沙耶とみんなでゲーセンで遊んだ翌日。
学園の敷地内に並ぶ木々の葉が微かなそよ風に揺られてざわざわと音を鳴らし、無限に広がる真っ青な空は太陽の光が照りつく快晴の大空だった。白いハトが日の光を浴びながらパタパタと真っ青な空の中に飛び立つ。そんな空の下、学生たちの一見静かで穏やかではある授業の風景があった。
しかし実際には授業中に寝ている者、早弁している者、教科書を装って漫画を読んでいる者が少なからずはいた。
そして理樹もまた意外と、そんな一人だったりする。
「……ん?」
ポケットの中でぶるぶると震える僕の携帯。黒板にチョークを叩きながら説明する先生の背をチラリと確認してから、僕はこっそりとポケットから震える携帯を取り出した。
普段の授業中にも、授業中に暇を持て余した来ヶ谷さんのメールが来たり、ミッションを提案した恭介のメールが来ることもある。こういうのは珍しくない。
でも、差出人の名前を見たとき、僕はすこしだけ驚いた。
「……沙耶」
彼女からのメール。
それは初めてのことだった。
Re:理樹くんへ
本文
昨日は楽しかったわ。実は夜にも神北さんたちと過ごしたの。みんないい人たちばかりね。
「(へぇ……)」
僕は感嘆の息を漏らした。
既に沙耶がここまでリトルバスターズに打ち解けているなんて。だけど、これはもちろん嬉しいし、沙耶にとっても良いことのはずだ。僕は安堵とともに、心地よい嬉しさに浸った。
「(それは良かったね。きっとみんなも沙耶がリトルバスターズに入ってきてくれて嬉しいんだよ。これからもみんなと僕も、よろしくね……っと)」
送信ボタンを押して、文章を打ち込んだメールを彼女に送る。
つい笑みをこぼしてしまいそうになるけど、授業中に一人笑っているのも変だ。鈴に見られようものなら軽蔑されてもおかしくない。
でも、嬉しくて、笑いたくなった。
ぶぶぶ。
送信してから差ほど時間も経たないうちに、返信メールが来た。
「どれどれ……」
Re:もちろんよ。
本文
もちろん。こちらからもよろしくね、理樹くん。あたし、こういうの初めてだったけど、きっとこれから楽しい日々が待ってるんだなって思えるの。だからこれから毎日をみんなで楽しく過ごしたい。もちろん理樹くんとも。
……そうそう、理樹くん。あのね、そのことでもあるんだけど、ちょっと理樹くんに伝えたいことがあるんだけど…
「伝えたいことって、なんだろう?」
首を傾げ、僕は「伝えたいことって?」と書いてメールを送った。
そして、すぐにまた返信が来る。
Re:それは…
本文
それはその……昼休みに直接言うわ。だから昼休みに二人だけで会えないかしら。
沙耶は昼休みに僕と二人きりで会いたいと言ってきた。
何か僕に伝えたいことがあるらしい。
なんだろうと思いつつ、僕は了承する意思をこめたメールを送信した。
「……なんだろ、伝えたいことって」
僕はふと教室の天井に視線を仰ぎながら、携帯を閉じた。
と、その時。あまりに唐突に、また携帯が震えだしたのだからちょっとビクッと驚いてしまった。正に不意打ちだった。
また沙耶からかな、と思ったけど、今度は違った。
「恭介……?」
差出人はお馴染みの名前が、恭介の名前が液晶画面に表示されていた。
「恭介までなんだろ……」
中身を見る。
「………へ」
そんな声をつい漏らしちゃったけど、それは普段の恭介を知っているなら、そんなメールの内容なんていつものことと言えばいつものことだった。
ただ、沙耶との約束がまた後になっちゃうなぁということだった。
昼休み、全員集合せよ。というのが恭介のメールだった。
それはちゃんとリトルバスターズの全員に届いたようだ。もちろん新入りの沙耶も含めて。
昼休みの教室には、恭介をはじめとしたバスターズの全メンバーの面々が集まっていた。
その面々の中、約一名だけ不機嫌そうな表情をしている。たぶん予定をズラす羽目になったせいだろう……ごめん。
「……なんで理樹くんが謝るのよ」
「いや、なんとなく……」
「……別に、怒ってないわ。 どうせいつでも伝えることができるし、また放課後があるから。 それに……こんなの今に始まったことじゃないし」
「え?」
「なんでもないわ」
ぷいっと顔を背ける沙耶さん。う~ん、やっぱりすこし怒っているような……。
「よし。 全員揃ったな」
みんなの前に出た恭介は、みんなの顔を見渡すと満足そうに頷いた。
「では始めよう」
「……ちょっと待て。 なにを始めようってんだ」
いつもの唐突さを見せる恭介に、真人が止めに入る。
「何かを始める前に、その何かをまず俺たちに教えろよ」
「まぁ、恭介がこうして俺たちを集めるとなれば、ほぼ察しはつくがな」
真人の隣で、いつもの剣道着姿の謙吾が続ける。そうだ、謙吾の言うとおり、恭介が僕たちを集めるといったら、大体やることは決まっているのだ。
それはすなわち―――ミッション。要は、“遊び”だ。
恭介はいつも僕らのリーダーとして、楽しいことを提案してくれて、僕たちが飽きることなく遊ぶことができる。
「ああ。 実はこれをやりたいと思う」
恭介が何かをみんなの前に見せつけるように出した。みんなの注目が集まる。
「なんだそれ?」
「知らないのか? エアガン他サバイバル道具だ」
「いや、見ればわかるけど……」
恭介がみんなの前に出したのは、外見はごつごつとした物騒なもの、マシンガンや銃のような形をしたもの―――というか銃そのものだけど。所謂エアガンという奴だ。まさかこの日本で本物なんか持ってたら即捕まっちゃうよ。でも、恭介ならやりかねないような気がするのは何故だろう。
「エアガンに、弾丸であるBB弾は一つの銃に平均三〇〇発は用意してある。 あとゴーグルもあるぞ」
「―――で、これをどうしろと。 まさか……」
「ああ、そのまさかだ」
恭介がニヤリと笑う。
「これより、リトルバスターズの諸君でサバイバルゲームを敢行したいと思う! もちろん、全員参加だ」
「ええええっ?!」
「……今度は一体なんの漫画の影響だ、馬鹿兄貴」
「ふ。前々からサバゲというものをやってみたいと思っていてな。 だがお前たちの分を揃えるには多少の時間と費用がかかってな。 手間がかかって、ようやく今に至ったわけだ。 過酷な戦場という場所と状況で互いに撃ち合い、勝利を目指す! これほど男の血を騒がせるものはないぜっ!」
リトルバスターズの大半が女子だけどね。それを言うの無粋だ。
「ということで、さっきも言ったようにこれは全員強制参加だ。 不参加も、わざと負けてさっさと辞退しようというのも許さん。 戦死したものには当然罰ゲームを設ける! 何より俺が手間かけた努力と金が無駄になることだけは避けたいからな」
最後に本音が出たよ、恭介……。
こういう正直なところと少年みたいなところが恭介なんだよね。
「ではさっさと始めるぞ。 時間制限(タイムリミット)は昼休みの終了チャイムだ。 まずルールを説明する。 二軍に別れ、どちらかの軍(チーム)のメンバーが全員やられるか、廊下に置いた空き缶を、守る側と蹴る側を決めて、その缶の行く末次第で勝負を決する!」
「ちょっといつか遊んだ缶蹴りを含めたみたいだね」
「その通り。全員がやられるまで……だけというのが少々面白味が足りないからな。ちょっとこういうのも入れてみたわけだ」
「で、チーム分けはどうするんだ?」
「クジで決める。みんな、思う存分引け」
恭介はメンバー分のクジを握りしめてその手を差し出した。用意が良い。
そして僕たちは恭介によって用意されたクジ引きによって、チームが決まった。
引いたクジの先端に青・赤いずれかの色が塗ってあれば、どちらかに分かれる寸法だ。
青軍
僕(直枝理樹)
沙耶
鈴
クド
西園さん
謙吾
赤軍
恭介
来ヶ谷さん
真人
小毬さん
葉留佳さん
赤軍のほうが一人少ないけど、なんて言ったって赤には恭介や来ヶ谷さんまでいるんだ。妥当なハンデだと思う。なので、チームはこのまま決定された。
ちなみに勝負の決め手の一つとなる缶を守る側は、青軍である僕たちに決まった。全員やられない限り、又は缶を狙ってくる赤軍から缶を制限時間内に守り切るか全員を倒せばこっちの勝ちだ。
恭介たち赤軍は三階の端からスタートするみたいで、赤軍は三階へと向かった。そして互いの準備が出来れば、携帯に合図として電話の着信音が鳴る。
「とりあえず向かってくる恭介たち赤軍を前線で対抗する防衛線と、缶のそばで缶を守る防衛線を編成しよう」
僕はみんなをまとめ、作戦を練る。
「まず前線は……僕と謙吾、あと身動きが素早い鈴が良いかな。クドや西園さんはいきなり最前線で戦う役なんて悪いけど荷が重いと思うし、二人には缶を直接守ってもらおう。あと沙耶も、残ってて。あと……」
「ちょっと待って、理樹くん」
「え?」
「理樹くんの考えもあながち間違いじゃないけど、それよりもっと良い戦力分けがあるわ。この配置より、まず缶を守る場所は理樹くん、あなたがいなさい。そして前線には宮沢君と棗さん」
「えっ? ちょっと待ってよ。沙耶は?」
「あたしに考えがあるわ。こっちのほうが本格っぽいし、結構相手を楽しめることもできるかもよ。特にあの恭介さん……にならね」
「どういう……」
「とにかくあたしは一人で別行動を取るわ。安心なさい。こう見えてもあたし、こういうの得意なのよ」
「そ、そんなの……。 だってこれはチームで行動したほうがいいんじゃないかな。一人っていうのはあまりに危険……」
「だから、あたしに考えがあるって言ってるのよ。理樹くん、信じて」
「…………」
沙耶のその綺麗で空のように蒼い瞳は真剣に、そして鋭利に輝いていた。そして妙に自信に満ちた沙耶の言葉に、何故か僕はまったく疑惑の余地がなかった。
「……わかった。 沙耶の思ってる通りにやろう」
「ありがと、理樹くん」
「……いいのか、理樹」
今まで静観していた謙吾が横から入る。
「うん。 僕は沙耶を信じるよ」
「……そうか。 お前がそう言うなら俺は何も言わん。 このチームのリーダーはお前だしな」
「えっ? 僕がリーダーなの?」
「当たり前だ。 お前以外に誰がいる」
僕の言葉に、謙吾が当然と言わんばかりの表情を浮かべる。
「そりゃ、僕なんかより謙吾や、なんとなく沙耶のほうが……」
「なんとなくってなによ……」
沙耶がジトッとした瞳で見詰めてくる一方、謙吾は小さく溜息をついた。
「……あのな、理樹。 自覚してないのかどうかは知らんが、お前は確実に以前より強くなっている。 お前こそが恭介に次ぐリーダーにふさわしいんだ。 それは全員が承知しているはず。 あの日を境に、お前は強くなったんだろ」
「…………」
「だからリーダーであるお前の言葉も、行動も、すべて俺は信じる。 だから何も言わん。 わかったな」
「……わかったよ、謙吾」
その時、携帯の電話の着信音が鳴った。
ミッションスタートだ。
いや……
「ゲーム・スタート」
沙耶の言葉が、妙にはっきりと聞こえた。
ゴーグルを装備し、それぞれエアガンを抱えながら、サバイバルゲームが始まった。
まず僕たち青軍は、赤軍に一番近い三階と二階を通じる階段を先に確保する。恭介たち赤軍のスタート地点である三階の端の反対側にも階段があるから、もしそこを使われたら裏側から攻められる可能性がある。だから反対側の階段まで通じる廊下を遮断するためにも近い階段を確保しなければならない。
足の速い鈴と運動神経抜群の謙吾なら出来ないこともない。
二人は真っ先に、目標の階段へと向かった。
「……とりあえず来てみたが」
「……誰もいない。 あたしたちが一番乗りか?」
「だといいがな。 まずはあの階段を確保し、同時に反対側から通じる階段への道を遮断する。 階段を確保し、三階に―――」
その時、謙吾は嫌な悪寒を背筋に感じた。
「―――ッ!」
階段の影からユラリと現れた巨体。赤いバンダナ。ごつい拳銃のような形状のエアガンを二丁装備した真人だった。
「伏せろッ!」
「にゃっ?!」
謙吾に後頭部を掴まれ、ぐいっと鈴は頭を掴まれる。その頭上を真人の放ったBB弾が通り過ぎた。
「――ちっ。侮ってた……」
「へへっ、謙吾よぉ。 運動神経が良いのはお前だけじゃねぇんだぜ?」
「く……。 真人に先を越されるとは」
そもそも階段に近いのは真人たち赤軍のほうだ。いくら運動神経が良い謙吾や足の速い鈴を向かわせたって、謙吾と相対するくらいに運動神経の良い真人が相手だと、無理はない。
「へっ、謙吾っちよぉ、油断は禁物だぜ? だからこうなるのさ。 俺様を舐めると酷い目に合うってことを今思い知るがいいぜ。 なんて言ったって、俺様は筋肉という運動神経をとったら何も残らねぇんだからなぁッ! ―――って、俺なんか自分で言ってみてすっげー悲しい気分になったんだけど!?」
「ふん。 やはり馬鹿は馬鹿ということだ」
「んなッ! なんだとテメェッ!」
「所詮真人一人相手ならば、俺一人でも十分だ」
「へ……っ。 上等じゃねぇか。 本当なら俺はこんな小細工より自分の筋肉で直接戦いたかったんだけどよぉ……。 恭介の奴が格闘戦は禁止だって言いやがった。 もしルール違反をしたら俺の負けだ。 どんな経緯であれ、謙吾に俺が負けるなんて、許されねぇ」
「ふ、安心しろ。 お前は正当なルール上で見事な敗北を喫することになるからな」
「へっ! お前だって竹刀がなきゃ俺様にかなわねぇくせに!」
「ほう、言ったな?」
「どっちも得意分野で戦えないのはお互い様だっ! 決着をつけるぜ、謙吾!」
「望むところだ」
ジリジリと対立する謙吾と真人。まるで二人の炎が燃える背景に竜虎の姿が見えるみたいだった。
「……お前ら、あたしを無視するなっ!」
鈴の声さえ、二人には聞こえない。
もうそこは二人の世界なのだ。
「手を出すなよ、鈴。 ここは俺が引き受ける」
「そうだぜ、鈴。 男同士の戦いに女が水を差すもんじゃねぇぜ」
「……もう知らん。 勝手にしろ、この馬鹿ども」
鈴は呆れたように二人の場から離れていき、レノンと戯れることにしたのだった。
そしてジリジリと対立していた両者が、遂に動き出す。
「いざ尋常に勝負!」
「いっくぜぇぇ―――っっ!」
両者の互いに撃ち合う銃撃戦の発砲音が幾重に重なった。
「……始まったみたいだ」
遠くから聞こえ始めた銃撃戦の音が、戦いの激しさを物語っていた。
「あわわ……。 こ、こわいですぅ……」
銃撃の音を聞いて、クドがまるで小動物のように震えだす。まるで犬の耳と尻尾が付いていてそれが震えているようにも錯覚してしまう。
「大丈夫だよ、クド。 きっと謙吾たちが食い止めてくれる……」
僕はクド、そして拳銃をただ本と一緒に正座した膝の上に抱えている西園さんとともに、ここにある缶を防衛している。沙耶はどこかに行ってしまい、もし裏側から敵が攻めてきたら僕が一人で戦わなければならない。
「……大丈夫。 僕が、きっと守るから」
「わ、わふ……」
クドの頬がぽっと朱色に染まるが、クドは慌ててそれを隠すように顔を伏せた。
「……どうやら向こうでは、宮沢さんと井ノ原さんあたりが戦っているんでしょうね」
「でも他にもいるはずなのに……。 もし複数であそこから攻めてくるとしたら、謙吾と鈴はやられたと思う。なのにこうしてまだ銃撃戦の音は聞こえる。 ということはやっぱり反対側から攻めてくるかも……!」
「……まぁ、しかし。 大丈夫でしょう……」
西園さんはいつも大人しい娘で冷静だけど、こんな時まで冷静だった。
「どこかに消えてしまった直枝さんの大事な人は何か考えがあると仰ってましたし、それに何より……直枝さんが信じているのですから、私も信じますよ」
「西園さん……」
西園さんは黙って、特に表情も変えないで、その場に静かに佇む。
「ありが―――」
「おや。 大事な人という部分はやはり否定なさらないんですね」
「……ッ! な、なな…ッ!」
顔を真っ赤にして慌てる僕を見て、西園さんが微かにクスリと笑ったような気がした。
その時、今まで聞こえていた銃撃戦の断層が、また一段重なったように聞こえた。
「え――?」
向こうの銃撃戦が激しさを、増していた。
階段付近で戦闘を展開しているのは、青軍側の謙吾と赤軍側の真人。そして―――
「ふにゃああっ?! な、なんでくるがやがっ!」
「何を言う、鈴君。 私も立派な赤軍の兵士の一人だぞ?」
「な…ッ!? 何故、来ヶ谷が……!」
「ばーか、謙吾。 俺がいつ一人でここに来たって言ったよ。 だから舐めるな、って言ったろうが」
「く……ッ!」
謙吾と真人が銃撃戦の繰り広げて間もない時、突然階段から新たな影が現れたのだ。レノンと戯れていた鈴だったが驚異の反射神経で奇襲をなんとか避けることができた。
「恭介め。 やってくれるな……」
真人一人ならまだしも、来ヶ谷まで加わるのだとしたら、戦力比を考えると相当な苦戦を強いられる。来ヶ谷は本当に忠者ではない。俺でさえ敵う相手かわからない。なのに、こっちは鈴と自分を含めて数的には二対二でも、来ヶ谷を“一人”として数えるのはあまりに愚か…!
「ふ。悪いが、謙吾少年。 そこを退いてくれないかな」
「断る!」
「ほう、予想はしていたが即答とはな」
「……うぐぅ」
新たに現れた来ヶ谷が鈴を前に立ち塞がる。鈴はきっと今にもすぐに逃げ出したいと思っているだろう。だが、ぐっと足を踏み入れて、自分の隣に立って共に対峙してくれている。そう、強くなったのは理樹だけじゃない。理樹と共に強くなった奴を、俺は知っている。
「……鈴。大丈夫か」
「く、くるがやは正直恐いが……。 い、いやっ! これくらい平気だっ!」
「…そうか」
つい、フッと微笑んでしまう。
「では、共に戦おう。 力を貸してくれ、鈴。 一緒にこいつらを倒すぞ。 決してここを通すな」
鈴と共に己の武器を構える。それは不慣れであっても、守るものがあれば、そんなの関係ない。
「…ふふ、そういうの好きだよ、私は」
「へへ。 謙吾に鈴、覚悟しろよ」
それぞれの笑みを浮かべる来ヶ谷と真人。
「ここを通すわけにはいかん。 理樹は俺が守る!」
「きみたちが守っているのは缶ではないのか?」
「同じことだ!」
「よし、ではお姉さんも手加減なしで行かせてもらおう。鈴君、私が勝った暁にはここを通るついでにきみも頂いておこう……ふふふ……」
「ふ、ふざけんなボケェェェーーッッ! そんなことさせるかぁーーっっ! ふかーっ!」
「ああ、可愛いな鈴君は……」
「いいからさっさとおっぱじめようぜ」
「……まったく、急かすなきみは。 ……では、いざ」
「来いッ!」
ぐっと両足に力を込めて、その場に固まる二人。その二人に向かって、真人と来ヶ谷が同時に、足で地を蹴って飛びだした―――