デート・ア・ライブ~真理亜デストラクション~   作:Kyontyu

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第四話

「来訪者と精霊」

 

 わたしは目を開けた。が、目の前は依然として真っ暗だ。目の上には何だかぷにぷにと柔らかい物の感触。それを掴み、払いのける。

 見慣れない白い天井、下と思われる方向には重力が働いている。

 わたしは起き上がり、周囲を見渡した。左隣には『精霊』――夜刀神十香が凄い態勢で横たわっていた。どうやらわたしが払いのけたのは彼女の足らしい。

 拡張大脳皮質(メタコルテックス)が起動し、すぐにわたしの生体感応をチェックし始める。それと同時に頭が覚醒し始めた。とりあえずわたしは昨日の情報を整理し始めた。

・この世界には『精霊』と呼ばれる生命体が存在する。彼らの基準から言えばわたしも『精霊』。しかし、そんなメルヘンな名前の存在になった覚えはないから、『精霊』はわたし達と同じく量子の力を内包する存在ということが推測できる。また、『精霊』を狙う存在もいる。

・『精霊』の力を封印することが出来る唯一の人間が『五河士道』。彼は『キス』を介して『精霊』と接触することによりその力を封印することが可能。わたしの力も封印される恐れがあるので、どんなことがあってもキスはしない。っていうかやってたまるか。

・昨夜、『精霊』保護団体らしき組織とも接触した。彼らは士道の力を使い、『精霊』の力を無効化し、自分たちで保護しているようだ。隣で眠っている彼女もちょうど一か月前くらいに保護されていたようだ。

――こんなものだろうか。

 わたしは大きく伸びをして立ちあがった。服は士道の妹から拝借したものなのだが、サイズが合ってなくてちょっときつい。

 階段を降りると台所では士道がせっせと朝食を作っていた。

「おはよう、士道」

「ん、ああ、あはよう」

 わたしは挨拶した後ソファに腰掛け、テレビを点けようと脳から命令を送ったが、それでは当然点く訳もなく、テレビは沈黙したままだった。

「むー。どうしたものか……」

 わたしは立ち上がりテレビの前に立ち、手を叩く。が、一向に起動する気配がない。わたしは顎を撫でて考え始める。

(これは一体どうすればいいのだ……それにしても原始的すぎる。本当にこんな骨董品みたいな物がテレビなのだろうか。いや、もしかしたら別の物かもしれない。いやいや、壊れているのかも)

 「よし」わたしは息を整えて拳を腰に構える。

(壊れているものは叩いて直す、それが先人達の教え)

「せい――」

「ちょっと待てェッ!」

 そこで士道が慌てて止めに入った。

「お前一体何しようとしてるんだよ!」

 あまりにも士道が必死だったのでわたしは少し目を逸す。

「何って、テレビを直そうと……」

「え? 壊れたのか?」

「いや、テレビが点かなくてさ」

「……リモコンは使ったか?」

「……りもこん?」わたしは首をかしげる。

 士道はやれやれと溜息をついてソファの前のテーブルの上に置いてあった複数のボタンがある黒い直方体の物体を手に持ち、右上の緑色のボタンを押した。するとテレビが点いてニュース番組が映し出された。

「おおー」

「次は気をつけてくれよな」士道は肩をすくめた。

 すると鼻をつん、とつくような匂いが部屋を充満し始めた。

「おい、食事の方は大丈夫なのか?」

「ん……しまった!」

 士道は再び慌てて台所に戻っていった。どうやら焦げてしまったらしい。

 ドゴォォォォン!

 すると上で凄い衝撃音が響いた。

「な、何だ!」

 士道はカウンターから身を乗り出して上を見た。

「士道、待っていろ。私が見てくる」

 わたしは走り出した。

 なんとなく予感はできていたが。

 

 寝室のドアを開けると十香が頭から落下したのか頭にたんこぶを付けて涙目で悶えていた。

「お、おい。大丈夫か?」

「確かお前は……」

 十香が痛む頭を押さえながらこちらを向く。

「黒輝恵美だ。昨日会っただろう?」そう言いながら手を差し伸べた。

「あ、ああ、そうだったな。ありがとう」

 十香はそれを掴んで立ちあがった。

「ほら、士道が下で食事を作っている。早く行こう」

「おお! 朝ごはんか!」

 そう目を光らせたかと思うと、走って部屋を出て行ってしまった。

 ドアがバタン! と閉じ、わたしは思わず身をすくませた。

「……忙しい朝だな……」

 やれやれと頭を掻きながら一階に向かった。

 

「にしても、随分暇だな」

 朝ごはんを食べた後、わたし以外は全て『学校』という所に行ってしまって一人で留守番しているところだった。 

 わたしはソファで横になって大きな欠伸をしながら腰を掻く。服は十香が使用しているものを拝借していた。暇に耐えかねたわたしは適当に家の中を散策しようと立ち上がった。

 ダイニングのテーブルには士道が作ったラップでふたをした昼ごはんが置いてあった。それをしばらく見つめ、時計を見る。

 10時50分。

 昼時にはまだまだ時間はあるし、もうそろそろ調べ物でもするか。

 階段を上がって二階の士道の部屋に入る。入って辺りを見回すと机の上にはノートパソコンが置いてあった。わたしは机の前の椅子に座り、パソコンの電源を入れる。そして右の人差し指から虹色にきらめく光ファイバー・テンドリルを出し、パソコンに接続。現在のインターネットの状態を頭の中でシュミレートし、それを元に仮想景(ヴァースケープ)を作成、自分の意識をそこに移動させた。

 

「探してた物は……っと。あ、見つけた」

 早速目的のポップアップの元に移動し、アタックをしかける。案の定、ブロックは簡単に崩れ、すぐに侵入することができた。そして情報をさっさとダウンロードし、次の目標に移動する。

 これを続けること数十分、目的の情報は手に入れたし、アポも取れた。試作品はまた後日作ることにして、わたしは仮想景(ヴァースケープ)から出た。

「よし、こんなもんだろう」

 パソコンからテンドリルを引き抜き、指に収めた後、周りに漂っていたqスーツを凝縮して着装する。そして窓を開け放ち、そこから外に出た。

 外に出たわたしは空高く上昇し、相互作用が弱く重い粒子(WIMP)を放って街の形を隅々まで三次元データとして保存した。ただ、これをやってしまうと霊波観測機に反応してしまうので、そそくさとこの場を離脱し、現在は見えない陽炎と化している〈フラクシナス〉に向かった。場所は三次元データを保存した際の進行方向から予測したルートを作成したので現在は網膜に表示されている。自分の身体を局所霧(フォグレット)で覆い、霊波と感知される物を全てシャットアウトする。

 騙す事は簡単だ。前回システムに侵入した時にシステムの穴はすでに押さえてある。相手にノイズとして思い込ませるだけでいい――

 可視化された〈フラクシナス〉の側面にあるドアをハッキングし、ドアの開閉機能を奪ってドアを開けさせる。艦内に入ってqスーツを解除し、艦橋に向かう。艦橋に入るとすぐに全員の視線がこちらに注がれた。

「神無月副司令はいる?」

「私なら、ここに」

 右上を見上げるといつもとは違う引き締まった表情の神無月が立っていた。

「一体何の用でしょうか」

「あれ、ウッドマン卿に聞いてない?」

 すると引き締まった表情から一転、驚きに満ちた表情に変わった。

「ではあなたが新しく〈ラタトスク機関〉に配属された……!」

 わたしは腰に手をあて、頷いた。

「黒輝恵美だ。よろしく」

 そしてニヤリと笑った。

「ゲーム開始だ」

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