デート・ア・ライブ~真理亜デストラクション~   作:Kyontyu

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そういえばこの小説のタイトルの真理亜、漢字は違いますがデート・ア・ライブのゲームに出てくる或守、でしたっけ。その人と名前が同じなんですが、その人とは全く関係が無いことを前書きで言っておきます。


雨の日
第一話


「来訪者と少年」

 

 艦内に大きな警報が響く。髪をセミロングにした女性――わたしが叫ぶ。

「アジン! 〈ハイウェイ〉まであとどれくらい!?」

『あと二十光秒先です』

 人工知能はそう絶望的な数字を淡々と伝え、わたしは悲鳴交じりの叫び声を上げる。

「あぁもう! 全然足りないじゃない! どうするんですか、アマテラスさん!」

「あ~、でもぉ~、どうしようかなぁ~」

 アマテラスと呼ばれた『女神』――目が細く、左目の下に涙ぼくろがある。長い黒髪は腰まである――はそうゆっくり考えるように呟いた。

 女性は操縦桿を握りながら後ろを向く。

「どいつもこいつも……アジン! 侵食ゴースト搭載ナノミサイル装填! 目標、後方の刺突艇(ブレードシップ)!」

『了解、ナノミサイル装填』

「あ、でも待ってエミちゃん、こっちとあっちの速度変化率(デルタV)が違いすぎるから撃っても浸食しきる前に追いつかれちゃうわよ」

 エミと呼ばれたわたしは「ちっ」と舌うちした。

「じゃあどうすればいいんですかッ!」

 アマテラスは少し微笑んで「こうするの」と肘掛のスイッチを押した。

 するとアジン=船の側面から簡易フラクタル・エネルギーが詰まったミサイルが具現化し、後方にあった近くの小惑星に向かって放たれ、爆発した。

 爆発した小惑星はガンマ線とエキゾチック重粒子(バリオン)を撒き散らし、小惑星は大きな光のシャワーを吹き出し始めた。

 アジン=船はそこで発生した粒子嵐を受けとめようと宇宙帆を出来る限り広げる。

 粒子嵐を満帆に受けたアジン=船は急激に加速し、それで発生したGにより、船が軋みという悲鳴をあげる。その瞬間、わたしの意識はふっ、と落ちた。

 

 わたしは徐に目を開けながら拡張大脳皮質(メタコルテックス)に問いかけて身体をスキャンした。幸いな事に身体には目立った外傷は見当たらず、偽神(アルコーン)共の精神汚染もされていなかった。

 追撃もないということは無事、〈ハイウェイ〉に乗れた、ということなのだろう。

「はぁ~助かった~」

 わたしは座席にもたれかかり、大きく溜息をついた。

「それにしてはいつのまにかにあんなものを作っていたとは……『女神』、侮りがたし」

 アマテラスは座席から立ち上がりわたしの顔を覗き込んだ。

「あ、そうそう、エミちゃん。さっき私のコピー元(マザー)からミッションの通達が来たんだけど……受ける?」

「受けるしかないんでしょう? その為にわたし達、宇宙騎士が存在するんですから。全『女神』に忠誠を誓う存在……それがわたし達の存在する意義ですから」

 アマテラスは「当り~」と言いながら微笑んだ。

 

「で、だからって新しい身体(アバター)使う必要あります?」

 わたしは髪を肩程まで伸ばし、少々あどけなさが残っている顔を自分の個室の鏡で見ながらそう言った。さっき合成(ファブ)されたばっかりなので服は着ていない。

 新しい身体(アバター)は先ほどの自分より背が小さいので立っていると妙な違和感が脳内をちらつく。

 正直、気持ち悪い。

 年齢的には地球年でいう十五、六歳ほどでどこか微妙に自分に似ている。

(まぁそこが気持ち悪く思う大部分なのだけれど)

「どう? 若返った気分?」

 そこにアマテラスが入って来てそう言った。

「若返りほど、嫌な気分する物はありませんよ」

 わたしは鼻を鳴らして皮肉交じりに言った。

「あらあら、そんなことを全生物の前で言ったらあなた、きっと殺されるわよ」

 わたしは鏡を見ながら、両手両足と胸部を分厚い鎧が覆い、腰と両肩には複雑な幾何学模様が彫刻されたアーマーを付けており、腰まわりは動きを阻害しないように柔軟な素材が用いられている黒いqスーツ――全ての物質になる事ができる人工原子を用いた戦闘服――を着装する。そのqスーツは大昔に使われていた東洋の戦士の鎧のようだった。

(きっとこれをデザインした人はよっぽどオールド・アースが好きなんだな)

「まぁ、死ねるなら本望ですよ。不死の精神なんて、欲しくて手に入れた訳でもないですし」

 その時脳裏に思い出されたのは『エデン』から抜け出した事、体を与えられて過ごした数年間、その後、この『女神』に拾われた事……不死の精神はその際の代償、すなわち『罪』だった。例え肉体が滅んでもこの精神だけは量子状態として肉体に保存され続ける。

「考えるだけでも反吐がでるわね」

 わたしは髪を後ろに纏め、バレッタで止めた。

「よし、こんなもんかなっと……で、別次元にいくんですよね。荒ぶる『女神』を止める為に」

「ええ」

 アマテラスは微笑んだ。

 わたしはこの人は良く笑う人なんだな、とつくづく思った。

 わたしは部屋を出て転送室に向かう。ここには量子次元トランスポーター(QDT)がある。原理的にはどこでもドアと似ている――次元を超えるのを別にすれば。

 わたしは量子次元トランスポーター(QDT)の槽に入った。周りを粘菌のような組換可能物質(プログラマブル・マター)の糸が覆う。そばにはアマテラスが立っていた。

「スノォに、よろしく言っておいて下さい」

 アマテラスが頷いた後、わたしはゆっくりと目を閉じた。

 

 目を覚ますと見知らぬ街――ではなく、クレーターのような場所に自分が立っていることに気づいた。

 最近雨が降ったようで地面には水たまりが点々と存在しているが、人影らしきものは確認できない。

「えっ……何、ここ」

 わたしはあたりを見渡すとわたしを中心にしてぽっかりと空間が削がれたようにクレーターが形成されているようだ。とりあえず拡張大脳皮質(メタコルテックス)の拡張知覚をオンにしようとした瞬間、何かの接近を確認し、その場から少し離れた。するとさっきまで立っていた場所に小さな孔が空いた。

(これは……銃弾……?)

 わたしは情報素景(スパイムスケープ)を開いてみると落ちて来た物体のデジタル情報がポップアップされていた。

(しかもただの銃弾ではなさそうね……微弱だけど物体を分解(ディアセンブリ)させる作用をもったゴーストが内抱されているみたいだし。でもこの技術はまだまだ幼稚なものね)

 すると拡張知覚が何かに囲まれていると告げる。わたしは上を見渡す。そこには非常に薄いが戦闘用機能性霧(ユーリティリー・フォグ)を纏った女性が数十人の女性が浮かんでいた。しかも全員がこちらに原始的な銃を向けている。

「なかなか手厚い歓迎、どうも」

 わたしは両腰から超振動する分子の刃を持った刀を引き抜いた。そして同時に自分の周りに戦闘用機能性霧(ユーリティリー・フォグ)を纏わせる。この機能性霧(ユーリティリー・フォグ)が放つこの独特なイオン臭を嗅いで自分の気分が高揚するのが分かる。

 わたしが飛び上がると同時に相手は銃弾を雨あられと撒き散らすも、わたしは拡張大脳皮質(メタコルテックス)の機能を使って主観的加速時間(クイック・タイム)に入ったわたしには止まっているようにしか見えない。ゆっくりと銃弾の隙を抜け、敵の原始的機械を切り刻む。切り刻まれた機械はすぐには分解せず、その場にとどまる。

 そして地面に降り立ち、刀を納めると同時に主観的加速時間(クイック・タイム)から抜けた。胸部と両腿のラジエーターが排熱した。襲ってきた女性たちは翼を失った鳥のようにバタバタと地面に落下した。

(まぁ、あれぐらいなら落ちても死なないだろう。それよりも、さっきのクレーターの謎を究明しなきゃならないしね)

 そこで自分の格好がかなり異質なことに気づいた。

 

「まぁ、とりあえず、これで一般人にはなれただろう」

 わたしは先ほどの戦闘があったところの近くにあった服の専門店らしきところから服装を一式拝借した。(お金は携帯型合成機(ファバー)で作った)

 服は黄緑色のワンピースと長めのゆったりしたスカート。偽装は完璧だ。誰にも怪しまれることは無い。qスーツは不可視の霧として依然としてわたしのまわりに漂っている。

 わたしは先ほどの女性たちが救急隊員らしき人々に搬送されたのを確認するといそいでクレーターの情報処理を始めた。網膜に直接表示される大量の情報はささやかな頭痛をもたらしたが、今は苦ではない。

(どうやらこの世界に変換されるときに一定範囲内に反物質(アンチ・マター)をばら撒いてしまったらしいわね。しかも街のど真ん中、あの人達に顔を覚えられてなければいいけど)

 そうして検分を続けていると後ろから少年らしき声が聞こえた。

「………?」

 何を言っているのかはよく聞き取れなかったが、とりあえずわたしはその少年にいろいろ訊く事にした。

「おお! いい所に来た少年! とりあえずここは何処なのか訊きたいのだけど……ここはどこ?」

 しかし、少年から発せられた控え目な言葉にわたしは完全に虚を突かれた。

「お、俺と、デートしないか?」

「は、はぁ!?」

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