前が強く生きるしかない。人は前に進むもんだ。悲しみを飲み込み、大きくなったとき、彼女はそこにいる』
『渡、人に流れる音楽を守れ。そのために戦え…渡、大切なものを守るために、男は戦うんだ』
「ねぇ、メル様」
「なに、ちょこ先生?」
「やっぱりメル様も、章二様のことが好きなのかしら?」
話が終盤に差し掛かった辺りで、ちょこ先生がそんなことを聞いてきた。
も、ってことはやっぱりちょこ先生も…。
「うん。好きだよ、章二くんのこと」
メルがストーカー被害で悩んでた時、章二くんはメルのそばで励ましてくれた。章二くんのことを意識し出したのはそれからだった。
章二くんが特撮好きだと知って、いろんな作品を片っ端から調べたりもした。
でも章二くんは特撮好きなのを隠していたから、なかなか切り出せるタイミングがないまま、フブキちゃんに先を越されてちゃった。
あの時は本当に悔しかった。でもそれがきっかけで私たちと章二くんとの距離が縮まったから、そこはフブキちゃんに感謝してる。
「そう……でもメル様には悪いけど、章二様を譲るつもりはないわよ」
「…負けないもん。ちょこ先生にも、フブキちゃんたちにも…。章二くんはメルのものなんだから…!」
章二side
「いや、昨日は本当にありがとう2人とも。おかげで体調はバッチリ全開だわ」
「章二くんが元気になってくれてよかったよ!」
「章二様、もしまた疲れたら言ってね?ちょこ達がいつでも癒してあげるから」
「そうならないように、気をつけないとな」
二人は今日収録があるため事務所に行くが、俺は今日1日、家で安静にしておくように言われた。ついでに耐久レースはしないようにとも釘付けられた。ちくしょう。
二人を見送り、部屋に戻ろうとした時、何故かメルが戻ってきた。
「ねぇ、章二くん!」
「どうした、忘れ物か?」
「か〜〜っぷ」
「ひゃっ!?」
突然メルが首筋に噛み付いてきた。甘噛みで、牙も立てていない。吸血する気はないようだが、一体何…?
「メ、メル…?」
「えへへっ、次また無理したら、メルがキバってイッちゃうから、覚悟しててね♪」
その時、メルの天真爛漫かつ、妖艶な笑みに思わずドキッとしてしまった。
章二がキバにあまりハマれなかったというのは、私の実体験が元です。
当時は本当にキバのストーリーが理解できず、同期のゴーオンジャーにハマってました。しかし成人してから見ると改めて面白いと思える作品です。今やるなら絶対アマゾンズみたいな限定配信の作品になってたかもですねぇ…。