デート・ア・ライブ~真理亜デストラクション~ 作:Kyontyu
「破壊者とウサギ」
「なんで〈ラタトスク〉に?」
「ああ、私はある『女神』――君達で言う『精霊』を探しているんだ。それが、これ」
わたしは〈フラクシナス〉のシステムの一部を乗っ取り、目の前のディスプレイに監視カメラの映像の一部を画像として表示させる。そこには白い髪を腰まで伸ばした少女が映っていた。
「これが、私の探している『精霊』、マリア」
「え? でもこの時間、この場所では霊波は観測されてないが……」
オペレーターの一人が口をはさむ。どうやら霊波を観測している機関員のようだ。
「それもそうだな。なぜならまだ君達の霊波観測機は未熟でちょっとしたことで誤差、ノイズが起きる。だから観測機には一定のフィルターがかかっているんだ。んで、私は世界中の観測機のデータを調べて、彼女を発見した……そしてその世界地図には『いままでの観測でノイズとされていたけど実は本当だった』というものが赤い点と表示されてる」
再びディスプレイに世界地図を表示させ、その上に精霊の位置を示した赤い点をマージする。すると世界のかなりの地域で精霊が出現していることが分かる。その中でも特に天宮市周辺では真っ赤に染まっていた。
「こんなにいたとは……」
神無月は驚愕で満ちた顔でディスプレイを見つめる。
「……話を戻そう。それで私はマリアを探す為に君達〈ラタトスク機関〉のお偉いさん、ウッドマン卿に話をつけて来た。精霊探しの効率を上げるのと引き換えにここに入れさせて欲しい、とね。彼は快く承諾してくれたよ。それじゃあ私は彼との約束を果たせねばならぬので、ここらで失礼させてもらうよ」
わたしは踵を返して艦橋から出て行った。
マリアは天宮市のショッピングモールの中でスキップしていた。
「あ~あ、つまんないな~」片手にはアイスクリームが一つ。マリアはこれを一口舐めた。
「私の居場所も大体ばれちゃったし、そろそろ暴れたいな~」
そう言ってマリアはショッピングモールから出る。目の前にはそこそこ規模のある街が見える。きっと沢山人が溢れているのだろう。暴れがいがあるというものだ。
「あ、見ぃ~つけた」
アイスクリームを一口で口の中に放り込み、舌舐めずりして左腕を上げて口を開いた。髪の色が白から透き通るような水色に染まって行く。
「さぁ、おいで、〈氷結傀儡(ザドキエル)〉♪」
そして大きな笑みを浮かべた。
ビーッ! ビーッ! ビーッ!
甲高い空間震警報の音が〈フラクシナス〉の艦内に流れる。
「! 来た……!」
顕現装置(リアライザ)の改良をしていたわたしはコントロール・ルームを飛び出し、艦橋に出向く。
「神無月さん! 今の警報は!?」
「ええ、今のは――」
「――やっぱ邪魔、どいて!」
わたしは神無月をショルダータックルで吹き飛ばし、コンソールを見た。霊波の数値から見て……
「マリア!」
わたしは艦橋を出て、転送装置に向かう。
そして天宮市の住宅街の一角に転送させる。先ほど降りだした雨はかなり強くなったようだ。周りには人影は確認できない。ここなら大丈夫だろう。
周りに漂っていたqスーツを凝縮して着装する。
「よし、新装備を使ってみるか。来い、Sガトリング」
手を前に伸ばすと、光り輝く粒子が掌に集まり、恵美の身長程の大きさの黒いガトリングが形成された。これは余っていた組換可能物質(プログラマブル・マター)を使って作った武装で、弾にはボース=アインシュタイン凝縮されたストレンジレット弾が詰まれている。空間震は既に発生しており、網膜に表示されたポップアップには半球状のクレーターの映像が映っていた。今回出現した霊波の発生源は視覚情報にマージしてある。
「行くぞッ!」
わたしはSガトリングを両手で提げるように持ち、体を機能性霧(ユーリティリー・フォグ)で包んで目標地点まで飛んだ。
マリアは呼び出した〈氷結傀儡(ザドキエル)〉の上に座っていた。周りは既に氷の結晶で作られた要塞と化していた。今マリアがいる場所は〈氷結傀儡(ザドキエル)〉を呼び出した場所から少し離れた場所にある公園に作った円球の中だ。
「いいね~いいね~。ありの~ままで~♪ なんちゃって」
そう言って一人でボケてみせる。残念ながら見ているのは物言わぬ天使のみだった。
すると氷の要塞の天井の一部が砕かれ、黒いqスーツを纏った女の宇宙騎士が現れた。その女は大きすぎるが、威力は十分な兵器を持っていた。まぁ、天使も大きすぎるのだが。
「あらあら、お客さん? 珍し~い」
「ああ、あんたを地獄に案内する案内人だ」
マリアは〈氷結傀儡(ザドキエル)〉の上でうつ伏せになった。
「へぇ~。で、どうやって案内するの?」
「もちろん」女は銃器の砲口をこちらに向ける。
「これでぶち殺す」
わたしはSガトリングをマリアに向けて放った。回転する砲口からは次々とストレンジレット弾が吐きだされていくが、マリアの作りだす氷の壁にぶつかって爆発する。ストレンジレット弾はサイズは普通の弾薬と同じだが、ボース=アインシュタイン凝縮されているので、威力は比べ物にならない。目も眩むような光、体が千切れそうなほどの爆風、数秒ももたずに氷の要塞は崩れ去っていった。
わたしは崩れ去る要塞から飛び出し、地面に降り立った。マリアも天使に乗りながら降りて来た。
「あ~あ、もったいない」
「もうすぐ消えるんだ。関係ないだろ」
Sガトリングを光の粒子に還元し、両腰から刀を引き抜く。
「もういいよ。また作るから」
マリアは肩をすくめる。するとその瞬間、〈氷結傀儡(ザドキエル)〉の背中から巨大な氷柱のような物が数十本生えてくる。
「バッハア~イ」
氷柱がこちらに向けて射出された。
わたしは取り乱さずに、主観的加速時間(クイック・タイム)に入る。そして雨粒が空中に静止し、空気が粘度の高い液体のようになる。歩きながら氷柱を一本ずつ斬っていく。斬られた氷柱も雨粒と共に静止したままだ。最後の一本を斬った時、拡張知覚が警鐘を鳴らす。その瞬間目の前にマリアが躍り出た。
「ッ!」
しかし、気づいた時にはもう遅く、思い切り腹に拳が突き刺さる。
「ぐはっ……ッ」
皮下のqドットが瞬間的に硬化しダメージを和らげるも、わたしは強制的に主観的加速時間(クイック・タイム)を解除され、建物の壁にぶつかった。壁に放射状に蜘蛛の巣のようなひびが入った。そしてqスーツのラジエーターが狂ったように排熱を始めた。
「ふぅっ……」
わたしはめり込んだ両腕両脚を壁から引きはがす。
拡張知覚は大きなダメージが無いと告げるが、それよりも精神的なダメージが大きかった。
とりあえず息を整え、次の攻撃に備えようとした時、満面の笑みのマリアが目の前に現れた。
「しまっ……!」
腹に再び鉄拳がめり込む。わたしは壁を、民家を何件も貫いた後、一軒家の塀に当り、その場に崩れた。
「あ~あ、つまんないな~」
マリアは地面に転がっていた小石を蹴った。
「まぁいいや。またお城作ろ~っと。じゃあ行こ。〈氷結傀儡(ザドキエル)〉」
マリアは大きなウサギを一匹侍らせて、新たな城を築こうと場所探しを始めた。