Jホラー界不動のヒロインにTS転生してしまったらしい 作:peve
注意点があります。
本話は、直接的でない性に関する描写を含みます。
また、今更になりますが、本作品は映画『リング』『らせん』『リング2』『リング0 -バースデイ-』、小説『リング』『らせん』『バースデイ』、『レモンハート』等短編集、『ループ』『エス』『タイド』のネタバレを含む可能性があります。
ただし、作中における主人公の知識にある同名の作品が、現実における作品群と同一の内容であるのかは、保証できかねるところではありますが。
ざあざあ、と。
シャワーの音がお風呂場に反響している。
お互い無言なのは、奈緒子が湯舟を出て髪を流しているから。
暑がりの奈緒子は、長い時間お湯に浸かっていたがらない。
ぬるめの水風呂になら何時間でも浸かっていられるらしい。
私より井戸適正高いじゃんって思った。
後で一緒に浸かって100数えてあげないとなあ、などと
妹のそこを見つめるのは、お風呂に入るときの日課になりつつある。
別に私は妹のお秘所に興奮する変態ではない。
そういうことではないが──意図はあるのだ。
奈緒子は貞子の双子の妹。
だったら、貞子と
……洗いっこにかこつけて、おなかからお尻にかけて、何か
その時はお風呂まで様子を見に来たお母さんに見つかった。
二度としない。
あんなに怒ったお母さんは初めて見た。
残念ながら当然だった。
当の奈緒子が、自分がちょっと微妙なこと(おぶらーとばりばり)をされているのを全然わかっていなかったのでなおさらだった。
睾丸性女性化症候群。
半陰陽者。
原作小説において、貞子の人生の末期から死後にかけて、大きな影響を与えた身体的特徴。
前世の私の守備範囲は大体が映画で、小説の設定はなんとなくネットで見聞きした程度ではあるのだが、小説世界における山村貞子という人物を語る上で、この性分化疾患は外すことのできないファクターといえるだろう。
それほど、あまりにも有名な話である。
彼女の──あえて彼女と呼ぶが──怨霊としての性質は、複製、伝播が主たるものとされた。
言い換えれば、貞子という怨霊の目的は、自己複製──生殖である。
『リング』の物語としての面白さ、ホラーとして生理的嫌悪感を引き起こす要因は、非生物的領域の存在である死霊が、生物的領域の活動を目的として存在する『越境』にある。と、
一度堰を切ってしまえば、それは止まらず、どこまでも、あるいはまさに今作品を見ている自分のところまで溢れ出てくるのではないか──
このような非論理的な想像を掻き立てるような『越境』。
映画でやった『越境』は違うんだけど。
貞子といえばのアレである。
転生者私、もちろん試したけど未だに出来る兆しのかけらもない。
井戸落ちしないと出来ないんじゃないだろうか。
だったら一生出来なくていいんだけども。
テレビを媒介にした転移とか、テレビがいっぱい置いてあって動ける範囲が決まった環境で鬼ごっこでもするような状況じゃなきゃ使いどころなさそうだし。
話を戻すと。
呪いを振りまく怨霊・貞子の、大本の性質は自己複製である。
ただし、怨霊となるまでの人生──ルートによって、その成り立ちは少しずつ違っている。
例えば。
『らせん』――貞子復活ルート、からの人類総貞子化計画──では、絶滅に瀕した天然痘ウイルスと、半陰陽ゆえに子宮を持たない貞子の、子を成すことなく死にゆく理不尽に対する本能の抵抗。
『バースデイ』──映画で語られた前日譚だ──では、人々による迫害という理不尽に対する無念と、
この二つを分かつ相違点といえば、というところで、うん。
長い言い訳になったけれども。
私が自分と妹のおまたを頻繁に確認する理由というのはつまり。
貞子の身体の性が井戸落ち回避にどのように影響するかといった話なのだった。
真面目な話をすると、やはり体と心の性の不一致というのは思春期になってから悩むこともあるだろうし。
それと、私が最も恐れている可能性は──いや、これは私が思う一番厭な想像に過ぎない。忘れよう。
実際どうなのかというと今はまだわからない。
自分も妹もその部分はつるりとしたもので、前世で見知ったようなパーツはその片鱗も見受けられない。
このまま成長できれば、東京と箱根に絶対行かないようにするだけでいいかもしれないんだけどなあ。
なんとなく気まずい気持ちになって、お湯をぱちゃぱちゃしていると、水面を通してびりびりとした感覚。
顔を上げると、奈緒子がんーっ!という顔をして唇をとんがらせている。
これはあれだな。
あわあわなお湯が目に入ったな。
急いで湯舟から体を起こして、シャワーの水を手のひらに溜めて目元を流していく。
「ぶぶぶ」
「痛くないー?」
「んー、んー」
あわを流して、ぱちくり。
ほどけたような笑顔は、ふたりきりのときにだけよく見せてくれる。
「だいじょうぶ、ありがと、おねえちゃん」
「ん。髪流しちゃうから、終わったら交代ね」
「あいー」
目を閉じて足をぱちゃぱちゃやっている妹は、本当に年齢相応って感じで可愛い。
弟──りゅーくんも可愛いけど、あれは逆に、こども離れしたかしこさ、利発さが可愛いポイント(姉目線)なので別ジャンル。
同じ顔でも、私にはこの感じは出せないんだろうな。
そう考えると、案外この子、根っこから妹属性だったのかな。
とりとめもないことを思いながらも、手先は丁寧に。
長い髪を絡ませずにすすいでいくのは、ちょっとコツが要る。
もちろん、あっちに住んでいる間は奈緒子が自分で流していたはずだから、ひとりでも出来るのはわかってるんだけど。
頭に触れる力加減が変わるたびにむにむにと変わる妹の表情が見たくてやっているようなものだ。
可愛いんだもの。
「はい、おしまーい。お風呂、100まで数えるからね」
ざぱーっとお湯をかけて、照れ隠しに私は妹の嫌がることを言った。
そんな私の心の動きは簡単に読み取られてしまっていて、妹はにへらっと笑って、「やだー」と答えるのだった。
後から考えると、この頃の私は、相当のんきに浮かれていた。
正気の母。娘思いの父。可愛い妹。生意気な弟。
本当ならば失われていたはずのその全てが、何の無理もなく存在していることの意味と、知らぬ間に払われていた誰かの献身を。
次回、弟のはなし
初投稿、大好きな原作ということで、感触がとても気になります。
よかったら、評価、そして感想、ご意見をぜひ、よろしくおねがいします。
精巣性女性化症候群は実在する疾患です。
検索すれば誰でも、例えばwikipediaの性分化疾患の解説記事や、具体的症例に基づいた写真付きの学術論文などに辿り着くことができるでしょう。
疾患として確立された時期は、山村貞子の設定上の少女期にあたります。
ここに関して筆者から解釈をすることは避けます。
結果的とはいえ、鈴木光司氏は時代を先取りしていてすごいですね(こなみかん)
原作ネタに注釈はあったほうがいい?(展開に関わらない範囲で)
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