Jホラー界不動のヒロインにTS転生してしまったらしい 作:peve
注意点があります。
この小説は、『リング』シリーズの二次創作です。
シリーズのいろんなところからネタを引っ張ってくるので、設定が混ざっている部分があります。
ホラーにもSFにもならない、きらら系みたいなお話にしていきたいと思っています。
この小説を読んでも、脳や生殖器にウイルスが侵入することはありません。
作者は小説を書くのが数年ぶりで、唐突に思い立って貞子の小説を作り始めましたが、この小説を読んだことにより心筋梗塞が起きることはありません。
あなたは水中の死体に見覚えはありませんし、仕事ばかりで気が狂ってもいません。いいですね?
都会から距離のある、寂れた港町。
高度経済成長期に取り残されたような、子どもが少なく、老人が多い田舎で、潮風に吹かれながら私は育った。
私の母も、あまり姿を見せない父も、変わった人だった。
まず、母である。
母は、一言で言うと、超能力者だった。
母の能力は、世の中に数多くいるという超能力者の中でも強い部類に入るそうで、特に透視、未来視といった、視覚に関する能力が際立って強かったらしい。
らしい、というのは、母はもう、一切の能力を使う気はないからで、この田舎町に越してきてからは、普通の母親以外のなにものでもない女性として、振る舞っているから。
せいぜいが家の中で、誰にも見られていないところで、お転婆な私を叱るために私の能力と拮抗しようとするときくらいである。
次に、父である。
本土の大学で先生をしている父は、あまりこの家には帰ってこない。
父は超能力者の研究をしている。
非科学的な領域の研究だというので、父を非難したり、蔑んだりする者も多いと聞く。父はそんな愚痴を私達にこぼすことはないし、私達も口に出して指摘したりはしないけど。
父の研究は、以前は超能力の実証を目的としていた。
しかし、私が起こしたある出来事──事件というべきか──以来方向転換したらしく、今は超能力者と一般社会の和合、多様性が認められる社会といった、もうそれ研究というより活動家のやることじゃないの、と首を傾げてしまうような内容で論文を書いているらしい。
まあ、父は真心から母、そして私の安心を望んでくれているようだから、私は父を大好きでいられるのだが。
そして、その二人の
私は──私のことを一言でまとめるのは、とても難しい。
まず私は、超能力者だ。
超能力少女である。
生まれるのが30年早かった気もするが。うん。
実のところ、私は母よりもずっと強力な超能力者だ。
基本的に視ること──あれはどちらかといえば測り、識る能力だと私は思うのだが──しか出来ない、しない母と比べると、私は視ることは勿論、干渉する能力が大きく発達している。
つまり、母から受け継いだ透視、未来視に加えて、念動力が使えるESP少女なのである。
自分の能力に気付いたときこそ、先々の人生とその末路におびえてしまって仕方がなかったけど、人間は慣れるいきもの。
ひとつ、ふたつとできることを確かめていって、はや数年。今では空中の蝿を正確に止めるほど精密な念動が可能な能力者となった。
次に、私は小学生である。
なんのへんてつもないふつうのしょうがくさんねんせいである。
普通の、と胸張って言えるようになるまで、私は頑張った。とても頑張った。
なにしろ本来の私と来たら、長い髪を下ろしていつもうつむきがちで、他人と違う能力があることでいつも遠巻きにされていたような女の子なのだ。
こんな狭い町で変わり者としてひそひそされているんだから、都会に出たいなんて思っちゃうんだよね。
だから私は、小学校に入る前に、イメチェン大作戦を決行したのだ。
長い黒髪は艶をそのままポニーテールに。
横髪を漉いて前髪を整え。
真っ白なワンピースは箪笥に仕舞って勝負着に。
そうやって私は、自らのパブリックイメージを粉々にしようとしたのだった。
結果は、それなりに成功、といったところ。
あの学者さんと出戻りの家の娘か、くらいの視線を感じることはあっても、嫌悪や恐怖の感情がそこに乗っていることは少ない。
町の人からは、ちょっと変わった家に住んでいる娘っこ、程度の認識をしてもらえている。
友達だっているんだ。驚いていいんだぞ本来の私。
最後に──私は、いわゆる転生者である。
転生前の自分は社会人なりたての、どこにでもいるような男だった。ホラー映画が好きで、特にジャパニーズホラーは有名どころを繰り返し視聴していたほどだ。
だからというべきか、物心がつくとともに転生前の知識を思い出した時、自分が誰に──いや、何に転生してしまったのか。すぐに気が付くことができた。
誰が思う?
まさか自分が、あの『山村貞子』に転生してしまうだなんて。
性自認がどっちになるかとか、よくよく考えるとTSじゃなくね?とか、そんなことよりまず、しばらく鏡を見ることができなくなったね。
気付いたときにはまだ、母親が精神を病む前だったから、あの雰囲気がやっばい楕円の鏡の部屋は無かったのが救いだった。
それでも、母の部屋の姿見で自分の姿を確かめてみて、あ、こりゃあかん、と大いに納得をした。
前髪を垂らすなんて恐ろしくて出来なかったし、鏡の自分と目を合わせることも出来なかった。
ほんのひと桁幼女の頃から、なんというかこう、凄みがあるんだよ。
これは表情固くしてれば怖がられるなあって感じ。
笑顔の練習を始めたのは、その後からだったな。これは未だに全然、うまくいかないんだけど。表情筋が固いんだろうか。幼女なのに。
転生前の記憶によると、私──山村貞子は、悲劇的な人生の果てに呪いを撒き散らす怨霊と化した、和製ホラーの代表たる怨霊である。
その人生や結末、正体にあたるものは媒体によって様々だが、井戸に落とされて死に、視聴すると7日後──都合により3日だったりもする──を目安に死に至るビデオテープを生み出す存在であることは概ね共通している。
私、貞子の念写能力は、呪いのビデオテープくらいは確かに作れるだろうなーと思う程度にははっきりと強い。
母にねだって買い与えてもらったビデオテープに、前世で見てた某魔法少女アニメを記憶頼りで念写してみると、謎の圧縮技術によって全編ノーカット、ただしメインの声優全部かな○みか、みたいな感じで仕上がったくらいだ。さすがにオーパーツすぎるので念力で砕いて海に捨てた。
ちなみに某蝙蝠男映画を連続念写してたら2本目の念写中に鼻血が止まらなくなった。日本語じゃないとか、特殊効果が多いと体力をごっそり持っていかれるらしい。解せぬ。
だけど、念写が出来ることを確かめたからって、私はなにも嬉しくはない。そうじゃない。
私は貞子!と自覚して以来、私が一番怖かったのは『貞子』である自分自身だったのは間違いない。
最初はもう、見た目からして怖かった。能力だって、怨霊になることが運命付けられているような気がして、そうじゃないんだと思いたくて能力の把握に励んだ。
でも、結局それは個性なんだなって、今の私は思っている。
個性だから受け入れていいし、個性だからこそ変えられる。取り繕える。
第一次性徴期を迎え始める私は、定期的にある確認をしている。
私の身体の、他人には見せることのないとある部分によって、私の今後の運命をある程度見定めることがてきるんじゃないかと思うのだ。
前世で見た怨霊の貞子は、映像化されるたびにその設定が異なっている部分があった。
一番根底にある、大きな設定の変更点が、私の身体の性についてなのだ。
その疾患があるかどうか。
あるのであれば、その部分が体の外から見える状態になっているか。
おそらくはそれによって、貞子の予定されている運命が違ってくるはずなのだ。
つまり、死に様。
そして、誰に殺されるか。
どこで殺されるか。
何を怨み、何を欲して呪うのか。
悲しいのか。
怒りか。
渇望か。
本能か。
そうした、いわば怨霊としての貞子の性質を決定づける何もかもが。
それを把握さえできれば、敵がわかる。
貞子の人生を終わらせようとする敵を予測できる。
ならば。
その敵になりうる者と、死ぬときに近い状況を避け続ければ、日本の知名度ナンバーワン怨霊内定の貞子ちゃんでも、人並みに人生を送ることくらいは、なんとかできるんじゃないか。
そう思うのだ。
だから、現小学三年生、4月からは四年生になる山村貞子9さいの人生の目標は。
私の享年である17歳だか19歳だか──これも媒体によって違う──を越えて生き延びること。
何よりも、井戸に落とされて7日間だか30年間だか──後者だとあまりに辛すぎて本気で嫌だ──死に損なって苦しむような死に方をしたくはない、ということである。
都会に憧れ、その優れた容姿を武器に華やかな劇団女優を目指した本来の私には悪いけれども。
私は、齢ひと桁にして、田舎にこもってスローライフを送ることを決意している。
その目標のためならば、邪魔するものは全部、私に備わった超能力で海の藻屑に変えてやるんだ!!
浜辺で水遊びをしながら考え事をしていた私は、びしいっとポーズを決めたところで近所のおじさんに呼び止められた。
「水遊びばかりしてると、ばけもんがくるぞ」
うん、私の敵は、どうやらそっちにもいるらしい。
とりあえず、決めポーズを見られてしまった恥ずかしさと格闘しながら、私は素直に水から上がるのだった。
初投稿、大好きな原作ということで、感触がとても気になります。
よかったら、評価、そして感想、ご意見をぜひ、よろしくおねがいします。
原作ネタに注釈はあったほうがいい?(展開に関わらない範囲で)
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