デート・ア・ライブ~真理亜デストラクション~   作:Kyontyu

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第二話

「少女と力」

 

「はぁっ!? あんた頭大丈夫か?」

「お、俺はいたって本気だ」

「あやしい……」わたしは腕を組んで少年を睨む。

「そもそもなんでわたしがあんたとデートしなきゃならないのよ!」

 少年は少したじろぐ。

「な、なんでって言っても……」

「言えないの?」 

 わたしはずいずいっと少年に寄った。少年の頬が少しばかり上気しているのが分かる。

(照れちゃって……馬鹿らしい)

「お前は精霊なんだろう? だからお前の力を封印する為に……」

 少年の言葉をわたしは鼻で笑う。

「はん。なんであんたに力を封印されなきゃならんのよ。それにわたしは精霊なんていうファンタジーに出てきそうな生き物になった覚えも無い!」

「だって、お前はこの世界の災厄で、封印しないとお前が狙われるんだぞ!」

 少年は叫ぶように必死な様子でそう言ったが、わたしはその言葉に眉をハの字しただけだった。

「狙われる? ああ、さっきの原始的機械を纏った女性達ね。あんなのへでもないわ」

 その時、わたしの拡張知覚が通知を送って来た。内容は『量子テクノロジーの所持の可能性アリ』とのことだった。拡張大脳皮質(メタコルテックス)を使って網膜にフィルターをかけるとなんと少年の身体の皮膚の下にはqドット・ネットワークの海が広がっていた。

「なっ! あんた一体……」

 わたしは大きく目を見開いた。

「俺の名前は、五河士道。君の名前は?」

 わたしはこの問いに答えるかどうか少し迷ったが、答えておくことにした。

「わたしの名前は 黒輝 美恵だ」

 

 わたしは近くのデパートに連れて来られていた。今はフードコートで休憩している。外は先ほどから降り始めた雨が窓ガラスの音が聞こえていた。

(まぁ、士道の情報も調べなければならなかったし、しょうがないと言えばしょうがないのだろうか)

「士道、そういえばここは電波状況が悪いのか?」

「ん? 電波?」

 わたしは手を横に薙いだ。

「ああいや、分からないならいいんだ」

(ん~さっきから量子テレポーテーション・チャンネルが開かないんだけど、故障かな?)

「んで、君は『精霊』の力の封印をデートする事によって、行っていると。しかも、キスで封印とはねぇ」

 先ほど士道に教えてもらった情報を整理しつつ、わたしはニヤニヤと笑いながら士道でもてあそぶようにして言った。

「ま、まぁ、そうだけど……」

 士道は少し申し訳なさそうに俯いた。

(士道、中々遊びがいがあるなぁ)

「ま、わたしについては封印は不要だ。わたしは勝手に暴走しないし、この世界を壊そうとしている訳でもない。わたしはちょっとした使命(タスク)を帯びてこの世界に来たんだ。ちなみに空間震……だっけ? それについてもあれは完全に事故だ」

「使命(タスク)?」

「ああ、わたしはこの世界に来ている『女神』――君達で言う所の『精霊』を探しにきたんだ」

 そして探している対象の共有記憶を差し出そうとしたが、相手はこちらの情報を受け取れるぐらいに脳の機能が発達していなかった為、送ることが出来なかった。

「と、いうわけで、わたしと士道でちょっとした同盟を結ばないか?」

「同、盟……」

 士道ははぁ、といった感じで頷いた。

「そう、同盟。まず一つ、士道はわたしを封印しない。もしこの力が封印されてしまったらわたしは元の世界に帰れないからね。そして二つ、わたしは自分の能力を使って士道が他の精霊を封印するのを手伝し、脅威からも守ってやる。それでどうかな? 利害は一致していると思うけど」

 士道はしばらく考えるしぐさをして、首肯した。

「分かった。その同盟、結ぼう」

 士道は何かを決意したような目で手を差し出した。

「ああ。よろしく」わたしはその手を握り返した。

「それよりも、君の後援者の所に連れて行ってくれないか。士道」

 

「まぁそれにしても、よくここに入れてくれたなぁ。君の司令官殿は」

 デパートの外に出たわたし達は一瞬の浮遊感の後、この空間に転送された。士道が言うには『艦』とのことだがアジン程高性能という訳でもなさそうだった。

「まぁ、琴音も話したがってたようだし、ちょうどよかったんじゃないかな」

「司令官は君とかなり親しい間柄とみた。一体どんな関係なのかな~?」

 すると士道は当然といった表情で「俺の妹だ」と言ったので、わたしは鼻で笑い飛ばした。

 ドアをくぐるとそこには十人くらいの男女がそれぞれ自分のデスクで何やら解析などをしているようだった。

 すると突然右上の方にあった椅子がクルッと回転し、赤い髪を伸ばした中学生ぐらいの女の子がこっちに向いた。口には棒付きキャンディーの物と思われる棒が飛び出していた。

 どうやら彼女が司令官のようだ。

「司令官殿、わたしの名前は黒輝恵美と申します。以後、お見知り置きを」

 わたしはそういって礼儀正しくお辞儀をした。

「ねぇ、あんた、ほんとは精霊なんでしょ」

「え?」

 司令官はじとっとした目でこちらを睨みつける。

「ねぇ、どうなの?」

 司令官殿は少しご機嫌斜めのようだった。

 わたしは先ほどと同じように網膜にフィルターを掛けて少女をみると、qビットのネットワークが見える。今までの情報をまとめると恐らく……わたしのような量子テクノロジーを身体に宿す者を『精霊』とするなら……成る程、彼女も『精霊』なのか。

「いいや、違いますよ。信じてもらえないかもしれませんが、わたしは別の次元からやってきたんですよ」

 そこにいる全員が一気にこちらを向いた。その目はどれも「この人、やばい人だ……」と言っている。目は口ほどに物を言うとは正にこのこと。

「な、なんですか……そんな顔しなくてもいいじゃないですか。こっちはいたって本気なんですよ!」

 それでも沈黙は止まない。わたしはどうやら感情的になりやすいようだ。頭に血が上る。

「なら証拠を見せてやりますよ!」

 そしてわたしは人差し指の先から直径が原子一個分くらいの光ファイバー・テンドリルを伸ばし、艦内の制御システムに侵入した。原始的で単純なファイアウォールはコンマ一秒で変わる攻撃を防ぐことができず、すぐにシステムの中枢に到達、全ての機能のコントロールを得た。ここまで、約一秒。この世界の機械にしてはよく耐えたが、結局それほどの技術力だった。

「どうです? なんなら今すぐにでもこの艦の情報を――」

「全員! そいつを拘束!」

「え!? ちょ……まっ……」

 そのままわたしは一糸乱れぬ訓練された動きで動く職員に取り押さえられ、簀巻きにされた。しかも軍用レベルの機能性霧(ユーリティリー・フォグ)で押さえられてしまった。

 

「……悪かったわね……いろいろ」わたしはふてくされながら言った。

「っていうか! これをさっさと外しなさいよ!」

 胴体と両手両足は椅子に固定されたまま身体を揺らした。しかしどうにも動く気配がない、さらにわたしの身体は機能性霧(ユーリティリー・フォグ)で押さえられたままだった。

「それはできない。とりあえず君は何者なのかということを解明できないかぎり」

 目の前の白衣をまとった女性は少し気だるそうにそう言った。しかも目の下の隈がすごい。ろくに寝ていないのではないだろうか。

「だーかーらー、さっきから言ってるじゃない! わたしは精霊なんかじゃなくて別の次元から使命を帯びてこの世界に来たの!」

 しかし、女性はそれを聞いていないように人差し指を立てた。「それでは一つ目の質問。君は人間か?」

 わたしは思わず言葉が詰まる。

「わたしは人間……じゃないかもしれないけど……それに近い存在です。ハイ」

 女性は頷いた。

「それでは次の質問、君の前いた世界はどんな所?」

「あ~そうですね~。たとえば惑星サイズのコンピューターがあったり、自分の精神を量子化したりできるところです」

 さすがにそれは女性の予想を遥かに超えていたようで、しばらくのあいだ「開いた口も塞がらない」といった状態になっていた。

「まぁしばらくシンの家で様子を見るとしよう」

「シン? 誰ですかそれ」

 女性はこちらをちらりと見たあと、目を背ける。

「……直にわかるさ」

(嫌な予感しかしない……)

 

 連れて来られた家の表札には「五河」と書いてあった。少し肌寒く、まわりは既に暗くなっていた。

(予想していなかった訳ではないけど……さすがに厳しいな)

「令音さん……やっぱり俺の家じゃなきゃダメですか?」

 隣にいる士道がそう言った。

「駄目だ。精霊マンションはまだ完成していないし、〈フラクシナス〉ではさっきのように何をされるか分からないからな」

(え……わたしってそんなに信用が無いの……?)

 こうしてわたしの奇妙な使命の一日目が終了した。

 

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