三女神様は考えました
どうすればウマ娘達の願いを叶えることが出来るのだろうか?
簡単です、ライバルに勝ちたいのなら相手を知ればいい……仲良くなりたいのなら相手を知ればいい
もっと突き詰めれば相手の気持ちが分かればいい……相手がどんな人間が分かればいい
───じゃあ、少しだけ相手のウマ娘生を体験させてあげればいいんだ!
三女神様の優しさは、少しズレた結論を導き出しました。
時間は、少し前に遡る
ウマ娘達の朝は早い
走る事を目的とする彼女達は、その華奢に見える姿とは裏腹に絶え間ない努力と鍛錬によって人間の何倍もの筋力が身に付いている
そしてより早く走りたければ他の誰よりも多く努力することが必須であり、ライバルに負けたくない……レースに勝ちたいと願う彼女達は数多くのトレーニングをこなす
だがウマ娘とて避けては通れないのが来るべき社会人としての備え……つまり勉学である
『優秀なウマ娘たるもの文武両道であるべし』
トレセン学園は単にウマ娘を速く走れるようにする為だけの場ではなく、知識を学び教養を育ませる為の場でもある
当然ながらその為に授業が存在するため、トレーニング一辺倒な生活を送ることは不可能
そこで、ライバルに差をつけたいと願うならば、早朝等に時間を見つけて少しでも多くトレーニングを挟む必要がある
「…………ん…………っ、朝ね……」
彼女……ダイワスカーレットも、例に漏れずライバルである『ウオッカ』に勝ちたいからこそ早朝からのトレーニングをトレーナーに要求したウマ娘
寝惚けてぼやける視界を目を擦ってハッキリとさせ、今日もトレーニングに励もうと洗顔を行うために洗面台に向かおうとした彼女は
「…………?」
ふと違和感に気が付いた
先ず、普段ならば自分の枕元でけたたましくアラームを鳴らす筈のスマホが見当たらない
それどころかそれが、反対側のベッドから聞こえてくるのだ
違和感はそれだけに留まらない
周りを見渡せば、自身のすぐ側の壁に立てかけらているのはバイクの写真が背景に使われているカレンダー
位置取りがおかしい、何故自分は普段とは逆の……つまりウオッカのベットで寝ているのか?
そして、その本来なら自分のベッドで寝ている相手は誰なのか?
ダイワスカーレットはすぐさま結論を出した
冷静に考えればその相手はウオッカでなければならず、たまたま!偶然!何かしらの寝相で!位置が入れ替わってしまったのだろう
全くしょうがないんだから……と、僅かに浮かんでいる嫌な可能性を頭の片隅に追いやり逃げるように洗面台へと向かおうとする
だが
「……んだようっせぇなぁ…………あれ、アラームなんか付けたっけ……?」
モゾモゾとそのアラームにより目を覚ましたベッドの中の相手……『ダイワスカーレット』は、付けた覚えのないアラームから違和感を覚え起きあがる
「……ぁ……え、ぁ……」
よく聞き覚えのある声、顔、髪……鏡がある訳でもないのに目の前で動く自分の姿を見て、『ウオッカ』は唖然とした表情で立ち竦む
「……ん?………………!?」
『ダイワスカーレット』も意識がはっきりしてくると、目の前の『ウオッカ』に気付き何度も目を擦る
すぐさま身体を見下ろそうとすると、昨日までは無かったその大きな胸に視界を阻まれる
それを触って夢ではないことを確かめると、首をギギギと動かしながら『ウオッカ』に向き合う
『ウオッカ』もまた、『ダイワスカーレット』と向き合って
「「……入れ替わってるーっ!?!?」」
ウマ娘の朝は早い
そしてこの日、この台詞がトレセン学園中に響き渡ったのは言うまでもない
誤字報告大変感謝致します