進撃のウマ娘 作:ガバ・ブラウン管
「……ここはどこだ?俺は一体何を…」
俺は気がつくと青空の下で芝生の上に立っていた。何だコレは。これは始祖の巨人の力だってのか?
「誰か、居ないのか?オイ、誰かー!」
叫んでみて気付いた。俺の声が甲高くなっている事に。まさか、と思い胸部を触ってみる。膨らんでいる。俺の密かな自慢だった胸筋は跡形もなく消え失せ、代わりに男を魅了する脂肪の塊が二つ鎮座していた。
「勘弁してくれ…」
自身が女になってしまったショックで座り込んでいると、後ろから誰かが近づいてくる音が聞こえた。軽い足音だ、多分女だろう。
「誰だ……なっ!?」
「よう…ライナー。久しぶりだな」
「エ、エレン…!?なぜ、ここに…それにお前のその姿は…!」
そう、俺をここに呼んだであろう始祖の巨人であるエレン・イェーガー…を女にした様な奴がエレンの表情で立っていた。それだけなら俺自身も同じ様なモノだし納得も出来たが、エレンの頭頂部には馬のような耳がついている。
「エレン、お前まさか…獣を…?」
「いいや、違う…オレはお前こそ獣を継承したのかと思ったぞ。頭頂部を触ってみろ、ライナー」
そう言われて頭頂部を触ると、確かにあった。そして同時に自身に本来あるべき位置に耳がなかった事に。
「何なんだよ…俺は一体どうしちまったんだ…?なぁエレン、お前はどうするんだ?」
一応、同じ境遇のエレンに聞いてみる。コイツは俺を恨んでるし殺したいだろうからマトモに返事を返してもらえるとは思わないが。
「オレは…進み続ける。なぜならオレは生まれた時からずっと自由だからだ。ライナー、お前はどうなんだ?」
「俺は……アイツらを、ガビやファルコを守らなきゃいけない。だから何とかしてえんだが…」
俺が何をしたいのか考えていると、遠くに人影が見えた。見た感じ女だ。それも俺やエレンと同じ特徴を持った女だ。
「ライナー!エレーン!練習始まってるよー!早く来なよー!臨時トレーナー心配してるよー!」
その女は快活そうな声を響かせながら小走りで駆け寄ってくる…いや速いな。
「ライナー、ここは一旦協力しよう。ここは何かおかしい。出来るだろ?ライナー」
「っ…!あぁ、俺は"戦士"だからな…任せろ、エレン」
「しかし、あの女速いな。馬とどっちが速いんだ?」
それは俺も気になっていた事だ。普通人間からあんなスピードは出ない。アイツが特殊なのか?いや、リヴァイ兵長なら案外出来そうだな…
すぐに女が俺たちの元へ辿り着く。
「もー!何してるのさ!ほらっ!行くよ!」
「待ってくれ、アンタ…やけに速いが何か訳でもあるのか?」
そう聞くと、女は怪訝な顔をした。
何か変な事を聞いたのだろうか?俺は人間として至って平凡な質問をしたつもりだったのだが。
「どうしちゃったのさ!ライナー。ウマ娘の足が速いなんて、太陽が東から昇るぐらい普通の事だよ!」
「は?お前は何を言ってるんだ。そもそも太陽は西から昇るだろうが」
そうだ。少なくとも、マーレやパラディ島では太陽は確かに西から昇っていた。俺がうんうん唸りながら考えていると、エレンが場を仲裁した。
「まぁ落ち着けよライナー。お前疲れてんだよ、それで?お前の名前は?」
「エーッ!エレンまでおかしくなっちゃったの!?ボクだよー!トウカイテイオー!もう!未来のスターの名前を忘れるなんて酷いよー!」
「トウカイ…テイオー。ライナー、聞いた事はあるか?どっちもヒイズル国の言葉に似ているんだが…」
「さあな。オレはヒイズル国の奴と話した事は数える程しかねえからな。それも会釈ぐらいだ」
「だよなぁ…おい、トウカイテイオー。お前はエルディア人か?それともマーレ人か?どっちだ」
トウカイテイオーと名乗った女は怪訝な顔をして俺たちを見る。まずいな、しくじったか?いざとなれば巨人の力があるとは言え、なるべく消耗は避けたい。
「エルディア?マーレ?うーん、ボクわかんない!トレーナーなら知ってるかも!行こっ!」
可憐な笑顔を浮かべ俺たちの手を引くテイオー。うわ、手柔らか………じゃない。敵地かもしれないんだ、警戒して行こう。
暫く歩いて、臨時トレーナーとかいう奴がいるだろう場所へ着いた。エレンは何やら黙っていたが、どうしたんだ?
「…ん?ライナー。どうした、俺に何か着いてるか?」
「いいや、お前が何やら考え事をしてるみたいなんでな。オレとしてはそれを知りたいって訳だ」
「あぁ、そうか…今俺はテイオーが何人であるかの考察をしていた。結論から言うと、テイオーはヒイズル国に近い人種なんだろう」
「凄いなエレン。もうそこまで考えついたのか」
「まぁな…」
エレンは少し赤面し、そっぽを向く。何だ?照れているのか?マーレをめちゃくちゃに破壊した癖にこう言うところは同じなんだな。
というか、美少女の面で赤面するな。オレが困るだろ。
「ライナー、エレン!トレーナーさん来たよ!」
「全く、どこに行っていたんですか!?心配しちゃったじゃないですか!」
出てきたのは、オレたちの想像している様な教官では無くヒョロッとした優男だった。本当に大丈夫なのか?
「オイ、悪くは言わないけどよ。お前それで本当に訓練出来るのか?」
空気を読まないエレンがツッコんだ。やめろ、空気が死ぬ。
「アハハ、手厳しいなぁ。大丈夫ですよ、シンゲキエレンさん。僕はこれでも中央のトレーナーなんです。安心してトレーニングして下さいね」
「中央?」
この世界にも中央政府があるのか?だとするとここは壁の内側という事になる。
「ええ、中央トレーニングセンター学園です。全てのウマ娘達がそこを目指すんです。その中でウマ娘達を指導する役割を持つのが、僕たちトレーナーって事ですね。わかりましたか?」
「あぁ、助かった。ありがとう…」
「良かった。では、トレーニングを始めましょう!まずは並走から!さぁ、位置について!」
並走…?なぜ並んで走る必要があるんだ?
「もーっ!行くよ、ライナー!エレン!」
「あぁ、すまないテイオー。ほら、エレンも考えてないで早く行くぞ」
そうして着いたのが先程オレたちが立っていた芝の上だ。取り敢えず、モノを知っているテイオーについて行けば良いだろう。
「位置について、よーい…ドン!」
「おっ先〜っ!」
テイオーが凄まじいスピードで走っていく。慌ててオレたちも駆け出すがついていけない。速い、速すぎる。あんな速度で走ったら普通死んでしまうぞ!?
「チッ!巨人化する!」
オレの少し後ろを走っていたエレンが親指の根本を噛み、巨人化しようとする。次の瞬間、雷が走った。
「ウォオオオオオオオオオッ!!!!」
巨人の咆哮が聞こえるも、一向にその影は見えない。何だ?と思った瞬間、テイオーに負けない程の速さでエレンが駆け抜けて行った。
恐らく、巨人化の力がそのまま人間の身体に憑依したのだろう。慌ててオレも腕をかみ切り、巨人化する。
「ヴォオオオオオオオアアアアアアッ!!!」
凄まじい雷がオレを包むも、まるで衝撃は来ない。むしろ軽くなった気もする。今なら行ける…!
「オレはドベにはならんぞぉおおお!」
結果は負けた。しかし、新たな発見もあった。それは、オレが非常にタフだという事だ。1マイル全力で走り切ったというのに未だに疲れが見えない。むしろ、もっと走りたいぐらいだ。
対するエレンは割とバテ気味でいた。これは巨人化時の活動時間に比例しているのか?要検証だ。
「ねーねーエレン、ライナー!このあとさ、クレープ食べに行かない?駅前にすっごい美味しいのが出来たんだよー!」
「クレー、プ?何だそれは。オイ、聞いたことあるかエレン?」
「さあな…少なくとも壁内には無かったな。テイオー、それは美味いのか?」
「エーッ!クレープも知らないの!?よーしっ!じゃあ、このテイオー様がクレープの美味しさを教えてあげちゃうのだ!」
その後、オレたちはクレープ屋というところに連れて行かれ、クレープを食わされた。今まで食った物の中で一番美味かった。
エレンも同じ感想のようで、その時だけはオレたちは訓練兵時代のような懐かしいものを感じた。この世界はこんなにも暖かいなら、少しはゆっくりしても良いのかもしれないな。
「そういえばさー!エレンとライナーは何にも覚えてないみたいだけど、自分のお家は流石にわかるよね?」
「「……………!」」
「モーッ!それもぉ!?ライナーは栗東寮!エレンは美浦寮ね!寮長に怒られちゃうぞ!行こっ!」
その後、エレンが迷いに迷って寮長のヒシアマゾンさんに遅いと注意された事は少し笑った。その時のエレンのしょぼくれた顔が面白かったせいだ。
はぁ、全く。ここはどこなんだ?明日、また改めて調べてみよう。それに、この世界は居心地が良い。出来れば永く滞在したいものだ。
そう考えながら、割り振られた部屋で眠りについた。
ガリアードさんも好き