魔力0だから結婚は無理   作:ヤンデレ大好き星人

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第2話 ギルの魔力

 ギルに婚約者ですって!?

 余計なことを……!

 

 あの風貌からして名家の令嬢だわ。

 

 ああああ!面倒臭い!

 後処理をする私の身にもなってほしいわ。 

 

「お父様、どういうことかしら。ギルに婚約者がいるなんて聞いてないわよ」

 

「い、いや、向こうからぜひにと話があってな。断る理由もないかと……」

 

「はぁ!?理由ならあんでしょうが!あれは私の物よ、勝手に他人に渡すんじゃないわよ」

 

「だが向こうの娘も魔力がないと聞いてな。魔力のないギルにとって、名家との縁談はこれが最後かもしれんだろう」

 

 魔力がないですって?

 馬鹿かこいつは。

 

「なぁにちょろっと騙されてんのよ。あの娘は魔術を使えるわ。しかもかなりの腕ね」

 

 最初にあいつの首を掴んだ時、私は頭に血が上っていた。

 魔術で抵抗されなければ即死だったはず。

 

「そんなはずは……!いったいなんのためにそんな嘘を……」

 

「知らないわよそんなこと。で?どこの家の娘よあれ」

 

「……イスタ家だ」

 

「はぁ!?」

 

 なに言ってんだこいつ。

 

 イスタ家と言えば魔術師の頂点、賢者の家系じゃない。

 

 

 圧倒的強者に対して!

 なんの取引材料もなしに!

 騙されて!

 宝をみすみす渡そうとしたっていうの?

 

 

「あんた本当に馬鹿ね」

 

「な、なんだと!?親に向かって!」

 

「うるさい!当主に口答えすんじゃないわよ!メイジー家という恵まれた血筋に生まれながら、なまけになまけてB級止まり。挙げ句の果てにこんな無能さらして、生きてて恥ずかしくないのぉ?ねぇ!」

 

 おじいさまも、その先代も、ずっとメイジー家はA級魔術師。

 こいつだって才能だけあるのに、頭が悪いせいでこのザマ。

 

「まぁ今あんたに文句言ったって仕方ないわ。イスタ家ともあろう名家が、どうして魔力のないギルにちょっかいかけるのよ」

 

「……分からん。普通なら大事な後継を、魔力を持たない者に渡すとは思えん。当主が許さんだろう」

 

 当主が許さない。

 確かにそうね。

 

「そうよね、そんなこと……ちょっと待って」

 

 まさか……でもありえる?

 いえ、それ以外には考えられない。

 

「現イスタ家の当主は、あのローナとかいう娘ってことになるわね」

 

 そして当主の権限にて、ギルと婚約した。

 

 14歳でS級魔術師。

 とんでもない化け物じゃない。

 

「この!無能がッ!」

 

 バキッ!

 

「うっ……!や、やめてくれ!」

 

「本当は殺してやりたいところだけど、今は一発蹴るだけで勘弁してやるわ」

 

 それよりもギルをこのままの状況にするわけにはいかない。

 

「賢者の家が魔術の才能のないギルを狙う理由……まぁそういうことよね……」

 

 理由は私と同じ。

 当主になってまで手に入れようとする強い執着。

 

 格下相手ならどうにでもなる。

 でも相手は賢者とまで呼ばれる、この国最強の魔術師の名家。

 ひとつ間違えばこっちの立場が危うくなる。

 

 くそがッ!ほんっとうに余計なことを!

 

 

 

 でも問題ないわね。

 なにがあろうとギルを渡さなければいい。

 ギルがどこに居ようと場所を把握できる。そのために空間魔術を習得したのだから。

 

 

~~~~~~~~~~~

 

 

 夜、エリザの部屋に呼び出された。

 

「ねぇギル、お願いがあるのよぉ」

 

「なんだよ」

 

「気持ちいいこと、して欲しいわ」

 

「……マッサージでもすればいいのか?」

 

「はぁ……もうそれでいいわ」

 

 そう言ってエリザはうつ伏せになる。

 

 まさかマッサージで許してくれるとは思わなかった。

 

「んっ……」

 

 そうしてしばらく彼女の背中を指圧する。

 

「下手くそねぇ!」

 

「わ、悪い」

 

「いいわよ別に。もう面倒だからさっさと服脱ぎなさい」

 

「は?」

 

「だーかーらー、気持ちよくしてって言ってんでしょうが。これが一番手っ取り早いわ」

 

 エリザが自分の服に手をかけ脱ごうとする。

 

「待ってくれ。これは流石にまずいだろ」

 

「なぁに?当主である私のお願いが聞けないっていうわけ?」

 

 確かにエリザの命令は断れない。

 だが俺には婚約者がいる。

 

「わかったわよ。じゃあキスで我慢してあげる」

 

「だからそういうのは……って体が動かねぇ……!」

 

「観念しなさい。魔力のないあんたじゃ抵抗できないわよ」

 

 そうしてそのまま唇を奪われる。

 

「んん……チュ……ギル……あははっ、最高ッ!」

 

 そして抵抗できないままベッドに押し倒され上にまたがられた。

 

「おい、キスだけじゃなかったのか」

 

「気が変わったわ。別にいいじゃない。私たちがヤルのは初めてじゃないんだし」

 

「な、なんの話だよ!」

 

「昔の話よ。まだ一緒に寝てた頃だったわね。ギルのをいじってたら硬くなったから、つっこんでみただけ。ああ、そう言えばあなた寝てたわね」

 

「マジかよ……」

 

 2人で寝てた頃って、まだお互い10歳になる前じゃないか。

 

「あの時は痛かったけど、今は平気でしょ」

 

「頼むからやめてくれ!」

 

「あははっ!泣いてるわ。おもしろぉい。そんなに私が嫌?ねぇ!」

 

 違う。お前のことが嫌いとかじゃないんだ。

 

 魔力のない親からは、魔力のない子供が生まれる可能性がある。

 もし魔術の使えない子供しか生まれなかったら、魔術師の名家としてのメイジー家は終わってしまう。

 

「はぁ……ひどい顔。もういいわ。下がりなさい」

 

 部屋を後にしようとする俺に、エリザは言い放つ。

 

「勘違いしないでよね。今日は勘弁してあげるってだけだから」

 

 つまり明日にでも続きを要求されるかもしれないということだ。

 今回は彼女の気まぐれで解放されたが次はわからない。

 すぐにでもこの家を出たほうがいいと考えた。

 

 そして次の日、俺はローナの手配した馬車でこの街を出た。

 

 

~~~~~~~~~~~

 

 

 ギルが消えた。

 

 彼の居場所は魔術で探知していた。それなのに彼が買い出しに出ている最中、突然魔術が遮断された。

 

 ギルの反応が消えた周辺を従者に探させると、すぐに報告があった。

 

「エリザ様、ギル様はイスタ家が手配した馬車に乗ったそうです」

 

「じゃあ行き先はイスタ家ね。居場所がつかめなかったのは、馬車に結界でも張っていたのでしょう」

 

 くそっ、まさかこんな早く動いてくるとは思わなかったわ。

 

「報告はもういいわ。あとはこっちでなんとかするから」

 

 ギルのことを考える。

 

 まさか自分からこの家を出るだなんて……。

 

 昔はこんなんじゃなかった。

 いつも2人一緒にいた。

 

 誕生日には必ずプレゼントをくれた。

 それだって魔力がないと診断されてからはぱったりとやんだ。

 

 部屋の隅(すみ)にある小さなオルゴールを手に取る。

 これもギルからもらったものだ。

 

 もう壊れてしまって音はならないけれど、昔はこの音色をずっと聴いていた。

 

 そして違和感に気づく。

 

「あれ?……このオルゴール」

 

 よく見ると魔石が埋め込まれている。

 まさかと思い、その魔石に魔力を注いでみた。

 

 するとオルゴールは、昔と変わらず静かな音色を奏で始めた。

 

 これって……魔道具!?

 

 ギルは小さな頃から魔術師に憧れていた。

 まさかあの年で魔道具の勉強までしていたなんて……。

 

「あああああ!あああああああああああああああぁぁぁぁッ!」

 

 ギルは魔力を持っている!

 このオルゴールには昔、間違いなく彼の魔力が込められていた。

 

「あいつッ!奪いやがった!ギルの魔力!私との関係も全部!!」

 

 ローナ·イスタとの婚約。

 これはずっと前から仕組まれていた。

 

 ギルの魔力を奪ったのは、私と彼を引き剥がすのが目的。

 

 イスタ家がギルとの縁談を持ち込んだのは、私が魔術学校にいってすぐのことだと聞いた。

 だとするとローナ·イスタは当時12歳。

 その頃の彼女がS級魔術を扱える訳が無い。つまりイスタ家の当主ではなかったはずだ。

 普通に考えればわかることだが、自分が早くにA級魔術を習得したことで失念していた。

 当主ではないローナ·イスタでは魔力のないギルとの結婚など許されるはずがない。

 

 だから最初から疑うべきだった。ギルに魔力があることを。

 

 しかしそれならチャンスはある。

 

 流石にS級魔術師を相手にするのは骨が折れるが、恐らく彼女はまだそこに至ってはいない。

 未熟なうちの彼女なら、私でもなんとかなるはずだ。

 

 

 

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